2006年

『モンテニュー通りのカフェ』

モンテーニュ通りのカフェ [DVD]
Fauteuils d'orchestre
監督:ダニエル・トンプソン
脚本:ダニエル・トンプソン/クリストファー・トンプソン
音楽:ニコラ・ピオヴァーニ
製作国:フランス 2006年 106分

電話がかかってくると、「クソッ誰だ」と思う人と「誰かしら」と心ときめく人がいる。セシル・ド・フランス演じる主人公のジェシカは陽気で前向き、「誰かしら」と思うタイプだ。

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モンテニュー通りはパリで一番輝いている場所。
そこにあるカフェには、シャンゼリゼ劇場のピアノ演奏会、ホテルで行われるオークション、コメディ・デ・シャンゼリゼで行われる芝居、などの関係者が集う。コーヒーを飲み食事をしたり、出前注文がカフェに寄せられる。
そのカフェに雇ってもらおうとジェシカは掛け合い、女は雇わないと断られるものの、押しの一手でなんとか潜り込む。

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第一線を退くかどうかで悩んでいる世界的に有名なピアニスト、チャンスをつかもうと躍起になっている女優、かつて買い集めた美術品をすべて競売にかけようとする妻を亡くした老紳士とその息子、歌手になれなかった劇場の女性管理人。

そうした人たちがくりひろげる悲喜こもごもの人間模様に、ジェシカが絡んでいく。そしてジェシカに関わった者はなにかのかたちで癒されていくのだ。

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シュザンヌ・フロンの遺作となった本作で、主人公ジェシカを愛情たっぷりで育てた祖母役を演じた。彼女も明るく陽気な役柄である。

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【セシル・ド・フランス出演作品】
少年と自転車』(12年)
ヒアアフター』(10年)
シスタースマイル ドミニクの歌』(09年)
ある秘密 ~愛に焦がれて~』(07年)
モンテーニュー通りのカフェ』(06年)
スパニッシュアパートメント』(02年)

『ゆれる』

ゆれる [DVD]
ゆれる [DVD]
posted with amazlet at 13.04.12
監督:西川美和
脚本:西川美和
原案:西川美和
音楽:カリフラワーズ
日本  2006年 119分  ★★★★★

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オダギリ・ジョー演じるカメラマンの猛(たける)が、母親の法事で山梨の実家に帰省するところから映画は始まる。

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真面目で温厚な兄の稔(香川照之)は、実家のガソリンスタンドを継いでいる。
猛がそのスタンドに立ち寄ると、かつての恋人智恵子(真木よう子)が働いていた。智恵子には東京行きを諦めて山梨に残った過去がある。

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法事のあと、猛は智恵子をアパートまで送っていって、兄が智恵子に密かに思いを寄せていることを知っていながら、関係を持ってしまう。夜遅く猛が戻ってくると、稔は電灯の下で洗濯物をたたんでいた。兄の背中を見て、猛は智恵子との関係に気づいていないと考えるが、多分兄はすべてをお見通しなのだ。

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翌日、兄の提案で3人はドライブに出かけ、智恵子が吊り橋から転落死する事件が起こってしまう。対岸に渡った猛のもとに行こうと、吊り橋を渡る智恵子を稔が追いかけるようについて行き、稔ともみ合い転落した。猛はその一部始終を見ていた。
警察に逮捕された稔は、吊り橋の上で転んだ智恵子を助けようとしたと供述した。猛は見ていないと兄をかばう。

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兄が殺人犯として起訴されたことにより、ふたりは本音をぶつけ合うようになる。
実家を継いで毎日あくせくと働かなければならない兄は、都会に出て自由気ままに生きている弟が許せなく思えてきて、貧乏くじを引いたと鬱積した気持ちを弟にぶちまける。兄弟の心情がどんどんエスカレートしていくところの体当たりのオダギリ・ジョーと香川照之の体当たりの演技が見事だ。兄をかばうつもりだった弟は、信頼していた兄の心の内を知らされて愕然とする。
兄弟の間に決定的な亀裂が入ってしまい、稔には実刑判決が下る。

西川美和監督は、自らのアイデアをもとに見事な脚本を書き上げた。映画の最後には、ちゃんと救われるシーンが用意されている。監督の才能がほとばしる骨太な傑作だ。→映画(全般) ブログランキングへ

