『世界のすべての七月』 ティム・オブライエン

1960年代後半のベトナム反戦運動に国が揺れる時代に、大学生活を送った若者たちは、今や50代前半になっている。ダートン・ホール大学1969年卒業生の30年目の同窓会が、2000年7月にミネアポリスにある母校の体育館で開かれている。翌日は物故者の追悼式が予定されている。実は幹事がうっかりしていて30年ではなく31年目になってしまった。アポロ11号が月に向かっている暑い7月の頃だ。
登場人物は、男3女7名、そして亡くなった男女1名ずつと、それぞれの人物に関わりのあった人たち、いわゆるベビーブーマーである。

ロバート・アルトマンの映画のような群像劇の手法で物語は進行する。つまり、複数の人物が同じ時間に別のシークエンスで行動する。時間軸は過去と現在を行ったり来たりして、卒業生たちの人生の転機となったエピソードが描かれる。形としては連作短編になっている。

世界のすべての七月 (文春文庫)
世界のすべての七月
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ティム オブライエン/村上春樹
文春文庫
2009年 ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎

50歳を過ぎた男女が、久しぶりの再会に心躍らせ、呑んだくれて、歌ったり踊ったり、話し込んだり大声で笑ったり泣いたりする。女同士は男との出会いや別れを打ち明けあい、境遇を嘆いたりうらやんだり、目の前で夫が溺れて死んでしまった女は涙を流して悲嘆にくれたり、あるいは離婚や再婚が話題にのぼる。かつて振られた男は未練がましくねちねちと振った女に絡んだり、ベトナム戦争で片脚を失った男がいたり、乳がんで片方の乳房をなくした女がいたりする。肥満で心臓病がいつ爆発するかわからない状況で呑んだくれ踊ろうとする男は、果たせなかった性的関係をまたしても成就できなかったり、その対象の女は相変わらず男たちに笑顔を振りまいてそこらじゅうを飛び回っている。LSDでラリった者や、あるいは隠れてセックスをするカップルを、周りは見て見ぬ振りをする。

なにしろ50歳を超えて人生の黄昏にさしかかっているのだ。若いとはいえず、さりとて年寄りともいえない卒業生たちの「いったい私たちに何が起こったんだ」みたいなことばかりをぐだぐだと言っている往生際の悪さは、同世代として共感できる。

二日酔いの男女が参列する追悼式では不規則な言動がまかりとおった。
町のバーでは、鼻に銀をつけた青白い若い男から、「60年代のめそめそしたゴミみたいな音楽」をジュークボックスでかけまくるのはやめてくれないかと苦情を言われたりした。
そして呑んだくれた2日間もいよいよ別れの時が訪れようとしている。
最後は、卒業生たちが、三三五五、車であるいはジェット機であるいは歩いて日常に戻っていく姿が、スライドショーのように描き出される。→人気ブログランキング

『翼を持つ少女 BISビブリオバトル部 上下』 山本弘

ビブリオバトルをテーマにしたライトノベル。
ビブリオバトルとは、本について意見を戦わせたり語り合うことが、新たな読書に向かわせるという考えのもとに、立命館大学の谷口忠大によって考案された知的書評合戦のこと。

【ビフリオバトルの公式ルール】ビブリオバトル普及委員会
知的書評合戦ビブリオバトル公式サイト
1.発表参加者が読んで面白いと思った本を持って集まる。
2.順番に一人5分間で本を紹介する。
3.それぞれの発表の後に参加者全員でその発表に関するディスカッションを2〜3分行う。
4.全ての発表が終了した後に、「どの本が一番読みたくなったか」を基準とした投票を参加者全員で行い、最多得票を集めた本を『チャンプ本』とする。

本書の主人公、伏木空(ふしきそら)は、中学生の時に、好きな男子にラブレターを送ったことが原因で、いじめられるようになった。
いじめを知っている生徒がいない高校へ進学したかった空は、公立高校へは進学せず、私立の美心国際学園(BIS)に入学した。BISは制服がなく髪の色も自由、おおらかな校風なのだ。
空は無類のSF好き。そんな空が同じクラスの埋火武人(うずめびたけと)に誘われて入部したのが、ビブリオバトル(BB)部である。
女性のSF好きは珍しいが、空のSFに対する知識も情熱も生半可なものではない。

