『ラフカディオ・ハーンのクレオール料理読本』

本書は約130年前に、ラフカディオ・ハーンが書いた『クレオール料理』の抄訳である。抄訳とする代わりに、ハーンがクレオールの諺をまとめた『ゴンボ・ゼブ』から食べ物に関するいくつかの諺を載せ、さらにハーンが新聞に書いたエッセイやイラストも採用されていて、飽きさせない構成になっている。
1998年にTBSブリタニカより発刊された同名の本の復刻版。

ハーンは明治時代(1890年)に来日し、松江で英語教師として教鞭をとり、日本人女性と結婚し、帰化して小泉八雲と名乗った。その後、ハーンは東京帝国大学で英文学を教えるようになり、怪談話を執筆したり日本文化を英語圏に紹介したりした。こうした日本での業績は知られているが、アメリカでのハーンについてはあまり知られていない。
ハーンがなぜクレオール料理の本を執筆したのか、そのあたりのことは、冒頭の「ハーンとクレオール料理」で、監修者が紹介している。

復刻版 ラフカディオ・ハーンのクレオール料理読本
ラフカディオ・ハーン/河島弘美 監修 鈴木あかね 訳
CCCメディアハウス
2017年3月

ハーン(1850年〜1904年)は、1850年にアイルランド人でイギリス陸軍医の父とギリシャ人の母との間にギリシャで生まれた。そのあと、一家はアイルランドに引っ越すが、母親が土地の暮らしに馴染めず帰国してしまい、また父親は別の女性と結婚してしまった。ハーンは大叔母に引きとられ少年時代を過ごすが、大叔母が破産したため、19歳でアメリカに渡った。オハイオで職を転々としたのち、27歳でニューオリンズの新聞記者として活躍しはじめた。その活躍ぶりは、〈当時ハーンの書いた文章を見ると、センセイショナルな犯罪記事をはじめ、物語、エッセイ、文芸評論など驚くほど多方面に及んでいる。〉と書かれている。

ハーンはニューオリンズのクレオール文化に興味をもった。美味しい料理を提供してくれるコートニー夫人と出会い、食べることになみなみならぬ関心を示したという。ハーンは、1884年にニューオリンズで開かれる博覧会に向けて『クレオール料理』を執筆した。その内容は、〈およそ家庭で作ろうとする食物でここに載っていないものがあろうかと思うほどである〉という。

クレオールとは、ルイジアナ地方に入植したフランス人とスペイン人およびその子孫をさすが、一般的にはフランス系やスペイン系の人々と有色人種の間にできた混血の子孫をも意味するようになった。さらに、クレオール料理とは、ニューオリンズ地域に発達した複数の食文化が混合してできあがった料理のことである。

本書にはレシピのみならず、料理の基礎から盛り付け、ワインの選び方まで料理全般について書かれている。例えば、美味しいパンを作るためのイースト菌の保存の仕方とか、亀のさばき方とか、冷静肉を美味しく盛りつける方法など。
冷蔵庫がない時代なので、防腐の意味合いもあるのか何種類ものピクルス料理が紹介されている。そのなかに、〈卵のピクルス〉というのがあって、要するにゆで卵の酢漬けなのだか、「冷製肉の付け合わせとしてこれに勝るものはないというほど」だそうだ。

獣肉・鳥類・鹿肉料理のための45種類のソースが紹介され、ケーキやお菓子、デザートにはかなりのページ数(全体の1/3以上)が割かれている。
もちろん、現在も使えるレシピである。→人気ブログランキング

食べるアメリカ人』 加藤裕子 13/03/11
アメリカの食卓』  本間千枝子 12/05/18
ジュリー&ジュリア』 (DVD) 12/05/15
クスクスの謎―人と人をつなげる粒パスタの魅力 』 にむら じゅんこ 12/04/08

