1999年

『クッキー・フォーチュン』

クッキー・フォーチュン [DVD]
Cookie's Fortune
監督:ロバート・アルトマン
脚本:アン・ラップ
音楽:デヴィッド・A・スチュワート
アメリカ 1999年 118分 ★★★★★

老女の自殺を姪が細工をして他殺を装った。その結果、静かな田舎町にはてんやわんやの騒動が起こる。モザイクのように話が緻密に絡み合っていて、ロバート・アルトマン監督らしい皮肉がたっぷり込められたコメディ。ほのぼのとした印象が残るのは、南部のおおらかさが表現されているからだ。物悲しくて暖かみがあり、どこか間が抜けたスティールギターの音色にぴったりのストーリーが展開される。
現在、日本中で大はやりの、AKB48が歌って踊る「恋するフォーチュンクッキー」とは何の関係もない。

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ミシシッピーの田舎町に住む年老いたクッキー(パトリシア・ニール)は、ギャンブラーの夫に先立たれ、大きな家で失意の日々を送っていた。そんなクッキーを黒人のウィリス(チャールズ・S・ダットン)が面倒をみていた。

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ある日、クッキーが銃で自殺する。
第一発見者は妹のコーラ(ジュリアン・ムーア)とともにクッキーの家を訪れた姪のカミール(グレン・クローズ)だった。敬虔なキリスト教徒のカミールは、「親族から自殺者は出せない」という理由で、自殺を隠蔽しようと宝石をバッグに詰め枕元の遺書を食べてしまい、銃を庭に捨てて他殺に細工をした。カミールはコーラに口外しないことを約束させ警察を呼ぶ。この口止めが後でカミールを窮地に追い込むことになる。

町の教会では、きたる感謝祭にカミールが演出を担当しコーラが主人公を演じ、多くの住人たちが出演する舞台劇の『サロメ』の稽古に余念がない。

一方、母親のコーラとの確執で都会に出ていたエマ(リヴ・タイラー)が町に舞い戻り、ナマズの処理場で働いている。エマは大好きなクッキーの死を知って悲しみにくれる。エマは気はいいけれどアッパラパーで、ナマズの臭いが染み込んだ愛車のおんぼろピックアップトラックを、路上駐車するたびに違反切符を切らている。

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やがてウィリスがクッキー殺しの容疑者として逮捕されるが、警察官のなかには、釣り仲間のウィリスが犯人であるはずがないと、彼をかばう者もいる。ウィリスと仲が良いエマは拘置所に泊まり込み、夜になると保安官のジェイソンとあいびきをする。拘置所の中では、容疑者だというのに、隠し持っているウイスキーを飲んで、保安官たちとスクラブルに興じるという呑気ぶりである。

カミールはクッキーの財産を相続できると、コーラとともに立ち入り禁止のクッキーの家に潜り込み、家具を配置換えしたり、保安官の忠告を無視してやりたい放題に振る舞う。

都会からやって来たタッカー警部が捜査を開始し、ウィリスが立ち寄った酒場やリカーショップやなまず処理場で聞き込みを行うが、何しろ町の住人は呑気なものだからウィリスのアリバイはうやむや。
やがて、カミールが銃を捨てたところを見ていた少年の証言で、カミールに容疑がかかり『サロメ』の公演中に逮捕されてしまう。

カミールはクッキーが自殺だったと真実を述べるが、口うるさいカミールに辟易していたコーラは、口止めされたとおり知らんぷりをするのだった。窮地に立ったカミールを 、さらに不幸が襲う。。

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そして、しばらくすると町は落ち着きを取り戻し、ウィリスと釣り仲間とエマは、川面に糸を垂れのんびりと釣りをするのだった。→ブログランキングへ

【ロバートアルトマン監督作品】
今宵、フィッツジェラルド劇場で』A Prairie Home Companion (2006)
バレエ・カンパニー』The Company (2003)
ゴスフォード・パーク』Gosford Park (2001)
Dr.Tと女たち』Dr T and the Women (2000)
クッキー・フォーチュン』Cookie's Fortune (1999)
『相続人』The Gingerbread Man (1997)
『カンザス・シティ』Kansas City (1996)
プレタポルテ』Prêt-à-Porter (1994)
『ショート・カッツ』Short Cuts (1994)
『ザ・プレイヤー』The Player (1992)
『ウエディング』A Wedding (1978)
『ビッグ・アメリカン』Buffalo Bill and the Indians, or Sitting Bull's History Lesson (1976)
『ナッシュビル』Nashville (1975)
ロング・グッドバイ』The Long Goodbye (1973)
M★A★S★H マッシュ』MASH (1970)