武人は埋火酒造の御曹司で、武人の祖父の蔵書にはSF小説が多数あった。武人はSFにはまったく興味がなくノンフィクションしか読まなかったが、空の影響でSFに目を向けるようになる。

BISビブリオバトル部1 翼を持つ少女 上 (創元SF文庫)
創元SF文庫
2016年
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BISビブリオバトル部1 翼を持つ少女 下 (創元SF文庫)
創元SF文庫
2016年
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ビブリオバトルのデビュー戦で散々な結果に終わっった空が悔やんでいると、武人は空を諭した。
「ビブリオバトルで選ばれるのはあくまでチャンプ本であって、チャンピオンではない。チャンプの栄誉はその発表者ではなく本に与えられる。発表者の良し悪しを競っているわけじゃない。あくまで、本が主役なのだ」と。
というのは建前で、チャンプ本をプレゼンテーションした選手は、当然、勝利の栄誉に浴する。

BIS高のBB部の色の黒い混血の女子部員が、双子沢高校社会学研究会の部員から、人種差別的な言葉を投げかけられた。この事件が発端となって、両校はビブリオバトルで戦うことになった。

空は出場しない予定だったが、やる気満々で自分から出場を志願した。空が取り上げた本は、本書で何度か取り上げられるエドモンド・ハミルトンの『フェッセンデンの宇宙』。フェッセンデン博士が実験室内に宇宙を作り出すSFの短篇である。

本書にはビブリオバトルのほかにもうひとつのテーマがあり、それは人種差別である。
関東大震災時の朝鮮人の虐殺について語られ、この事件にこだわりすぎるきらいがある。また、性的な描写も掲載され話題にのぼった『アンネの日記 増補版』がバトル本に取り上げられている。
なにしろ、144冊の本について触れられていて、本好きには見過ごせない内容になっている。本好きというのは、本のタイトルが並んでいるだけで、その本を読んでみたいと思うもなのだ。→人気ブログランキング

翼を持つ少女
『世界が終わる前に』
『幽霊なんて怖くない』
『君の知らない方程式』

『ネバーホーム』 レアード・ハンド

農場で暮らす主婦コンスタンスは、夫バーソロミューの代わりに北軍の兵士として南北戦争(1861〜1865年)に出征した。理由は夫の体が弱かったから。
女性が南北戦争に参加した記録はいくつもあり、そうした女性の手記を著者は片っ端から目を通したという。
コンスタンスが語るかたちで描かれていて、文法的には頼りないところもあるが、そのたどたどしさによって、かえって主人公の不安な胸の内や出口の見えない戦争の理不尽さが伝わってくるようだ。男の集団の中で、女であることを見破られてはならない、あるいは弱みは見せられないという状況が、特異な視点を生みだしている。

ネバーホーム
ネバーホーム
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レアード・ハンド/柴田元幸
朝日新聞出版 2017年12月
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コンスタンスはダーク郡出身のアッシュ・トムソンと名乗った。アッシュは射撃の腕前が優れていて、腕ずもうでは簡単に相手をやっつけた。

野営地の近くの沼の水を飲んで腹痛に見舞われ、10分に1回しゃがみこまなければならなくなったときに、バーソロミューから農場の土を送ってもらい、それを食べて治した。軍服を着た写真を送ったり、近況を報告したり、何度も書簡で夫とのやりとりをする余裕はある。
女性とバレはしまいかと気がかりで、2度にわたって同性に見破られはしたが、主人公の主観では男たちにはばれていない。
ある朝アッシュは人を撃った。まわりの男が撃たれて死んでいくことにも遭遇した。

戦闘で腕を負傷し腕がどんどん腫れた。意識が朦朧としたなか、もと看護婦の家にたどり着き。3週間たつと腕が使えるようになった。看護婦は一緒に暮らさないかと持ちかけた。そのレスビアン女の執拗な要求に従わなかったばかりにスパイに仕立て上げられ、瘋癲院での悲惨な生活を強いられた。

