『変わったタイプ』トム・ハンクス

名優トム・ハンクスの短編集。
ユーモアがあって温かく巧みだ。話の筋を悲惨な方向にもっていくと予想しながら読んでいると、決して悲惨にはならない。悲惨な方向に舵を切れば物語は容易に終結するが、そうしない。著者は妥協しないのだ。神は細部に宿るというが、名優の文章は細部を徹底的に描き出す。題材はバリエーションに富んでいて、半分の作品がスラップスティックに展開する。
多くの作品でタイプライターが登場するのは、著者が年代物のタイプライターの収集家だからだ。それがいい味を出している。

「アラン・ビーン、ほか四名  Alan Bean Plus Four」は、最近日本でなにかと話題を提供しているネット通販会社のちょび髭社長が契約したという、月を回って帰ってくるルートの宇宙旅行の話である。本作は、著者が主演の映画『アポロ13号』(1995年)にヒントを得ているだろう。本作が2014年に雑誌『ニューヨーカー』に掲載されて、小説家としてデビューした。はじめから、実力が認められていたということだ。
『ニューヨーカー』の位置付けについて、村上春樹は次のように述べている。〈僕にとって、『ニューヨーカー』という雑誌は、長いあいだにわたって、ほとんど伝説か神話に近い聖域に属するものであった。〉掲載されたときは、どの賞をもらったときよりも嬉しかったという(『象の消滅』)。

本書には13編の短編のほか、〈ハンク・フィセイの「わが町トゥデイ」〉と題した架空のローカル紙のコラムという体裁をとった4編が挟み込まれている。これがほのぼのなのだ。

変わったタイプ (新潮クレスト・ブックス)
変わったタイプ
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トム ハンクス/ 小川高義
新潮社 
2018年8月 ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
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高校の同級生だった女性と出会う。一緒に住むことになり、その猛烈なフィジカル・エクササイズに付き合わされる。はじめはジョギング、次にスキューバダイビング、もちろんセックスも、そして南極行き。いけるところまでついていこうとするが、とても無理。「ヘトヘトの三週間   Three Exhausting Weeks」

雪のイヴ、父親はクリスマス・プレゼントを買って車の中に隠しておく。サンタがプレゼントを持ってくるという話を、妻と長男とグルになって下の二人の子どもに信じこませる。子どもたちがベットに入ったところで、車からプレゼントを運び出す。
話は、第一次世界大戦のヨーロッパ戦線に飛ぶ。戦友と年に1回、クリスマス・イブに電話で話し、生還できた喜びに浸るのだ。「クリスマス・イヴ 1953年  Christmas Eve 1953」

俳優の端くれロリー・ソープは『カサンドラ・ランパート3』に出演したおかげで、銀行に預金ができた。しかも経費なしで豪勢なヨーロッパ旅行ができる。
一緒にプレスツアーを回る主役のウィラ・サックスが、マーケティングを担当したアイリーンに電話をかけてくる。「ダサイ受け答えしかできないロリーをなんとかして」と。突然、フィラが夫と離婚することになった。夫が商売女ともめてマリファナ所持で拘置されそうだという。
「結局、映画に出ていたロリーって誰だっけ、みたいな男なのよ」とアイリーンにいわれて、特別待遇は終わる。「光の町のジャンケット  A Junket in the City of Light」

父と大学生のカークは、久しぶりにマーズ海岸でサーフィンを楽しむことになった。カークはサーフボードで脚に裂創を負ってしまう。父を探すと髪の長い女とスタバのコーヒーを飲んでいた。血を流しながらもカークは邪魔をしない。
「ようこそ、マーズへ  Welcome to Mars」

8月に、ベットは3人の子どもとともにグリーン通りに引っ越してきた。別れた夫が養育費を払うことになったので経済的な不安はない。となりの独身の中年男がハムをもって挨拶にきた。今夜は、忙しいですか?その言葉がベットに引っかかった。露骨な誘いと警戒したのだ。となりの男は手製の望遠鏡で天体観測をする趣味があるという。「グリーン通りの1ヵ月 A Month on Green Street」

アリゾナからNYに出てきたスーは、安アパートのソファーに寝場所を確保した。アパートを提供している女とルームメートは、7週間すぎてスーを厄介者扱いするようになった。履歴書をタイプで打とうと図書館に出かけたときに、アリゾナの劇団の総監督をしていた同性愛者のボブにばったり会う。
ボブの指導で業界で通用する履歴書を書き上げる。と、運が開けていく。「配役は誰だ Who's Who?」

10歳になろうとするケニーは父と継母と兄姉とくらしている。週末、ケニーと過ごすのため赤いスポーツカーで母がむかえにきた。翌日ミニゴルフをふたりで楽しみ、前に暮らしていた家を見に行った。帰りは母の友だちが飛行機に乗せてくれるという。飛行機の操縦桿を握らせてもらってご機嫌なケニーだったが、着陸した場所は毛に\乃家からはるかに離れた場所だった。「特別な週末 A Special Weekend」

