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2026年6月25日 (木)

国牢城

『黒牢城』は、季節ごとに4つの事件を描いている。冬は人質の安部自念が殺された密室殺人、春は夜討ちした大津長昌の首をめぐる事件、夏は名品の壺「寅申」を預けた僧侶・無辺の死と「寅申」の紛失をめぐる事件、秋は無辺殺害犯の不審死をめぐる事件だ。

タイトル1

本作の舞台は、荒木村重が1578年(天正6年)、織田信長に謀反を起こして籠城した有岡城。毛利が村重に合流することを頼みの綱として籠城していた。そんな中、村重は説得に訪れた織田方の黒田官兵衛を地下に監禁する。
次々に不可解な事件が起き、疑心暗鬼が蔓延する有岡城で、次第に村重は官兵衛を頼るようになっていく。
究極のところ、荒木村重は優しい人物と描かれている。

タイトル

配給:松竹
公開日:2026年6月19日
監督:黒沢清
上映時間:147分  4.6 2回観た(6月22、24日)
予告編にリンク

官兵衛は村重が織田軍にいた頃、秀吉や明智光秀らのスター武将に囲まれてさぞ楽しかっただろうと指摘する。また官兵衛は、家臣たちはみな摂津の出身で、織田家に敗れても軍門に降ってこの土地に残れるが、丹波出身の村重はそうではないとも指摘する。そして、地下室での密会で村重と官兵衛の距離は徐々に近くなっていく。

国牢城2

信長の人質となっていた官兵衛の息子の松寿丸が、官兵衛が村重に寝返ったと判断されて殺されたという知らせを受けた時、官兵衛はこれを恐れて村重に自身を殺すように懇願していたが、村重は官兵衛の願いを無視した。なお、織田から謀反者と看做された官兵衛はついに村重に仕えることを受け入れる。一人になった時には泣き崩れるのだった。

「冬:自念」では、弓矢で打たれたと思われていた自念は、灯篭の穴を通した槍の先につけられた矢で刺されていたことが明らかになる。「春:首」では、身元不明の4つの首のうちどれが大津長昌の首かという問いに、手柄を必要としない(=首を持ち帰る必要がない)殿である村重が最初に討った敵が長昌であったことが明かされる。「夏:寅申」では、名器の壺「寅申」を持たせた無辺が殺され、「寅申」を持ち去られたと思われていたが、犯人の能登入道は、護衛の目を逃れるために無辺になりすまして逃げるために、「寅申」を入れていた籠を必要としただけだった。能登は最初から「寅申」は狙っておらず、信長と内通していたことが密書に書かれているのではないかと不安になり、密書を読むために無辺を襲ったのだった。追い込まれた能登入道は、村重が明智光秀と開城へ向けた和睦を進めようとしていたことを家臣たちの前で暴露しようとするが、何者かに撃たれ、さらに雷に打たれて死んだのだった。
「秋:天罰」では、官兵衛の監禁から10ヶ月が経って、すっかり飲み友になっている官兵衛と村重だが、オダギリジョー演じる郡十右衛門の考察から、能登を撃った者は逃げる独りでことが困難であり、城の中に内通者がいた可能性が浮上する。

国牢城対峙

村重がたどり着いた「黒幕」は、妻の千代保(吉高由里子)だった。千代保は熱心な一向門徒(浄土真宗の信仰者)で、織田軍と本願寺勢力の間で合戦が起きた長島一向一揆の生き残りだった。力を持たぬ民の一人として、長島で地獄絵図を見た千代保は、民に仏はいると信じさせるために一連の事件を仕掛けたことを明かす。

千代保は、軟禁されていたが死にたがっていた人質の自念には、火鉢を与えて座る位置を指定、わざと襖を少し開けて立ち去ると、同じく一向門徒であった家臣の森可兵衛を使って自念を殺させていた。首が入れ替わっていたのも千代保が侍女に指示した。能登を撃った狙撃手を屋根から逃したのも千代保だった。

武士たちは死を恐れていないが、民には死よりも怖いものがある。仏は存在していて、罰は下ると民に知らせることが千代保の狙いだったわけだ。しかし皮肉なのは千代保もまた「進めば極楽、引けば地獄」のスローガンを掲げた僧と同じく、人間の手によって理を作り出そうとしてしまった点だ。だが千代保は、一向一揆を生き延びた自分に与えられた天命なのだと言って憚らない。