【西川美和監督の作品】
夢売るふたり』(12年)
ゆれる』(06年)

『手紙』

手紙 [Blu-ray]
手紙 [Blu-ray]
posted with amazlet at 13.03.12
監督:生野慈朗
脚本:安倍照雄/清水友佳子
原作:東野圭吾 『手紙』
製作国:2006年  日本  121分 ★★★*

身内に犯罪者がいる者に対する世間の冷たさと、這い上がろうとする若者の苦悩の日々を描いた、東野圭吾の同名小説の映画化。
原作は第129回直木賞候補作になった150万部の大ベストセラー小説。

両親を亡くした兄弟は助け合って生きてきた。
弟の大学進学の学資を稼ぎ出そうと兄は必死に働いたが、腰を痛め思い通りに働けなくなってしまう。
どうしょうもなくなった兄は空き巣を企て、人家に忍び込む。帰宅した老婦人に見つかってしまい、誤って殺してしまう。

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そして獄中の兄剛志(玉山鉄二)から弟直貴(山田孝之)のもとに、手紙が月に一通ずつ届くようになる。
直貴は大学進学を諦め働き始め、中学時代からの友人と漫才コンビを組んで、ライブに出たりしている。

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そんな直貴に白石由実子(沢尻エリカ)が思いを寄せるのだが、直貴は心を開くことができない。
ある日、兄が殺人囚であることが会社中に知れ渡り、直貴は会社を辞めざるをえなくなってしまう。彼は、今までに兄のことで仕事を3回辞め、アパートを3回追い出された。
直貴たちの漫才コンビは実力が認められテレビに出るようになるが、ネットの書き込みで兄のことが知れてしまい、番組を降ろされてしまう。

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腐る直貴は、「ケーズデンキ」に就職が決まる。
なぜまた、ケーズデンキなのか。きっとケーズデンキはこの映画の大口スポンサーなのだろう
直貴の働きぶりから将来有望と評価されるが、ここでも兄のことが知れ渡り、人に会わない倉庫係に回されてしまう。

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そんな時、直貴は合コンで知りあった朝美(吹石一恵)と意気投合し、デートする仲となる。しかし、朝美の父親(風間杜夫)は直貴を徹底的に調べ、兄のことを知ってしまう。直貴は娘に近づかないように言い渡されるのだった。

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気落ちした直貴を支えてくれたのは由実子だった。
やがて、彼は由実子の愛を受け入れ、ふたりは結婚し、子供が生まれる。
子供が公園デビューすると、ここでも兄のことで、母子たちは由実子親子を避け公園から姿を消していく。
身内に犯罪者がいることで、すでに何度も惨めな目に遭わされてきた直貴は、ついに兄に離別の手紙を書くのだった。

しかし、由実子は直貴を装い獄中の義兄に手紙を書き続けた。パソコンで書くから字体からバレることはない。
彼女はケーズデンキの会長(杉浦直樹)にも、手紙にしたためていた。それを読んだ会長は直貴に直接会い、彼を励ますのだった。
やがて、公園で由実子親子は、母子の仲間に入れてもらえるようになる。

兄と弟は手紙でつながり、弟は妻の手紙で苦境から這い上がる。タイトルの手紙が、ストーリーの鍵。
大口スポンサーのケーズデンキのイメージがアップするシーンが、ちゃんと用意されていた。→映画(全般) ブログランキングへ

『UDON』

UDON スタンダード・エディション [DVD]
UDON [DVD]
posted with amazlet at 13.03.07
監督:本広克行
脚本:戸田山雅司
音楽:渡辺俊幸
主題歌:闘牛士(「カルメン」第1組曲より)
日本  2006年 134分 ★★★☆☆

1980年代に始まり2000年代初めまで続いた、讃岐うどんブームを題材にしたヒューマンドラマである。ブームの仕掛け人である『月刊タウン情報かがわ』の編集長をモデルにして、本作は作られている。

6年前、松井香助(ユースケ・サンタマリア)は「ここには夢がない、あるのはうどんだけだ」と言って、故郷を捨てニューヨークに渡った。しかしコメディアンになる夢が敗れ、香川にもどってくる。友人たち(トータス松本)は暖かく迎えるものの、父親は香助に対して冷たい。