男と別れた女は、メソジスト教会のガレッジセールで筺体がプラスチックのタイプライターを買った。スペースキーが機能しないので修理にもっていくと、店の老店主はすぐにまた動かなくなるという。女性はタイプライターについて質問し、店主はそれに応え、タイプライターを出して紙を挟み、機能を講釈してくれる。そこで、ヘルメス2000スイス製を買った。アパートに帰ってノイズレスのタイプを打つ、「心の中で思うこと」と。
タイプライターを知り尽くしているからこそ書ける作品だ。「心の中で思うこと These Are the Meditations My Heart」

タイムトラベルもの。悲惨な結末をそう感じさせない。
「過去は大事なもの  The Past Is Important to Us」

コメディ映画の脚本。
「どうぞお泊まりを  Stey with Us」

ギリシャからアメリカに船で密入国したブルガリア人の話。アッサンはジョニー・ウォーカーの赤2本で船の機関長と話をつけなんとか乗船できた。機関長はアッサンは密入国してなんとかやっていけるとにらんでいる。
アッサンはフィラデルフィアのギリシャ国旗を立てている事務所を訪れた。上着とズボンを用意してくれて、英語教室を紹介してくれた。そしてギリシャ料理のコスタスの店に行って雇ってもらうようにと、アドバイスを受けるのだが。。「コスタスに会え  Go See Costas」

ボーリングでパーフェクトを出し続ける友人スティーヴ・ヴォンと3人の仲間の話。
「スティーヴ・ヴォンは、パーフェクト Steve Wong Is Perfect」→人気ブログランキング

『明日は遠すぎて』チママンダー・ンゴズィ・アディーチェ

本書には、著者の2冊目の短編集『なにかが首のまわりに』に収録されている12編のうちの6編と新作3編を加えた9編が納められている。
近代化のもたらす矛盾に翻弄される人びとや、近代化と消えゆくアフリカの風習の煩わしさとこだわりのはざまで生きていく人びとが描かれている。
アフリカンがアメリカと関わりを持つときはなにかが起こるし、アフリカにいるときは先祖とのしがらみから逃れられない。

明日は遠すぎて
明日は遠すぎて
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チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ/くぼたのぞみ 
河出書房新社
2012年  ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
売り上げランキング: 541,188

18年前に、アメリカに住む兄妹がナイジェリアの祖母の家で過ごした夏の悲劇を「きみ(妹)」という二人称で綴る。
〈おばあちゃんが、蛇ってのは「エチ・エテカ(明日は遠すぎて)」っていわれてるんだ、ひと咬みで10分後には、お陀仏だからね、といった。〉というのがタイトルの出どころ。「明日は遠すぎて  Tokorrow Is Too Far」

部屋のドアを大きな音で叩いたのはナイジェリア人の男だった。ナイジェリアで航空機が墜落し、ナイジェリアのファーストレディが死んだ。で、一緒に祈りたいという。男がウカマカの手をとって祈ると、彼女は自分が震えるのがわかった。ウカマナがつき合っていた男がその飛行機に乗っているかもしれない。
ドアを叩いた男はペンテコステ派で、ウカマカはカソリック。男はゲイだと告白した。ユーモアとペーソスが感じられる作品。「震え  The Shivering」

6年間アメリカに留学していた娘はナイジェリアで結婚式を挙げることになった。娘の変わりように母親は戸惑い、ふたりの意見はことごとく食い違った。娘は母親を太ったブルジョアと呼んだ。披露宴が始まると、プランナーが母親に、娘が最初のダンス曲を「スイート・マザー」に変えたと告げた。ナイジェリアの結婚披露宴ではダンスが延々と続く。ダンス曲の選定には気を使うし、その順番も重要であるという。「クオリティ・ストリート Quality Street」

夫がユダヤ人で妻がアフリカンアメリカンの息子の、ベッビーシッターの微妙な女心が描かれている。アメリカ留学時のベビーシッターの実体験をもとに描いたという。「先週の月曜日に  On Monday of  Last Week」

渋滞に巻き込まれた。となりの車の派手な髪型をした金持ちそうな女がこちらをにらんでいる。という前置きがあって、チクワドの妻子ある男との不倫が語られる。給仕や運転手や門番のチクワドを無視する態度に、男の妻の存在を感じていた。それに苛立つチクワドは、渋滞でにらんでいる女が妻ではないかと思いはじめる。「鳥の歌  Bird Song」

