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2022年4月13日 (水)

店屋物屋

最近あまり使われなくなった言葉に店屋物がある。古い刑事物のTVドラマや映画の取り調べ室で、刑事が容疑者にタバコを勧め、そのあとカツ丼を目の前において、「食うか?」と容疑者をほろりとさせ自供にもっていくお馴染みのシーンで、店屋物は活躍していた。

店屋物屋のメニューには、カツ丼や親子丼などの丼物のほかに、そばやうどんが各種あり、さらにカレーライスがあり、驚くことにラーメンやチャーシュウメンまであり、冷やし中華も夏季限定で出すくらい、メニューはバリエーションに富んでいる。豚肉の卵とじ丼に明治を彷彿とさせる開化丼と名づけている店もある。ほとんどは家族ないしは同族経営であり、出前もやっている。そば屋と名乗るところも多いが、そば屋のイメージは、そばと種物各種と丼物が数種くらいのメニューで、ラーメンを出すとなると、もはやそば屋ではなく店屋物屋と呼ぶのがふさわしいと思う。

日本の近代食堂史に大いなる足跡を残す店屋物屋だが、今や絶滅の危機に瀕している。理由は、商売敵である各ジャンルの外食チェーン店の急速な広がりと、店屋物屋自体の世代交代がうまくいかないことにある。忙しく労働時間が長く、将来どうなるかわからない店屋物屋を引き継ぐ若者がいないからだ。
ところが、今の世の中どこに落とし穴があるかわからない。隆盛を誇っていた外食チェーン店が、最近は従業員の確保がままならないことで、首都圏では軒並み営業時間の短縮や閉店に追い込まれる事態になっている。同族経営でこつこつやってきた店屋物屋に、再び光が当たる未来がくるかもしれない。

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