1960年代以前

『サイコ』

サイコ [DVD]
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Psycho
監督:アルフレッド・ヒッチコック
脚本:ジョセフ・ステファノ
原作:ロバート・ブロック
音楽:バーナード・ハーマン
アメリカ  1960年  109分

殺人の動機は金が目当てのような筋立てで進み、観客の目をそちらに向けておいて、金とは関係のない理由が殺人の動機となる。AFIが選ぶ「アメリカ映画ベスト100」の18位。バイオリンが奏でる音楽が恐怖感を煽るサイコスリーラー映画の古典。

不動産屋の事務員マリオン(ジャネット・リー)の婚約者サム(ジョン・ギャヴィン)は父の残した借金と別れた元妻への扶養料で、結婚に踏み切れない。
娘のために不動産を買った初老の男が払った金が4万ドル。マリオンが預かって銀行に入れることになった。男は「幸福は金で買えないが、不幸は金で追い払うことができる」と、気の利いたことを口にする。

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魔が差したマリオンはその金を着服し街を出る。立ち寄ったのは、独身男ノーマン(アンソニー・パーキンス)が経営する幹線道路から離れたベイツ・ホテル。

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ノーマンはマリオンをホテルの近くにある自宅に夕食に誘おうとする。ところが、母親とノーマンのやり取りが家から聞こえてきて、母親はノーマンがマリオンにうつつを抜かしたと大声で叱責する。
鳥の剥製が飾られたホテルの応接室に案内されたマリオンは、ノーマンの話にイライラしながら、旨くなさそうなサンドイッチを頬張る。

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ノーマンのしつこい誘いを断り、部屋に戻ったマリオンがシャワーを浴びていると、突然侵入してきた人物に彼女はあっけなく刺殺されてしまう。

翌日、マリオンを探しにきた妹ライラ(ヴェラ・マイルズ)とサムは、夫婦を装ってモーテルに泊まり、マリオンが借りた部屋に彼女の痕跡を発見する。
そしてライラはノーマンの家で母親の白骨化した遺体を発見するのだった。
ノーマンは逮捕され精神分析医が事件の全容を関係者に解説する。

本作は二重人格物の嚆矢。
真実の行方』(96年)も二重人格物である。
多重人格は『24人のビリーミリガン』(ダニエル・キース)で最高点に達し、収集がつかなくなった。→ブログランキングへ

『裏窓』

裏窓 [DVD]
裏窓 [DVD]
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Rear Window
監督:アルフレッド・ヒッチコック
脚本:ジョン・マイケル・ヘイズ
原作:ウィリアム・アイリッシュ
音楽:フランツ・ワックスマン
アメリカ  1955年 112分

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カメラマンのジェフ(ジェームズ・スチュアート)は、脚の骨折でアパートの中での車椅子生活を余儀なくされている。彼の気晴らしは窓から見える隣のアパートの住人たちを覗き見すること。窓から外を見ると、まさにそれは小宇宙、隣のアパートが丸見えなのだ。

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部屋からは、新婚ほやほやの夫婦、レッスンに余念がないセクシーなバレリーナ、男を追い求める孤独な未亡人、ピアノを弾く音楽家が見える。多くの作品でどこかに姿を見せるヒッチコック監督は、本作ではピアニストの部屋で時計のネジを巻いている。
問題は夫が粗野で、口論が耐えないセールスマンの夫婦である。

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ある日、セールスマンの妻の姿が見えなり、ジェフは夫が殺害したのではないかとの疑惑を抱く。
看護婦のステラ(セルマ・リッター)も恋人のリザ(グレース・ケリー)も、覗き見はモラルに反すると思っている。肉眼ならまだしも双眼鏡や望遠レンズを使って盗み見することは、犯罪だと言う。はじめはジェフの妄想と取り合わなかったふたりだが、彼が次々に挙げる状況証拠に殺人の疑惑を抱くようになる。そうなるとモラルもなにもあったものではなく、ジェフは双眼鏡や望遠レンズを駆使して四六時中覗くことになる。もちろんふたりも興味津々で、話題はもっぱらセールスマン風夫婦のこと。
この覗きも殺人の疑惑もどんどんとエスカレートしていくところが本作の見所。

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ジェフは友人の警官に捜査を依頼するが、証拠がないとまともに取り合ってもらえない。警察が動かないなら自分たちで証拠をつかもうと、リザはセールスマン風の部屋にしのびこもうとするのだった。

