経済・政治・国際

2022年11月 2日 (水)

『灯台へ』『「推し」の科学 プロジェクト・サイエンスとは何か』『水道、再び公営化!』『マリアビートル』

10月29日(Sat)☀
ジュンク堂新潟店にて、以下の4冊を購入。

D41ac17381b1436a974e1921bf7a738e『灯台へ』
ヴァージニア・ウルフ/御輿哲也
岩波文庫
2004年 413頁

『やりなおし世界文学』で津村記久子は、ヴァージニア・のウルフ『灯台へ』は1行たりとも気が抜けないと言っている」
そんな手強い文体なのか。『ダロウェイ夫人』を読んだ限りでは、ヴァージニア・ウルフの文章は手強い文体だった。
本書の出だしはこうだ。
「明日晴れだったら」ラムジー夫人が言うと、6歳のジェームズは途方もないよろこびを感じた。灯台に行くということだ。窓の外の父親が「晴れにはならんだろう」と言った。ラムジー氏は母親を馬鹿にして見せたり、自分の自己判断の正確さに自己満足を感じている。ラムジー氏は厳格である。
「何だか晴れるような気がするわ」とラムジー夫人が言う。
灯台守の孤独を紛らわすため、灯台守の息子への手編みのソックスを編んでいる。孤独な生活を送る灯台守には古い雑誌やタバコなどをプレゼントする予定だ。

3176529dd6ab4333b5a05cb50b06a778 『「推し」の科学 プロジェクト・サイエンスとは何か』
久保(川合)南海子
集英社新書
2022年8月 251頁

「推し」とはとても好きで熱心に応援している対象のこと。
プロジェクションは心の働きのひとつで、認知科学から提唱された最新の概念である。
人間の認知機構にまったく新しい解釈をあたえるのがプロジェクション・サイエンス、〈投射の科学〉と呼ばれるものだ。「推し」はプロジェクション・サイエンスの格好の研究対象である。
腐女子のBL妄想もプロジェクションである。
サピエンスが生き残れたのも、サピエンスにはプロジェクションの能力に優れていたからだという。
「推し」の科学 プロジェクション・サイエンスとは何か(人生はスラップスティック)

2d212d2c33e54f4f839e0b45ed8565d9 『水道、再び公営化!』
岸本聡子
集英社新
2020年 216頁

水道の再民営化は、マスコミで取り上げられていた。その原因は民間運営では料金が高騰し、管理が杜撰でトラブルが起きた。民営化は、投資家に売り飛ばすことだ。
本書は再公営化を掲げ杉並区長に当選した著者が、新自由主義の残した負の遺産からの脱却を目指す。

Ae6e529cd908444a9d64dbf40e471823 『マリアビートル』
伊阪幸太郎
角川文庫
2013年 591頁 

表紙のブラッドピットの画像、「ハリウッド映画化」に惹きつけられて、買った。
めくると、各章のタイトルがシャチハタ・ハンコである。これは伊坂幸太郎の特許だ。
前に、伊阪のシャチハタ・ハンコの本を読んだことがあるが、しっくりこなかったので買うのをやめようと思った。が、魔が刺した。この本は多分読まないが、カバー裏の紹介文を紹介させていただく。
〈幼い息子の仇討ちを企てる、酒浸りの元殺し屋「木村」。優等生面の裏に悪魔のような心を隠し持つ中学生の「王子」。闇会社の大物から密命を受けた、腕利きの二人組「蜜柑」と「檸檬」。とにかく運が悪く、気弱な殺し屋「天道虫」。失踪する東北新幹線の車内で狙う者と狙われる者が交錯するー。小説は、ついにここまでやってきた。映画やマンガ、あらゆるジャンルのエンターテイメントを追い抜く娯楽小説の到達点!〉→人気ブログランキング
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2019年6月 3日 (月)