『グロリア』リメイク版

グロリア [DVD]
グロリア [DVD]
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Gloria
監督:シドニー・ルメット
脚本:スティーヴ・アンティン
原作:ジョン・カサヴェテス(オリジナル脚本)
音楽:ハワード・ショア
アメリカ 1999年  108分

『グロリア』(1980年、ジョン・カサヴェテス監督・脚本)のリメイク版。
胸の大きく空いたミニドレスを身につけて、ハイヒールを履いて今にも転びそうになりながら、子供の手を引き追っ手てから逃れるグロリア役のシャローンストーンは目立つ。ボンテージ風の衣装でうろついたり、超ミニスカートで脚を組みかえたりして、なにしろ全編で色気を振りまく。

フロリダでの3年の刑期を終えて出所したグロリアはニューヨークへ帰るが、事情は変わっていた。彼女はマフィアの仲間にとって不要の存在になっていた。
彼女は居合わせたニッキーを人質に、仲間を銃で脅して金品を手に入れ、アジトから逃走する。このあたりはさすがマフィアの女、肝が据わっている。

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ニッキーは組織の不正な金の流れを書き込んだフロッピーを父親から託された。父親と家族は組織の男たちに殺されてしまった。

グロリアは姉に助けを求めるが、もともとふたりの仲は最悪で、けんもほろろに断られる。

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ニッキーはグロリアのいうことに従わない。
グロリアは、子供なんだから大人のいうことを聞きなさいと言ってさとし、あるときはハンサムな男になりなさいと励ます。こうして、はじめは、ニッキーを足でまといと思っていたグロリアだが、少しずつ母性愛が芽生えていく。

結局、グロリアはマフィアの大親分に直接会い行って、彼女の色気で血の掟をまぬがれる。組織は、グロリアを殺しはしないが、フロッピーの秘密を知る以上ニッキーを見逃すわけにはいかない。しかし、そこはグロリアの機転で、なんとかなってしまう。ブログランキングへ

『17歳のカルテ』

17歳のカルテ コレクターズ・エディション [DVD]
17歳のカルテ[DVD]
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Girl, Interrupted
監督:ジェームズ・マンゴールド
脚本:ジェームズ・マンゴールド/リサ・ルーマー/アンナ・ハミルトン=フェラン
原作:スザンナ・ケイセン『思春期病棟の少女たち』(草思社文庫)
製作総指揮:ウィノナ・ライダー/カロル・ボディ
音楽:マイケル・ダナ
アメリカ   ドイツ   1999年   127分 ★★★★☆

精神病院の思春期病棟に入院する、ウィノナ・ライダー演じる不安定な精神状態のスザンナ、アンジェリーナ・ジョリー演じる破天荒でアグレッシブなリサ、そのふたりを取り巻く入院患者たちをめぐる物語である。スザンナ役はウィノナ・ライダーが地で演じても違和感がない感じがする。看護婦役のヴァレリー・オーウェンズの渋い演技が光る。

高校を卒業するスザンナは、以前から何かと問題を起こしてきた。
アスピリンひとビンとウォッカを1本飲んで自殺を計り、精神病院に収容される。医師には、自殺しようとしたのではなく自分を消そうとしたと表現した。
テレビのニュースでキング牧師の暗殺事件が報じられている、1960年代後半が舞台。彼女以外の同級生は全員が大学に進んだ。

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スザンナが入院したのは思春期の少女たちがいる開放的な病棟。病名は境界型人格障害、うつ的で情緒不安定で気まぐれ、性的に奔放、ときに自分を制御できなくなる症状を抱えている。

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スザンナが入院して数日後、病院から脱走していたリサが連れ戻されてきた。リサは、「フロイト創業の精神病産業に舞い戻ってきた!」と大声で叫ぶ。彼女は入院患者の注目の的で、いつも騒がしい。リサの自信に満ちた振る舞いに惹かれ、スザンナは病院こそが自分の居場所のように思えてくるのだった。

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患者たちがひっきりなしにタバコを吸い、集まって歌ったり、病院の地下室にあるボーリング設備で遊んだり、さっぱり精神病院らしくない。