『いかしたバンドのいる街で』 スティーヴン・キング

飛び跳ねるような饒舌さがキングの文章の魅力だが、それが十分に発揮されているのが「動く指」。キング節爆走といったところ。

「献辞」
息子の処女小説『栄光の炎』がマーサのもとに小包で送られてきた。
かつて、大作家ピーター・ジェフリーズは、黒人の掃除婦マーサが勤めるホテルのスイートルームに必ず泊まり、そこで黄色い原稿用紙に小説を書いていた。
マーサはピーターの本を愛読していて、彼の著作『天上の炎』にサインを頼んだのだった。
2冊の本の献辞の下に、それぞれの著者が直筆で書かれた文字はこよなく似ていた。

いかしたバンドのいる街で (文春文庫)
スティーヴン キング
文春文庫
2006年8月

「動く指」
洗面所の排水口から現れる動く指と戦うハワードの苦悩を描く。

「スニーカー」
ハルは音楽プロデューサー。
男子用トイレで汚れたスニーカーを見かけた。
そのスニーカーを履いている奴は誰だ。死体か?

「いかしたバンドのいる街で」
前半は、遠距離ドライブで道に迷った30代の夫婦がくり広げる主導権争いの会話が続く。
引き返そうというメアリーにクラークは男の意地を通す。
クラークとメアリーがたどり着いたところは、「ロックンロール・ヘブン」という町。町の外観はどこかで見たことがあるようだった。
テイクアウトのソーダを買いに2人でロックアブギ店に入ると、そこには、ウェートレスのジャニス・チョップリンらロッカーが数名いた。
財布を取りに車に戻ったクラークが、戻ってこないのでメアリーは不安にかられる。

「自宅出産」
島で暮らすマディー・ベイスは心配性で優柔不断。
そのマディーが結婚して妊娠した。ところが頼りにしていたロブスター捕りの夫が海に放り出されて死んでしまった。
ゾンビがホワイトハウスで、大統領夫妻を生きたまま食べてしまったとテレビは伝えている。そこからキングのドタバタ劇が展開する。
隔離された島でもゾンビ騒ぎが起こり、ゾンビの夫がマディーの目の前に現れる。

「雨期きたる」
ウィローの街では、7年ごとに1日だけ雨期がやってくる。
映画『マグノリア』のように、ヒキガエルが空から降ってくるという。《ファフロッキーズ》という現象。ただ降ってくるのではない、ヒキガエルは人を襲う。
ところで、その町で話しかけてきた老夫婦が飼っている、屁こき老犬・トビーが名脇役として登場する。

トビーで思い出したが、キングの妻タビサ・キングは通称タビーと呼ばれていて、『書くことについて』では、タビーの糟糠の妻ぶりが描かれている。タビー自身も小説家であり、ふたりの間には一女ニ男の子どもがいて、男二人も小説家になっている。息子オーエンの妻ケリーも小説家である。
そんなキング家のインタヴュー記事(Stephen King’s Family Businessが、『New York Times』(2013年8月4日)に掲載されている。→人気ブログランキング

ダークタワー IV1/2 鍵穴を吹き抜ける風
ダークタワー IV 魔道師と水晶球 下
ダークタワー IV 魔道師と水晶球 上
ダークタワー III 荒地 下
ダークタワー III 荒地 上
ダークタワー Ⅱ 運命の3人 下
ダークタワー Ⅱ 運命の3人 上
ダークタワーⅠガンスリンガー
ミスター・メルセデス
ジョイランド
11/22/63
書くことについて

ジェラルドのゲーム
ドランのキャデラック
第四解剖室
ミザリー
幸運の25セント硬貨
1922
ビッグ・ドライバー
神々のワード・プロセッサ
夕暮れを過ぎて
いかしたバンドのいる街で
スタンド・バイ・ミー(DVD)
キャリー   (DVD

晩春の落ち葉ども

晩春には、常緑広葉樹は葉が茂るに伴い、古い葉をだらだらと落葉し続ける。この時期、3面が道路に面しているわが家は、道路の落ち葉掃除に追われる。

わが家が面する道路のアスファルトは、目の粗い水はけのよい仕様である。家を建てたときに、市の条例に従い1メートルのセットバックを強いられた。セットバックした部分が砂利のままなので、舗装することにした。このとき、アスファルトに種類があるとは知らず、「水はけの良い方にしましょう」という建築会社の担当者の意見に従った。わが家の周りだけが目の粗いアスファルトになった。