友人の紹介で香助が入社したのは、ヒロインの恭子(小西真奈美)が記者として勤めるタウン誌出版社。香助が思いついたのは、讃岐うどん店の特集を組むというもの。

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ちなみに、冒頭で「日本一人口の少ない香川県の人口は100万人、そこに讃岐うどんの店は900ある。一方、1250万人の東京にマクドナルドは500店舗」と紹介されている。

取材は、車が一台しか通らない道を行ってやっとたどり着くようなところばかり。小屋のよう店、看板のない店、入らなければうどんを食べさせるとわからない店、さらに食器持参の店、ネギを客が裏庭から調達する店、天ぷらの具材持ち込みOKの店、ビニール袋に入れた茹でたうどんをテイクアウトできる店など、ユニークな店ばかり。

こうして、香助たちのタウン誌が火付け役になって、讃岐うどんブームが起こる。

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マスコミも黙っていない。モーニングショーで讃岐うどんが取り上げられ、昼のワイドショーでも特集が組まれ、有名タレントの香川うどん店行脚の番組が企画され、讃岐うどんカルトクイズの番組が放映され、讃岐うどんフェスティバルが行われ、空前のうどんブームが巻き起こる。香川には全国から客が押し寄せるようになる。
このあたりのストーリーは、讃岐うどんブームで実際に起こったことである。当時放映されたと思われるテレビ番組が差し込まれいて、リアリティーが出ている。

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しかし、ブームが去れば、祭のあとの静けさとなる。
タウン誌の規模は縮小され、やがて香助は出版社を辞める。
香助が松井うどん店の後を継ぐ決意し父親に打ち明けると、父親は心筋梗塞でぽっくり逝ってしまう。
これで、松井うどん店も終わりと残された者が思っていたところ、「しばらく休業します」の張り紙に多くの励ましの言葉が書き込まる。
それに勇気づけられた香助は、店を再開しようと姉夫婦(鈴木京香、小日向文世)とともに、父親のうどんの味を再現しようとする。
そして、父の四十九日に、父親の味に近づいたうどんを客に提供するのだった。

ところで、冒頭のエピグラム「笑いは消化を助ける  胃酸よりはるかによく効く」(イマニエル・カント)はいまいち。最後の「涙とともにパンを食べた人間でなければ  人生の味はわからない」(ヨハン・ヴォルフ・ガングフォン・ゲーテ )は説得力がある。→映画(全般) ブログランキングへ

【料理に関係する映画】(サイト内リンク)
シェフ! ~三つ星レストランの舞台裏にようこそ~』(12年)
洋菓子店 コアンドル』(11年)
エル・ブリの秘密  世界一予約の取れないレストラン』(11年)
再会の食卓』(10年)
食堂かたつむり』(10年)
女と銃と荒野の麺屋』(09年)
ジュリー&ジュリア』(09年)
ミラノ、愛に生きる』(09年)
『幸せのレシピ』(07年)
UDON』(06年)
『サイドウェイ』(04年)
フライド・グリーン・トマト』(91年)

『リトル・ミス・サンシャイン』

リトル・ミス・サンシャイン [DVD]
Little Miss Sunshine
監督:ジョナサン・デイトン/ヴァレリー・ファリス
脚本:マイケル・アーント
音楽:マイケル・ダナ
製作国:アメリカ合衆国   2006年  100分  ★★★*

ロードムービーだから、目的地に着くまでに困難なことがいくつか起こり、それを解決または回避して、なんとか目的地にたどり着き、そこでまた一騒動あって、それも丸く収まって、パチパチパチというパターンだ。
出発点はニューメキシコ州のアルバカーキ、ルート66をカリフォルニアに向かう。目的地はレドンドビーチ、800マイルの旅。

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本作には、親のエゴ丸出しの過熱気味の少女ミスコンのあり方に警鐘を鳴らすニュアンスが感じられる。