戦争は泥沼化し終わる気配がなかったので、コンスタンスは故郷に帰ることにした。
帰途の途中で、将軍のいとこが埋葬されている屋敷を尋ねると、品のいい女主人が手厚くもてなしてくれた。女主人の弟である中尉の手紙を見せてくれた。
「わが隊にには男に変装した若い女がいて、勇敢に戦い功績をあげていたが、女と発覚すると、いじめを受けた。その女がお前に会いに行く気がする」と書いてある。コンスタンスは高く評価してくれていたことに感激する。

郷里の牧場は無残に荒れ果て、ゴロツキの男たちがバーソロミューを顎で使っていた。コンスタンスはゴロツキどもを銃で撃とうと作戦をたてる。 →人気ブログランキング

『逆襲の地平線』 逢坂剛

前作『アリゾナ無宿』で結成された3人組の賞金稼ぎが、コマンチ族にさらわれた少女を奪還しようとする。3人組の賞金稼ぎとは、早打ちのストーン、ハコダテから来たサムライのサグワロ、17歳の娘ジェニファの3人である。今回は血気盛んな若いキッドが加わった。
ジェニファが一人称で語る形になっていて、角のとれた抑え気味なトーンでストーリーが展開される。

逆襲の地平線 (中公文庫)
逆襲の地平線
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逢坂 剛
中公文庫 2016年
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4人は、アリゾナ準州の第一の都市トゥサンで、牧場主のミセス・マキンリーに雇われる。
10年前に、マキンリー一家を乗せた幌馬車隊がコマンチのゲリラに襲われ、4歳の娘エミリがさらわれた。10日前に、コマンチ族の中に白人の娘がいるのを見たという情報がもたらされたのだ。
エミリと思われるこの白人娘を奪還するのが、このたびのミッションである。報酬は1万ドル。そのほか必要経費、成功報酬などが支払われるという破格なもの。

ミセス・マキンリーは金髪で飛び抜けた美貌の持ち主である。殺された夫の後を継いで広大な牧場を運営している。隣の牧場主トライスターは、ミセス・マキンリーの牧場を手に入れようと、あれこれ仕掛けてくる。ミセス・マキンリーの夫を殺したのは、トライスターの手下だった。

賞金稼ぎのチームにジェニファがいる理由を説明しなくてはならない。
南北戦争が終わった翌年(1865年)、ケンタッキーのジェニファの農場が南軍のゲリラに襲われ、ジェニファとスー族の子守のペチュカ以外は殺された。ジェニファはペチュカとともにワイオミングでスー族と4年間暮らした。10歳のとき、今度は騎兵隊の襲撃を受けスー族の集落は全滅した。ジェニファは斥候をしていたラクスマンに引き取られた。
ジェニファはラクスマンとアリゾナ準州の川のほとりで暮らしていた。賞金がかけられていた強盗殺人犯のラクスママンは、8ヶ月前にストーンに殺された。その時点からジェニファはストーンと行動を共にするようになった。

スー族の言葉を理解し話せる、あるいは手話ができるという能力は、賞金稼ぎチームにとってかけがえのない武器なのだ。

厄介なことにトライスターたちもコマンチ族を追っている。トライスターはエミリを奪還した暁には、賞金もさることながら、ミセス・マキンリーに結婚を迫り、牧場をも手に入れようとの思惑があるのだ。
エミリの行方を捜索して中央アメリカの乾燥地帯を北上するストーンたちは、コマンチ族と戦うだけでなく、妨害行動に出てくるトライスター一味も相手にしなければならない。→人気ブログランキング

アリゾナ無宿
逆襲の地平線
果てしなき追跡

『ならずものがやってくる』 ジェニファー・イーガン

元パンク・ロッカーの音楽プロデューサー・ベニーと、その部下である35歳のサーシャという盗癖のある女性が登場し物語がはじまる。ふたりに関わる多くの人たちに焦点があたる12章からなっていて、すべての章に別の主人公が当てられている群像劇である。
およそ50年という時間軸のなかを行きつ戻りつしながら、ニューヨーク、サンフランシスコ、アフリカ、ナポリと舞台が変わる。そして、視点も三人称だったり、一人称だったり、あえて二人称だったりして、さらに、サーシャの娘がパワーポイントのスライドだけで書いた日記の章や、ページを上下に分けて下に長い注釈を載せた章のように実験的な試みもなされている。音楽を通して見える現代社会の人間模様が多彩な切り口で語られている。
横溢せんばかりの著者の才能が感じられる短篇集である。