アスファルトには、大まかに透水性と排水性の2種類がある。そのほかカラー仕上げや弾力素材を混ぜたりすることもできて、細かく分けると10種類以上もあるそうだ。町の幹線道路は排水性アスファルト仕様で、道路の中央が高く端にいくほど低くなっている。雨が降ると傾斜に沿って道路端の側溝や下水に雨水が流れ込む構造になっている。目が粗い透水性アスファルトは、雨が降るとそのまま染み込むようになっている。

家の正面は、低木のキャラボクを植え、さらにカクレミノを等間隔で10本ほど並べた。裏庭はウバメガシの生垣で囲った。垣根といえば『夏は来ぬ』に出てくる卯の花と思っていたが、「最近、卯の花の垣根は流行っていませんね。落葉樹ですから垣根には向いていませんよ」と、庭師にあっさり却下された。

ウバメガシは備長炭の原料となる硬い木質の雑木で生命力が強く、晩春にはこれでもかというくらい旺盛に落葉を繰り返す。ウバメガシの葉には山なりのカーブがあり、葉脈の先端が尖っている。尖ったところが粗い目のアスファルトに引っかかり、ホウキで掃いてもビクともしないことがある。ホウキの力に逆らい、チリトリとは別の方向に跳ねたりして、まるで意志を持っているかのように反抗的に振舞ったりする。さらに、塀のコンクリートの土台とアスファルトの隙間に刺さった葉は、手でつまんで取るしかない。これを1か月以上続けなければならないのだ。

近くの公園の卯の花が香る頃になると、ウバメガシの垣根に妥協しまったことを後悔する。→人気ブログランキング

『人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊 』井上智洋

著者はマクロ経済学者。
2030年ごろから、先進国では深刻な雇用崩壊が始まると予測している。

シンギュラリティとは、コンピュータが全人類の知性を超える未来のある時点のことをいう。日本語では、技術的特異点や特異点と訳されている。
人工知能(AI)は、2020年代には人間ひとりの脳に、2045年には全人類のすべての脳に比肩するようになるという。つまり1台のパソコンで全人類分の脳と同等の情報処理ができるようになる。
これは、今までにいくつかの未来予測を的中させてきた、アメリカの著名な発明家レイ・カーツワイルが、著書『シンギュラリティは近いー人類が生命を超越するとき』(2005年)で論じていることである。

人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊 (文春新書)
井上 智洋
文春新書 2016年7月 ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎

現在、世の中に存在する人工知能はすべて「特化型人工知能」であり、一つの特化された課題しかこなすことができない。一方、将来開発される人間のように様々な知的作業をこなすことができる人工知能は「汎用型人工知能」である。

では、社会はどうなるのか。汎用型AIに不向きな仕事の従事者と資本家以外は、職を失うことになる。職業を奪われる人の割合は90%と試算している。
資本家は効率の悪い人間を雇うより、効率の良いAIに仕事を回すだろう。汎用型AIを導入することで人件費はゼロに近づき、生産効率は飛躍的に良くなり、経済は成長すると予測している。もはや資本主義は終焉を向かえる。いわゆる「2045年問題」である。

著者はAIに奪われにくい仕事として、次の3系統の仕事を挙げている。
「クリエイティヴィティ系」は、小説を書く、映画を撮る、発明する、新しい商品の企画を考える、研究をして論文を書く、といった仕事。
「マネージメント系」は、工場・店舗・プロジェクトの管理、会社の経営者など。
「ホスピタリティ系」は、介護士、看護師、保育園、インストラクタなど。

では、職を奪われた人びとはどうやって暮らしていけばいいのか。著者はベーシック・インカム(BI)の導入を提案している。BIとは、政府がすべての国民に一定の金額を給付する制度のことである。財源は、莫大な利益を得るだろう資本家からの税金で賄う。