シェリル(トニ・コレット)は、ニューメキシコのアルバカーキに住む主婦。
夫リチャード(グレッグ・キニア)は、自己開発セミナーで独自の成功至上論を声高に振りかざすが、自身は甲斐性なしで収入がおぼつかない。空軍パイロットになるために無言の行を続ける息子のドウェーン(ポール・ダノ)は、ニーチェかぶれで反抗期まっただ中。眼鏡をかけて小太りのオリーヴ(アビゲイル・ブレスリン)の夢は、ビューティー・クィーンになること。ヘロイン中毒で老人ホームを追い出された祖父(アラン・アーキン)は、性力絶倫を自ら吹聴する不良老人。ところが、「負け犬がどういうものか知ってるのか?本当の負け犬は勝てないことを恐れ、努力もしないようなやつのことを言うんだ」などと、オリーヴがくじけそうになると、気の利いたことを言うのだ。
祖父はオリーブの振り付けを担当し、ふたりは日々ビューティーコンテストのための特訓に励んでいる。
そんな家族に、シェリルの兄でありプルーストの研究家で ゲイのフランク(スティーヴ・カレル)が、恋人に振られて自殺未遂を起こし、しばらく一家とくらすことになる。

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そんなある日、カリフォルニアで行われる「リトル・ミス・サンシャイン」の出場資格を得たという知らせが留守電に入り、オリーヴは狂気乱舞する。

シェリルは、オリーヴの夢をかなえてあげようとカリフォルニアに向かうことにする。しかし、一家に飛行機代を捻出する経済的な余裕はなく、また、自殺傾向のあるフランクを反抗期のドウェーンとともに残しておくこともできず、嫌がる二人も連れて一家全員がおんぼろのミニバス・フォルクスワーゲン・タイプ2に乗り込んで、一路カリフォルニアを目指す。

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オンボロ車での旅は、一難去ってまた一難の連続。
どういうわけか、オリーヴは色盲検査の本を持っていて、ドウェーンが色盲であることが判明する。パイロットになれないことに絶望したドウェーンを、オリーヴは慰めるのだった。
という強引なストーリーも差し込まれているが、なんとか目的地のミスコン会場にたどり着き、オリーブの出番が回ってくる。
オリーブの用意した曲・リック・ジェームズの『Super Freak』が会場に流れると、会場はざわめく。なにしろ、品性に欠ける歌詞なのだ。おまけに祖父がオリーブに伝授した踊りは、ストリッパー仕様の垢抜けないもの。

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審査員、観客の大顰蹙を買うなか、オリーブは弱気になるが、この映画のテーマはバラバラの家族がまとまるということ、オリーブを励まそうと一家はステージに上がり、オリーブとともに踊るのだった。

監督は、夫婦であるジョナサン・デイトンとヴァレリー・ファリス。
2006年アカデミー賞では、脚本賞、助演女優賞にオリーブ役のアビゲイル・ブレスリン、さらにアラン・アーキンが助演男優賞にノミネートされ、脚本賞と助演男優賞を受賞した。


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『今宵、フィッツジェラルド劇場で』

今宵、フィッツジェラルド劇場で [DVD]
A Prairie Home Companion
監督:ロバート・アルトマン
脚本:ギャリソン・キーラー
製作:ロバート・アルトマン 他
製作総指揮:フィッシャー・スティーヴンス 他
音楽:リチャード・ドヴォスキー
製作国:アメリカ合衆国  2006年  105分 ★★★*

ミネソタ州セントポールのフィッツジェラルド劇場で、1974年の放送開始以来30余年続いた人気の公開ラジオ番組『プレイリー・ホーム・コンパニオン』が、終了することになった。
テキサスの企業がラジオ局を買収したのだ。
なお本作は、実際に放送されているラジオ番組の「打切り」を、脚本を書いたキーラーと監督のアルトマンがでっち上げたものである。

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今まさに、最後の公開生放送が始まろうとしているところから、映画は始まる。
口ひげを蓄えた保安主任のノワール(ケヴィン・クライン)、司会者キーラー(ギャリソン・キーラー)、娘を連れて現れたメリル・ストリープ扮するヨランダと姉のロンダ(リリー・トムリン)のジョンソン姉妹、ダスティ(ウディ・ハレルソン)とレフティ(ジョン・C・ライリー)らが、楽屋に姿を現す。
彼らはいつものように、挨拶を交わし、ジョークを飛ばし、雑談にふける。
最初の出演者であるダスティとレフティがなかなかスタンバイしない。臨月のおなかを抱えたステージマネジャー助手のモリー(マーヤ・ルドルフ)が、業を煮やし産気づいたような呻き声をあげて驚かせる。始まれば終わると思っているのかもしれない。
ふたりは重い腰を上げ、いよいよショーが始まった。