ならずものがやってくる (ハヤカワepi文庫)
ジェニファー・イーガン/谷崎由依
ハヤカワepi文庫  2015年✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
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べニーは、高校生の頃、モヒカン・ヘアーのパンク・ロッかーだった。その後、辣腕の音楽プロデューサーになっている。ベニーの下で働くサーシャは、盗癖があり心理治療を受けている。今は、ベニーには息子がいて、妻はベニーの浮気の気配を察知している。
17歳の頃家出してナポリにたどり着いたサーシャは、買春して泥棒して生き延びてきた。今は、外科系の医師と結婚してふたりの子供の母親として暮らしている。
若い頃ベニーの面倒をみていたルーは、いざこざを生み出し続ける種類の男であり、幾度かの結婚に失敗し、今は2度目の脳卒中を患い病床に臥している。

波乱の日々を送った者にとって、時間はならずものだという。それがタイトルの由来だ。
本書は、2011年のピューリッツアー賞を受賞している。→人気ブログランキング

『10の奇妙な話』 ミック・ジャクソン

切ないが変でユーモアのある独特の味がある短篇が10篇収録されている。つい引き込まれてしまう現実には起こりがたいことが違和感なく語られて余韻が残る。また装画の出来が鋭い。描かれた人物はそれぞれの物語の切なさとユーモアを背負っている。

10の奇妙な話
10の奇妙な話
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ミック・ジャクソン/ 田内志文
東京創元社 2016年
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「ピアース姉妹」 海で遭難した青年を助けた姉妹は青年に容姿を酷評された。ふたりはに男がいると楽しいことに気づいた。
「眠れる少年」 少年が10年眠り続けた結果起こること。
「地下をゆく舟」 定年男が地下室で舟を完成させるが、入り口から出せないことに気づいた。
「蝶の修理屋」 時計の修理器具のような蝶の修理器具を見つけた話。
「隠者求む」 裕福な夫婦が地所の洞窟に隠者を住まわせる広告を地方紙に出した。住まわせた隠者を制御できなくなる。
「宇宙人にさらわれた」 宇宙船に音楽の先生をさらわれた子供たちは、先生を取り戻そうと、市庁舎に押しかける。
「骨集めの娘」 話をなんでも聞いてくれた祖父が死んだ。少女はそれまで掘って集めた骨を穴に埋めた。
「もはや跡形もなく」 母親と喧嘩した男の子が家出し森の中で暮らす。
「川を渡る」 葬儀屋一家と死体が入った棺を乗せた車が親族とはぐれてしまい、舟で葬儀場にたどり着くようにした。
「ボタン泥棒」 馬にボタンを食いちぎられた少女がボタンを取り戻そうとする話。→人気ブログランキング

『人類の未来 AI、経済、民主主義』 吉成真由美(インタビューアー)

対談に登場するのは、ノーム・チョムスキー、レイ・カーツワイル、マーティン・ウルフ、ビャルケ・インゲルス、フリーマン・ダイソンという顔ぶれ。世界をグローバルな観点から見つめ直すための必読の書。なお吉成真由美の夫はノーベル賞受賞者の利根川進。

人類の未来―AI、経済、民主主義 (NHK出版新書 513)
ノーム・チョムスキー レイ・カーツワイル マーティン・ウルフ ビャルケ・インゲルス フリーマン・ダイソン
NHK出版新書  2017年4月
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【第1章 トランプ政権と民主主義のゆくえ】ノーム・チョムスキー(アメリカの哲学者、言語学者、1928年)

トランプ政権に対しての評価はただ一言、予測不能だということ。
アメリカは国内由来の理由によって後退している。鉄道網が前時代のものである。金融セクターは伸びているが、経済にとって貢献してるか疑問、おそらくほぼ有害となっているだろうという。
健康保険は非効率的で、他の先進国に比べてコストが一人当り2倍になっている。この無駄を是正することでアメリカの赤字は解決すると指摘する。

ちなみに、シンギュラリティは空想、単なるファンタジー。〈われわれは他の生物のことを考える場合は、非常に理性的だけれども、人間のこととなると突如として非理性的になる傾向がある。〉と批判する。