画面に映るのは、部屋から見える隣のアパートで起こっていることと、部屋で繰り広げられるジェフとリザやステラや警官とのやり取りだけである。まるで舞台劇のように計算された画面が組み合わされてストーリーが進んでいく。
本作は、第27回アカデミー賞の監督賞、脚本賞、撮影賞(カラー部門)、録音賞にノミネートされた。
本作は、アメリカン・フィルム・インスティチュート (American Film Institute, AFI)が選ぶ「アメリカ映画ベスト100」の42位である。 →映画(全般) ブログランキングへ

『バージニア・ウルフなんかこわくない』

バージニア・ウルフなんかこわくない [DVD]
Who's Afraid of Virginia Woolf?
監督:マイク・ニコルズ
脚本:アーネスト・レーマン
製作:アーネスト・レーマン
アメリカ  1966年  131分  ★★★★★

この映画を一言でいうと、真夜中に、他の夫婦を巻き込んで行われた壮絶な夫婦喧嘩の顛末である。本作は、1962年ブロードウェイにて初演された、エドワード・オールビーの戯曲をもとに作られた。

土曜日の真夜中に、歴史学教授のジョージ(リチャード・バートン)と年上の妻マーサ(エリザベス・テイラー)は、彼女の父である学長が開いたパーティから帰宅した。こんな夜遅くに、マーサは新任の若い生物学教授のニック(ジョージ・シーガル)とその妻ハネー(サンディ・デニス)を招待したという。「あのハンサムな夫とケツの小さい女を招待したのか?」と夫婦ならではのあけすけな会話のあとに、いつも通りの口喧嘩が始まった。ひとしきりバトルがあって、一体どこまでエスカレートするのかというところで、玄関のチャイムが鳴る。

招かれたニックとハネーは、取り込み中だし夜も遅いので失礼しようと常識的なことを言うのだが、なにしろマーサは学長の娘で常識を欠いた女、断って鼻を曲げられたら、大学での昇進に影響しかねないと考えた夫婦はひとまず腰を降ろして飲み始める。

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4人はウイスキーだジンだブランデーだと、つまみもなしに恐ろしいくらいの量をカポカポ飲むのである。ジョージとマーサの喧嘩は終わったわけではなく、マーサは学長の娘と結婚したジョージが思い通りに出世しないことに嫌味を言い、ジョージはマーサの男遍歴を口にする。

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そのうちにニックがジョージに妻がかつて想像妊娠したことをこっそり教え、さらに財産目当てで結婚したことを語る。そのことをジョージは皆の前で暴露したものだから、ハネーはブランデーをがぶ飲みし正体を失ってしまう。
子供がいるかいないかは、どちらの夫婦にとっても重大な関心事で、ジョージとマーサは、実際は存在しない息子の話題を挙げ、月曜日に寄宿学校から帰ってくることになっていると話す。

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ジョージが外に出て行ったすきに、マーサはニックを誘惑し、ふたりは2階の寝室に消えてしまう。
外から戻ってきたジョージは、架空の息子を死んだと最悪の結末をマーサに告げ、喧嘩は終結するのだった。この辺りで、習いとなっているジョージとマーサの夫婦喧嘩のカラクリに、ニックは気づく。
そして、疲労困憊したニックとハネーは帰宅する。
夜が明け外が明るくなったころに、疲れ果てた夫婦の会話は穏やかになり、ふたりはベッドに入る。

口論は殺人が起こっても不思議ではないくらいにエスカレートするが、そこはジョージとマーサはわきまえていて、一歩手前で事なきを得るのだ。この夫婦喧嘩はふたりにとっては日常茶飯事の、ストレス解消のゲームのようなもの。
膨大な量の会話が、リチャード・バートンとエリザベス・テイラーによって交わされ、そこに紛れ込んでしまい、秘密が暴露され散々な目に遭うニックとハネー夫婦は、貧乏くじを引いてしまったというところ。

