ゲーテはすべてを言った 鈴木結生
第172回芥川賞受賞作(2025年1月)。
本書には、大正時代もしくは昭和初期を思わせる大仰な語り口で雑学が横溢する。
ドイツ文学者の博把(ひろば)統一は「ゲーテはすべて言った」というフレーズをゲーテが言ったかどうか解こうとする。統一はゲーテに関する著作や訳本を次々に執筆しきて、そして教授になった。「ゲーテはすべてを言った」とは、ドイツに遊学していたときにヨハンが言った言葉である。それは統一の脳裏に焼きついていた。
読みにくい固有名詞使われている。
ゲーテはすべてを言った<
鈴木結生
朝日新聞出版社
2025年1月
総一の妻の義子(あきこ)が朝食を準備して、それを総一が食し、娘の徳歌(のりか)が起きてきて食べた。まだ文学部1年だというのに、徳歌の卒論テーマが話題になる。ここで付け
足すが、徳歌は頗る頭脳明晰である。
登場人物はあくまで学問的に高尚な日常を生きていて、ディレッタントな話題で溢れてかえっているが、ディレッタントという単語は全く使われない。
ソクラテスかキルケゴールかパスカルが言ったような気がしたけれどその引用元に自信が
ないとき、あるいは考えたのが自分であるとわかっているような場合でも、ドイツ人はゲーテになすりつける。なぜなら、「ゲーテはすべて言った」からと学生に総一は講義した。我々はどんな言葉もゲーテが言ったような気がする。少なくとも「ゲーテはそんなことは言っていない」とは言い切れない統一は言う。
義父の芸亭(うんてい)学から統一、義子、徳歌にクリスマスカードが届いた。そこで徳歌の卒業論文を義父に見せること勧められ、徳歌はいやいや承諾した。
統一は「ゲーテはすべてを言った」がどこに書いているか、思いつく82名(団体を含む)にメールを送った。30の返信があったが、劇的なものはなかった。
学生の紙屋綴喜(つづき)をごった煮に誘い酒を飲む。そこで英語で一番長い綴りの単語を知っているかとふると、綴喜は即座に答えた。
徳歌の彼氏の(綴喜)が設計がした名言集のサイトを徳歌は持っている。アールグレイのティーバッグには20パターン以上の愛に関する名言が刻まれている。
ティーバッグに書かれている名言の出所は綴喜がわかるという。綴喜は徳歌さんとお付き合いさせたただいていますと言った。
綴喜の論文が凄いから頭がいいのはわかっている総一が言うと、論文は一部を徳歌が書いたものだという。
然(しかり)紀典の捏造と盗用について発表された。その後、然は失踪した。
出てきた然紀典は惟神光(いしんひかり)と同一人物なので、問題がないように見えるが、しっくりしない。
統一は「ゲーテはすべて言った」というフレーズをゲーテが言った言葉か解こうとするが、結論は終始わからない。