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ある日、リサは父親との近親相姦が摂食障害の原因であることを患者にストレートに言い、彼女を自殺に追い込んでしまう。リサは事実を知らせ背中を押しただけだと開き直る。このことでスザンナはリサが許せなくなり、リサやほかの入院患者と疎遠になっていく。
ある日、スザンナはリサが病院内でしか生きられないことを指摘するのだった。そして、スザンナは自らを奮い立たせ退院する。

まだ新人の部類だったアンジェリーナ・ジョリーは、本作でアカデミー賞助演女優賞を獲得した。賞に値するぶっ飛んだ演技だ。本作の製作総指揮でもあるウィノナは、あの役であれば誰でも賞を取れたと嫌味を言ったとか。ブログランキングへ

『マグノリア』

マグノリア [DVD]
マグノリア [DVD]
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Magnolia
監督:ポール・トーマス・アンダーソン
脚本:ポール・トーマス・アンダーソン
音楽:ジョン・ブライオン
アメリカ  1999年  188分

マグノリアとは木蓮のこと。春に咲く肉厚の大型の花で開花の期間は短く落花が一斉に起こるので地面が花びらで覆われ、落ちた花びらは時間をおかずに変色する。このマグノリアの落下の様子が、衝撃的な終盤の場面を暗示している。ちなみに木蓮の花言葉は「高潔な心、崇高、慈悲」である。

舞台は、カリフォルニア、ロサジェルス郊外のサンフェルナンド・ヴァレー。人気長寿クイズ番組を介してつながりを持つ男女の人生模様が描かれる。

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死の床に横たわるそのクイズ番組のプロデューサー(ジェイソン・ロバーズ)がいる。彼と確執がある息子(トム・クルーズ)は性の伝道者、プロデューサーの若い後妻(ジュリアン・ムーア)は夫の末期に取り乱す。プロデューサーに付き添う優しい看護人(フィリップ・シーモア・ホフマン)、やはりガンを宣告されたクイズ番組の司会者(フィリップ・ベイカー・ホール)は、娘との関係を修復しようとする。彼に恨みを持つ娘(メローラ・ウォルターズ)は麻薬中毒、その娘に心を寄せる警官(ジョン・C・ライリー)は銃をなくしてしまう。本番中に小便が我慢できなくなった天才クイズ少年は、親の指図に大声をあげキレる。歯列矯正の金を捻出しようと盗みを働く元天才クイズ少年のゲイ男(ウィリアム・H・メイシー)など、サンフェルナンド・ヴァレーに住むさまざまな人間たちが、苦悩する24時間が力強く描かれる。

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思い悩む登場人物たちを、不可解な事象に戸惑いを感じさせながら、強引にすべてを包括してしまう結末が秀逸である。

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人間は誰もが過ちを犯す。それをどうにかしようと取り繕ったり開き直ったり逆上したりして、ぎりぎりにところで生きている。そんな人々の濃厚な1日がスケッチされている。
『ブギーナイツ』(97年)のポール・トーマス・アンダーソン監督による人間ドラマの傑作 →映画(全般) ブログランキングへ

『ストレイト・ストーリー』

ストレイト・ストーリー リストア版  [DVD]
The Straight Story
監督:デヴィッド・リンチ
脚本:ジョン・ローチ/メアリー・スウィーニー
音楽:アンジェロ・バダラメンティ
アメリカ合衆国  フランス  1999年  111分  ★★★★☆

老人が、小型のトラクターで500キロを旅するロードムービー。日中はトウモロコシ畠に挟まれた道を移動し、夜は満天の星の下で眠る。
現代人の心の闇を難解な作風で描くことで知られるデヴィッド・リンチ監督が、古き良きアメリカへのノスタルジーを描いた作品。
新聞に掲載された実話をもとに作られたという。

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アイオワ州に住むアルヴィン(リチャード・ファーンズワース)は、娘のローズ(シシー・スペイセク)とふたりで暮らす73歳の老人。ある日、ウィスコンシンに住む兄が脳卒中で倒れたと電話で知らされる。兄とはちょっとしたことで仲違いして以来、長い間音信不通になっていた。
ローズは「糖尿病で目が悪く車の運転ができない、ウィスコンシンまでは500kmもある、腰が悪くて倒れたらひとりで起き上がれない、おまけに73歳」と、アルヴィンにウィスコンシン行きを思いとどまらせようとするが、彼は時速8キロのトラクターに荷台をつないで無謀な旅に出発した。