今や「人新世(Anthropocene)」の時代、すなわち人間が地球環境に影響を及ぼす時代。人類が地球を滅ぼす力を備えた時代である。

【第2章 シンギュラリティは本当に近いのか?】レイ・カールワイツ(アメリカの発明家、未来学者、グーグルAI部門の責任者、1948年)

シンギュラリティ(技術的特異点)とは、人工知能が人間の知性を超える時点をさす。
カーツワイルが最も強調するのは、「指数関数的な成長の力」である。つまり想像をはるかに超えるスピードで、情報テクノロジーの分野は進歩するということ。

カーツワイルの予測は、2030年頃には、スマートフォン程度のコンピュータ・デバイスは、血球サイズになり、血液中に入り、免疫システムを補助するようになる。医療用のナノロボットがすべての病気と老化を治療する。これらは基本的にはワクチンと同じ働きをする。などの大胆な予測をしている。
インタビューアーは、「細胞一つ、ミトコンドリア一つ光合成も再現されていない」と突っ込む。

人間はポストヒューマンと呼ばれる存在になる。では、具体的にどのようになるのか。『オリジン』(ダン・ブラウン著)に登場する未来学者カーシュは、カーツワイルと進化生物学者のドーキンスが一緒になったような人物である。カーシュの演説に具体的なポストヒューマン像が語られている。
〈「われわれは混合種になろうとしているーバイオロジーとテクノロジーの融合です。いま体外にあるツールースマートフォン、補聴器、読書用眼鏡、たいがいの医薬品ーと同じものが、50年後には体内に組み込まれ、われわれはもはやホモサピエンスとは呼べない存在になっているでしょう」〉

【第3章 グローバリゼーションと世界経済のゆくえ】マーティン・ウルフ(英国の経済ジャーナリスト、1946年)

中国はこれから5年後政治システムがどうなっているかわからない。
自由にトレードできる確信が持てなければ、交換不能通貨ということになる。これでは世界通貨としてのスタートラインにすら立てない。
ユーロはこれから5年後存続しているかわからない。米ドルは少なくとも存続している。米ドルが世界通貨としてしばらく使われるだろう。

日本の借金体質はいつまで続くのかという問いに対して、国民が負債を負う意欲がある限り続けられる。20年くらいは続くだろう。
国は破産することがあるかについては、定義によるが、破産を免れるためには領土を売却すればいいとする。
日本企業は巨大な余剰資金貯蓄庫であ。過剰債務の返済が終わったあとも、慢性的に内部留保を続けている。その割合はGDPの8〜10%という。日本の政府の課題はいかにしてこの余剰金を取り出すかということ。その手段として、内部留保を吸い上げる、法人税をあげる。

EUの通貨統合は間違いだった。通貨統合したのならもっと政治的に連携を深めるべきだ。お金と移民という問題がヨーロッパの結束を脆くし、繁栄を妨げヨーロッパ全体を弱くすることになった。
ユーロ圏では、政治的な統合なしに通貨の統合を行ったことが、民主主義を蝕む結果になっているように見える。金が民主的なチェック&バランスの規制を受けないからである。権力は欧州トロイカの執行部に集中しているのに、かれらは選挙で選ばれていないため、その決定に責任をとる必要もない。

【第4章  都市とライフスタイルのゆくえ】ビャルケ・インゲルス(デンマークの建築家、1974年)

「コペンハーゲン・ハーバー・バス」の発想は、港を海水浴できるところ変える
ゴミからエネルギーを生み出すテクノロジーはとてもクリーンなものとなってきてる。
建築は人間を感動させ、意識を変える。
制約こそクリエティビティの基である。

【第5章 気候変動モデルの懐疑論】フリーマン・ダイソン(数学者、理論物理学者、宇宙物理学者、1923年、アインシュタインの後継者と呼ばれる)

気候問題にあまりにも多くの時間と労力が使われすぎた。大気中の炭素削減のために巨額の金を使うべきではない。
気候科学は宗教の様相を呈してきている。気候変動を信じない者は、いかなる研究もできないようになってきている。(アイヴァー・ジェーバー)
科学的コミュニティのコンセンサスは変わる。1930年代、優生学が科学コミュニティのコンセンサスだった。気候変動に関しても同じ種類の疑問が持たれている。
宗教と科学については、人びとは事実を確認するより、物語を信じる傾向がある。
その他教育、いじめ、神童、について語る。→人気ブログランキング

