AI

2019年11月22日 (金)

『虚妄のAI神話』 『はじめての三国志』 『悪の脳科学』

11月22日(金)☀ ☁  くまざわ書店

Ai
虚暴のAI神話「シンギュラリティ」を葬り去る

ジャン=ガブリエル・ガナシア/伊藤直子
ハヤカワNF文庫
2019年7月

 

2014年、スティーヴン・ホーキンス博士がイギリスの新聞「インディペンデント」で警鐘を鳴らした。人工知能AIの技術は瞬く間に発展し、すぐに制御不能となって、人類を危機的状況にさらすと。
その後そうそうたる顔ぶれの科学者たちが、この懸念に同調した。
2015年、ビル・ゲイツがAIに対する悲観的な立場を表明した。
これらは、いままで宗教の分野で叫ばれては、消えていった終末論と変わらないのではないのか。
最も有名なのが、レイ・カーツワイルである。彼によると、われわれは間も無くコンピュータに意識をアップロードするようになり、それによって不死を手に入れられるようになるという。
シンギュラリティーはGAFAの陰謀であると帯には書いてある。(→レヴュー)

Photo_20191206082001
『はじめての三国志 時代の変革者・曹操から読みとく』

渡邉義浩
ちくまプリマー新書
2019年11月



400年続いた漢帝国(前202〜220年)は、宗教反乱である黄巾の乱により、最後の皇帝である献帝を擁立す曹操により、命脈が尽きようとしていた。
曹操は、はじめは漢帝国を復興すべく改革を試みるが、やがて漢そのものを滅ぼす根源的な改革を求めていく。

曹操が中国を統一できなかったのは、劉備と結んだ孫権(182〜252年)の武将である周瑜(175〜210年)が曹操を208年に「赤壁の戦い」で破ったことによる。こうして曹操の息子の曹丕(文帝、在位220〜226年)が建国する魏(220〜265年)、劉備の蜀(221〜263年)、孫権の呉(229〜280年)という三国が鼎立することになった

史書の『三国志』は三国を統一した西晋という国家に仕えた、陳寿という歴史家により著された。陳寿は、自らの仕える西晋の正統性、西晋の高官となった魏の家臣たちを憚り、彼らに不利な史実を隠しながら、史書を執筆した。
一方、14世紀頃の羅漢中がまとめた「三国志演義』は、三国時代に関する伝記や物語、劇や語り物など多くの虚構史実に加えた作品である。両者の違いはその正統感にある。

これら二つの本により伝えられる『三国志』の魅力は、人の生きざまである。
『三国志』はじめての、400年以上続いた漢帝国が崩壊し、漢を支えていた儒教の開祖孔子(前551〜479年)の権威にすら疑問が持たれた時代を舞台とする。おりしも、地球規模の寒冷化の中で、農業生産は河北から江南にうつり間の制度は社会に合わないものとなっていた。こうした不確実な時代に様々な生きざまに、自ら生きる今の指針を求めることができる。
魯粛は、ローマ帝国をも分裂させた地球規模の寒冷化に対応し、江東に割拠して、地域の開発に勤しんだ。

Akunonoukagaku『悪の脳科学 『笑ゥせぇるすまん』喪黒福造に学ぶ「人のココロの操り方」』

中野信子
集英社新書
2019年11月 


意志の力は大脳の新皮質である前頭前野の働きであり、一方、情動は旧皮質の働きで、性欲や食欲などの本能や生命を維持するための根本機能に関わる領域である。人間が本能に負けてしまううのは、仕方のないことだという。

喪黒福造の名刺には、「❤️ココロのスキマ・・・お埋めします」というキャプションがついている。苦悩する主人公に喪黒の提案する条件は、約束を守ればハッピーだが、破れば悲劇が待っているというもの。
約束は守るにたやすいことだから、はじめは順風満帆である。ところが、主人公のちょっとした気の緩みで、本能に負けて約束を破ってしまい、地獄をみるというのが、ストーリーのパターン。
巻末には、 漫画『笑ゥせぇるすまん』の作者・藤子不二雄Ⓐとの対談が載っている。

本書はやっつけで、でっち上げた感じがする。著者の本は、最近、質が落ちてきた。本書(集英社新書)は、行間が空きすぎて「スカスカ」だ。

そこで、新書の1ページの行数を比べてみた。
本書は13行、『京都ぎらい』(朝日新書)14行、『はじめての三国志』(ちくまプリマー新書)14行、『ヒトは「いじめ」をやめられない』(小学館新書)14行、 『妻に捧げた1778話』(新潮新書)14行、『プロレスまみれ』(宝島社新書)14行、『ボブ・ディラン解体新書』(廣済堂新書)14行、『読書会入門』(幻冬社新書)15行、『美食の世界地図』(竹書房新書)15行、『ストラディバリウス』(アスキー新書)15行、『チョムスキーと言語脳科学』(インターナショナル新書)15行、『AI以後』(NHK出版新書)15行、『AI倫理』(中公新書ラクレ)15行、『世界の紅茶』(朝日新書)15行、『村が消えた』(祥伝社新書)15行、『生物と無生物のあいだ』(講談社現代新書) 16行、『現代美術史』(中公新書)16行、『進科の法則は北極のサメが知っていた』(河出新書)16行、『トランプ王国2』(岩波新書)16行、『ジャズの歴史』(講談社+α新書)16行、『インディアンとカジノ』(ちくま新書)16行。

軽め内容の本は行数が少なく、濃厚な内容の本は行数が多いという予想通りの傾向であった。違いは13行から16行である。
例外があるとしても、13行、14行の新書は軽め、15行、16行はコアな内容ということが分かった。(→レヴュー

2024年4月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30        

最近のコメント

無料ブログはココログ