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明るいうちはトラクターを走らせて、夜は野宿をするという旅。
若い頃、フランスでナチスと戦い塹壕で夜を明かしたアルヴィンにとって、トウモロコシ畠での野宿はどうということはない。
アルヴィンは出会う人に、含蓄のある話をして旅をつづける。

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若い娘が、家族に嫌われていると悩みを打ち明ける。アルヴィンは、一本の枯れ木は弱いが三本なら簡単には折れないと、どこかで聞いたような話をして、家族の大切さを説く。

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自転車レースに参加している若者から、「年を取ると最悪なことは?」と訊かれると、「若い頃を思い出すことだ」と皮肉たっぷりに答える。

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道路を横切る鹿に車をぶつけた女性は、ここ7週間の間に13頭の鹿を轢いたと怒り狂う。アルヴィンはその鹿の肉を頂戴して夕食に食べ、角を荷台に飾って旅を続ける。

長い下り坂でブレーキが効かなくなり、あわや転倒しそうになる。トラクターは故障し、周辺の住人の世話になる。
目的地まであと100キロ、旅を始めて1カ月が経っていた。男性が車で送ると申し出るが、アルヴィンは自分でやり遂げたいと断る。

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やがて、ミシシッピー川にかかる橋を超えて、ついにウィスコンシン州に入る。その夜、野宿した墓地に神父が現れ、兄についての近況を知らされる。よく日、これまで禁酒してきたアルヴィンはバーでビールを一杯飲む。

そして、ついに兄の暮らすあばら家にたどり着く。
兄はトラクターを見て「あれに乗って俺に会いにきたのか」と言った。このひとことに、物語のすべてが集約されている。→映画(全般) ブログランキングへ

【ロードムービー】サイト内リンク
星の旅人たち』The Way/10年
リトル・ミス・サンシャイン』Little Miss Sunshine /06年
ヴァイブレータ』Vibrator/03年
モンスター』Monster/03年
ストレイト・ストーリー』The Straight Story/99年
テルマ&ルイーズ』Thelma and Louise/91年
スタンド・バイ・ミー』Stand by Me/86年

『ボーイズ・ドント・クライ』

ボーイズ・ドント・クライ [Blu-ray]
Boys Don't Cry
監督:キンバリー・ピアース
脚本:アンディ・ビーネン/キンバリー・ピアース
音楽:ネイサン・ラーソン
アメリカ  1999年  118分 ★★★★☆

ヒラリー・スワンク演じる主人公は、ゲイだからといってコソコソ生きることはないと思っている。彼女は、男性ものの服を着て、胸を張って男と同じように振る舞い女を愛し、男の仕事について、トレーラーハウスを手に入れ、やがては手術の費用を手にして、男になるという夢を持っている。
主人公の仕草や言葉が、いかにも粋がっているようでぎこちないものの、生き生きしている。
見ている方は、主人公に感情移入してしまい、女であることがバレるのではないかとハラハラのしどうしである。

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ネブラスカ州のリンカーンに住むブランドン(ヒラリー・スワンク)は、犯罪を犯して町に居づらくなりリンカーンを出ることにした。やってきたのはフォールズタウンという町、そこでブランドンは刑務所から出てきたばかりのジョン(ピーター・サースガード)とトムに出会う。
ジョンは愛人の家で、仕事もせずに昼間っからビールを飲んでグダグダしている。仕事につこうとせず、金儲けならば法を犯すことも厭わないゴロツキである。

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ブランドンはジョンの愛人の娘ラナ(クロエ・セヴィニー)と恋に落ちてしまう。親密な関係になっても、ラナはブランドンが女性とはよもや思わず、ラナの母親もジョン達も、ブランドンは少し華奢な男くらいに思っていた。
それが、ひょんかことからブランドンの過去の犯罪が新聞に載ってしまい、ブランドンの素姓が知られてしまう。

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ラナとブランドンの親密な関係が面白くないジョンは、新聞の記事の真相を確かめようと、トムとともにブランドンを襲い、無理やり女であることを暴いてしまう。

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あくまでブランドンを信じるラナは、彼女とともにと町を出ることにする。しかし、ジョン達のブランドンへの暴行が警察の知るところとなり、ふたりは出頭を命じられる。
この事件で有罪となれば、おそらくスリーストライク法が適応され終身刑となるふたりは、ブランドンの口を封じようと行動を起こすのだった。
ジョンは、ブランドンがラナを同性愛に引きずりこんで自分の縄張りを荒らされたと思い、それが許せなかったのだろう。