カウボーイソングが懐かしい。なにより舞台に上がる出演者それぞれが、歌手に負けなくらいに歌がうまい。
司会者キーラーが、歌の合間に読み上げるコマーシャルが、素朴で実にいい。
白いレインコートの謎の女(ヴァージニア・マドセン)が現れたり、歌い終わった歌手が倒れたりするが、ストーリーはドキュメンタリー風に淡々と進み、番組が終わってしまう寂しさを漂わせる。

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番組の最後を見届けようと、テキサスからやってきた新オーナーのアックスマン(トミー・リー・ジョーンズ)が劇場に到着する。
残り時間が少なくなり、ヨランダの娘ローラも母親譲りののどを披露して、ステージの上にはその夜のゲスト全員が集まって、最後の大合唱が始まる。
こうしてフィッツジェラルド劇場は役目を終えた。

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ある日の夜、取り壊されたフィッツジェラルド劇場の隣のダイナーに懐かしい顔ぶれが集まっている。彼らの新しい人生模索していた。
「みんなで別の形でやろう、各地を回ってさ」と、ヨランダが言って盛り上がるにだが、彼らはもう歳だ。
姉もヨランダも年金をもらう歳なのだ。ひとつの祭りが終わり、祭りの後の静けさに浸る、そんなペーソスが漂っている。

脚本を書いたギャリソン・キーラーは、『プレイリー・ホーム・コンパニオン』でも実際に司会を務めていたとのことだ。本作でも司会者として出演している。
番組のフィナーレでは、メルリ・ストリープとダンスを踊り、キスを交わした。役得というやつだ。
なお本物のラジオ番組『プレイリー・ホーム・コンパニオン』は、今も続いて放送されている。
また、2006年11月、ロバート・アルトマン監督は81歳で亡くなり、本作が遺作となった。

【メルリ・ストリープ主演作品】
マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』The Iron Lady/2011年
ジュリー&ジュリア』Julie & Julia/2009年
ダウト ~あるカトリック学校で~』Doubt/2008年
アフター・ザ・レイン』Dark Matter/2007年
今宵、フィッツジェラルド劇場で』A Prairie Home Companion/2006年
めぐりあう時間たち』The Hours/2002年

【2012.04.25】『ロング・グッドバイ』 (1973年)ロバート・アルトマン(サイト内リンク)


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『フラガール』

フラガールスタンダード・エディション [DVD]
フラガール [DVD]
posted with amazlet at 12.11.06
Hula Girl
監督:李相日
脚本:李相日/羽原大介
製作:李鳳宇/河合洋/細野義朗
音楽:ジェイク・シマブクロ
製作国:日本  2006年  120分 ★★★★☆

石炭から石油へと世界のエネルギー需要が変わりつつあった昭和40年、日本各地の炭鉱は閉山の運命にあった。東京オリンピックの翌年、まさに日本は高度成長期を迎えようとしていた頃である。
そんなおり、常磐炭鉱の採掘会社は生き残りをかけ雇用を創出するために、温泉を利用した「常磐ハワイアンセンター」を建設することになった。

町には「なにがハワイだ」という反対意見がある。
現状を打破し「ハワイ」を成功させようとする者と、あくまで炭鉱にしがみつく者に、町は二分される。
男は炭鉱夫、女は選炭婦として働くのが当たり前の土地柄。紀美子(蒼井優)の母親・千代(富司純子)も兄(豊川悦司)も、炭鉱で働いている。父親は落盤事故で亡くなった。千代は「ハワイ」に大反対だ。

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フラダンサー募集の説明会に集まったのは、募集の張り紙を紀美子に見せた早苗(徳永えり)、紀美子、炭鉱会社の事務員で子持ちの初子、大柄な小百合(山崎静代)のたった4人だけだ。

