1996年

『最後の晩餐  平和主義者の連続殺人』

最後の晩餐 平和主義者の連続殺人 [DVD]
The Last Supper
監督:ステーシー・タイトル
脚本:ダン・ローゼン
音楽:マーク・マザースボウ
アメリカ  1996年  92分 ★★★★☆

1990年代はじめ、レーガンやブッシュの右寄りな共和党の政権が続いていた頃のアイオワ州。主人公は共同生活を送る大学院生5人である。
おりしも、街では少女誘拐事件が起こり、女性保安官(ノーラ・ダン)が犯人探しに躍起となっている。テレビでは、ロン・パーマン演じるタカ派のノーマンが、保守的な発言を早口でまくし立てている。

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土砂降りの夜に、彼らのひとりを送ってくれたトラック運転手に、5人は夕食を勧める。晩餐が始まると、湾岸戦争帰還兵の運転手は、ナチを擁護しリベラルを気取る5人を軽蔑しだす。議論がエスカレートした末にもみ合いになり、運転手はナイフで刺殺されてしまう。

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平和主義にかぶれリベラルを掲げる大学院生たちの考えは、保守的な考えは許せないというカルト的なもの。
晩餐に招待した客を次々に毒殺していく。
標的になったのは、ゲイを差別視する牧師、ユダヤ人や黒人に偏見をもつ人種差別論者、人工中絶反対のプロライフの立場をとる女性、死刑推進論者、強姦を容認する女性差別論者(ビル・パクストン)、仕舞いには『ライ麦畑で捕まえて』を否定する女性まで殺してしまう。高校でコンドームを配ることに反対する女子高生は殺しはしないが、脅す。
大学院生のひとりを演じるキャメロン・ディアスは、過激な考え方に異を唱えたりもするが、『ライ麦畑・・・』の女性を刺し殺したのは彼女だ。

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女性保安官が少女誘拐事件の容疑者の写真を持って聞き込みにくる。容疑者は彼らが刺殺し庭に埋めた運転手であった。5人は知らないと答えるが、彼らが手を下した殺人が、結果的に社会的正義であったと自分たちの犯罪を正当化する思のだった。

そして彼らにとって最大の標的であるタカ派のノーマンを晩餐に招待することになった。「ナチを結党する以前のヒトラーにであったら殺すかどうか?」との問いに、ノーマンは「私なら、ヒトラーと話しあう」との予想外の答えを返す。
平和主義にかぶた大学院生たちは、この答えに動揺し別室で話し合う。

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普段高級ワインを飲み慣れているノーマンはワインの匂いを嗅ぎ、ワインに毒が入っていることを気づく。
そして、葉巻をくゆらせながらノーマンは、戻ってきた5人にワインを飲み干すように勧めるのだった。ノーマンの乾杯の掛け声に大学院生たちは飲み干す。
5人が思い上がった考え方を反省して、ワインを飲み干したと思わせるところが、奥が深い。

エンディングに流れる曲は、日本人女性3人のグループ「少年ナイフ」が歌っているカーペンターズの『トップ・オブ・ザ・ワールド』。彼女らの曲は、1990年代にアメリカで流行ったオールタナティブロックと呼ばれる、いわばまがい物のロックである。素人っぽく軽い感じのこの曲は、本作のエンディングにこれ以上ないというくらいにぴったりである。→映画(全般) ブログランキングへ

『少年ナイフ ゴールデン☆ベスト』(CD)Shonen Knife

『ファーゴ』

ファーゴ [DVD]
ファーゴ [DVD]
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Fargo
監督:ジョエル・コーエン
脚本:ジョエル・コーエン/イーサン・コーエン
音楽:カーター・バーウェル
アメリカ 1996年 98分
★★★★*

冒頭に「この物語は実話である。1987年にミネソタで起きたある事件を、描いている。関係者の要望により人物の名前を変えてあるが、死者への敬意を込めて、事件の経緯は忠実に再現している」とテロップが流れる。コーエン兄弟はインタビューでも実話に基づいていると答えているとのことだが、実は彼らが作り上げたフィクションであった。

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物語の舞台は、凍てつく冬のミネアポリス。
アメリカの入植者の開拓神話に登場する巨人、ポール・バニアンの巨像が映し出される。この映像がのちの事件を暗示している。

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自動車ディーラーのジェリー(ウィリアム・H・メイシー)は多額の借金を抱えていた。ジェリーは妻ジーンを誘拐させ、金持ちの義父から多額の身代金をせしめることを思いつく。
ノースダコタ州ファーゴで、ジェリーはカール(スティーヴ・ブシェミ)とゲア(ピーター・ストーメア)のふたりのチンピラに話を持ちかけ、販売店から持ってきた車をふたりに与える。