村重は、信長に通じていた能登を殺した犯人を信長側に突き出すことで和平を模索する策であったにもかかわらず、その犯人が差し出すことはできなかった。犯人は愛する千代保であったからだ。いよいよもって追い込まれた村重は、やはり官兵衛を頼ることになる。
官兵衛は村重に、毛利の援軍を直接依頼することを提案。その道程を詳細に語り、村重は酒が入っていることもあって、その案に乗りそうになるが、村重は官兵衛に謀られていたことに気が付く。
窮地に陥った段階で助けを求められても毛利は助けないし、家臣たちも村重が城を捨てたと見做す、信長とも交渉できない段階まで来ている。官兵衛は、城中が疑心暗鬼で支配され、信長が村重を放免しない段階が来るまで、10ヶ月の間時間稼ぎをしていたのである。

自念、首、寅申、天罰の四つの事件の謎解きに夢中になっている間に、村重は後戻りできないところまで来てしまっていた。そして、城中の誰もが毛利の援軍が来るはずという淡い期待を背景に、籠城を続けてしまったのだ。

けれど村重は、もはや官兵衛の策に乗るしかなかった。郡十右衛門、雑賀下針、乾助三郎の三人と尼崎へ向かう。尼崎には毛利軍の武将である桂元将がいたためだ。十右衛門と下針は途中で有岡城へ戻る。

最後まで村重と行動を共にすることを誓った乾助三郎は実在した人物で、実際に村重と共に尼崎へと向かった。映画『黒牢城』のラストでは、有岡城は信長の手に下ったが、信長は後に明智光秀に討たれたことが記される。有明城の開城からわずか3年後のことである。
一方の荒木村重は生き延び、茶人になっていると映画は結ばれている。

なお、映画『黒牢城』では、黒田官兵衛のその後が描かれなかった。史実では官兵衛は有岡城の陥落と共に救出されて、後に秀吉に仕えることになる。江戸時代まで生き延びた官兵衛は、隠居後に59歳で亡くなっている。

 

2026年6月13日 (土)

Die My Love

『ビューティフル・デイ』『少年は残酷な弓を射る』のリン・ラムジー監督が、愛と狂気の狭間で揺れる夫婦の姿を描いた心理ドラマである。第78回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、第83回ゴールデングローブ賞ドラマ部門主演女優賞にもノミネートされた。
主人公グレースを演じるのは、20歳の時『世界にひとつのプレイブック』でアカデミー主演女優賞に輝いたジェニファー・ローレンスである。本作ではプロデューサーも兼任し、出産後の女性が抱える孤独や不安を、自身の出産経験も生かして演じた。夫ジャクソンには、『ザ・バットマン』のロバート・パティンソンが扮した。原作はアリアナ・ハルウィッツによる小説『死んでよ、アモール』。プロデューサーとしてマーティン・スコセッシも名を連ねる。
グレース

田舎町に移り住んだ作家のグレースは、夫ジャクソンとともに新たな生活を始める。穏やかな日々が続くはずだったが、出産をきっかけに彼女の生活は一変する。執筆活動は滞り、育児による重圧と孤独、さらに断片的に訪れる幻覚が、日常を徐々に歪めていく。やがて現実と幻想の境界が揺らぎはじめ、グレースの精神は確実に崩壊へと向かっていく。

2025年製作/118分/PG12/アメリカ・イギリス合作
原題:Die My Love 配給:クロックワークス
日本公開日:2026年6月12日
☆4.2

草むら2

驚くことに、実際、撮影の当初はジェニファーが妊娠初期の頃だったが、野生の獣のような演技を披露した。おそらく、それはグレースの「母である」というところに共感できたんだと思うと監督は述べている。ジャクソンは、グレースを愛しているが、どういうふうに接したらいいかわからない。状況が悪くなればなるほど大丈夫だと思い込みたい、優柔不断のキャラクターである。

踊る

ジャクソンはグレースを心底愛しているけれども、いつも誤った選択をしてしまう。彼よりも彼の母親(シシー・スペイセク)の方が起きていることがクリアに見えている。時限爆弾のようなグレースをどう扱っていいのかわからなくなってしまう。ネズミ退治のために猫を連れてきて欲しいと言っていたのに、犬を連れてくる体たらくだ。

こども2

ジャクソンが連れきた犬を、グレースがライフルで撃つシーンや故意か誤ってか体ごとガラスに突っ込むシーンなど、衝撃的な場面が多々ある。半ば狂っているようなグレースを前にして、ジャクソンは混乱する。自分たちの人生に対しての反逆、そしてアイデンティティの喪失に対しての反逆、結婚生活の中でセックスレスになっていることへの反逆、クリエイティブな意味でのスランプに陥っていることへの反逆、まるで世界を全部燃やしてやりたいというふうに思っているような反逆、そして覚醒。まさにカオスである。

 

2026年6月 9日 (火)