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そんな娘たちにダンスを教えるのは、吉本部長(岸部一徳)が東京から招いたSKD出身のダンサー平山まどか先生(松雪泰子)。
まどかは、カラフルなファションに身を包み、ビールの小瓶を片手に稽古場に到着するなり、飲み過ぎで吐いてしまうという体たらく、脛にキズを持つワケアリの女だ。
そして、4人を目の前にして、あまりのど素人ぶりに愕然とするのだった。
まどかは母親の借金を背負い借金取りに追われ、酒でも飲まないとやってられない自暴自棄の心境にあった。
そんな先生と生徒たちの練習の日々が始まる。
やがて、必死に踊りを練習する貴美子たちの姿に心打たれ、「おら、ケツ振れねえ」「おらの体、見世物じゃねえ」などと言っていた娘たちも、踊り子に志願するようになる。まどかもなんとかしようと、本気で教えるようになる。

ある日、母親の千代が稽古場にいくと、そこには一人でもくもくと練習する貴美子がいた。千代はその踊りに見とれるのだった。
このシーンどこかで見たことがある、『リトルダンサー』(2001年 スティーヴン・ダルトリー)だ。
状況もそっくり、ストライキで揺れるイギリスの炭鉱町、踊る息子を父親が見て踊りの才能を認めるシーン。それまで息子が踊りを習うことに、父親は大反対だった。

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数々の困難を乗り越えて、いよいよ常磐ハワイアンセンターのオープンの日を迎える。
見せ場は、本番でのフラガールたちの息の合った踊り。見事な踊りに大歓声が湧く。
ひときわ目を引くのは蒼井優のソロの踊りである。

古いしがらみと闘いながら、新しいことを始めようとする者たちの奮闘ぶりを描くありがちなパターンだが、笑いあり涙あり感動ありのストーリーは見応え充分。出演者たちの福島弁も、ジェイク・シマブクロのウクレレも、いい味が出ている。
あの頃「なんで、福島にハワイなんだ」と、日本中が思ったのではないだろうか。しかし、その強引な発想には先見の明があったのだ。


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『リトル・チルドレン』

リトル・チルドレン [DVD]
Little Children
監督:トッド・フィールド
脚本:トッド・フィールド/トム・ペロッタ
製作:トッド・フィールド/アルバード・バーガー/ロン・イェルザ
製作総指揮:ケント・オルターマン/トビー・エメリッヒ/パトリック・パーマー
音楽:トーマス・ニューマン
製作国:アメリカ合衆国  2006年 130分

第79回アカデミー賞で、脚本賞、主演女優賞、助演男優賞にノミネートされた。監督は『イン・ザ・ベッドルーム』のトッド・フィールド。

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3歳の娘をもつ専業主婦のサラ・ピアース(ケイト・ウィンスレット)は公園デビューをしたものの、主婦たちの輪に加わることに抵抗がある。
主婦たちがプロム・キングと呼ぶ主夫(パトリック・ウィルソン)は、彼女らの注目の的だ。
主婦たちは、サラにプロム・キングの電話番号を聞き出したら5ドルあげるという度胸試しを持ちかける。サラは、ブラッドに近づき、大胆にもハグをしてキスまでしてしまうのである。 

けしかけた主婦たちは、「こいつただ者じゃないぞ。なんでもしでかす子どものような女だ」と思ったに違いない。

ブラッドにはドキュメンタリー作家の妻がいて、彼自身は目下3回目の司法試験を目指している。ブラッドの妻は稼いでいる分、彼に対してなにかと口やかましい。ブラッドは勉強のため図書館に通う振りをして、実はスケボーで遊ぶ少年たちを眺めて時間を潰しているだけだ。
サラの夫はネットの女性に熱をあげ、その女性の下着を購入しマスターベーションにふけっていて、サラはその現場を見てしまう。

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公園でのことがきっかけとなって、サラとブラッドは子供を連れて毎日のように市民プールで落ち合うようになる。にわか雨に降られた日に、サラの家でふたりは関係を持ってしまう。いけないことと分かっていながらも、ふたりは徐々に深入りしていく。

サラにとっては退屈な日々から、ブラッドにとっては司法試験の重圧から、とりあえず逃避できる。

ところで、女性だけの読書サークルに誘われたサラは、『ボヴァリー婦人』の感想を求められ、ボヴァリー夫人の不倫を自らを正当化するかのように、「女の自立」と言ってのけ、熟年メンバーの支持を得るのだった。

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そんなおり、性犯罪で服役していたロニー(ジャッキー・アール・ヘイリー)が刑を終え街に戻ってきて、街は落ち着きがなくなる。