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ジーンを誘拐したカールとゲアは、逃げる途中でパトロール中の警官と偶然通りかかったふたりの目撃者を殺害してしまう。

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翌日、雪原の中で3人の遺体が発見され、妊娠中の女性署長マージ(フランシス・マクドーマンド)が捜査に乗りだす。
マージの話し方は、語尾のイントネーションを上げ、「Ya」と「Uh-huh」を多用する、なんとも素朴に聞こえるもの。おまけに妊娠で下腹部がせり出しているから動作が緩慢で、これで犯人を逮捕できるだろうかと不安を抱かせる。
彼女の演技が、殺伐とした連続殺人事件の中に、時折り安らぎを感じさせてくれる。

ジェリーは、誘拐犯たちが身代金を彼自身が持ってくるように要求してきたと、義父のウェイドに告げるが、義父は甲斐性のないジェリーを鼻から信用していない。

身代金引き渡しの場所に現れたウェイドを見て、約束が違うと逆上したカールは彼を射殺して、大金の入ったカバンを奪って逃走する。
カールは100万ドルのうち8万ドルだけを手元に残し、残りを雪原に埋める。カールがアジトに戻ったときには、すでに人質のジーンはゲアに殺されていた。
ふたりは8万ドルを山分けするが、誘拐に使った車をどちらがもらうかで口論になり、その結果カールはゲアに斧で殺害されてしまう。

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マージが誘拐犯たちのアジトにたどり着くと、カールの死体を木材破砕機でミンチにしているゲアの姿があった。マージは雪原に向かって逃げようとするゲアの足を撃ち、彼を逮捕する。

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警察署へ向かう途中、マージは後部座席のゲアに向かって、「なんでこれぽっちのお金のために人を殺したの? 人生にはお金よりもっと大切なことがあるはずよ。なんて馬鹿なことをしたの・・・・・・こんないい日のになのに」と語りかけるが、ゲアは何も答えず窓越しに斧を担いだポール・バニアンの巨像を見上げた。

コーエン兄弟の作品には、ひとつの事象をきっかけに、事件がドミノ倒しのように連鎖して取り返しがつかなくなるというパターンが特徴である。本作もはじめは、ちょっとした狂言誘拐のつもりだったものが、何人もが殺されてしまう惨事に発展していく。

本作は第69回アカデミー賞の作品賞、監督賞、脚本賞、主演女優賞(フランシス・マクドーマンド)、助演男優賞(ウィリアム・H・メイシー)、撮影賞にノミネートされ、脚本賞、主演女優賞を受賞した。
なお、フランシス・マクドーマンドは、ジョエル・コーエン監督の夫人である。→映画(全般) ブログランキングへ

『真実の行方』

真実の行方 [DVD]
真実の行方 [DVD]
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Primal Fear
監督:グレゴリー・ホブリット
脚本:スティーヴ・シェイガン/アン・ビダーマン
製作:ゲイリー・ルチェッシ
音楽:ジェームズ・ニュートン・ハワード
製作国:アメリカ合衆国 1996年 130分 ★★★*

大司教の助手をしていたアーロン(エドワード・ノートン)は大司教殺しで逮捕される。血まみれで現場にいたのがアーロンだった。
弁護を買って出たのは、上昇志向の強い目だちたがり屋の弁護士マーティン(リチャード・ギア)。対抗する検事は、かつてマーティンの部下であり親密な間柄だったジェーン(ローラ・リニー)。
裁判の結審まで続く、遣り手弁護士と辣腕弁護士の丁々発止のやり取りは、本作品の見所である。

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アーロンにとって大司教は父親同然の存在である。身寄りがなく物乞いをしていたアーロンに、住む所とミサの手伝いの仕事を与えてくれたのだ。アーロンの受け答えは、残虐な殺人を犯したとは思えないような温厚なもの。マーティンは直感で、アーロンが無罪であると思った。
これがとんだ的外れ、アローンの悪知恵に見事にしてやられたのだ。

マーティンは、貧民窟の再開発に投資しようとしていた州検事をはじめとする市の上層部が、大司教によって再開発が中止に追い込まれたことを恨んで殺害したと立証しようとする。しかし、悪の権化のような州検事はマーティンに露骨な妨害をする。

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マーティンは、アーロンたちが大司教から性的な虐待をうけていて、その現場を撮影したビデオテープがあることを知り、そのテープを大司教の部屋から盗み出す。
マーティンが性的虐待についてアーロンに質すと、人が変わったように乱暴な言葉でまくし立て、自らをロイと名乗り大司教を殺害したことを認めるのだった。精神科医モリー(フランシス・マクドーマント)の診察によりアーロンは多重人格障害者であることがわかり、アーロンはロイのやったことをまったく自覚していない。