シンギュラリティは人類の進化の通過点なのか、それとも破滅への一歩となるのか。人類を待ち受けるのはユートピアなのかそれともデストピアなのか。そもそも著者が描く未来予想図の通りにことは運ぶのか。いずれにせよ、これまでの法則が通用しない時代が迫ってきているのは確かなことのようだ。→人気ブログランキング

→『人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊 』井上智洋 2016年
→『未来型サバイバル音楽論』津田大介×牧村 憲 中公新書ラクレ 2010年
→『ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる』梅田望夫 ちくま新書 2006年

『フェルマータ』ニコルソン・ベイカー

『中二階』『もしもし』で、瑣末な事柄をミクロな表現で饒舌に語り、詩的なコスモスを創り出したニコルソン・ベイカーの第3弾。

主人公のアーノルドは35歳、ボストンの中心街にある銀行で派遣社員として働いている。タイプ打ちが仕事だ。
アーノルドは「ひょんなこと」から時間を止める能力があることに気づいた。それを〈フェルマータ〉とか〈襞(フォールド)〉とか〈ドロップ〉と呼んでいて、〈フェルマータ〉を使って女性の裸を鑑賞することに情熱を燃やしている。

フェルマータ (白水Uブックス―海外小説の誘惑)
フェルマータ
posted with amazlet at 17.05.10
ニコルソン ベイカー/岸本佐和子訳
白水社
1995年6月

時間を止める能力は、長い間発揮できないこともある。
たとえば、〈ビー玉を6個、クッキングシートの上に並べて低温オーヴンで焼き、冷たい水を満たしたコップの中に一つ落としてみたこともあった。ビー玉がジュッと音を立てて水に沈み、内側からカチンとひび割れ模様を生じる瞬間、時間が止まるのではないかと、固唾を飲んで見守ったが、何も起こらずじまいだった。〉という涙ぐましい努力の結果ハズレのことがあるかと思えば、指をパチンと鳴らすだけで〈フェルマータ〉が訪れることもあるのだ。

アーノルドは周りの目につく女性すべてとセクシャルな関係を持とうと妄想するので、〈フェルマータ〉を使うのはほとんどの場合、性的な目的である。
ただし、アーノルドは節度をもって女性に接していると自負していて、女性の下着を脱がせて観察したり、乳房に触れたり陰毛に頬ずりしても、その女性に尊敬と愛情をもって接し、決して迷惑をかけないという姿勢を貫いているつもりでいる。自分が性的な喜びを得ることもさることながら、相手の女性にも喜びを味わってもらおうという、博愛精神を貫いている。

アーノルドは、〈フェルマータ〉で時間の止まった世界と通常の世界を行き来して、通販で取り寄せた性具を女性に使わせる算段をしたり、自らが渾身の力を注いで書いたポルノ小説(ロット)を女性が読むように画策したりする。
本文中にそのロットの2作品があますことなく紹介されている。

善良なアーノルドの実際の恋愛はどうかというと、恋人のローディに〈フェルマータ〉のことをそれとなく打ち明けると、あっけなく振らてしまう。

今や、アーノルドは正面に座っている正社員のジョイスに恋をしていて、デートに誘ことに〈フェルマータ〉を使って成功する。しかし、真の愛を勝ちとるには避けて通れないと、ジョイスに〈フェルマータ〉のことを打ち明けるのだが。。→人気ブログランキング

フェルマータ
もしもし
中二階

『ニュースの真相』

2004年秋、米テレビ3大ネットワークのひとつCBSの『60ミニッツⅡ』の名物アンカーマン、ダン・ラザー(ロバート・レッドフォード)が降板するに至った。当時、ブッシュ大統領は再選を目指し、民主党の候補ジョン・ケリーと競っていた。
番組のプロデューサー、メアリー・メイプス(ケイト・ブランシェット)は、同じ年にイラクの刑務所での捕虜虐待を報じ、賞を獲得した辣腕ジャーナリストである。ダン・ラザーとは父娘のような信頼関係で結ばれている。
原作はメアリー・メイプスの手記である。