FUJIKO

映画『FUJIKO』は、2026年5月、本品はイタリアで開催された第28回ウディネ・ファーイースト映画祭において、最高賞の「ゴールデン・マルベリー賞」と「ブラック・ドラゴン・特別観客賞」の2冠を達成した。上映後は5分間にわたるスタンディングオベーションが巻き起こったという。

FUJIKOtop

富士子役に抜擢されたのは、『茜色に焼かれる』で第46回報知映画賞最優秀新人賞・第43回ヨコハマ映画祭最優秀助演女優賞を受賞した片山友希。本作が長編映画の初単独主演という、キャリアの大きな転換点となる作品である。本作は木村太一監督が自身の「母の人生」と真正面から向き合って生まれた作品だ。MEGUMIが企画・プロデュースを担当している。

FUJIKO頬杖

静岡を舞台に、激動の時代を生きる女性が自らの生き方を模索し、困難を乗り越えながらも力強く歩んでいく姿を描いたヒューマン・ドラマ。1976年、激しい嵐により停電した病院で、富士子は娘の麻理を出産する。しかし母になった喜びもつかの間、夫の実家から理不尽な仕打ちを受け続け、まだ赤ん坊の麻理を姑(YOU)と義姉に奪われてしまう。実母・千代(岸本加世子)の力を借りてどうにか麻理を取り戻した富士子は、周囲の反対を押し切ってシングルマザーとして麻理を育てることを決意する。時代の波にもまれながらも社会に負けず自由を求め、周囲に支えられつつ必死に生き抜いていく。しかしその先に待っていたのは、彼女が憧れていたロックンロールのような波乱万丈な人生だ。

Fujiko談判
FUJIKOユー

FUJIKO 公開日:2026年6月5日
監督:木村太一
脚本:我人祥太、國吉咲貴
企画・プロデュース:MEGUMI
配給:Atemo
上映時間:95分

世間にはまだ古い価値観と社会規範が色濃く残る時代。両親に頼れない彼女は子供を預けられず、なかなか仕事が見つからない。そんな彼女の様子を、父の友人・大石(イッセー尾形)が静かに見守っていた。

「Japan as No.1」と謳われた高度成長から安定成長期への過渡期——日本中が浮き立つ一方、女性が自立して生きることには依然として大きな壁があった時代である。社会全体の価値観や家制度の重圧に真っ向から抗いながら、自らの人生を自らの手で切り拓こうとする富士子の姿は、令和を生きる私たちにも深く響く普遍的なメッセージを持っている。

FUJIKO勧誘

奈倉(MEGUMI)が経営する喫茶店廉バー「フォレスト」で働く富士子が、儲かる仕事と紹介されたのは、賭場の中居の仕事である。花札が行われる鉄火場で、客はもっぱら焼きそばを頬張る。その焼きそば作りにひたすらプライパンをあおり続ける。気前よくくれるがチップが懐に入るのだ。そんなある日に、賭場は警察に踏み込まれて、富士子も御用となって、留置所に収監される。

marimari

富士子は生命保険会社の勤め、保険契約数のダントツトップの座に輝く。落雷が激しい嵐の日、会社員(リリー・フランキー)から契約を取り付けてしまう。
何しろ富士子はへこたれない。ひたすら猪突猛進だ。娘の麻理が3歳になった頃、保険会社の同僚から結婚を申し込まれるのだった。

撮影監督を、King Gnuやmillennium paradeなど数々のアーティストの写真やMVを手がけるほか、広告、ファッションムービー、映画と多岐に渡って撮影を行なう川上智之が担当、エディターを「SHOGUN 将軍」でエミー賞を受賞した三宅愛架が務めた。さらに、劇中曲には、常田大希(King Gnu)や、ポパルダウド明(幾何学模様)など、多彩なアーティストらが制作に参加しており、作品世界を彩るロック性を内包した音楽にも注目だ。

2026年6月 8日 (月)

エリカ

エリカ
監督:宮岡太郎
脚本:井上テテ
配給:S・D・P
公開:2026年5月15日
上映時間:83分
予告編】にリンク

横浜国際映画祭コンペディション部門正式出品
ゴールドコーストコンペディション部門入選
ロムフォード・ホラー映画祭コンペティション部門入選
Stockholm City Film Festival コンペティション部門佳作
Spring Honor Hound Film Festival 最優秀俳優部門ノミネート(小林亜里)