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本作は実話に基づいている。
犯罪国家アメリカの、貧困から抜け出せないホワイト・トラッシュのどうにもならない生活が描かれている。
クロエ・セヴィニーが、アカデミー賞助演女優賞にノミネートされ、性同一性障害の女性を見事に演じたヒラリー・スワンクが、主演女優賞を受賞した。→映画(全般) ブログランキングへ

『マルコヴィッチの穴』

マルコヴィッチの穴 [DVD]
Being John Malkovich
監督:スパイク・ジョーンズ
脚本:チャーリー・カウフマン
製作:マイケル・スタイプ/サンディ・スターン/スティーヴ・ゴリン/ヴィンセント・ランディ
製作総指揮:チャーリー・カウフマン/マイケル・クーン
アメリカ 1999年 112分 ★★★★☆

チャーリー・カウフマンの特異な世界を、スパイク・ジョーンズ監督がみごとに映像化した斬新で魅力ある作品。

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人形遣いでオタクのクライグ(ジョン・キューザック)とペットショップに勤める妻のロッテ(キャメロン・ディアス)は、倦怠期にさしかかった夫婦。家の中にはチンパンジー、イヌ、イグアナ、九官鳥などがいて現実離れした空間で、だらしのない格好で日々を送っている。

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クライグが書類係として就職した会社は、7階半にあって、天井が低いため、背をかがめて歩かなければならない。
彼は、入社するとたちまち上司のマキシン(キャサリン・キーナー)に心を奪われる。
ある日、彼はオフィスの壁に空いた穴を発見する。
その穴に潜り込むと、俳優ジョン・ホレイショ・マルコヴィッチ(ジョン・マルコヴィッチ)の脳の中に15分入り込めるのだ。
このあたりで、相当奇妙な映画だなと感じるが、ストーリーが面白いので引き込まれてしまう。

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ある日、クライグに勧められてマルコヴィッチの脳を体験した妻のロッテは病みつきになり、夫が熱を上げているマキシンとマルコヴィッチを通しての性体験に喜びを感じてしまう。そして、ロッテは自らが同性愛者であることに目覚めてしまう。
一方、妻に先を越されたクライグはマルコヴィッチの脳に入り、これまたマキシンと結ばれるというややこしいことになる。
当のマルコヴィッチは自らに起こる奇妙な現象に気がついて何とかしようとするのだが、やがて、クライグがマルコヴィッチの脳の中に居座り続ける方法を見つけ、クライグはマルコビッチになりすましてしまう。
マルコヴィッチの体に住み着いたクライグは、マキシンをマネージャーにして、俳優としての名声を高めていく。

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マルコヴィッチの入ったクライヴは、マネージャになったマキシンと親密な関係になる。クライヴはマキシンにぞっこんだから思い通りになわけで、マルコヴィッチはマキシンに言い寄られて、まんざらでなかったし、一方マキシンはマルコヴィッチに熱を上げていたので、思いの丈を遂げたわけだ。自らがレスビアンであることを知ったロッテだけが、仲間ハズレになった形だ。

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マルコヴィッチの身体は単なる器でしかない。
器を何世代にもわたり移り住んできた人たちがいて、その人たちからクライグは、マルコヴィッチの体を出ないと取り返しのつかないことになると脅さるのだった。
仕方なくマルコヴィッチから出たクライグは、もとの冴えない男に逆戻りする。

という混沌としたなかにも、キレと新鮮さが感じられるなんとも不思議な作品だ。

ドーキンス博士の利己的遺伝子の理論を彷彿とさせるストーリーだ。
つまり、生物は遺伝子の単なる器であり、進化の道筋を決めているのは遺伝子であるというもの。
マルコヴィッチが器で、マルコヴィッチに入り込む人たちが遺伝子ということになる。
本作は、人間は何かに拘束され、限られた狭い世界でしか生きていけないはかない存在であることを暗示している。→映画(全般) ブログランキングへ

【チャーリー・カウフマンの作品】
『脳内ニューヨーク/Synecdoche, New York』(08年)監督・脚本
アダプテーション』(02年)脚本
エターナル・サンシャイン/Eternal Sunshine of the Spotless Mind 』(04年)脚本
マルコヴィッチの穴/Being John Malkovich』(99年)脚本

