2008年

『パッセンジャーズ』 

パッセンジャーズ 特別版 [DVD]
Passengers
監督:ロドリゴ・ガルシア
脚本:ロニー・クリステンセン
製作:ケリー・セリグ/マシュー・ロードス/ジャド・ペイン/ジュリー・リン
製作総指揮:ジョー・ドレイク/ネイサン・カヘイン
音楽:エド・シェアマー
製作国:アメリカ合衆国  2008年  93分 ★★★☆☆

本作は「なるほど」派と「なんだこれ」派に、評価が分かれると思う。

2

アン・ハサウェイ演じるドクター・クレアは精神科のセラピスト。
飛行機墜落事故で奇跡的に助かった5名の集団カウセリングを行おうとするが、エリック(パトリック・ウィルソン)だけは個人的に自宅でなければ話をしないと言う。

1

その要望に応えてクレアはエリックの自宅を訪れると、彼はクレアになれなれしく迫ってくる。
彼はときどき突拍子もない行動をとり、クレアのコーヒーの好みを知っていて姉がいることも知っていた。彼は強度の精神的重圧を受けたことにより、超能力者になったのだろうか。

クレアのカウンセラーに集まる生存者が、ひとりまたひとりと来なくなって、さらに、彼女は何者かよって監視され、生存者の行動も探られているようだ。
バンクーバーの空は曇がちで、町は死んだように人影がまばら、何かを暗示していそうである。
事故の原因は機長のミスとする航空会社の発表に、クレアは会社が事故原因を隠蔽しようとする陰謀があるのではないかと疑い出す。

この後のストーリーは、映画の面白さが吹っ飛んでしまうので、まさかの大どんでん返しが待っているとだけにしておくのが無難そうだ。

Passengers3

アン・ハサウェイのたれ気味の大きな目が離れているところと、よだれがこぼれそうな下唇が魅力的だ。


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『エレジー』

Photo エレジー
Elegy
監督:イザベル・コイシェ
脚本:ニコラス・メイヤー
製作:トム・ローゼンバーグ/ゲイリー・ルチェッシ/アンドレ・ラマル
製作国:アメリカ合衆国 2008年 112分 ★★*☆☆

通常、恋愛ものであれば主人公に感情移入してしまうが、この作品はそうはならなかった。
老大学教授のデヴィット(ベン・キングスレー)が女子大生のコンスエラ(ペネロペ・クルス)をものにしようと企んで、その通りになり、その関係が長続きはしないと思いきや、ずるずる引きずる。
あまりにも性に固執したデヴィットに、感情移入できないからだ。

2

デヴィットは雑誌に演劇批評を書き、テレビで自らの著書を解説し文化人のインタビューをこなす有名人である。
友人(デニス・ホッパー)に、コンスエラとの関係を逐一報告しアドバイスをもらうのだ。
しかし、家庭はとうの昔に壊れ、医師の息子(ピーター・サースガード)ともうまくいっていない。
カナダに住む20年来の女友達(パトリシア・クラークソン)が訪れ、性的関係が続いている。

3

デヴィットは自宅のパーティに現れたコンスエラに、見せたいものがあると画集を手にし、ゴヤの『着衣のマハ』に似ていると言って、きっかけを作る。『着衣のマハ』の次のページは当然『裸のマハ』だろうが、それは見せなかった。オペラや演劇にいっしょにいかなかと、デヴィットは誘う。
この手口がまんまと成功するのだ。

はじめは性的な興味だけと友人に話していたが、デヴィッドは彼女にのめり込んでいく。
自らの歳を考えると、いつか別れなければならないことを悟り、デヴィッドは彼女との関係に一線を引こうとする、という純愛ものだった。

はじめっからそういう気配をにじませればいいものを、途中から、それならそういう目で観ようじゃないかと姿勢をただした。
老教授と女子大生の「結果的には」純愛もので、「結果的には」というのは、はじめ老教授の魂胆が若い娘を物にするという邪念に満ちたもので、到底ついていけないなと思わせておいて、途中から風向きが変わるのだ。
結末は、吉永小百合と浜田光男の『愛と死を見つめて』を思い起こさせる展開だった。
BGMは頗るいい。

【ピーター・サーズガード出演作品】
17歳の肖像(2009年)
エレジー(2008年)
フライトプラン(2005年)
ニュースの天才(2003年)


