古典

2022年10月26日 (水)

『日本インテリジェンス史 旧日本軍から公安、内調、NSCまで』『京都の食文化 歴史と風土が育んだ「美味しい街」』『ガリバー旅行記』

10月23日(Sun)☀☔☁
ジュンク堂新潟店。

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日本インテリジェンス史 旧日本軍から公安、内調、NSCまで
小谷賢 
中公新書 
2022年8月 279頁

本書の問いは2つ。1)日本でインテリジェンスが発展しなかったのはなぜか。2)戦前の縦割りの情報運用がそのまま受け継がれたのか、それとも改善されたのか。
1)の答えは、米国は日本が自前の情報機関を持つことを快く思わなかったからだ。
1983年サハリン沖で、大韓航空機がレーダーから姿を消した。ソ連の迎撃機がミサイルで撃ち落としたのだ。その命令を自衛隊が傍受した。lところが、しらを切るソ連に、米国はその情報を安保理で突き付けたのである。ソ連は交信の周波数を変えてしまい、日本の傍受部隊は大打撃を受けた。
公安・警察の出身である後藤田正晴官房長官は米国の下請けに甘んじてきた日本の諜報機関の実情に無念を感じたという。

インテリジェンスとは国家が熾烈な競争を生き抜くための情報をいう。

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京都の食文化 歴史と風土が育んだ「美味しい街」
佐藤洋一郎
中公新書
2022年10月 246頁

京の食文化には3つの特徴があるという。
ひとつは、良質な水が地下水として利用できたこと。二つ目は街が盆地に立地し、山、川の食材が入手しやすかったこと。三つ目はその盆地が適当なサイズで周囲から隔離され、そこに暮らし、なりわいを営む人同士の関係が世代を超えて続いてきたこと。

Photo_20221026100302ガリバー旅行記
ジョナサン・スウィフト/柴田元幸
朝日新聞出版
2022年10月 491頁

夏目漱石やジョージ・オーウェルが名著と褒める。

アイルランドの風刺作家ジョナサン・スウィフトによる風刺小説。原版の内容が大衆の怒りを買うことを恐れた出版社により、初版は改変されて1726年に出版され、完全版は1735年に出版された。
『ガリバー旅行記』の日本語訳は本書のほかに、山田蘭訳(角川文庫)、平井正穂訳(岩波文庫)がある。

第一篇 リリパット国渡航記
リリパット国とブレフスキュ国は、およそ800メートルの海峡を挟んだ島国同士である。両国の国民は、身長が常人の1/12ほどの小人。
両国は、2世代にわたって交戦下にある。戦争の理由は、卵の殻の正しいむき方は、卵の大きな方から剥くか、それとも小さな方から剥くかについての意見の違いに由来する。
リリパット国に漂着したガリヴァーは、歓待を受けたことで、リリパット国を防衛する義務を感じ、ブレフスキュ国の艦隊を拿捕することで戦争を解決する。
リリパット国の皇帝は、ブレフスキュ国をリリパット国の属領にしようと目論むが、ガリヴァーはブレフスキュの国民を殺戮することを拒絶する。このことと、宮殿の火災を放尿で消し止めたことがリリパット国の皇帝の逆鱗に触れた。皇帝はガリヴァーの目を潰し、餓死か毒殺の刑罰をガリヴァーに科そうと企てる。これを知ったガリヴァーは、ブレフスキュ国に逃げ、転覆したボートが浜に打ち寄せられているのを見付けて、イギリスに帰国する。
この篇において、リリパット国とブレフスキュ国の戦争は、イングランド国教会とカトリック教徒の諍いを風刺している。「卵の大きな方」はカトリック教徒を表しており、「卵の小さな方」は国教徒を表している。

第二篇 ブロブディンナグ国渡航記 
第三篇 ラピュータ、バルニバービ、ラグナグ、グラブダブドリッブおよび日本への渡航記
ガリバーは空を飛んで日本にも姿を表している。
第四篇 フウイヌム国渡航記

2019年5月30日 (木)

『万葉集から古代を読み解く』『がん免疫療法とは何か』『ミゲル・ストリート』『ポピュリズムとは何か』

5月25日(SAN)☀ ジュンク堂

万葉集から古代を読み解く』上野誠 ちくま新書 2017年
「令和」という年号が『万葉集』から生まれたということで、『万葉集』関連本は脚光を浴びている。本書の著者がテレビに出ていたが、エンターテイメント性があるおしゃべりな人物だった。内容は、「令和」に絡んで『万葉集』の魅力を語ったものだった。
本書は、2017年の発刊で「令和」が決まってから書かれたものでないというところがいい。『万葉集』を扱った新書として、内容がざっくばらんそうだ。なんてったって、出だしは話題のアニメ映画『君の名は』だ。
ごく最近、著者は『令和』というそのままのタイトルの万葉集の解説本を出した。そっちがなにかと馴染めそうだから、それも買うことにしよう。著者のテレビへの露出も多くなるだろうから、『令和』はベストセラーにのし上がるな。

と思ったら、勘違いだった。2014年発刊の『万葉の人びと』という新書に、「令和」と大きく書いたカバーを被せた、いわば改元に便乗して厚化粧したものだった。詐欺すれすれ。

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がん免疫療法とは何か』本庶 佑 岩波新書 2019年4月
著者は、いわゆる「免疫チェックポイント阻害剤」の開発の基礎となる研究で、2018年のノーベル賞医学生理学賞を獲得した。免疫機能にはアクセルとブレーキを促すメカニズムがあり、がんは免疫細胞の活動にブレーキがかかっているから増殖するにであり、ブレーキの機能を解除することにより、がん細胞を攻撃するリンパ球の活動性を賦活するという機序。(→レヴューはこちら

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ミゲル・ストリート』V・S ナイポール 岩波文庫 2019年4月
ほのぼの漫画を読んでいるような感覚に浸れる。
舞台はイギリスの植民地だったトリニダードトバコ、1940年代だ。
本書が処女作の作者はノーベル文学賞を受賞(2001年)している。
朴訥で寡黙な文章で個性的な世界観が形成されている。饒舌さに飽きたときはこれだ。

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ポピュリズムとは何か』水島治郎 中公新書 2016年
ポピュリズムは「大衆迎合主義」と訳すものだと思っていたが、そう単純ではないらしい。第一の定義は、固定的な支持基盤を超え、幅広く国民に直接訴える政治スタイルをポピュリズムととらえる。
第二の定義は、人民の立場から既成政治やエリートを批判する政治運動。上のエリートたちを下から批判する。本書では後者の定義を採ることにしている。
エリートと人民の対立とする政治運動をポピュリズムとする。
現在、世界各地を揺るがしているポピュリズムは、エリート批判を中心とする下からの運動に支えられてる。

ポピュリズムとは何か - 民主主義の敵か、改革の希望か (中公新書)
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