1994年

『シリアル・ママ』

ボルチモアの閑静な住宅地で暮らす専業主婦のビバリー(キャスリン・ターナー)は、理想的な妻であり母親である。ただ少し身びいき過ぎる。一家は歯科医の夫とティーンエイジャーの兄妹という、典型的な白人中産階級の家庭である。彼女は一家の平和を乱す者は誰であろうと容赦はしない。

1308212_2

朝、家族を送り出したあと、ビバリーは友人に脅迫電話をかけ卑猥な言葉を浴びせてストレスを解消している。
高校生の息子の面談で、数学の教師から「ホラー映画の見過ぎ、精神病院に行くように」と注意を受たことが気に入らず、教師を車でひき殺してしまう。
次は、娘を振った男を火掻き棒で刺し殺す。
歯科医の夫に急患として電話をかけたきた夫婦を、妻をハサミで刺し夫はクーラーの室外機を落として殺してしまう。

シリアル・ママ 【DVD】
Serial Mom
監督:ジョン・ウォーターズ
脚本:ジョン・ウォーターズ
音楽:バジル・ポールデュリス
アメリカ  1994年  95分  ★★★★*

日曜の朝、一家4人で教会に出かける車の中で、「ママは連続殺人犯(Serial Mom)なの?」と問いかける息子に、ビバリーは「朝食のシリアル(Cereal)しか知らないわ」と答える。

1308213

息子がアルバイトをするビデオショップで、返却ビデオの巻き戻しをしていないことを息子に注意された老婦人が、「人殺しの息子」と罵ったことにビバリーは腹を立て、老婦人をラム肉の塊で撲殺する。
その殺人現場を目撃した息子のシートベルトを締めないポルノ好きの友人を、ロックのライブ会場まで追いかけていく。
そこでは、女性パンクロックバンド「L7」が、扇情的なラクダの唇のパンツを履いて「ガス室」を演奏しているところだった。ビバリーはその友人を焼き殺す。すでに有名人になったビバリーは、聴衆が「シリアルママ」の連呼で騒然とする中、ついに逮捕される。

1308215

彼女は大衆の注目の的となる。Tシャツやワッペンが売れ、トレーシー・ローズ主演の映画の話が持ち上がる。異常なのは彼女だけではない。社会なのだ。
裁判が開始されると、彼女は弁護士を解雇して自分で弁護を始めてしまう。すると、裁判はビバリーの思い通りにトントン拍子に進み、無罪になってしまう。
しかし、ビバリーは女性陪審員(パトリシア・ハースト)が秋なのに白い靴を履いていたことが気に入らず、「母親に教わったはず」と言いながら電話の受話器で殴り殺してしまう。

際物の感があったパトリシア・ハーストやトレーシー・ローズを出演させ、L7にラクダの唇のパンツを履かせるなどのバッド・テーストを撒き散らしているところがいい。陽気でパワフルなキャサリン・ターナーの演技が光るブラックコメディの金字塔である。世の中で自分たちが最も優等であると信じているWAPS(ホワイト アングロサクソン プロテスタント)を皮肉った映画のひとつである。→ブログランキングへ

【ワプス(WAPS)を風刺する場面がある作品】
グラン・トリノ(2008年)
ステップフォード・ワイフ(2004年)
アメリカン・サイコ(2000年)
アイズ・ワイド・シャット(1999年)
誘う女(1995年)
虚栄のかがり火(1990年)

『パルプ・フィクション』

パルプ・フィクション [DVD]
Pulp Fiction
監督:クエンティン・タランティーノ
脚本:クエンティン・タランティーノ
原案:クエンティン・タランティーノ/ロジャー・エイヴァリー
音楽:カリン・ラクトマン
アメリカ   1994年  154分   ★★★★★

三つの話が別に別に進み、最後のシークエンスで最初の場面に戻り、ストーリーがつながるという構成になっている。

レストランで、チンピラの男女が突如銃をかざして怒号をあげたところで画面はストップし、そこからクレジットが流れる。

130302pulp_fiction

場面は変わって、黒づくめの殺し屋ヴィンセント(ジョン・トラボルタ)とジュールス(サミュエル・ジャクソン)が、アメリカンジョーク満載のマシンガントークを交わしながら、組織を裏切った男たちの隠れ家に向かっている。ジョン・トラボルタは、ギャング役が板についたようにピッタリはまっている。

130302pulp_fiction2

話の内容は、アムステルダムの麻薬事情、最近コカインよりもヘロインが流行っていること、ボスの妻の足をマッサージした男が4階から突き落とされ失語症になった話。これらはその後に起こるストーリーを暗示している。
ふたりは仕事をつつがなくこなし、つまり裏切り者を殺し、金塊の入ったカバンを取り返して帰路につく。