タイトルの『バージニア・ウルフなんかこわくない』は、マーサが、ディズニーの『三匹の子豚』で歌われる「大きな悪いオオカミ(The Big Bad Wolf)なんかこわくない」という歌をもじって、「バージニア・ウルフ(Virginia Woolf)なんかこわくない」と歌うシーンがあり、ここからとったもの。
タイトルの意味するところは、ふたつの説があるといわれている。
ひとつは洞察力が鋭いとされるバージニア・ウルフに、心を見透かされてしまうかもしれないと怖がらなくていいという説と、もうひとつは難解な彼女の小説を理解できなくて馬鹿にされると怖がらなくてもいいという説である。
ちなみにバージニア・ウルフは、代表作の『ダロウェー夫人』などを書いた、20世紀のはじめに活躍したイギリスの女性小説家。20世紀モダニズム文学の主要な人物である。
また、『めぐりあう時間たち』(・ダルドリー監督 2002年)で、ニコール・キッドマンが、バージニア・ウルフを演じてアカデミー賞主演女優賞を受賞している。

本作品は、第39回アカデミー賞の主演女優賞(エリベザス・テイラー)、助演女優賞(サンディ・デニス)を受賞した。なお、このほか作品賞、監督賞、主演男優賞、助演男優賞、脚色賞などにノミネートされた。→人気ブログランキング

→2016.3.24『ダロウェイ夫人』ヴァージニア・ウルフ

『マドモアゼル』

『マドモアゼル』は、ツタヤの掘り出し物コーナーにあった。
あらすじは、年増女が、己の歪んだ欲望を満たすために村に甚大な被害を与え、おまけに一人の男が殺されるように仕向け、やることはやったからと村を去っていく物語。まさに魔女の話。

マドモアゼル [DVD]
マドモアゼル [DVD]
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Summer Fire
監督:トニー・リチャードソン
脚本:ジャン・ジュネ
製作:オスカー・リュウェンスティン
製作国:イギリス  1966年

ハイヒールを履き着飾った厚化粧の年増の女(ジャンヌ・モロー)が用水溝の堰を開けようとしている。村を水浸しにするつもりだ。悪戦苦闘の末、堰が開き水は村をめがけて勢いよく流れはじめる。
村は洪水となり家畜たちが溺れ、それを助けるために村人たちはてんやわんやとなる。勇敢に家畜を救い大活躍したのは、イタリア人のマヌー(エットレ・マンニ)。彼は、同僚と息子と連れて森の木を切る出稼ぎにきているのだ。

1

その女は、2年前にパリから派遣されて村の学校の教師として働いている。村の人々からは、マドモアゼルと呼ばれ尊敬を集めている。
村ではすでに2件の放火事件が起こっていて、男たちはマヌーの仕業にではないかと噂しているが、女たちはハンサムでセクシーなマヌーそんなことをするはずがないと思おうとしている。

2

マドモアゼルはマヌーの息子ブルーノにことのほか厳しく、精神的な虐待を加えてると言ってもいいくらいの接し方である。にもかかわらず、ブルーノはマドモアゼルを慕っている。
そんななか、放火事件がまたもや起こり、ブルーノは燃えかすのノートの切れ端からマドモアゼルが犯人と知ってしまう。

やがて、家畜のための貯水槽にヒ素が混入され、家畜が全滅する事件が起こる。村人たちはマヌーの仕業と断定して、マヌーを逮捕することを警察に申し出るのだが、証拠がないため警察は腰をあげることができない。

3

そうしたなか、いよいよマドモアゼルの欲情の炎は燃え盛り、ついに森のなかに入って行ってマヌーを誘惑する。ふたりは、翌朝まで愛欲に溺れるのだった。
朝になって、マドモアゼルは破れて泥にのついた衣服のまま村に帰ってきた。村人たちはマドモアゼルを見て、「マヌーやられたのか?」と訊ねると、マドモアゼルは「ウィ」と答えるのだった。悪女だ。
そしてマヌーは村人のリンチでなぶり殺され、遺体はいずこかに埋められる。
夏がすぎる頃、マドモアゼルは惜しまれながら村を去ろうとしていた。だが、彼女の正体を知っているブルーノは、去って行く車にツバを吐きかけるのだった。

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単刀直入でわかりやすい表現。持って回ったようなところは微塵もない。
チェーンソーの音、川の流れや小鳥のさえずり、虫の音、家畜の鳴声などが、BGMがない分鮮明に聞こえ、シンプルなストーリー展開にメリハリがつく。

この映画の数年前に封切りされた『女王蜂』のポスター看板は、大胆だった。
S病院の道路を挟んで向かい側にあったどでかい看板は、少年少女に穏やかならざる欲情の芽生えを感じさせた。今まさに、女性のスカートのなかに何者かの手が忍び込まんとしている、それだけの構図なのだが、あれは衝撃的だった。その『女王蜂』のDVDを探しているが、手に入らない。


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