翻訳

2022年9月22日 (木)

『脂肪の塊・テリエ館』『人間の絆・下』『殺しのライン』『娼婦の本棚』『地球流浪』

9月22日(Thu)☁
9月25日が日曜で、明日は「秋分の日」で休日だから今日は給料日だ。
昼食は、けやき通り三吉屋で、ラーメンと餃子の2連銃だった。
ジュンク堂に向かう。プラーカにつながる地下道の一部が工事中で閉鎖されていた。
つい5冊も買ってしまった。

5faaaba5b7804eb7949d9ead9cecf064『脂肪の塊・テリエ館』
モーパッサン/青柳瑞穂
新潮文庫
1951年 158頁

『やりなおし世界文学』のなかで、著者の津村記久子は、中学生のときに『脂肪の塊』を読んだという友人がいて、その言い方に険があるように感じられたという。そのことが頭から離れず、読むことを避けていたというエピソードを描いている。
そういえば『脂肪の塊』は娼婦の話と小耳に挟んでいたものの、つい読みそびれてしまっていたのとは事情が違うが、買ってみようと思った。→人生はスラップスティック『脂肪の塊・テリエ館』

0d3e2b9a4491429e9734ee7a86ac8722 『人間の絆下』
モーム/金原瑞人
新潮文庫
2021年 636頁

高校の英語の副読本におけるモーム作品に書かれていた「レストランでの勘定書が読める程度の照明」と「形のいい爪」の出典を突き止めようとしている。
『人間の絆』はモーム自身の半生を描いたような内容だというから、レストランの勘定書を手にする年は大人だ。ならば「上」ではなくて「下」だろう。それで「上」ではなくてまず「下」を読もうという魂胆なのだ。

512ac7d61aba4db9afd01bd9b9052e20 『殺しのライン』
アンソニー・ホロヴィッツ/山田蘭
創元社推理文庫
2022年 456頁

アンソニー・ホロヴィッツの作品は惰性で買っている。『ヨルガオ殺人事件』も『その裁きは死』も購入したが、積読状態にある。

0d053206515d40a5b45e73b7c2ea2f52『娼婦の本棚』
鈴木涼美
中公新書ラクレ
2022年 253頁

性風俗出身の若い女性がその経歴を売り物にして本を書くというのは、最近見かける。渋谷果歩の『AVについて女子が知っておくべきすべてのこと』(サイゾー/2020年)は、著者がAV女優として活動した経験をもとに描いたものである。著しく生々しい。
一方、本書は大学生時代にAVの仕事をして、そのあとキャバクラ嬢として働きながら東大の大学院を卒業して、フリーのライターになった著者の書評兼エッセイ集だ。だから、タイトルとカバーが衝撃的なだけだ。
ではなかった。→人生はスラップスティック『娼婦の本棚』

978ec5321dc94c97878a4181f33b3d20 『地球流浪』
劉慈欣/大森望・古市雅子
KADOKAWA
2022年 309頁

『三体』の著者の短・中篇SF集。評判は頗る高い。『介護老神』も同時に翻訳発売された。以下は裏表紙の紹介を抜粋したもの。
「流浪地球」地球の自転はストップして、人類は太陽系を脱出することにした。地球にエンジンをつけて悠久の旅が始まった。「ミクロ紀元」惑星探査に旅立った宇宙飛行士は先駆者と呼ばれた。帰還した先駆者が目にしたものは。「呑食者」世代宇宙船〈呑食者〉が、太陽系に現れた。国連で使者は人類に告げた。「呑食帝国は地球を捕食する。この未来は不可避だ。」「呪い5.0」コンピュタウイルス「呪い」はバージョンを変え進化を遂げた。酔っ払った作家がパラメータを書き換えた。「呪い」は瞬く間に市民の運命を変えてしまう。「中国太陽プロジェクト」高層ビルの窓ガラス清掃員と、固体物理学の博士号を持ちナノミラーフィルムを独自開発した男。2人を共に中国太陽プロジェクトに従事するが。「山」異星船の接近で突如隆起した海面。その高さ9200メートル。かつての登山家の男が水の山に挑むことを決意。頂上で異星船とコミュニケーションを始めるが。

2019年5月30日 (木)

『万葉集から古代を読み解く』『がん免疫療法とは何か』『ミゲル・ストリート』『ポピュリズムとは何か』

5月25日(SAN)☀ ジュンク堂

万葉集から古代を読み解く』上野誠 ちくま新書 2017年
「令和」という年号が『万葉集』から生まれたということで、『万葉集』関連本は脚光を浴びている。本書の著者がテレビに出ていたが、エンターテイメント性があるおしゃべりな人物だった。内容は、「令和」に絡んで『万葉集』の魅力を語ったものだった。
本書は、2017年の発刊で「令和」が決まってから書かれたものでないというところがいい。『万葉集』を扱った新書として、内容がざっくばらんそうだ。なんてったって、出だしは話題のアニメ映画『君の名は』だ。
ごく最近、著者は『令和』というそのままのタイトルの万葉集の解説本を出した。そっちがなにかと馴染めそうだから、それも買うことにしよう。著者のテレビへの露出も多くなるだろうから、『令和』はベストセラーにのし上がるな。

と思ったら、勘違いだった。2014年発刊の『万葉の人びと』という新書に、「令和」と大きく書いたカバーを被せた、いわば改元に便乗して厚化粧したものだった。詐欺すれすれ。

万葉集から古代を読みとく (ちくま新書1254)
上野 誠
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がん免疫療法とは何か』本庶 佑 岩波新書 2019年4月
著者は、いわゆる「免疫チェックポイント阻害剤」の開発の基礎となる研究で、2018年のノーベル賞医学生理学賞を獲得した。免疫機能にはアクセルとブレーキを促すメカニズムがあり、がんは免疫細胞の活動にブレーキがかかっているから増殖するにであり、ブレーキの機能を解除することにより、がん細胞を攻撃するリンパ球の活動性を賦活するという機序。(→レヴューはこちら

がん免疫療法とは何か (岩波新書)
本庶 佑
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ミゲル・ストリート』V・S ナイポール 岩波文庫 2019年4月
ほのぼの漫画を読んでいるような感覚に浸れる。
舞台はイギリスの植民地だったトリニダードトバコ、1940年代だ。
本書が処女作の作者はノーベル文学賞を受賞(2001年)している。
朴訥で寡黙な文章で個性的な世界観が形成されている。饒舌さに飽きたときはこれだ。

ミゲル・ストリート (岩波文庫)
V.S. ナイポール
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ポピュリズムとは何か』水島治郎 中公新書 2016年
ポピュリズムは「大衆迎合主義」と訳すものだと思っていたが、そう単純ではないらしい。第一の定義は、固定的な支持基盤を超え、幅広く国民に直接訴える政治スタイルをポピュリズムととらえる。
第二の定義は、人民の立場から既成政治やエリートを批判する政治運動。上のエリートたちを下から批判する。本書では後者の定義を採ることにしている。
エリートと人民の対立とする政治運動をポピュリズムとする。
現在、世界各地を揺るがしているポピュリズムは、エリート批判を中心とする下からの運動に支えられてる。

ポピュリズムとは何か - 民主主義の敵か、改革の希望か (中公新書)
水島 治郎
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