エリカタイトル

パンフレットは上記のように、輝かしいノミネート歴・受賞歴が記されている。吟味すると驚くこともない履歴である。

エリカ出演者

ホラーである。
彼女いない歴23年。スーパーでアルバイトをしながら、まるで満たされない日々を送っている飯笹辰樹(望月歩)が主人公。ある日、彼はカフェで働く美しい女性・溝川エリカ(林芽亜里)と出会う。一目で心を奪われた辰樹は、足しげく店に通ううちに、少しずつ彼女と言葉を交わすようになっていく。 やがて距離を縮めていく。しかしエリカは、同棲中の恋人・黒石亮からの暴力に苦しんでいた。 彼女の抱える孤独と痛みに触れた辰樹は、いつしか「自分が彼女を守りたい」と強く願うようになる。

エリカ二人

ある夜、エリカの自宅を訪れた辰樹は、家の中から聞こえる悲鳴に導かれるように扉を開け。 その夜を境に、二人の関係は大きく変わり、辰樹の人生もまた静かに形を変えていく。 やがて恋人となり、同棲生活を始めた。辰樹にとって、それは生まれて初めて手にした幸福だった。 愛する人のためならどんなことでも受け入れられる。そう信じていた。

エリカ恐怖

エリカは独占欲が強く、相手の気を引こうとして自傷行為に走る、相手の気が自分に向いていなとキレる。学生のときエリカと同級生だった妹がエリカと付き合っていることを知ると、付き合いを止めるように言うが聞くはずもない。そのうちに次々に事件が起こりますます恐ろしくなっていく。エリカは現実世界によくいるキャラクターである。妹の同級生に起こった取り返しのつかない事件になったのだ。

しかしその頃から、辰樹の周囲で不可解な出来事が起こり始める。日常が少しずつ歪んでいく。拭いきれない違和感。そして、エリカの微笑みの奥に、ふと垣間見える不気味な「何か」。 もう逃げることはできない。

 

 

2026年6月 7日 (日)

マテリアリスト

マテリアリスト
上映日:2026年5月29日
フィンランド、アメリカ
上映時間:116分
配給:パピネスファントム・スタジオ
監督・脚本:セリーヌ・ソン

本作はラブストリーである。
ルーシー(ダゴタ・ジョンソン)は女性に男性を紹介するマッチングを仕事にしている。引き合わせた男がハズレだった女性から、罵声を浴びせかけられる場面がある。「ポン引き」と罵られたことがある。マテリアリストの仕事は悲しいかな、まさにポン引きの手口である。その女性が、男のストーカー行為よって家にストームをかけられて困っていると電話をかけてきた。家に駆けつけると、男は電話をかけたと知って、早々に退散してトラブルに至らなかった。

マテリアリスト1

ニューヨークの結婚相談所でマッチメーカーとして働くルーシーが、気が遠くなるほどの資産家の熱心にアプローチしてくるハリー (ペドロ・パスカル) と元恋人で売れない俳優ジョン (クリス・エヴヴァンス) の間で揺れ動く。

マテリアリスト会社

本作は街ですれ違った男性に主人公ルーシーが名刺を差し出すという場面から幕を開ける。そもそも、マッチングアプリが普及した現代に結婚相談所はやっていけるのかという、疑問が残るが。。
それと、マテリアリスト(物質主義者 、日常生活・恋愛・経財)精神的な価値よりも、お金やブランド品などの物質的な豊かさ、実利を重視する人形のある富に価値を感じる) というタイトル自体が大仰で場違いのニュアンスを感じる。

マテリアリスト2

いわゆる“バリキャリ”、(「バリバリ働くキャリアウーマン」の略)のルーシーは、成婚率の高い腕利きのマッチメーカーだ。

ルーシーの元を訪れる依頼人たちは、相手に求める条件を次々と並べ立てる。興味深いのは、国も時代も違えども、80年代バブル期に日本で流行した「高収入・高身長・高学歴」=3高を求めるユーザーが現代NYを舞台にした本作には多数登場すること 。とくに身長は180cm以上にこだわりがある。

対して男性は、相手になにおいても「若さ」を求める。男女ともに「美貌」が重要なチェックリストに入っている。

桁違いの金持ちで、身長は180cm以上で、面相はまあまあのハリーからプロポーズを受けて一夜を共にするも、心のどこかに迷いがある。
一方、再会したジョンはナイスガイで気も合うが、別れざるを得なくなった金銭トラブルがフラッシュバックする。なにしろ貧乏だ。
ルーシーには貧乏生活に疲れ果て、今の仕事を選んだ経緯があったのだ。そこに仕事面でのトラブルに見舞われる。

マテリアリスト3

ハリーは身長を伸ばすために信じられない手術を受けていた。15cmの下肢延長術を受けた、ということは前は165cmだったということだ。それを知ったルーシーは、ともかく著しく興醒めに違いない。
『週刊文春』の「シネマイチャート」 では〈見どころ〉として、NYの最新結婚事情と、自信満ち溢れたワーキングウーマンたちのファッションに注目。とある。