ラザーやメアリーが若いスタッフに投げかける「どんなに批判されても、メディアが質問をしなくなったらこの国は終わりだ」という言葉は何回も語られる。

ニュースの真相(字幕版)
ニュースの真相
posted with amazlet at 17.05.01
監督:ジェームス・ヴァンダービルト
原作者:メアリー・メイプス
音楽:ブライアン・タイラー
製作国:アメリカ  2015年  125分

事の発端は、ブッシュが若い頃、父ブッシュの力でベトナム戦争行きを免れたのではないかという疑惑である。ブッシュの軍歴詐称はほかのメディアも追いかけていた。メアリーのもとに、ブッシュの軍役逃れを示す1枚の書類が舞い込んだ。メアリーは書類の真偽を確かめるべく奔走するが、功を焦ったのか最後の詰めが甘いまま、ブッシュの軍歴詐称疑惑を放送してしまった。
放送後、大反響を巻き起こすが、ブロガーから「書類は偽造」と指摘され、批判が高まっていく。メアリーたちは再調査に奔走するが、書類の信憑性に疑問が残った。

170501

社の上層部は報道機関としての信用を失墜させたことで、メアリーたちを厳しく追及した。
内部調査委員会で、何人もの弁護士を前にして取材メンバーは調査を受ける。
「コピーの信憑性は?」「証言者の裏をどの程度取ったのか?」「筆跡の鑑定を行ったのか?」「なぜ、書類を真正と断じたのか?」
少しでも返答に詰まると、質問が矢のように浴びせられる。内部調査とはいえ、厳しい糾弾の場だった。

調査が終了し、弁護士たちが席を立とうとした時、メアリーは「書類の真偽」や「証言の信用性」の枝葉末節なことばかりが追求されたが、明らかにしなければならないブッシュの軍歴詐称疑惑には、少しも触れていない。何も解決されていないと調査団に噛み付く。
メアリーたちの行動は、故意に行われたものではないと判断されたが、処分は非情なだった。
メアリーたちは、圧力に屈することなくジャーナリストの矜持を貫いたが、勇み足が命取りになった。→人気ブログランキング

『99分、世界美食めぐり』

5人の美食ブロガーが、世界各地の星つきレストランをめぐるドキュメンタリー。主人公はレストランや作り手ではなく、あくまで食べ手のブロガーである。
有名ブロガーの食べることに対する考え方や、一流シェフたちの仕事へのこだわりが語られる。食ブロガー必見の映画

99分,世界美味めぐり [DVD]
原題:FOODIES
監督:トーマス・ジャクソン  シャーロット・ランデリウス  ヘンリック・ストッカレ
製作:スウェーデン 2014年  99分  ✳︎✳︎✳︎✳︎

スティーヴ・プロトニキ ブログ
音楽のレーベルの元オーナー。
インタビューで店に対し辛口のコメントを発するのは、料理の世界を変えてやるという野心を持っているからだと、大言壮語する。料理は芸術だと力説する。
ニューヨークを拠点にしている。シェフ泣かせの辛口ブロガー。

アンディ・ヘイラー  ブログ
コンピュータのソフトウェア開発で財をなした。ロンドン在住。
ミシュランの三ツ星レストラン109店すべてを食べ尽くした人物。
世界一のカレー料理を求めて、ムンバイの店を探索する。

アイステ・ミセヴィチューテ ブログ
エストニア出身。パリを本拠地にモデルとして活躍している。
日本では、菊乃井(京都)、寿司はせがわ(六本木)を紹介した。
料理を口にする彼女には、修行僧のような鋭利で静謐な雰囲気が漂う。

パーム・パイタヤワット ブログ
シェークスピアを研究しているという。タイのぼんぼん。
ハーフパンツで軽やかに動き回り、日食生活を十分に堪能している感じがする。
食への説得力は今ひとつだ。

ケイティ・ケイコ・タム ブログ
普通のOLと紹介されている。
香港で両親と暮らしていて、自分の給料だけでやっているという。
ニューヨークでは、タイトなスケデュールで1日に複数の店を回る。厨房の中を案内されVIP扱いにご満悦のようである。まだ美食生活に慣れていない様子。