130302pulp_fiction4

【ボスの妻とのデート】愛妻家のボス・マーセルスから妻のミア(ユマ・サーマン)のお守りを頼まれたヴィンセントは、どうしたものかと思いあぐねて、とりあえず売人からヘロインを手に入れる。ミアの望み通り、有名女優のそっくりさんがいるレストランに出かけ、食事をする。レストランで、急遽開かれたダンス大会に出たふたりは優勝してしまう。ヴィンセントの『サタデイ・ナイト・フィーバー』ばりの踊りが見もの。ふたりは意気揚々と屋敷に戻ってくるが、ミアがヘロインの過剰摂取で心停止となり、ヴィンセントは慌ててミアを売人のところに運ぶ。

130302pulp_fiction7

【ボクサーの逃避行】落ち目のボクサーのブッチ(ブルース・ウィルス)は試合で八百長負けするはずが、相手をノックアウトして勝ってしまい、マーセルスに捕まることを恐れ街を出ようとする。ところが恋人はブッチが大切にしている祖祖父から受け継いだ金時計をアパート置き忘れてくる。金時計を取りにアパートに舞い戻るが、交差点を渡るマーセルスに出くわす。マーセルスに追いかけられてブッチが逃げ込んだ銃砲店でふたりは監禁され、ホモ男たちに犯されそうになる。

130302pulp_fiction8_2

【車のなかの死体の処理】話は前に戻り、ひと仕事を終えたヴィンセントとジュールスが車で帰るとき、後部席に乗せたジュールスの知合いの男をヴィンセントが誤って銃で頭を撃ち抜いてしまう。車の中が、骨と脳みそと血だらけになり、仲間のジミー ( クエンティン・タランティーノ)のガレージでどうにかしようとする。恐妻家のジミーは看護師である妻のボニーが、夜勤明けで帰ってくるまでになんとかしてくれないと、離婚されてしまうと騒ぐ。
そこに、マーセルスが派遣した始末屋のウルフがやってくる。
車の中を清掃しとりあえず市中を走れる状態にする前に、ウルフのマッシブなトークに、殺し屋ふたりもジミーも観ている者もイライラさせられる。

130302pulp_fiction10

場面は初めのレストランに戻って、血だらけの黒服をジミーから借りたTシャツとバミューダーパンツに着替えたヴィンセントとジュールスが、レストランで朝食を摂りながら話をしている。ジュールスはいまの稼業から足を洗うと言う。そして、ヴィンセントがトイレに入ったあと、チンピラの男女が銃を振りかざし、大声をあげ始める。

女性に対しては、マールセルにしてもブッチにしても、ジミーにしても、愛妻家だったり、恐妻家だったりする。
こういう映画でありがちな、女が男に虐待される場面は出てこない。監督は多分マザコンなんだろうな。
悲惨な殺しが次々に起こるが、タランティーノ監督が仕掛けているのは下っだらない話(プルプ・フィクション)のコメディである。映画(全般) ブログランキングへ

『ノーバディーズ・フール』

ノーバディーズ・フール [DVD]
Nobody's Fool
監督:ロバート・ベントン
脚本:ロバート・ベントン
原作:リチャード・ルッソ
製作:スコット・ルーディン/アーリン・ドノヴァン
製作総指揮:マイケル・ハウスマン
音楽:ハワード・ショア
製作国:アメリカ合衆国  1994年 110分

冬を迎える、ニューヨーク州の田舎町。
60歳の土木作業員サリー(ポール・ニューマン)は、中学代の恩師ミス・ベリル(ジェシカ・タンディー)の家に下宿している。
彼とヴェラの結婚は、はるか昔に失敗に終わり、息子がわずか1歳のときにサリーは家を出た。

_4

サリーは仕事中の事故で膝にケガを負い、雇い主のカール(ブルース・ウィリス)とそのことで係争中である。とは言ってもサリーとカールは気心のしれた悪友同士。
カールは浮気者で、妻のトビー(メラニー・グリフィス)は悲嘆にくれている。ことあるごとにカールに町一番の美人トビーを大切にしろと言い、トビーを慰めてきたのがサリーだった。

_2

気負って向かった裁判で、サリーはあっさり負けてしまう。
腹いせに、カールの建築現場からコンクリートブロックを盗もうと、オンボロトラックにコンクリートを積見込んでいると、重さに耐えかねたトラックが壊れてしまう。そこに、たまたま音信不通だった息子のピート一家が車で通りかかり、息子たちは別れた妻のヴェラのところへ感謝祭の祝いに行くところだった。なんという偶然だろう。