『オリジン 上下』 ダン・ブラウン

ラングドン・シリーズの第5弾。本書のテーマは「宗教の終焉」。
本書の冒頭には、〈この小説に登場する芸術作品、建築物、場所、科学、宗教団体は、すべて現実のものである。〉と記されていて、舞台となるグッゲンハイム美術館、サグラダ・ファミリア教会の詳細な描写は、本書の魅力のひとつである。

スペインの北、ビルバオにあるグッゲンハイム美術館にVIPを集め、天才的な頭脳をもち世界をリードしてきた未来学者のエドモンド・カーシュが、「人類の来し方と行く末」についての新説を発表しようとしている。カーシュは無神論者として有名である。

オリジン 上 (角川書店単行本)
オリジン 上
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ダン・ブラウン/越前敏弥
2018年2月
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オリジン 下 (角川書店単行本)
オリジン 下
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KADOKAWA / 角川書店
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カーシュから前もって新説を聞かされた、ユダヤ教のラビ、イスラム教の博士、カソリック教会のバルデスピーノ司教は、宗教界ひいては世界を混乱に陥れることを恐れている。発表は1か月後と聞かされていたが、それが早められたのだ。ラビは自殺し、博士も死んでしまう。

カーシュの恩師であるハーヴァード大学教授で宗教象徴学者のロバート・ラングドンや、美術館の館長でありスペイン王子の婚約者であるアンブラ・ビダル、そして多くの聴衆が見守るなか、カーシュは講演をはじめる。これから本題に入ろうとしたその時、カーシュは銃撃され殺される。
近くにいたグランドンとビダルが犯人と疑われ、警察に追われる身となった。ふたりの逃亡を助けるのは、カーシュが開発したAIのウィンストンである。
パルマール教会の宰輔からカーシュの殺害を命じられたのは、スペインの退役海軍提督アビラだった。

講演の内容が世界に流れることを阻止しようとする勢力によって、カーシュは殺害されたのだ。グランドンは、講演のDVDにアクセスするパスワードがサグラダ・ファミリアの地下室にある書物に書かれている47文字と突き止めた。
スペイン警察や暗殺者アビラの追跡を終結させるには、カーシュのビデオを公開すればいいのだ。
この後、二重三重のどんでん返しが仕掛けられている。

新説とは一体どういうものなのか。
抽象的には、宗教の時代は終わりを向かえつつあり科学の時代が幕を開けようとしている、というもの。言い方を変えれば、神ではなく物理で生命が誕生し、将来人間はポストヒューマンとなる。つまり、進化論とレイモンド・カーツワイルの言うシンギュラリティを受け入れることである。→人気ブログランキング

『アリゾナ無宿』逢坂 剛

16歳の娘の目を通して描かれているので、アリゾナの荒野が舞台の賞金稼ぎの話であるのに、汗臭くなく、埃っぽくなく、ギトギトしていない。適度にデオドラント化された和製西部劇である。そのオルタナティブな感じがたまらなくいい。

主人公の賞金稼ぎ3人組はどのようにして誕生したのか?
16歳のジェニファは南北戦争(1861〜1865年)が終わったあと、南軍のゲリラに一家が襲われてひとりだけ生き残り、インディアンのスー族に育てられた。そのあとラクスマンという怪しい男に引き取られてカウガールとして牧場の仕事を続けてきた。
今日は半月に1度の買い出しで、ベイスンの街に、髭ぼうぼうのラクスマンとともに来ている。

アリゾナ無宿 (中公文庫)
アリゾナ無宿
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逢坂 剛
中公文庫
2016年 ✴✳✳✳✳︎
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酒場でふたりのカウボーイに絡まれた黒服の男は、威嚇の銃弾にびくりともしなかった。
ふたりが保安官を殴り倒して黒服の男を撃とうとしたところで、ステットソン帽に鹿革服の男が制止しようとしたのもつかの間、黒服の男は、カウボーイのひとりの眼を吹き矢で刺し、もうひとりは銃を持つ親指の腱を刀で切った。あっという間の早業だった。