子どもしか相手にできない異常性欲者のロニーが登場して、「大人になりきれない」という本作のテーマが、浮き彫りになってくる。

ロニーはシュノーケルにフィンをつけて市民プールに現れ、人々はロニーの異様な出で立ちに驚き、プールはパニック状態になるのだった。
元警官のラリー(ノア・エメリッヒ)は、ロニーを糾弾するビラを街中に貼り、ロニーと母親(フィリス・サマーヴィル)に対して嫌がらせをはじめる。ラリーは、かつて少年を誤って射殺したことで、警察官を辞めたのだ。
【このあとネタバレあります。】

【ケイト・ウィンスレット出演作品】
おとなのけんか』Carnage/2011年
『コンテイジョン』Contagion/2011年
『ミルドレッド・ピアース 幸せの代償』Mildred Pierce /2011年
愛を読むひと』The Reader/2008年
リトル・チルドレン』Little Children/2006年
エターナル・サンシャイン』Eternal Sunshine of the Spotless Mind/2004年
ライフ・オブ・デビッド・ゲイル』The Life of David Gale/2003年 
アイリス』Iris/2001年
『エニグマ』Enigma/2001年
『タイタニック』Titanic/1997年
いつか晴れた日に』Sense and Sensibility/1995年
『乙女の祈り』Heavenly Creatures/1994年

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『寝ずの番』

寝ずの番 [DVD]
寝ずの番 [DVD]
posted with amazlet at 12.10.09
監督 : マキノ雅彦
脚本 : 大森寿美男
原作 : 中島らも
プロデューサー : 坂本忠久・林 由恵
音楽 : 大谷幸
製作:日本 2006年 110分 ★★☆★★

原作は中島らもの短編集『寝ずの番』、落語家笑福亭松鶴夫妻がモデル。

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余命いくばくもない橋鶴(長門裕之)の末期の願いは「そとが見たい」。これを1番弟子の橋次が女性器の京都弁「そそ」と勘違いしたものだから騒動になった。そこで、白羽の矢が当たったのが、3番弟子の橋太(中井貴一)の妻茂子(木村佳乃)。

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はじめは「どうして私が?」と納得がいかず、ホルターガイスト現象ばりにそこらにある物を橋太目がけて投げつけたものの、師匠のためならと一肌脱ぐことになる。その3日後(原作では3分後)に橋鶴はなくなった。
こんな冗談がまかり通るのが落語の世界だ。

通夜のあとは酒を酌み交わしながらの寝ずの番になる。
破天荒だった橋鶴師匠の様々なエピソードで大いに盛り上がる。「そそ騒動」は、「師匠は、臨終にまでオチつけなはった」と評価が高い。
橋鶴の息子、序列でいえば2番弟子の橋弥(岸部一徳)は、父親から落語を教えてもえなかったと嘆く。師匠は教えてもどうせ下手だろうから、教えたと人に知れたら師匠が下手ということになるので教えなかったと、一番弟子の橋次に言ったとか。
最後には、亡骸を立たせて『らくだ』のカンカン踊りまでが飛び出した。

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寝ずの番は、故人が寂しがらないように、ろうそくと線香の火を絶やさないようにと、遺体の前で番をする。大概は、親族のなかの若手が受けもつことになる。寝ずの番が多ければ、故人の話で盛り上がって時間が早く経つ。
ときどき、ふと遺体の顔を拝みたくなって、棺桶の蓋を開けて、しみじみと眺めたりする。ふと、踊ってみようと誰かが言い出したら、皆が酔っ払っているものだから無茶が通ってしまった。
下ネタがどんどん飛び出して、息をつかせない爆笑に次ぐ爆笑である。

マキノ雅彦監督の人脈だろうか、弔問客には桂三枝、笑福亭鶴瓶、浅丘ルリ子、米倉涼子、中村勘三郎と豪華な面々が訪れる。

それから暫くして、「そそ騒動」の張本人、そそっかしい橋次が突然亡くなった。
再び、通夜のあとは想い出話に花が咲く。
橋次はついていない男だった。寺を借りての独演会では、本堂が火事になったり、住職が亡くなったり、と不運ばかり。だが、色っぽい女性(高岡早紀)との一夜もあったとか。
ここでも下ネタは盛りだくさん。