 

2026年5月28日 (木)

正直不動産

原作は、累計発行部数400百万部を突破した人気漫画『正直不動産』。画大谷アキラ、原案夏原武、脚本水野光博の不動産業界の闇に迫る、ビジネスコメディドラマ。
正直不動産1

監督:川村泰祐
公開:2026年5月15日
配給:ソニー・ピクチャーズ・エンタイメント
上映時間:119分
予告編】にリンク

「千三つ」と言われる不動産業界。「千の言葉のうち真実は三つしかない」という意味だ。信用のない不動産業界に身をおく永瀬財地(山下智久)は、契約のためなら嘘もいとわずに営業成績をあげてきた。しかし、地鎮祭のときに祠を破壊してしまった祟りで、嘘がつけない体質になってしまった。次々起こる不動産にまつわるトラブル、そしてライバル不動産会社としのぎを削る闘いに、嘘をつかない正直営業で立ち向かう本音ばかり言う永瀬は、客を怒らせて契約成立寸前の案件も台無しにする。
一方、お客様第一をとする新人・月下咲良(福原遥)は初めての賃貸仲介を任せられる。営業テクニックがものを言う不動産業界で、正直すぎる永瀬と月下の奮闘が始まる。

正直不動産

永瀬は高級車に乗りタワマンに住むという野望を抱きつつ、課長昇進をかけて同僚たちとしのぎを削る日々を送っていた。「ライアー永瀬」と呼ばれた時代の過去の契約トラブル、元同僚である不動産ブローカー桐山(市原隼人)が手掛ける大規模開発計画、そして因縁のライバル会社・ミネルヴァ不動産が仕掛ける悪質で巧妙な地上げ戦略など、不動産業界に渦巻く難題に、正直に立ち向かっていく。

正直不動産吹石

ミネルヴァ立川店店長の神木涼真(ディーン・フジオカ)が、街を開拓するため、「に空き家問題」に目を付ける。一方、その空き家をめぐり大手不動産も参入して闘いが始まる。そんな時、神木が売ることのできない特別な空き家が出現する。神木を救い、大手不動産を撤退に追い込むため、花澤(倉科カナ)や新加入の雪野遥香(見上愛)、立川店の社員たちが心を一つにする。

正直不動産アメリカ

パワハラ営業部長大川真澄(長谷川忍)は昭和気質が抜けない言動で周囲を翻弄する。永瀬を取り巻く女性陣も一筋縄ではいかない。海外赴任中の恋人榎本美波(泉里香)は、やり手の銀行員ながら酔っ払うと出てしまう秋田弁がトレードマークで、長瀬とつかず離れずの関係を続けてきたが、現在は遠距離恋愛中。そして美波の職場の先輩、鬼軍曹の異名を持つ愛原麻耶(松本若菜)。長瀬と美波の恋の行方、相原の鬼軍曹ぶりも見逃せない。

正直不動産社長

ミネルヴァ不動産の社長高橋克典、新入社員見組愛、副店長倉科カナ、カリスマ営業マンディーン・藤岡は感情が高ぶるとタップを踏むのが特徴。さらに、登坂不動の大のお得意様の大知真央、登坂不動産の社長草刈正雄と豪華な俳優陣が顔を揃える。
最後に勝つのは、正直か嘘つきか不能の。予測不能の大波乱が巻き起こる。

 

2026年5月25日 (月)

『君のクイズ』

『君のクイズ』の賞金1000万円をかけたクイズ番組『Q-1グランプリ』の決勝で、中村倫也演じる主人公の三島玲央と神木隆之介演じる本庄絆が対決した。本庄がクイズの問題が読まれる前に正解を出した、という謎の検証が行われる。

予告編リンク

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「クイズ番組の優勝者は、なぜ問題を1文字も聞かずに正解できたのか?」という問いを三島が解明していく。主人公の二人と同じくらい存在感を放つのがムロツヨシ演じるテレビ番組プロデューサーの坂田泰彦だ。

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主人公の三島と、堀田真由演じる桐崎恵茉との別れは、本庄の過去と同じくらい重要な物語の軸として配置され、女性の視点が物語に持ち込まれる形になっている。

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『Q-1グランプリ』でのヤラセや不正を疑われた本庄が検証番組に登場する。検証番組の生放送中に「なぜ問題を1文字も聞かずに正解できたのか?」という問いに答えを出せなければ、この世界から消えると三島に告げる。こうして三島の謎解きは自身の名誉やキャリアを越えるクイズへと変貌する。エンターテインメントの舞台で追い込まれていく三島と、それを煽る坂田、存在自体がミステリーである本庄の三つ巴の構図はスリリングだ。