オビンゼに大学時代のガールフレンドから、ナイジェリアに帰ったら会いたいというメールがきた。裕福な暮らしができるようになったオビンゼは、妻とともに首長のパーティに出席している。妻とは心が通っていない。パーティから早く帰って、メールの返事を無性に書きたくなった。新しいことが起こって欲しいと思った。長編『アメリカーナ』のダイジェスト版。「シーリング  Ceiling」

アフリカ出身の作家のワークショップに参加するためウジュンワはケープタウン郊外のジャンピング・モンキー・ヒルに来ている。8人の参加者は雑誌に載せる短編を最初の1週間で仕上げ、2週目はそれぞれの作品を合評するというスケジュールだ。
文中には、ウジュンワが書いている短編が差し込まれている。
主催者のエドワードが、ウジュンワを色目で見ているとみんなが気付いているという。
ウジュンワの作品が論評される。高学歴の女性の話だ。パワハラに対抗して職場を去るという結末に現実味がないというエドワードは言う。
そのサジェッションにウジュンワは憤慨したが、結末を訂正してもいいかなと思ったというのが結末。
幾重にも仕掛けがある傑作だ。実際に、著者はアフリカ出身の作家を集めたワークショップを毎年開催しているという。「ジャンピング・モンキー・ヒル Jumping Monkey Hill」

はじめは母親のジュエリーを盗んだ。犯罪者となっていく美形の兄を妹の目線で語る。「セル・ワン Cell One」

近代化するナイジェリアをひとりの女性を通して綴る。
ンワムバはひとりっ子のオビエリカと結婚した。流産をくりかえすンワムバは夫にに第2夫人をもつことを勧めたが、夫は意に介さなかった。ンワムバは男の子を産みアニクウェンワと名づけた。オビエリカが突然死んだ。葬儀のあいだにオビエリカの従姉妹たちが、象牙を持ち去った。その後も従姉妹たちがオビエリカの土地を奪おうとした。
ウワムバは従姉妹たちとの訴訟に勝てるようにと、息子を教会に通わせ英語を習得させた。息子は英語が話せるようになり、英語力のおかげで土地を取り戻せた。ところが息子は異教徒のキリスト教徒になってマイケルと名乗るようになった。息子はンワムバに胸を隠すように言った。
息子が選んだ嫁にンワムバは決して優しくしないと決意したが、人懐っこい優しい嫁に目をかけるようになった。ムワンバはイボ族の女たちがするように陶器を作った。男と女の孫が授かった。ンワムバはグレイスと名づけられた赤ん坊を抱いたときに、目をきらきらさせて、ンワムバの目をじっと見たので、夫のスピリットが戻ってきたと思った。ンワムバはグレイスをアファメナフと名づけた。「わたしの名前は失われることはないだろう」という意味だ。グレイスは歴史家となって本を書き、数々の賞を受賞した。グレイスは祖母がつけてくれた名前に改名することにした。アファメナフは暮れなずむ光の中、祖母のベッドの傍に座りながら、陶器づくりで肥厚した祖母の掌を握っていた。「がんこな歴史家  The Headstrong Historian」
本作で「アメリカ大使館」(2003年)に続き、2度目のO・ヘンリー賞(2010年)を受賞している。→人気ブログランキング

アメリカにいる、きみ/C・N・アディーチェ/くぼたのぞみ/河出書房新社/2007年
半分のぼった黄色い太陽/C・N・アディーチェ/くぼたのぞみ/河出書房新社/2010年
明日は遠すぎて/C・N・アディーチェ/くぼたのぞみ/河出書房新社/2012年
アメリカーナ/C・N・アディーチェ/くぼたのぞみ/河出書房新社/2016年

黄金チャーハン

大学1年の夏休みに、実家がある町のレストランで2週間ほどアルバイトをしたことがある。レストランは交差点の一隅の2階にあった。交差点は城下町特有のクランクになっていて、当時、そのあたりは町一番の繁華街だったので、レストランは繁盛していたと思う。

与えられた仕事はホール係で、食器洗いもしたかもしれない。ある日、料理人がチャーハンの作り方を伝授してくれるという千載一隅のチャンスが訪れた。まだそういう呼称はなかったが、それは紛れもなく「黄金チャーハン」だった。

調理の手順は、中華鍋に油をひいて熱したところに、溶き卵を入れて中華おたまでかき回した後、冷えたご飯を入れる。しばし炒め日本酒と酢を入れ、さらに塩とコショウと化学調味料をふりかける。最後に、刻み葱を入れ、香りづけの醤油を鍋肌に沿わせてでき上がりだ。これを実家で作ると大好評で、「○のチャーハン(○には私の名前が入る)、作ってちょうだい」と家族から懇願ないしは命令され、しばしば台所に立った。今の「黄金チャーハン」の作り方と異なるところは、日本酒と酢を入れるところだろう。日本酒はコクを出すため、酢は味をまろやかにするためと教えられた。伝授していただいたチャーハンは「黄金」ではあったが「パラパラ」ではなかった。