感謝祭の日。元の妻ヴェラの家を訪ねたサリーは、ピートの長男、つまり孫のウィルと出かけることになる。サリーは臆病なウィルに「勇気を出すこと」を教える。
息子の教えてやれなかったことを、孫に教える、せめてもの罪滅ぼしだ。

息子のピートは妻と別れたうえに大学教授の職を失い、サリーの土木作業のアシスタントとして働くことになった。ところがピートの出現で、少ない仕事が一層少なくなるといじけるロブ(プルット・テイラー・ヴィンス)は、現場から怒って去っていく。
ロブをなだめようと追いかけたサリーは、ロブの後ろについて歩道を車でゆっくり走っているところを、運悪くピントのずれた若い警官(フィリップ・シーモア・ホフマン)に見つかりってしまう。銃で狙いすまされたサリーは、善良な市民を威嚇する警官を殴り倒してしまう。

フィリップ・シーモア・ホフマン演ずるこのバカ警官、『天才バカボン』の警察のように、どこでも銃をぶっぱなしそうなのだ。名優も駆け出しの頃は、端役だ。

リーはあわや刑務所送りになりかけるところ、なんとか丸く収まり留置所から出る。

_3

一方トビーは浮気に懲りないカールに愛想をつかす。
サリーは「一緒に町を出てハワイに行こう」とトビー誘い、いっときは誘いに乗るトビーだが、結局トビーはカールの許へ帰っていく。
息子のピートも妻とよりを戻しウィルとともに町を去ってゆく。
一日が終わり疲れ果てて、ミス・ベリルの下宿に戻ったサリーは、彼女の傍で笑みを浮かべながら眠りにつくのだった。

ところで、サリーは毎週同じ数字を買い続けてきた馬券を、警察沙汰で買えなかったが、その数字の馬券がなんと万馬券になった。
落胆しているサリーにビートが馬券をわたす。気を利かせて買っておいたのだ。
人生悪いことばかりではない。

リーは、常に仕事をしているわけでなく、いわばその日暮らし。
60歳になって蓄えはなく、一体、残りの人生はどうするのだというような状況なのに、いたって呑気なのだ。友人たちと一緒にいれば何とかなるさという感じだ。

みんなから慕われ、男気があって優しい、それなのに早々と離婚して家を出たサリー。彼を取り巻く人々の、彼と繋がっていることで癒される、ほのぼのとした人間関係を描いた心暖まるドラマ。
本作は、ジェシカタンディーの遺作となった。


映画(全般) ブログランキングへ

『クイズ・ショウ』

クイズ・ショウ [DVD]
クイズ・ショウ [DVD]
posted with amazlet at 12.07.08
原題:Quiz Show
監督:ロバート・レッドフォード
脚本:ポール・アタナシオ
原作:リチャード・N・グッドウィン
音楽:マーク・アイシャム
製作国:アメリカ合衆国 1994年

本作品は、1950年代後半、爆発的にテレビが普及したアメリカで、実際に起こったスキャンダルをもとに作られている。

バービー・ステンペル(ジョン・タトゥーロ)は、圧倒的な正解率で毎週勝ち続ける、大人気クイズ番組「21(トウェンティワン)」のヒーローであった。
ところが、視聴率が横這いになり、スポンサーからクレームがつく。
冴えない風体のユダヤ人のステンペルが、高学歴の挑戦者を打ち負かすことで人気があったが、その構図は飽きられてきた。(ステンペルの右上の犬歯が黒味を帯びていて、ついそこに目がいってしまう。ジョン・タトォーロは、こういうどこか狂気の要素を含んだ人物役がぴったりだとくる→【2012.06.09】『シークレット・ウィンドー』DVD
そこで、容姿端麗で申し分ない家柄の、ハーバード大学の若き教授チャールズ・ヴァン・ドーレン(レイフ・ファインズ)を、次のスターに仕立てようと、プロデューサーのダン(デヴィッド・ペイマー)とアル(ハンク・アザリア)は目論む。
ふたりはクイズの問題と解答を教えるとドーレンに持ちかけるが、フェアに戦いたいと彼は断る。

1

チャンピョンの劇的な交代劇を演出しようと、ダンはステンペルにわざと誤答するように迫ると、答えを知らされて戦ってきたステンペルは、苦悩しながらダンの筋書きに従う。
ドーレンへの問題は面接のときに出題されたものだった。
ダンの演出通りにチャンピオンが交代した。
初めは控えめだったドーレンだが、段々と大胆になり正解をあらかじめ教えてもらうようになってしまう。