登場するレストランは以下の29店舗、✳︎はミシュランの格付け。

マエモ(オスロ)✳︎✳︎、 ピエール・ガニェール(パリ)✳︎✳︎✳︎、フェ―ヴィケン(エステルスンド スウェーデン)、41°(バルセロナ)、アルサック(サンセバスチャン)✳︎✳︎✳︎、ノーマ(コペンハーゲン)✳︎✳︎、ゼラニウム(コペンハーゲン)✳︎✳︎、イレヴン・マディソン・パーク(ニューヨーク)✳︎✳︎、鮨さいとう(東京)✳︎✳︎✳︎、都寿司(東京)、神保町 傳(東京)✳︎✳︎、菊乃井(京都)✳︎✳︎✳︎、フロコンド・セル(ムジューヴ)✳︎✳︎✳︎、響○軒(マカオ)、アンバー(香港)✳︎✳︎、ボー・イノベーション(香港)✳︎✳︎、龍井草堂(中国 杭州)、ヘドネ(ロンドン)✳︎、サチュルヌ(パリ)、ジヤ(ムンバイ)、シェリー・ターカル・ボージナーラヤ(ムンバイ)、ボラン(バンコク)、ダニエル(ニューヨーク)✳︎✳︎、バー・セ(ニューヨーク)✳︎✳︎✳︎、ル・バーナディン(ニューヨーク)✳︎✳︎✳︎、マレア(ニューヨーク)✳︎✳︎、モモフク・コー(ニューヨーク)、ムガリッツ(サンセバスチャン)✳︎✳︎、 マルティン・ベラサテギ(サンセバスチャン)✳︎✳︎✳︎

食ブロガーに対して、店側の本音は宣伝になるから取り上げて欲しい、ただし悪評は書いては困るという単純なもの。
店は有名ブロガーに対してその影響力を恐れ、他の客とは別格の扱いをすることになる。無料での料理の提供や厨房の中を案内したり、シェフにインタービューしたりする特権が与えられる。そうした扱いを、拒否しようとするブロガーもいれば、受け入れるブロガーもいるだろう。そのあたりのことは、『グルメの嘘』(友里征耶 新潮新書)に詳しい。

最後に、登場したフーディーズたちの体型であるが、3人の若者たちは問題ないが、ふたりの中年男の二重顎とだぶついた腰回りは、複数の生活習慣病を抱えていそうだ。今や、美食家が肥っているというのは説得力に欠ける。→人気ブログランキング

99分、世界美食めぐり』DVD  2014年
美食の世界地図 料理の最新潮流を訪ねて』山本益博  竹書房新書 2014年
二郎は鮨の夢を見る』DVD
エル・ブリの秘密 世界一予約のとれないレストラン』DVD  2011年
グルメの嘘』友里征耶  新潮新書 2009年

『ルポ ネットリンチで人生を壊された人たち』 ジョン・ロンソン

著者はネットリンチにあった人物やネットリンチを仕掛けた人物に直接会って話を聞いている。
過去には、犯罪者に手かせ足かせをして晒し者にする、という公開羞恥刑が各国に存在したが、およそ180年前に廃止された。ところが、最近SNSの普及で公開羞恥刑が復活しているという。著者は、ネットリンチを公開羞恥刑というキーワードで解明しようとする。

まず著者は自らの経験を披露する。
著者はツイッターの成りすましに悩まされた。犯人の3人と面会し、そのやりとりをYouTubeにアップロードしたところ、犯人たちに対する非難が寄せられ、成りすましが止んだという。3人の職業はネットに関する研究者だった。著者はこのエピソードで、ソーシャルメディアは攻撃される武器にもなるし、身を守る武器にもなることを知ったという。

ルポ ネットリンチで人生を壊された人たち (光文社新書)
ジョン・ロンソン/ 夏目大 訳
光文社新書  2017年2月

著名なノンフィクション作家のベストセラー本に、出典がはっきりしないボブ・ディランの言葉がいくつかあると指摘された 。けっきょく捏造だった。そのほか他人のブログからの盗用もあった。
捏造の暴露記事が発表されるや、ジャーナリストはネットで徹底的に叩かれ、雑誌『ニューヨーカー』のスタッフライターの職を辞さざるをえなくなった。そして、彼はキャリアも地位もすべてを失った。