チャーハンにパラパラ感が求められるようになったのはいつの頃からだろう。『男のチャーハン道』(土屋敦著 日本経済新聞出版社)によれば、パラパラがもてはやされ出したのは、食漫画『美味しんぼ』(第4巻 1985年)の影響によるという。さらに、1990年代のテレビ番組『料理の鉄人』に出演した周富徳がきっかけとなり、チャーハンは中華鍋をあおって作るというイメージが定着していった。中華鍋でご飯を空中に上げたときに、業務用ガスコンロの炎が直接ご飯を包み、水分を飛ばすというもっともらしい理由がつけられた。業務用コンロの強力な火力がなければ、パラパラチャーハンは作れないとされた。そしてパラパラでなければチャーハンではないという風潮が、まかり通るようになった。「パスタはアルデンテ」といわれ始めたのは、これより少し前のころだ。

火力に関係なく、家庭でパラパラチャーハンを簡単に作る方法を、曽兆明という料理人が喧伝したことがあった。それはあらかじめご飯と溶き卵を混ぜてから炒める方法で、確かにご飯ひと粒ひと粒は卵でコーティングされているものの、パラパラよりはどちらかといえばパサパサという食感であると評価され、さほど流行らなかった。曽兆明はこのチャーハンを「黄金チャーハン」として、ちゃっかり商標登録しているという。

あまりにパラパラチャーハンが人口に膾炙したものだから、店でチャーハンを注文したときに、パラパラでないとその店がまともでないように思えたものだった。それが、最近は、レタスを入れたり餡やスープをかけたりするチャーハンが流行ってきて、パラパラ至上主義は影を潜めつつあるようだ。もっとも、パスタもアルデンテといわなくなった。

最近、わが家ではセブン・イレブンの「極上炒飯 300g」を愛用している。冷凍庫から取り出して袋にフォークを突き刺して穴を開け、電子レンジで6分ほど温める。これで極上のパラパラチャーハンができ上るが、そこにひと工夫する。豚バラ肉と野菜を炒めオイスターソースで味をつけ片栗粉でとろみをつけた餡をかけ、餡かけチャーハンにする。これが絶品なのだ。

リムジン故障す

7月の連休に空路で新潟から鹿児島に向かった。日本列島が火にかけたフライパンのような空前の猛暑に見舞われた始めた頃だ。乗り換えの伊丹空港では、「気温は36℃です。水分補給を…」と高温注意情報がアナウンスされていた。伊丹空港からはプロぺラ機になり、気流の乱れで機体は揺れたが、無事に鹿児島空港に到着した。気温は32℃で、36℃に比べれば納得がいく暑さだった。

リムジンバスを待つ列に並ぶと、先頭が老女とゴールデン・レトリバーの盲導犬、2番目が4歳くらいの男児と若い母親、私は3番目であった。盲導犬は毛につやがなく尻の肉が落ちていて若くはなさそうにみえた。男児がちょっかいを出そうと盲導犬に近づいていったが、母親に止められて残念そうに踏みとどまった。盲導犬はバスのステップを楽々と登り、老女は係員の手を借りて登った。男児は手摺りにつかまりながらひとりでなんとか登った。老女と盲導犬が運転席の後ろの優先座席に、私はその後ろの席にすわり、母子は反対側の優先座席に陣取った。その後に、乗客が次々に乗り込んできて、補助席を出して隣りの客と肩が触れ合うくらいの寿司詰め状態になった。バスが発車し、シートベルト装着のアナウンスが流れたが、シートベルトを探すだけで隣りの客にぶつかりそうなので、装着しなかった。高速道路に入る前に再びシートベルトのアナウンスが流れたが無視した。

快調に飛ばしているバスの中でブシュッという聞き慣れない音がした。前の席の盲導犬がくしゃみをしたと思った。いくら従順な盲導犬とはいえ不意に襲う生理現象にはお手上げだなと思った。程なく先ほどと同じ音がした後、バスは高速道路の路肩に停車した。運転手がバスから降りて右前のタイアの周辺を点検した後、携帯電話を取り出して困惑顔で話しはじめた。乗客は誰も文句を言わず、ざわつきすらしなかった。唯一の例外は、男児が「パンク、パンク.‥」という歌らしきものをくりかえし口ずさみ、のべつ喋っていたことだ。

運転手がマイクで、このバスは電気系統の故障で走行できないので、乗り換え用のバス2台が向かっていると説明した。大事に至らなかったが、シートベルトを装着しなかったことを大いに反省した。バスが路肩に停まってから40分で代替のバスがやってきて、乗客の乗り換えもバスの胴体部分に積んだ荷物の移動もスムースに行われた。