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三島は、『Q-1グランプリ』と、坂田がプロデューサーを務め本庄が世に出るきっかけになったクイズ番組『Qのすべて』とのつながりにたどり着く。『Q-1グランプリ』決勝では、過去に本庄が『Qのすべて』で正答した問題が出されていたのだ。しかし、一方の三島の方にも別のクイズ大会で正答したことがある問題が出されていたことも明らかになる。つまり、番組制作側の坂田は、クイズ番組を盛り上げるため、勝負がある程度接戦になるように問題を選んでいたのである。ヤラセ、ギリギリである。しかも、その「操作」が事実であったとしても、本庄が最後の問題を0文字で正解できたことの理由は説明できない。番組終了が迫る中、三島は謎解きを迫られることになる。

本庄は『Qのすべて』で、『Q-1グランプリ』の最後の問題に答えており、その問題は山形のローカルCMに関するものだったのだ。それは、「ビューティフル、ビューティフル」から始まるCM曲でお馴染みの山形を中心としたクリーニングチェーン店の名前を問うものだった。三島は、本庄がいじめで橋の上から落ちざるをえなかった辛い記憶と、山形にいた頃に見ていたCMの記憶がリンクしたと推測した。『Qのすべて』の放送ではこの問題への回答がカットされていたが、それは本庄が泣き崩れてしまったからだと予想した。
三島がその考えに行き着いたのは、三島自身もまた交際していた桐崎との思い出に関連する問題に回答し、泣き出してしまったことがあったからだった。クイズの回答は、その人の生きてきた人生を映し出すものであり、そしてプロデューサーの坂田が狙っていたのは、人々が見たいと思う最高の画を映し出すことだった。つまり、『Q-1グランプリ』を生放送して用意した坂田は、クイズ番組を自然の流れに任せるのではなく、両者のポイントが拮抗するよう細工した上で、優勝の瞬間に回答者が涙を流す感動的なシーンを演出しようとしたのだ。

三島が涙したクイズは、「だれも死ななくていい優しいRPG(ゲーム)」から始まる問いで、本庄が回答したのは「ビューティフル、ビューティフル」から始まる問いだった。坂田をよく知る本庄は、このクイズ番組がすでにレールの敷かれた勝負であることを見抜いていた。最後の問題はこのどちらかで、坂田が優勝させたい方を勝たせて泣き顔を撮るというシナリオが作られているということまで悟っていた。そして、問題を読み上げようとした出題者の唇が閉じた瞬間、本庄は最初の一文字が口を開いた状態から発される「だ」ではなく、唇を閉じた状態から発する「ビュ」であることを確信していた。一文字目が読まれる前に「ママ、クリーニング小野寺よ」という答えを出すことができたのである。

三島は確かに「クイズ」を熟知していたが、本庄が理解していたのは「クイズ番組」というショービジネスで、坂田が何を求めているかということだった。本庄がやったのは「人の心を読むこと」「求められていることを読み解くこと」だった。
それは三島が苦手としていたことで、流産した桐崎と離れることになった理由でもある。振り返れば、三島は住む場所に悩んでいた桐崎に合鍵を渡したり、雨が降ったら傘を差そうとしたり、彼女が泣いていればティッシュを差し出したりと、起きた事象に対して「正しい」と思われる回答を示していた。答えがほしいわけではない時だってあるのに、先回りをしたのだ。三島はこの答えに辿り着いたが、検証番組の最後にそれを電波に乗せることを拒んだ。0文字回答は本庄絆の「魔法」だったとして番組を結んだ。

三島が愛していたのは自分を肯定してくれるクイズだったが、本庄が夢中になっていたのは、相手が出す問いに答えることだったのだ。三島と本庄のクイズ観は決定的に異なり、三島から見ればそれは「私のクイズ」ではない「君のクイズ」である。あるいは、本庄が答えてきたクイズは自分を肯定するための「自分のクイズ」ではなく、他の誰かを不快にしないための「君のクイズ」だった。

だが映画『君のクイズ』のストーリーをもう一段階深いものにしているのは、三島の姿勢を「正解」としては描いていないという点だ。検証番組で答えを言わなかったことを「君のために」と言う三島を、本庄は「自分のためでしょ」と切り捨てるのだ。三島は流産した桐崎にプロポーズした時も、純粋に「君のため」と思っていたはずだ。

実は本庄は、自己演出の果てに期待され続けることに嫌気がさしていた。いつかまた正解を間違え、あの日のように叩かれる時がくる、それならゲームを降りてしまいたいと、0秒回答に踏み切ったのだ。本庄の願いは、三島が検証番組で本庄の過去も坂田の演出も、それを逆手に取って1000万円を獲得したことも暴き、本庄が表舞台から消えざるを得ない状況を作ることだった。当然のことではあるが、三島はその「本庄が求める正解」を見抜くことができなかった。