『エミール』『米中メガテック競争戦略』

5月28日(TUE)曇 雨 くまざわ書店

エミール
買うのをためらうくらいエロ漫画様の表紙だ。システィーナ礼拝堂の天井画のようにミケランジェロ的いびつな描写である。例えば右上肢が長く、左下腿は太く長く、足趾には異様なヴォリュームがある。
最後まで読めば表紙の意図がわかるかもしれない。
「自然に帰れ」というキャッチフレーズの自然と触れ合うことを尊ぶ教育論を、ジャン・ジャック・ルソーが小説仕立てにした。
教育に携わる人は読むべきだとされている本である。
固い内容だからせめて表紙だけは羽目をはずさせてくれという意図だった。

エミール (まんが学術文庫)
伊佐 義勇
講談社
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『米中メガテック競争戦略』田中道昭/日本経済新聞車 2019年4月
アメリカのGAFAと中国のBATHの対立構図を解説する。
アメリカ側は、グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン。
対する中国は、バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイ。
いま行われている貿易戦争のバックグラウンドでの対立が示されている。

GAFA×BATH 米中メガテックの競争戦略
田中 道昭
日本経済新聞出版社
売り上げランキング: 592

2019年5月30日 (木)

『万葉集から古代を読み解く』『がん免疫療法とは何か』『ミゲル・ストリート』『ポピュリズムとは何か』

5月25日(SAN)☀ ジュンク堂

万葉集から古代を読み解く』上野誠 ちくま新書 2017年
「令和」という年号が『万葉集』から生まれたということで、『万葉集』関連本は脚光を浴びている。本書の著者がテレビに出ていたが、エンターテイメント性があるおしゃべりな人物だった。内容は、「令和」に絡んで『万葉集』の魅力を語ったものだった。
本書は、2017年の発刊で「令和」が決まってから書かれたものでないというところがいい。『万葉集』を扱った新書として、内容がざっくばらんそうだ。なんてったって、出だしは話題のアニメ映画『君の名は』だ。
ごく最近、著者は『令和』というそのままのタイトルの万葉集の解説本を出した。そっちがなにかと馴染めそうだから、それも買うことにしよう。著者のテレビへの露出も多くなるだろうから、『令和』はベストセラーにのし上がるな。

と思ったら、勘違いだった。2014年発刊の『万葉の人びと』という新書に、「令和」と大きく書いたカバーを被せた、いわば改元に便乗して厚化粧したものだった。詐欺すれすれ。

万葉集から古代を読みとく (ちくま新書1254)
上野 誠
筑摩書房
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がん免疫療法とは何か』本庶 佑 岩波新書 2019年4月
著者は、いわゆる「免疫チェックポイント阻害剤」の開発の基礎となる研究で、2018年のノーベル賞医学生理学賞を獲得した。免疫機能にはアクセルとブレーキを促すメカニズムがあり、がんは免疫細胞の活動にブレーキがかかっているから増殖するにであり、ブレーキの機能を解除することにより、がん細胞を攻撃するリンパ球の活動性を賦活するという機序。(→レヴューはこちら

がん免疫療法とは何か (岩波新書)
本庶 佑
岩波書店
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ミゲル・ストリート』V・S ナイポール 岩波文庫 2019年4月
ほのぼの漫画を読んでいるような感覚に浸れる。
舞台はイギリスの植民地だったトリニダードトバコ、1940年代だ。
本書が処女作の作者はノーベル文学賞を受賞(2001年)している。
朴訥で寡黙な文章で個性的な世界観が形成されている。饒舌さに飽きたときはこれだ。

ミゲル・ストリート (岩波文庫)
V.S. ナイポール
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ポピュリズムとは何か』水島治郎 中公新書 2016年
ポピュリズムは「大衆迎合主義」と訳すものだと思っていたが、そう単純ではないらしい。第一の定義は、固定的な支持基盤を超え、幅広く国民に直接訴える政治スタイルをポピュリズムととらえる。
第二の定義は、人民の立場から既成政治やエリートを批判する政治運動。上のエリートたちを下から批判する。本書では後者の定義を採ることにしている。
エリートと人民の対立とする政治運動をポピュリズムとする。
現在、世界各地を揺るがしているポピュリズムは、エリート批判を中心とする下からの運動に支えられてる。

ポピュリズムとは何か - 民主主義の敵か、改革の希望か (中公新書)
水島 治郎
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