バスが高速を降りて市街地に入ると、街が火山灰で霞んでいることに気づいた。終点にバスが着くと、老女は尻尾を振る盲導犬に誘導されてゆっくりと歩きだした。男児は母親に手を引かれて飛び跳ねながら歩いていった。雨がポツリポツリと落ちてきて、かすかに硫黄の臭いを含んだ風が吹き、少しだけ涼しくなっていた。

『消えたフェルメール』 朽木ゆり子

1990年3月に、米国ボストンのイザベラ・ステュアート・ガードナー美術館から盗まれたフェルメールの〈合奏〉は、30年近く経過しているが、未だに戻ってきていない。著者は前著『盗まれたフェルメール』(新潮選書 2000年)が絶版になると知らされて、新事実を加えた本書を書くことにしたという。

フェルメールの盗難事件は5件ある。
【1971年9月】ブリュッセルのパレ・デ・ボザールで行われた「レンブラントと彼の時代展」の会場から〈恋文〉が盗まれる。東パキスタン難民の支援が要求されるが、2週間後、犯人は逮捕され絵も発見される。
【1974年2月】ロンドン市内の邸宅美術館ケンウッド・ハウスからの〈ギターを弾く女〉が盗まれる。獄中のIRAテロリスト2名の北アイルランドへの移送を要求。
2日後、ロンドン市内の教会墓地で絵は発見される。犯人は不明。
【1974年4月】アイルランドのタブリン郊外にある邸宅美術館ラスボロー・ハウスから、〈手紙を書く女と召使い〉ほかゴヤなどの作品19点が盗まれる。1週間後、IRAのテロリスト2名の北アイルランドへの移送と50万ポンドが要求されるが、犯人は逮捕され絵は全点回収される。
【1986年5月】ラスボロー・ハウスから、再び〈手紙を書く女と召使い〉ほかゴヤなどの作品など合わせて15点が盗まれる。1993年、囮捜査により絵はベルギーで発見され、犯人は絵画強盗が遠因となりIRAに殺される。今やこうした盗難美術品のバイヤーはほとんどが囮捜査員であるという。
【1990年3月】イザベラ・ステュアート・ガードナー美術館から、レンブラントの〈ガラリアの海の風〉と〈合奏〉とともに13点が盗まれ、絵の行方は不明である。

消えたフェルメール (インターナショナル新書)
消えたフェルメール
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朽木 ゆり子
インターナショナル新書
2018年10月 ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
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なぜフェルメールの作品は狙われやすいのか?
5件の事件のうち邸宅美術館から盗まれたのが4件である。邸宅美術館とは、最初から美術館として建てられたものではなく、自宅に飾られていたコレクションを、自宅ごと公開しているため、警備が脆弱なところが多い。
もうひとつは、フェルメールの作品は持ち運びに容易な小品が多いこと。あとは膨大な価値。

盗難事件は必ずしも悪いことばかりではないという。盗難にあって破損された絵の修復過程でわかったことがある。フェルメール作品は、キャンバスの遠近法の集約点に穴が開いている。その点にピンを刺し、そこから糸を張ってキャンバスに直線の印をつけ、それによって狂いのない遠近の関係を描いていたのである。

イザベラ・ステュアート・ガードナー美術館の事件は、本命はレンブラントの唯一の海景〈ガリラヤの海の嵐〉で、〈合奏〉は巻き添えと考えられているが、フェルメールの人気が徐々に高まり、〈合奏〉に人びとの関心が向くようになった。
まずは美術館の関係者が徹底的に調べられ、過去に邸宅美術館を襲った犯人も調べられた。IRAも捜査の対象になった。実行犯のふたりは判明したがすでに死亡していた。
情報提供者の報奨金100万ドルが発表されたが、有力な情報は寄せられなかった。7年後の1997年に、報奨金は500万ドルに引き上げられた。
盗まれた美術品の返却の橋渡しができるという骨董商が現れ、FBIが乗り出して、マスコミも大々的に取り上げたが、提供された絵の具の破片はフェルメールのものではなかった。

2017年に報奨金が1000万ドル釣り上げられ、FBIが絵を所持しているとにらんでいる別の事件で容疑をかけられている人物に、報奨金1000万ドルと減刑を条件に取引を持ちかけたが、応じなかったという。→人気ブログランキング

消えたフェルメール/朽木ゆり子/インターナショナル新書/2018年
恋するフェルメール  37作品への旅/有吉玉青/講談社文庫/2010年
フェルメールになれなかった男  20世紀最大の贋作事件/フランク・ウイン/ちくま文庫/2014年
真珠の耳飾りの少女(DVD)
深読みフェルメール/朽木ゆり子×福岡伸一/朝日新書/2012年
フェルメール 静けさの謎を解く/藤田令伊/集英社新書/2011年
フェルメールからのラブレター展@宮城県美術館(2011.11.09)
フェルメール 光の王国/福岡伸一/木楽社/2011年