ネット企業の広報部長である白人女性が、イギリスからアフリカに向かうトランジェントで、人種差別的なツイートを流した。「アフリカに向かう。エイズにならないことを願う。冗談です。言ってみただけ。なるわけない。私、白人だから!」
ファーストクラスに乗っていると書いたことも反感を買ったのかもしれないが、彼女はネットリンチにあい、職を失い社会的に抹殺された。
攻撃する者にとって、 彼女が本当に特権階級であるかどうかはどうでもいい。実際、彼女は特権階級でもなければ、人種差別主義者でもなかった。ただ、そう見さえすれば十分なのだ。

公開羞恥刑を受けた後に、立ち直る機会を得た人もいる。
ナチスの制服を着た複数の女性とのSM乱交プレーを、新聞に暴露された国際自動車連盟の会長の例がある。
彼は反論する。セックスの時は誰もが多かれ少なかれ妙なことをするものではないだろうかと。
「どれほど恥ずかしいことがあっても、堂々としていれば大丈夫」ということを証明したお手本のような人物である。
男性が合意の上でセックスしている限り、セックススキャンダルは攻撃されないことは、次の事例でも示される。かつてアメリカのメイン州で69名の売春の顧客リストが公開され、裁判で罰金刑が課せられたが、公開羞恥刑にさらされた人物はいなかった。

著者はネットリンチの実態を次のように解説している。
今どういう行為が恥とみなされ攻撃を受けるかは、ツイッターなどSNSのユーザーたちの考えに大きく左右される。SNSのユーザーの多くがこれは許せないとみなし、排除に動けば、標的になった人間は破滅してしまう。何を許せないとするかには一定のコンセンサスがあるが、司法の判断やマスメディアの主張はそれにはほとんど影響を与えない。だからこそ非常に恐ろしいとも言える。

ネットリンチの怖いところは、一定のコンセンサスがあるといっても不確定であり、一旦起こったら歯止めがきかないということだ。
著者はネットリンチを防ぐ方法を模索したが、解決策はなさそうだという結論に達する。→人気ブログランキング

『夕暮れをすぎて』スティーヴン・キング

著者自身が書いている巻末の「サンセット・ノート」によると、著者は「ウィラ」がお気に入りだという。本書はキングの短編集の中でも珠玉選といえる。

「ウィラ」
恋人のウィラがデイヴィットの前から消えた。
ウィラはネオンが恋しくなったんだよという周りの言葉に、銀行投資マンのデイヴィットは、そうかもしれないと思った。
国道26号を歩いて、安酒屋(ホンキー・トンク)に行くと、フィラがいた。
そこで一時を過ごし、酒屋から出て月明かりのもと皆が待っている駅に2人は戻った。
列車事故で亡くなった霊たちがダンスを踊っている。
レイ・ブラッドベリーの作品や、デヴィット・リンチの映画『マルホランド・ドライブ』を彷彿とさせる、夢と現実の間のあやふやな世界を描いたホラー。

夕暮れをすぎて (文春文庫)
夕暮れをすぎて
posted with amazlet at 17.04.22
スティーヴン・キング グ/白石朗
文春文庫 2009年9月

「ジンジャーブレッド・ガール」
赤ん坊が乳児突然死症候群で亡くなってから、エミリーは走り出した。ジョギングではなくて、かなりハードに。夫婦喧嘩がエスカレートし、エミリーは夫と別居して、父親の別荘にしばらく住むことにした。
エミリーはピカリングの家の横を通った時、車のトランクに数十箇所も刺された女の遺体を目にした。
殺人鬼ピカリングとエミリーとの壮絶な格闘劇が読ませどころ。