『ノッティングヒルの恋人』

ノッティングヒルの恋人 [DVD]
Notting Hill
監督:ロジャー・ミッシェル
脚本:リチャード・カーティス
音楽:トレヴァー・ジョーンズ
製作国:イギリス  アメリカ  1999年  123分  ★★★★☆

きらびやかで贅沢な生活を送っているハリウッドの売れっ子女優が、ロンドンのロケ先で恋に落ちる。相手の男の家族や友人と過ごすことで、女優は普通の市民のありふれた生活を経験する。もともと自分の住んでいる世界に違和感を感じていた女優にとって、心が安らぐ時間だった。そして再び、ロンドンを訪れた女優に、男は果敢にプロポーズして、ふたりはめでたく結ばれるという逆玉の輿物語である。
ストーリーに強引さはなく、自然の成り行きと感じさせるところが、この作品の優れたところだ。

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バツイチのウィリアム(ヒュー・グラント)は、ロンドン西部のノッティング・ヒルで旅行書の書店を営んでいる。その店に、ハリウッドのスター女優、アナ(ジュリア・ロバーツ)が訪れる。本を買ってアナは店を出るが、そのすぐ後に飲み物を買いに出たウィリアムと街角で衝突して、アナの服がオレンジジュースで汚れてしまう。

慌てたウィリアムは服の汚れをどうにかしようと、アナを家に招き入れる。服を洗って乾かして何とか彼女を送り出して、少しすると、彼女が戻って来てウィリアムにキスをして立ち去る。

2

このあと、ウィリアムは妹の誕生日パーティにアナを誘い、彼女は誘いに応じて、彼の家族や友人たちと楽しいひと時を過ごす。
ある夜、デートの後にふたりがアナの部屋に戻ってくると、そこには有名俳優が彼女の帰りを待っていた。恋人の存在にショックを受けたウィリアムは、アナから去っていく。

そして半年後、アナがマスコミを逃れて家に置いて欲しいと突然やって来る。だが同居人スパイク(リス・エヴァンス)が口を滑らせたことで、ウィリアムの家にマスコミが押しかけてしまう。そのことに腹を立てたアナはウィリアムに二度と会わないと言い残し、マスコミをかき分けて立ち去って行った。

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一年後に、アナが再びロンドンを訪れる。
友人たちは、ウィリアムをアナの記者会見のホテルに強引に連れていく。記者になりすましたウィリアムは、突如アナにプロポーズし、会見は結婚会見に早代わりするのだった。

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そっち側の派手な世界に飽き飽きしているなら、こっち側に来たらどうでしょう。こっち側には、贅沢ではないけれど結構面白いことがあって捨てたもんじゃないよ、とウィイアムが誘った。強引になんとかしようという素振りがなかった。
アナはその誘いの乗ってこちら側の気楽さに身を委ねることにした。
そうしたストーリーが清々しく感じられる作品である。→映画(全般) ブログランキングへ

『オール・アバウト・マイ・マザー』

設定が大胆で、人物それぞれが複雑な状況下にありかつ強烈な個性の持ち主、屋内の装飾にしろ服装にしろ色使いはど派手、ラテンが息づいている傑作だ。
アカデミー賞外国語映画賞を受賞している。

オール・アバウト・マイ・マザー [DVD]
原題:Todo sobre mi madre
監督:ペドロ・アルモドバル
脚本:ペドロ・アルモドバル
製作:アグスティン・アルモドバル
音楽:アルベルト・イグレシアス
製作国:スペイン 1999年 101分

マドリードに暮らす臓器移植コーディネーターのマヌエラ(セシリア・ロス)は、息子を女手ひとつで育ててきた。

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その息子の誕生日に、『あるセールスマンの死』をふたりで観劇した帰りに、息子は主演のウマ・ロッホ(マリサ・パレデス)にサインをもらおうとして、車に轢かれ脳死となる。息子はドナーとなって死んだ。

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失意のマヌエラは音信不通の父親に、息子の死を伝えようとバルセロナに向かう。
マヌエラがウマの楽屋を訊ねると、付き人として雇われるのだった。
ウマのレスビアン相手で若い女優のニナ(カンデラ・ペニャ)は麻薬中毒。
ある日、ニナが舞台に穴を開けてしまい、かつてアマチュア劇団でステラ役の経験があるマヌエラはなんとか代役を務めるのだった。と、なんともうまい具合に話が運ぶ。