『半分のぼった黄色い太陽』チママンダー・ンゴズィ・アディーチェ

戦争に巻き込まれて翻弄される人々を、オナンラとカイネネという双子の姉妹を中心に描いている。 ラブストーリーの要素が多分にあり、戦争の悲惨さが薄められたヒューマンドラマとして読むことができる。
ストーリーテーラーとしての才能がいかんなく発揮された本作品によりC・N・アディーチェは、イギリスの文学賞であるオレンジ賞(2014年からベイリーズ賞、国籍は問わず女性が英語で書いた長編小説に与えられる)を、2007年に受賞している。

半分のぼった黄色い太陽
チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ/くぼたのぞみ
河出書房新社
2010年 ✴✳✳✳✳
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物語は3人の目を通して語られる。
1人目は、大学町スッカに住む数学の教授のオデニボにハウスボーイとして雇われた13歳の聡明なウグウ。田舎から出てきたウグウにとってオデニボの家で見るもの聞くものすべてが、はじめてのことであった。
オデニボの家には、週末になると同僚たちが集まり、酒を飲みながら議論を戦わせたり、音楽を聴いたり、詩を朗読したりするサロンのようなところであった。

次は、ナイジェリアの大都市ラゴスの裕福なイボ人の家庭で育った双子の妹・美貌のオランナ。ロンドン留学から帰国したオランナはあるパーティでオデニボに出会い、その精悍さとエネルギッシュなところに惹かれ一緒に暮らし始める。オデニボは、しょっ中アフリカの社会主義について新聞に記事を書いている。

3番目は、イギリスからやってきたナイジェリアの古代美術に興味をもつ長身の白人リチャードである。作家志望のリチャードは、ラゴスで開かれたパーティで双子の姉カイネネに一目惚れをして、なんとか付き合おうとする。
カイネネは父親が手がける事業を引き受けて、ポーハーコートに住み事業家として活躍してる。
人種も、性別も、肌の色も、立場も違う3人の人物が語り部となって物語は進む。
ラジオから流れるビアフラ共和国の分離独立のニュースにイボ人たちは歓喜したが、それは坂を転げ落ちるように進む悲劇の幕開けだった。

ナイジェリア軍の攻撃にビアフラ軍は拠点を明け渡していく。
人々は安全な地区に居を変えざるを得なくなり、オランナたちも何回か転居し、日を追うごとに生活は苦しくなっていく。
オランナたちの生活の変化は、食事の場面でつぶさに伝わってくる。最初は、姉妹の実家で開かれるパーティの豪華すぎる食べ物や飲み物が出されたが、戦争が始まると食事は粗末になっていく。やがては塩にも困り、何ヶ月もコメを口にできないような状況に追い込まれてしまう。

1960年にイギリスから独立したナイジェリア共和国は、250もの民族がひしめく多民族国家で、宗教の違いや地域による貧富の差など、ポストコロニアルな問題を抱えていた。イボ人を排除する形で連邦を支配しようとする動きに反発して、イボ人を中心とした東部州がビアフラ共和国として独立を宣言した。
東部州の油田を手放すまいとするナイジェリア政府との間で内戦(ビアフラ戦争 1967年7月)が勃発した。ナイジェリア政府はビアフラへの陸路・空路・海路を断つ作戦をとり、ビアフラへの食料・物資の供給が遮断されたため大規模で悲惨な飢餓が起こり、国際的な問題となった。
1970年1月、独立を指揮したオジェク将軍がコートジボアールに亡命し、ビアフラ戦争は終結した。この内戦による死傷者は、150万人と言われている。
タイトルの「半分のぼった黄色い太陽」とは、姉妹たちが属するビアフラ共和国の国旗のデザインのことである。→人気ブログランキング

アメリカにいる、きみ/C・N・アディーチェ/くぼたのぞみ/河出書房新社/2007年
半分のぼった黄色い太陽/C・N・アディーチェ/くぼたのぞみ/河出書房新社/2010年
明日は遠すぎて/C・N・アディーチェ/くぼたのぞみ/河出書房新社/2012年
アメリカーナ/C・N・アディーチェ/くぼたのぞみ/河出書房新社/2016年

『日本の美徳』瀬戸内寂聴×ドナルド・キーン

瀬戸内寂聴とドナルド・キーン、96歳同士の対談集。痛快だ。
寂聴が『源氏物語』の現代語訳を出したのが20年前。言葉というのは20年くらいの周期で変わるというのが、寂聴の説。つまり、『源氏物語』の現代語訳はそのくらいの周期で、新訳が出版されている。与謝野晶子、谷崎潤一郎、円地文子、瀬戸内寂聴ときて、昨年、角田光代が河出書房新社から出した。