人見知りせずおまけに好奇心旺盛なジェニファは、レストランで黒服と鹿革服の男と昼食を共にすることになった。黒服の男はザグワロ(サボテンの名称)と名乗り、記憶を喪失していて、日本のハコダテからやってきたという。一方、鹿革服の男は賞金稼ぎ(バウンディ・ハンター)で、トム・B・ストーン(TOMBSTONE)と名乗った。つまり墓石だ。

ストーンはジェニファをラクスマンの農場に送っていった。
ストーンがお尋ね者のローガンについて訊ねようとすると、ラクスマンは農場から慌てて出て行こうとした。ストーンは、ローガンなら頬に星印の傷があるはずだと、ラクスマンに銃を突きつけて髭を剃らせたが、星印の傷はなかった。しかし、髭剃りに使った象牙のカミソリがローガンの物で、ラクスマンはローガンを殺し3万ドルの金を奪った強盗殺人犯だった。ストーンはラクスマンを射殺した。

自由の身となったジェニファーだったが、天涯孤独となってしまいストーンが拒否するのもお構いなしにストーンに同行すると言いだした。ジェニファは賞金稼ぎの見習いとなった。
こうして、ストーン、ザグワロ、ジェニファの賞金稼ぎのチームが誕生した。→人気ブログランキング

アリゾナ無宿
逆襲の地平線
果てしなき追跡

『ミスター・マジェスティック』エルモア・レナード

『オンブレ』(エルモア・レナード著)の訳者解説のなかで、村上春樹が本書を勧めていた。
マジェスティックという名前は、日本語ならば三文字の漢字で表される由緒正しい公家の名前に相当するのではなかろうか。そんなマジェスティックはカリフォルニアのメロン生産者で、ガソリンを3リットルしか入れないくらい、金回りが悪い。さぞや、ショボくれたオヤジかと思いきや、ページが進むうちにそれが見込み違いだったことがわかる。ベトナム戦争も刑務所暮らしも経験している怖いもの知らずの男だ。

ミスター・マジェスティック (文春文庫)
エルモア・レナード/高見浩
文春文庫 1994年 ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
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メロン収穫期の農場ではメロン摘みの労働者が大勢必要である。幸い、マジェスティックは、渡り労働者のナンシーたちを雇うことができた。
マジェスティックが警察に検挙されたのは、飲んだくれの白人たちを売り込もうとする悪徳手配師コスパを銃で脅した容疑だという。拘置所には、これまでに7人を殺していて一度も有罪になったことのない黒人の殺し屋レンダがいた。

裁判所への護送途中に、マジェスティックたちを乗せたバスをレンダの手下が襲い、レンダとマジェスティックは逃走した。撃たれた保安官補のポケットから手に入れた鍵でマジェスティックは手錠を外し、手錠をつけたままのレンダを警察に引き渡そうとした。
そこへ、レンダの情婦・白人のワイリーがジャガーで現れ、マジェスティックはワイリーとレンダを銃で牽制しなから警察署に連れて行こうとしたが、逃げられてしまった。

プライドが傷ついたレンダは、手下とともにマジェスティックの命を奪おうと、家とメロン集積所を囲んでいる。警察は今度こそレンダをとらえて有罪にしようと、躍起になって遠まきに監視する。一方、迎え撃つマジェスティックはナンシーと家の中で息を潜めている。

先手の攻撃を仕掛けようと、ナンシーが運転するピックアップの荷台にマジェスティックを乗せて敷地から飛び出す。まんまとレンダたちを山岳地帯に誘い込んだマジェスティックは、レンダの手下を次々に射殺していく。鹿撃ちで山岳地帯の地形は頭の中に入っているのだ。
レンダが逃げ帰った別荘に、ピックアップで乗り付ける。そして、銃撃戦がはじまる。
カリフォルニアの陽光の中で、個性あふれる登場人物たちが躍動する極上のノワール・サスペンス。→人気ブログランキング

オンブレ/新潮文庫/2018年3月
ラブラバ/ハヤカワ・ミステリ/2017年
ラム・パンチ/角川文庫/1998年(『ジャッキー・ブラウン』DVD)
ミスター・マジェスティック/文春文庫/1994年

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