2

立法管理委員会の捜査官、「ハーバード大の法科で1番だった」が口癖のディック・グッドウィン(ロブ・モロー)は、テレビ局の不正を暴こうと調査に乗り出す。そして八百長を証明する証人と証拠が見つけ出す。

大陪審で、ステンペルは己れの欲望を丸出しにした証言をするが、ドーレンはいたってクール。
ダンは次のように答えた。
スポンサーも局も満足、回答者の懐に思わぬ大金、大衆も喜んだ、誰か損を?
この分野で政府の規制は必要ない。クイズ番組は公益事業じゃない、娯楽です。我々は犯罪者はない、ショービジネスの人間です
」。
ヤラセは暴かれたものの、犯罪は成立しなかった。ステンペルは世間の笑い者になり、ドーレンは大学を去る。

テレビにヤラセはつきもの。品行方正なモラルを求めるのは、無理というもの。
作る側の出演者に対する意向が、初めはこうやったらどうだろうくらいに控えめなものが、こうやった方がいいになり、しまいには「台本の通りにいきましょう」と言い方は穏やかなものの、強制する。

バービー・ステンペルもチャールズ・ヴァン・ドーレンも実在の人物。
のちに、ドーレンは世界的名著の『本を読む本』(M.J.アドラー C.V.ドーレン/外山滋古 槇未知子訳 講談社学術文庫 1997年)の共同執筆者となる。

ボビー・ダーリンが歌うジャズのスタンダードナンバー『マック・ザ・ナイフ』で、この映画は始まる。クレジットが流れるエンディングでも、変調された『マック・ザ・ナイフ』が流れる、ノリのいい曲から時代の香りが漂ってくる。

『ショーシャンクの空に』

ショーシャンクの空に [DVD]
原題:The Shawshank Redemption
原作:・キング『刑務所のリタ・ヘイワーズ』(『ゴールデンボーイ』新潮文庫に所収)
監督:フランク・ダラボン
脚本:フランク・ダラボン
製作国:アメリカ合衆国   1994年  ★★★★★

1947年、銀行の副頭取になったアンディ(ティム・ロビンス)は、妻と不倫相手殺しの罪で終身刑となり、ショーシャンク刑務所(架空の刑務所)に収監される。
入所して1月経ったときに、アンディは調達屋のレッド(モーガン・フリーマン)に、鉱物採取用のロックハンマーを注文する。
地質学に興味があるんだとさ。

物語は、レッドが渋い声で語る形で進む。
アンディは、荒くれ者たちから2年間執拗な暴行を受け続ける。
ある日の野外作業中、凶暴な刑務主任(クランシー・ブラウン)が亡くなった弟の遺産に課せられる相続税が高いとぼやいているのを聞きつけて、アンディは税金が安くなる方法を教えるから、仲間にビールを振舞ってくれと持ちかける。
アンディの作った書類で税金は減額され、仲間はビールにありつくのだった。このことをきっかけに、アンディは仲間の信頼を得る。

2_4

やがて、図書係に抜擢されたアンディを待っていたのは、看守たちの資産や税金の相談であった。<
アンディは、断ればいいのに、所長(ボブ・ガントン)の秘書として、所長の裏金の管理を任されるようになる。アンディは、所長からも看守からも仲間からも一目おかれる存在となった。
アンディは出所したあとの自由な生活をレッドに語るが、レッドは塀の中に慣れきってしまい、出所してもまともに生活できないと語るのだった。

アンディは新しく入所したトミー(ギル・べローズ)から、別の刑務所で妻と不倫相手殺しの真犯人の打ち明け話を聞いたと告げられる。
自らの無実の罪を晴らすことができると、アンディは所長に再審請求の申し出をするが、そううまくはいかない。所長の悪事を知り尽くしているアンディは、逆に懲罰房送りになる。トミーは脱走を企てたと、でっち上げられ射殺される。
所長や刑務主任は、囚人の命など虫けら同然くらいにしか考えていない。自分たちに不都合な囚人は殺してしまう。
収監されて20年目、アンディは自らが釈放される見込みのないことを悟るのだった。
そして嵐の翌朝、アンディの房はもぬけの殻になっていた。

3

つい、ザマアミロって呟いた。
いやー、抜群に面白い、間違いなく星5つ。

最初の頃、アンディの部屋にはレッドから調達してもらったリタ・ヘイワースの水着姿のポスターが飾られた。やがて、リタ・ヘイワーズはマリリン・モンローに替わり、アンディが房から消えたときには、ラクエル・ウェルチになっていた。
ところで、アンディ役のティム・ロビンスが『ミスティック・リバー』で誘拐された過去がある辛気臭いデイブをやっていたとは、言われてみてやっと気づいた。
原作は、・キングの中篇小説『刑務所のリタ・ヘイワース』。