日本の美徳 (中公新書ラクレ)
日本の美徳
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中公新書ラクレ  2018年7月
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18歳のときにニューヨークの古本屋で、アーサー・ウエーリ訳の『源氏物語』上下2巻を49セントで購入したのが、キーンの『源氏』との出会い。北アフリカのポルトガル領のマデラという島の本屋で、『源氏物語』を見つけたことがあるという。

光源氏は女性を追いかけ回すだけでなくアフターケアもちゃんとしていて、女性を尊重する点で、西洋のドンファンとは違うと強調する。
『源氏物語』はいわば不倫の書。不倫を否定すると、日本の古典はもちろん世界文学の名作がほとんど消えてしまう。不倫を糾弾しすぎる最近のマスコミや世論に対し苦言を呈する。

川端康成が『源氏物語』の翻訳をやろうとしていると聞いた円地文子が、寂聴に「あんな、ノーベル賞をとって甘やかされている人に『源氏』の訳なんかできません。『源氏』は命がけにならないとできない。もし川端さんが『源氏』の訳を完成させたら、私は素っ裸になって銀座の街を逆立ちして歩きます」と言った。との時円地は70歳近かったという。

キーンは、谷崎潤一郎や三島由紀夫や川端康成についてノーベル賞委員会から意見を求められた。デンマークの委員が、それまで2回候補に挙がって いた三島由紀夫を左翼だと主張したという。川端康成にノーベル賞を獲らしてやったとのは自分だとうそぶいたとか。

三島由紀夫の天才ぶりを披露しあう。
「ノーベル文学賞がまず三島由紀夫を殺し、そのあと川端康成を殺した」という大岡昇平の言葉をキーンが紹介している。三島由紀夫が受賞していたら自殺はしなかっただろうし、川端康成ももう少し長生きしたのではないか。川端康成はノーベル賞を受賞したから、すごい作品を書こうとしたが書けなかった。

東北大震災の後、日本への帰化を発表したキーンに、寂聴が日本人の美徳について訊く。
『魏志倭人伝』にも書いてあるように、清潔で礼儀正しいことだという。日本人の特性を語るのに『魏志倭人伝』を持ち出すのだから恐れ入る。
もうひとつは、何が起きても立ち上がって前に進むたくましさ。戦後の復興、原爆を落とされた広島の復興、東北大震災からの復興を例に挙げている。京都が焼け野原と化した応仁の乱から、その後の日本の文化の根幹をなす東山文化を築いたところがすごいと、キーンはいう。

長生きの秘訣は、自分の好きなことを続けること、肉を食べてアルコールを嗜むこと。→人気ブログランキング

『バスカヴィル家の犬』コナン・ドイル

本作はシャーロック・ホームズ・シリーズ4編の長編のうち最高傑作と評される。1901年に発表されたが、古さを感じさせない緻密で充実した内容には驚くばかりだ。舞台はロンドンとバスカヴィル家の屋敷がある不毛の地ダートムアである。

急逝したチャールズ・バスカヴィルは、自由党候補者として有力視されていた人物だった。走ったことが心臓麻痺を招いた。チャールズの遺体から20ヤード離れたところに巨大な犬の足跡がくっきりと残されていた。そもそも殺人事件なのか?

バスカヴィル家の犬 (角川文庫)
アーサー・コナン ドイル
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バスカヴィル家の遺言執行人であるモーティマー医師が、バスカヴィル家から預かった文書をもって、ホームズを訪ねてきた。
文書によると、その昔、傲慢無比だったヒューゴー・バスカヴィルが巨大犬に喉を噛みちぎられ悲惨な死を遂げた。それ以来、一族に不運な死に方をした者や不可解な最期をむかえた者が何人かいて、バスカヴィル家の魔犬伝説として伝えられているという。

遺産相続人のヘンリー・バスカヴィルが、カナダからロンドンのホテルに着くと手紙が届いた。
手紙には、「命と正気を重んずるならば、モアには近づくな。」と記されていた。ムアだけはインクの手書きの文字、あとは新聞の切り抜きの文字である。
ミステリなどで、たびたび登場する新聞の切り抜き文字の脅迫状は、本書が嚆矢と思われる。

サー・チャールズの死もさることながら、このわずか2日間に不可解なことが次々と降って湧いた。新聞の文字を切って貼り付けた手紙、ヘンリーの動向を偵察する顎髭の男、ヘンリーの新しい茶色い靴と履き古しの黒い靴の片方ずつが消え、新しい靴が戻ってきたこと。