「ハーヴィーの夢」
夢を人に話すと正夢にならないと言われている。悪夢が現実にならぬよう願って夫は夢の話をする。

「パーキングエリア」
用を足そうと、真夜中のパーキングエリアに入ると、1台の車が停めてあった。
紳士用トイレに入ると、婦人用トイレで男に女が殴られている様子。リーと呼ばれる男は、決まり文句の「この売女が」と叫びながら、女を壁に打ちつけたようだ。仲裁を買って出るべきか悩んだ末に。。

「エアロバイク」
医者はコレステロールが高いという。
イラストレーターはエアロバイクを購入し、地下の壁面に設置した。壁面にサイクリング用の道路を描き、はじめは15分しかこげなかったが、やがて2時間こぐようになった。本物の道路でサイクリングをしていると思い込むようになり、ついにはトラックに追いかけられる妄想を抱くようになる。

「彼らが残したもの」
会社をずる休みしたことで9.11のテロから免れたものの、同僚を失った男は、生存者罪悪感に悩まされていた。

「卒業の午後」
卒業の日ののどかな午後、ニューヨークの方を見ると大変なことが起こりつつあった。着弾したのだ。卒業生のそれぞれが予定していたことは中止になるだろう。→人気ブログランキング

ダークタワー Ⅱ 運命の3人 下
ダークタワー Ⅱ 運命の3人 上
ダークタワーⅠガンスリンガー
神々のワード・プロセッサ
ミスター・メルセデス
ジョイランド
11/22/63
書くことについて
幸運の25セント硬貨
1922
ビッグ・ドライバー
夕暮れを過ぎて
スタンド・バイ・ミー』(DVD)
キャリー』(DVD

『幸せをつかむ歌』

サンフランシスコの小さなライブハウスで、ロックバンド「リッキー&ザ・フラッシュ」のボーカル兼ギター担当のリッキー(メリル・ストリープ)は、かつて夫と3人の幼い子どもを捨てて、ミュージシャンの道を選んだ。
離婚の後、夫のピートはアフリカ系アメリカ人の女性と結婚し、3人の子どもを育てた。
子どもたちはリッキーを恨んでいる。
リッキーは経済的にどん底の状態で破産を申請している最中。

メリル・ストリープは才能が豊かな役者だと、改めて感じさせる作品である。
ギターの扱い(コードが主だが)が堂にいっていて、歌も上手い。本映画に備えて、ラリー・サルツマンやニール・ヤングらのもとでギターのレッスンを受けたという。
メリルは何をやっても様になるプロ中のプロだ。

幸せをつかむ歌 [DVD]
幸せをつかむ歌
posted with amazlet at 17.04.20
監督:ジョナサン・デミ
脚本:ディアブロ・ゴディ
原題:Ricki and the Flash
アメリカ 2015年 101分
★★★★

インディアナポリスで暮らすピートからリッキーに電話がかかってくる。
娘のジュリー(メイミー・ガマー、メリル・ストリープの実娘)の夫が家を出て行ってしまい、ジュリーが心身ともに参っているので力になって欲しいとのこと。ピートの妻はアルツハイマー病の父親の介護で留守にしている。

なけなしの金をはたいて、リッキーはインディアナポリスに向かった。
豪華な邸宅が立ち並ぶゲート・コミュニティの入り口で、リッキーは身分証明書の提示を求められる。貧乏ロッカーが訪れるようなところではないというわけだ。

ジュリーは、風呂に入らず着替えもせず、食事もまともに摂らないほど落ち込んでいた。
最初は反抗的な態度をとるジュリーだったが、陽気に優しく接するリッキーに次第に心を開いていく。

サンフランシスコに帰ると、相も変わらぬ貧乏暮らしが待っていた。ある日、リッキーは、バンドのギタリスト・グレッグから求婚され、戸惑いながらも承諾した。
そんな折、リッキーのもとに息子の結婚披露パーティーの招待状が届いた。
お金がないリッキーは欠席しようとするが、グレッグが愛用のギターを質に入れて、お金を工面してくれた。

いよいよリッキーがスピーチに立った。リッキーからの新郎新婦へのプレゼントは歌うこと。ステージには「リッキー&ザ・フラッシュ」のメンバーがスタンバイしていた。→人気ブログランキング

«『女の機嫌の直し方』 黒川伊保子