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ある夜、場末の公園で暴行を受ているゲイを助けると、それは友人のアグラード(アントニオ・サン・ファン)であった。やがてアグラードはマヌエラのかわりにウマの付き人になる。
一方、マヌエラはシスターのロサ(ペネロペ・クルス)から、妊娠していてHCVに感染していると相談を受ける。
ロサの相手が、音信が途絶えていた元夫と判明し、マヌエラは愕然とするが、出産を決意したロサの面倒を看るために自分のアパートに住まわせるのだった。さらに元夫は、あろうことか性転換手術を受けて女性になり、ロラ(トニ・カント)と名乗っていた。
マヌエラの過去は波乱万丈だったのだ。

ロサは無事出産するが、エイズで亡くなる。ロサの母親は孫の引き取りを拒否、仕方なくマヌエラは子供を連れてマドリッドに帰る。
やがて、子供がHVSに感染していないことがわかり、ふたたびバルセロナに向かい、子供をかつての夫ロラに会わせるのだった。
この子供は、マヌエラとロラの息子の生まれ変わりってことだ。
マヌエラは、様々な「女性たち」と出会い、献身的に関わることで、息子の死を乗り越えていく、と、まあまとめればそんなところ。

『ダブルジョパディー』

ブルース・べレスフォード監督は、ダブルジョパディという言葉を知ったとき、「これはものになるぞ」と思ったに違いない。ダブル・ジョパディー(二重処罰の禁止)とは、同じ罪で人は2度罰せられないという法律の条項。
日本憲法にも、バブルジョパティーの項がある。
日本国憲法第39条:何人も、実行の時に適法であった行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問われない。また、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問われない。 なお、監督は名作『ドライビング Miss デイジー』(89年)を手がけている。

ダブル・ジョパディー [DVD]
原題:Double Jeopardy
監督:ブルース・ベレスフォード
脚本:デヴィッド・ワイズバーグ/ダグラス・クック
音楽:ノーマンド・コルベイル
アメリカ 1999年 105分

リビー(アシュレイ・ジャッド)は、身に覚えのない夫殺人で有罪になる。
夫のニック(ブルース・グリーンウッド)に仕組まれて、リビーは殺人犯に仕立て上げられたのだ。

1

刑務所の中で、ニックと息子マティとリビーの友人だったアンジー(アナベス・ギッシュ)が一緒に暮らしていることを知り愕然とする。
リビーは、元弁護士の女囚から「ダブル・ジョパディー」を教えてもらい、彼女はニックへの復讐に燃え、がぜん体を鍛え始める。仮に、リビーがニックの額を38口径で打ち抜いて殺しても、リビーは罰せられないのだ。
そして6年後、仮出所となる。

2

保護観察官レーマン(トミー・リー・ジョーンズ)の厳しい監視下に置かれたリビーは、ニックたちの居所を探し始めるが、マティの幼稚園に忍び込んで、あっさり警察に捕まってしまう。刑務所に護送される途中のフェリーから、リビーはレーマンを振り切って逃げる。

やがて、リビーはアンジーがガス爆発事故で亡くなっていることを知る。ニックの仕業だ。
彼女は、新聞記事のアンジーの顔写真に写っているリトグラフの売買記録を調べ、ニックの居場所を突き止める。

3

ニックは名前を変え、ニューオリンズのホテルのオーナーに収まって羽振りのいい暮らしをしていた。
しつこく追いかけてきたレーマンにリビーは捕まってしまうが、ニックの悪事を知った彼は、リビーと共にホテルの事務所に乗り込むのだった。
リビーがニックに38口径を向けると、「殺人はルイジアナ州ではガス室送りだ」と彼が怒鳴るが、「同じ罪で二度は罰せられない」とリビーが切り返す。

死体の上がらない夫の殺人で有罪となった妻に、生命保険料200万ドルが下りるのはいくらなんでも乱暴な話だが、映画だからそこは目をつぶるしかない。
カンディンスキーのリトグラフが小道具として使われている。リトグラフは、リビーたちのコテージに飾られていて、リトグラフの売買記録からニックの居場所が割り出され、ホテルの事務所に飾られたリトグラフは、リビーの撃った弾で撃ち抜かれるのだ。

初老のタフな男とそれにも増してタフな若い女性のコンビは、アシュレイ・ジャッドのお得意の役柄。『コレクター』(97年)、『ハイクライムズ』(02年)で、モーガン・フリーマンと組んでいる。アシュレイ・ジャッドの魅力がほとばしる一作。