「誰かの答えを探すのに疲れた」と言う本庄に三島は、答えのない世界などないと語りかける。人は常に答えを探し求めてしまうのだと。だが、三島はその「正解」を本庄に押し付けることはしなかった。「楽しかった」と、ただ主観的な感情を伝えるのだ。それは正解でも不正解でもない、ただの意見であり感情であり、三島にとっては紛れもない実感だ。そして、本庄にとっては、「他者の答え」そのものが自分の存在を肯定してくれるという経験になったのだろう。同時に、自分がどう思うかが大事だという三島らしい視点も与えてくれている。

そのタイミングで、偶然二人の頭上から紙吹雪が舞い、二人は笑顔で別れることになる。本庄はテレビ業界からは去るだろうが、また違う道を歩んでいくことを示唆するポジティブな締めくくり方だ。三島はレギュラー化される『Q-1グランプリ』への出演オファーを断り、「クイズは世界に向き合うこと」だと語る。

映画『君のクイズ』では、「国際女性デーに贈る花」の答え「ミモザ」を、三島が「ひまわり」と答えて不正解になるシーンがある。クイズの達人である三島が女性を理解できていないことを示す演出だ。

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なお、原作『君のクイズ』の文庫版には、書き下ろし短編「僕のクイズ」が収録されており、こちらは本編の後日譚となっている。
小説『君のクイズ』にリンク
 

2026年5月19日 (火)

ゼイ・ウィル・キル・ユー

悪魔崇拝者が巣食う高級マンションを舞台に、悪魔の生贄となるはずだったメイドが繰り広げる死闘を描いたホラーアクション。 エイジアのスーパーウーマン並の強さは、刑務所内の喧嘩で培われた。
ゼイウィルキルユウ1
ゼイ・ウィル・キル・ユー 監督:キリル・ソコロフ 脚本:キリル・ソコロフ、アレックス・リトヴァク 上映時間:95分 2026年5月8日

土砂降りの夜、父親の虐待から逃げ出してきたエイジアとマリアの姉妹は小さな店に小走りで入って雨宿りをした。幼いマリアに、エイジアは自分の左腕のタトゥーをみせて落ち着かせる。そのとき店に現れたのは父だった。隙をみて外へ走り出す姉妹の前に車で進路が塞がれた。エイジアは父に拳銃を向けて思わず発砲した。父は倒れたが、致命傷は免れた。その場にパトカーが駆けつけ、追い詰められたエイジアは妹を残して、その場から逃げた。

ゼイウィルキルユウ家たち

10年後、またも土砂降りの中、エイジアはニューヨークのマンハッタンに建つ高級マンション「バージル」の前に、イザベルという名で身分を偽り、立っていた。

【ここからネタバレ】
自分の部屋に案内されたエイジアは荷物をクローゼットにしまい、とりあえずシャワーをあびて上がると、不気味さを感じドアを塞ぎ、ベッドに座り、何が起きるのかを静かに見守る。結局、何も起きず眠りについてしまう。

ゼイウィルキルユウ頭タオル

ところが寝静まり返った夜中、ドアノブがガチャガチャと動き、冷蔵庫が動き、フードを被った人物がエイジアの足を舐めた。エイジアは飛び起きたが誰もいない。そのとき、背後から謎の人物が口を塞がれ、必死に抵抗してその謎の人物を気絶させるが、今度は通気口から別の人物が出現した。冷蔵庫の裏からも現れ、エイジアは気を失う。敵はゾンビの様相を呈する。
ゼイウィルキルユウ家たち刀
 
終盤のバトルは、豚の頭が登場する頃から、ヤケクソなカオス状態になる。
エイジアは「妹のマリアを救う」の一点でこのマンションに足を踏み入れた。父問題もいつの間にか解決して、エイジアは壮絶な血みどろな戦いを制してハッピーエンドを迎える。
ゼイウィルキルユウ空中

2026年5月16日 (土)

シンプル アクシデン

悲惨だがなぜか乾いたユーモアに包まれた作品である。 ある日、車の不具合でワヒドの働く整備工場にある家族が立ち寄る。その一家の男の記憶がよみがえってくる。それはかつてワヒドが反体制的であるという理由で不当に逮捕され、そこで拷問を受けたあの人物がだす音と同じだった。復讐心が沸き上がり、強引な手段で男を拘束するが、本当にこの男なのか確証は得られない。
イランの巨匠ジャファル・パナヒが手がけ、映画祭金獅子賞、「人生タクシー」でベルリン国際映画祭金熊賞を受賞しているパナヒ監督は、本作でカンヌ国際映画祭のパルムドールを受賞したことから、3大映画祭すべてで最高賞を受賞する快挙を成し遂げる。巨匠と呼ぶに相応しい。