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しかし、マーティンは策を弄して、法廷でアーロンが発作を起こすように仕組むのだった。この作戦が見事にあたり、アーロンから豹変したロイは、大司教殺害を認め、ジェーンに飛びかかり首の骨を折ろうとする。間一髪で発作は収まり、マーティンの思惑通り、アーロンは死刑をまぬがれ精神病院送りとなる。

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判決が下されたあと、面会に訪れたマーティンにアーロンは、「ひどいことをするつもりはなかった。お大事にとジェーンに伝えてほしい」と不適な笑みを浮かべて言うのだった。
そもそもロイはいない、と言うより、気の荒い蓮っ葉なロイが温厚そうなアーロンを演じていたのだ。このことを知っているのはマーティンとアーロンだけ。マーティンの大失策により、凶悪な殺人犯が無罪となったわけだ。

ところで、黒人の女性裁判官は、ジェーンの喫煙に対して口やかましく注意するものの、自らは昼間っからウイスキーをストレートであおっている。見た目は酔っていないけれど、法廷にグラス片手に入ってくる。最初は薄茶色の液体はまさかウィスキーではあるまいと思ったものの、いやあれはウィスキーだ。どうなってるんだ。

二重人格物には、古くは『サイコ』(60年)がある。→映画ブログランキング

1977年にビリー・ミリガンが起こした連続殺人事件を扱ったダニエル・キースのノンフィクション『24人のビリー・ミリガン』がベストセラーとなったことで、多重人格が広く知られるようになった。1980年代には、多重人格障害者は犯罪の責任を犯人自身に問えないという理屈で、裁判官が減刑を認める傾向があったという。しかし、1990年代に入り、精神医学会、法曹界から、多重人格に対し疑問の声が上がり、その傾向は変わった。
ビリー・ミリガンに下された多重人格の診断そのものに疑問が持たれたのだ。

『ある貴婦人の肖像』

19世紀の末。イザベラ(ニコール・キッドマン)は、両親をなくしアメリカからイギリスに渡り、大富豪の叔父の庇護のもとで暮らしている。
アメリカ人のゲートウッド卿からプロポーズされるが、もう少し世の中をみたい自分にはやりたいことがあると断る。
叔父の息子ラルフは結核を患っていて、長くは生きられないと自ら悟っている。
やがて、叔父がなくなり、イザベラに膨大な遺産の一部が転がり込む。相続した遺産は7万ポンドで、彼女は大金持ちになる。

ある貴婦人の肖像 [DVD]
ある貴婦人の肖像
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ビデオメーカー (2011-09-09)
原題:The Portrait of a Lady
監督:ジェーン・カンピオン
脚本:ローラ・ジョーンズ
音楽:ヴォイチェフ・キラール
製作:イギリス  1996年 ★★★★☆



ある日、イザベラはフィレンツェに住む子持ちのオズモンド(ジョン・マルコヴィッチ)を紹介される。美術品を収集し、話術が巧みなオズモンドにイザベラはどうしたわけか魅かれる。
オズモンドの人間性を身抜いたラルフの猛反対を振り切ってプロポーズを受けてしまう。

案の定オズモンドは狭小で陰鬱、自分ことしか考えない冷徹な男である。
娘の結婚相手が現れると、裕福でないという理由で娘から遠ざけ、金持ちの男爵と結ばれるようイザベラに画策させる。
しかし、オズモンドの思惑通りにいかないことで、イザベラを責めるのだった。
やがて、イザベラはオズモンドの自分との結婚が金目当てであったと気づく。

冬のある日、英国のラルフの危篤が伝えられ、イザベラは英国行きをオズモンドに願い出るが、夫は許さない。
しかしイザベラはそんな夫を振り切ってラルフもとに駆けつける。
叔父に遺産をイザベラに残すように進言したのが、ラルフであることを知り、彼のいままでの献身的な愛情に気づくのであった。→ブログランキングへ

賢く世の中を変えるかもしれないと周囲が思っている女性が、どう見てもその考えを潰そうとする爬虫類のような男に、まんまと引っかかってしまうのはどうしたことだ。

【ニコール・キッドマン主演作品(サイト内リンク)】
ラビット・ホール』Rabitt Hole/2010年
マーゴット・ウェディング』Margot at the Wedding/2007年
インベージョン』The Invasion/2007年
奥さまは魔女』Bewhiched/2005年
ザ・インタープリター』The Interpreter/2005年
記憶の棘』Birth/2004年
ステップフォード・ワイフ』The Stepford Wivwes/2004年
コールド・マウンテン』Cold Mountain/2003年
白いカラス』The Human Stain/2003年
ドッグヴィル』Dogville/2003年
バースデイ・ガール』Birthday Girl/2002年
めぐりあう時間たち』The Hours/2002年
アイズ・ワイド・シャット』Eyes Wide Shut/1999年
ある貴婦人の肖像』The Portrait of a Lady/1996年
誘う女』To Die For/1995年


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