葬式になると仏事にやたら詳しい奴がいて、それは例えば遠縁のオジさんだったりする。それは違うとかこうやれとか、仕切りたがる。はじめは素直に従がおうとしない周りは、やがてその仏事通に従うことになる。ところが「この地区では違う」と、地元のやり方を主張する別の人物が出てきたりする。周りはどっちでもいいと思っているが、ふたりにとっては面子をかけた勝負なのだ。大体は地元のやり方を主張した方が通る。今回その仏事通の役は、4番弟子の橋枝(木下ほうか)であった。

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その一年後、今度は師匠の奥さん、色っぽい志津子(冨司純子)姐さんが、突然亡くなった。
通夜に初老の男(堺正章)がやって来て、その昔新地の一番人気の芸妓だった志津子姐さん会いたさに夜な夜な通い詰め、中国の故事の「傾城」よろしく鉄工所を潰してしまったとのこと。今はタクシーの運転手だという。

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なんでも、その男は師匠と姐さんを取り合った恋敵で、姐さんから教わった座敷歌をぜひ唄いたいと言い出した。唄は下ネタがテーマ。それに橋太が唄い返す。
男は「おれの心はトタンの屋根よ 変わらないのを見ておくれ」と師匠が姐さんに送った都々逸を、姐さんが教えてくれたと披露する。
そして、例によって下ネタの大歌合戦となるのだった。

「文部科学省認定でありながら、卑猥な言葉が70数回も出てくることでR-15指定を受けた」というネタがまかり通っているのも、大いに笑える。


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『バベル』

バベル [Blu-ray]
バベル [Blu-ray]
posted with amazlet at 12.07.25
原題:Babel
監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
脚本:ギレルモ・アリアガ
原案:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ/ギレルモ・アリアガ
製作:スティーヴ・ゴリン/ジョン・キリク/アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
音楽:グスターボ・サンタオラヤ
製作:アメリカ合衆国 2006年 142分

バベルは、『旧約聖書』の『創世記』第11章に出てくる町の名。
天まで届くバベルの塔を建てようとした人間を快く思わない神は、人間に別々の言葉を与え、その結果人々はばらばらになり、別々の所に散っていった。

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モロッコ
夫婦の絆を取り戻そうとモロッコを旅行中のリチャード(ブラッド・ピット) とスーザン(ケイト・ブランシェット)を不幸が襲う。バスで移動中に、スーザンがライフルで撃たれたのだ。
病院に運ぼうとリチャードが大使館と掛け合うが、テロ組織の関与を疑う米国とモロッコ政府との協議が進まず埒があかない。
ライフルを撃ったのは、山羊をジャッカルから守ろうとする幼い兄弟であった。

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カリフォルニア・ティアナ
カリフォルニアでは、メキシコ人不法滞在者のアメリア(アドリアナ・バラッザ)が、リチャードとスーザンの子供たちの面倒をみている。
アメリアの息子の結婚式がメキシコのティアナであり、彼女は甥のサンジェゴの車で、子供たちとともに結婚式に行くことにした。
結婚式が終わり、サンジェゴの運転する車でカリフォルニアに戻ろうとするが、彼は酔った勢いで国境の検問を強行突破してしまう。
逃亡の途中で、アメリアと子供たちは車から下ろされる。
彼らは飲み物もなしに、灼熱の砂漠をさまようのだった。

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東京
チエコ(菊地凛子)は、父親ヤスジロウ(役所広司)と二人暮らし。母親の自殺で負った心の傷が癒えていない。
聴覚障害のチエコは疎外感を感じていて、不安定で危なっかしい生活を送っている。
警視庁の警部ふたりが父に面会したいとマンションを訪ねてくる。モロッコでアメリカ人が撃たれたライフルが、ヤスジロウ名義のものだという。
ライフルは、ヤスジロウがモロッコに狩りのツアーに出かけたとき、ガイドに謝礼としておいてきたものだった。
チエコは若い刑事(二階堂智)をマンションに誘い迫るが、断られてしまう。

この3つの話が、交互に入れ替わりシンクロして物語は進んで行く。
本作のテーマである、思い通りにならない、意志の疎通がとれないといったもどかしさが、ドキュメンタリー風の淡々とした映像によって巧みに表現されている。