予告編】にリンク
2025年製作/103分/G/フランス・イラン・ルクセンブルク合作
原題:Un simple accident
配給:セテラ・インターナショナル
公開日:2026年5月8日

シンプル アクシデント

ワヒドは序盤こそ復讐心に駆られ、かつての拷問者「義足のエグバル」らしき男を衝動的に拉致し、土に埋めて殺害を試みる。かと思えば理性を取り戻し、男が本当にエグバルかどうかを冷静に検証するなど、混乱した内面を露呈させる。しかし、同行者が増えるにつれロードムービーの様相を呈するに至って、彼は状況を俯瞰するような態度へと移る。
シンプル アクシデント333

女性カメラマンのシヴァは「義足のエグバル」らしき男に執拗に関わりを持とうする。花嫁のゴリは性暴力で負った深い悲しみと怒りに囚われ、その婚約者アリは一歩引いた視点でゴリに寄り添う優しさを見せる。シヴァの元恋人であるハミドは直情的で常に激しく怒り、暴力的な解決に走りがちだ。警察が目をつけたワヒドから賄賂を頂戴する場面では、なんとハンディキャッシャーが活躍する。そんなに取るのかと無念のことばをもらす。
シンプル アクシデント各人

同乗者たちは、捕らえた男を「復讐のために殺すべきか」「罪を認めさせて裁くべきか」と議論するが結論は出ない。かわりに同乗者は、「義足のエグバル」らしき男を、木の幹に縛りつけ、シヴァはじめ同乗者がいたぶって、謝罪をさせようとする。

最後のシーンは、家の中で後ろ向きのワヒドに片脚が義足のゆっくりした足音が迫ってきて、その足音がまたゆっくりと立ち去っていく。「義足のエグバル」が何かを置いっていったに違いない。
哲学的なテイストが漂う作品である。

2026年5月13日 (水)

ひつじ探偵団

大好きな飼い主(ヒュー・ジャックマン)を殺された羊たちがその犯人を見つけ出すべく奮闘する姿を描いた異色のミステリー映画。
ひつじ探偵団1

ひつじ探偵団
原題:THE SHEEP DETECTIVES
公開:2026年5月8日
監督:カイル・バルダ(『ミニオンズ』の共同監督)
脚本/原案:クレイグ・メイジン
原作:レオニー・スヴァン『ひつじ探偵団』

予告編】にリンク

ヒツジ探偵団ジョージ

イギリスのどかな田舎町。羊飼いのジョージは愛する羊たちに囲まれながらトレーラハウスでひとりで暮らしている。彼は毎晩羊たちに探偵小説を読み聞かせているが、実は羊たちは物語を理解しており、その時間を楽しみにしていた。

のぞき見

そんなある日、ジョージが死体となって発見される。リーダーの羊リリーを先頭に調査に乗り出す。手がかりを追ううちに、ジョージには巨額の遺産があったことが判明。愛するジョージの無念を晴らすべく、羊たちは犯人捜しに奔走する。
まわりから警部と呼ばれ再三巡査と訂正するが、そのまったく頼りない巡査が中心となって、どうにか謎を解決し真犯人を逮捕するに至る。

質問
1)羊と山羊はどう違う?
2)なぜ、角がある羊が正面からガチンコでぶつかるのか?
3)物語に不釣り合なほど派手なおばさんのエマ・トンプソンは何者?

AIの解答
1)羊(ヒツジ)と山羊(ヤギ)は、どちらもウシ科の偶蹄類ですが、最も大きな違いは、羊は臆病で群れる草食(地上の草)、山羊は好奇心旺盛で高い場所を好む雑食(木の葉や枝)という点です。見分け方は、山羊は尾が短く上に上がり、アゴ髭がある一方、羊は尾が垂れ下がり、アゴ髭がないことです。
2)角のある羊(ヒツジやヤギ)が正面からガチンコでぶつかるのは、主に「コミュニケーション」や「順位付け・争い」のルールに基づく行動です。決して闇雲に攻撃しているわけではなく、生得的な闘争の形と言えます。
(いまひとつだな。)

ひつじ探偵団エマ

3)エマ・トンプソンは、殺された羊飼いジョージの死の真相を解明しようとする羊たちを、客観的な視点や異なる立場から見つめる人物、あるいは物語の背景を補完する役割として出演していると見られています。
また、彼女は出演のみならず、その高い演技力と存在感で作品の質を高める重要なキャストとして位置づけられています

 

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