場面はロンドンからムアに変わる。
まずは、バスカヴィル邸の執事はアルコール中毒でなにやら不穏な行動をとっている。
植物学者と称する男は美しい妹と住んでいて、怪しい。
近隣との訴訟に全財産をつぎ込む訴訟三昧の偏屈老人とその娘。
さらに、ムアには脱獄囚が逃げ込んで潜んでいるという。
農民たちからたびたび寄せられる、ムアに奇怪な野獣が現れるという証言。ワトソン自身も異様な咆哮を2度聞いた。
こうゆう奇々怪々の状況のなかで物語は佳境に突入する。

ホームズはホテルに手紙が送られてきた段階で、すでに犯行の目星がついたというのだから、その天才ぶりがわかる。→人気ブログランキング

バスカヴィル家の犬/コナン・ドイル/駒形雅子/角川文庫/2014年
緋色の研究/コナン・ドイル/駒月雅子/角川文庫/2012年

『1日1ページ、読むだけで身につく世界の教養365』デイヴィッド・S・キダー/ノア・D・オッペンハイム

敬虔なキリスト教徒が「寝る前に聖書を読む」ように、1日に1ページ読んでみてはどうかという本だ。かなり売れているらしい。
この手法は、ありがたい言葉を集めた日めくりカレンダーに親しんでいる日本人にとって、馴染む。フィットネスで体を鍛えたり、マラソンをしかるべきタイムで完走するためのコツコツライフは、日本人の得意とするところだ。シリーズ累計100万部売れているというから、コツコツは日本人だけの特技ではないかもしれない。
飽きさせないようにあるいは偏らないようにと、7つの異なる専門分野、歴史、文学、視覚芸術、科学、音楽、哲学、宗教を、順繰りに1週間で取り上げている。ということは、各ジャンルに約50項目が配分されることになる。執筆者2名はアングロ・サクソンと推察するが、宗教へのこだわりは並々ならぬものがある。
TVのクイズ番組で優勝するようなタレントは、きっと本書を購入しているだろう。

1日1ページ、読むだけで身につく世界の教養365
デイヴィッド・S・キダー ノア・D・オッペンハイム
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説明は読み手に迎合せずぶっきらぼうである。例えば、「アレクサンドロス」は、日本人には「アレクサンダー大王」の方が馴染みがあるが、あくまでアレクサンドロスで通していて、「アレクサンダーと思うなら、自分で確かめな」というような素っ気ない姿勢なのだ。
1ページでは解説が物足りないところもあり、逆にページによっては解説文が短く、余白があり書き込みができる。ウィキペディアでも参照して適当に余白を埋めたらどうだということだろう。
各項目にはその事柄に関する西暦年が記されているから、松岡正剛が 勧める「クロニクル・ノート」を作るといいのではないか。「クロニクル・ノート」とは、ノートに1万年前から紀元前を経て、現代まで年号をふって おいて、年号が出てきたら、片っ端から書き込むというもの(『多読術』ちくまプリマー新書)。

では、三日坊主にならないことを祈念して、1ページ目の「 アルファベット」から始めよう。→人気ブログランキング

『女ぎらい ニッポンのミソジニー』 上野千鶴子

なんでこんな良書が文庫にならないのかと、嘆いたのが2週前
それが伝わったかのように、『女ぎらい』の文庫が出版された。オリジナルが文庫部門のない紀伊国屋書店からの出版なので、また、オリジナルを手がけた編集者にただならぬ思入れがあって、再三の文庫化のオファーを著者もオリジナル本編集者も断ってきたという。

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上野千鶴子
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ミソジニーの主犯は紛れもなく男であるが、共犯者は女だ。男にとっては「女性蔑視」、女にとっては「自己嫌悪」として働く。ミソジニーは重力のように蔓延していて、男も女もミソジニーから逃れられない。
ミソジニーは、「ホモソーシャル」「ホモフォビア」「ミソジニー」の三点セットで成り立っているというのが本書のキモである。文庫には、「諸君!晩節を汚さないようにーセクハラの何が問題か?」と「こじらせ女」の項が追加され、一層、迫力を増した内容になっている。
「諸君!・・・」では、ミソジニーを語るとき、最近日本で頻発するセクハラ関連事件を看過するわけにはいかないというのが著者の姿勢だ。
ハリウッドで起こったセクハラの「#Me Too」運動は、日本でもささやかではあるが引き継いでいる。その実例を列記し、もちろんミソジニーが根底にあるとする。
「こじらせ女子・・・」では、『女子をこじらせて』(雨宮まみ著 2015年文庫化)についての紹介が主な内容になっている。AVを通して理解に難渋する女性のミソジニーが語られている。

巻末にある自らのミソジニー体験を踏まえた中島京子の解説文が、本書を一段と引き立たせている。
本書は、ミソジニー、セクハラ、フェミニスト関連の、間違いなく教科書である。→人気ブログランキング

女の機嫌の直し方/黒川伊保子/集英社インターナショナル新書/2017年

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