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『ブタがいた教室』

ブタがいた教室 (通常版) [DVD]
ブタがいた教室 [DVD]
posted with amazlet at 12.12.08
監督:前田哲
脚本:小林弘利
音楽:吉岡聖治
主題歌:トータス松本「花のように星のように」
製作国:日本  2008年  109分

人騒がせなことに、新学期のはじめに、生後2カ月の子豚を抱えて教室に現れた星(妻夫木聡)先生は、「豚を飼育して卒業の時に皆で食べましょう」と言い出した。先生は、命の大切さと、それを奪い生きていかなかればならない人間の抱えた矛盾を、子供たちに知ってほしいと思ったのだろう。熱血型の新米先生の思いつきそうなことだ。

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子供たちは、豚を育てることには賛成なのだが、食べるとことには大いに戸惑う。
職員会議では、教頭(大杉漣)は食べるのはどういうものかと苦言を呈し、校長(原田美恵子)は子供たちの自主性に任せるという寛大な意見を述べた。さすが校長である。

かくして、子供たちによってグラウンドの片隅に豚小屋が建てられ、子豚は「Pちゃん」と名付けられた。
星先生は、「食べる豚にニックネームをつけるのは、ちょっと」と難所を示した。殺して食べなければならない動物に名前をつけると、過剰に感情移入をしてしまうと思ったが、先生は折れた。
われわれの数世代前までは、家で豚や鶏を飼い、祝い事があると潰して食べた。名前をつけると、殺すことが忍びなくなる。

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かくして、クラスの子供たちの学校生活は、Pちゃんが中心となる。

やがて、豚の世話をして子どもがケガをした、服に豚の臭いが染み込んで帰ってくる、学校の話題は豚のことばかりだと、母親たちが先生に苦情を言うが、それは当然なことだろう。何しろやりすぎなのだから。

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さて、年が変わると、Pちゃんはやって来た頃の何倍にも大きくなり、丸々と太っった。
そのPちゃんを食べるのか食べないのかで、クラスは喧々諤々の論争となる。さらに、畜産センターに送るか、飼育を買って出た下級生に任せるかで、大議論となるのだった。

議論する子供たちは、演技と思えないほど真剣に見える。
こういう突飛なことを子供たちに押し付ける先生は、少し常軌を逸したところがあるようなイメージがするが、星先生はいつも冷静で淡々としていた。
本作は大阪であった実話に基づいているという。


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『百万円と苦虫女』

百万円と苦虫女 [DVD]
百万円と苦虫女 [DVD]
posted with amazlet at 12.12.03
監督:タナダユキ
脚本:タナダユキ
製作:前田浩子/木幡久美/田中正
製作総指揮:前田浩子(企画)
音楽:櫻井映子/平野航
製作国:日本  2008年  121分 ★★★★☆

鈴子(蒼井優)は、バイト仲間のリコと部屋をシェアして借りることになった。リコは恋人も一緒に住むと言い出し、予定外のことに鈴子は愕然とする。ところが、入居寸前にふたりは別れてしまい、あろうことか男だけが鈴子と一緒に住む事態になってしまう。
ある日、拾ってきた子猫をその男が捨ててしまったことに腹を立てた鈴子は、部屋にあった男の持ち物を捨ててしまう。そのことで、彼女は警察に逮捕されてしまう。まったく予期しないことで、鈴子は人生につまづいてしまった。

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拘置所を出て実家に帰ったものの、両親は夫婦喧嘩をするし、成績が優秀だった小学生の弟拓也は、鈴子が家にいると勉強の邪魔になるという。鈴子には居場所がない。彼女は100万円貯めたら出ていくと宣言するのだった。

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家を出た鈴子は、浜辺の「海の家」に勤める。そこでかき氷、焼きそば、フランクフルトソーセージなどを売る。

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そのあと、山あいの「果実農家」に住み込み、桃の収穫の手伝いをする。

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次は、東京近郊の「園芸店」に勤め口を見つける。
それぞれの場所で、鈴子は、ちょっとした意に沿わないことに巻き込まれる。

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鈴子が家を離れて金を稼いでいるあいだ、東京では拓也がクラスメートの執拗ないじめに耐える日々を送っていた。
やられっぱなしの拓哉は、いつかどうにかしなくてはならない。
鈴子がその拓也に手紙を書き近況を知らせる形で、物語が進行していく。

特徴ないのが特徴と自身が言っているように、どこにでもいそうな若い女性を、肩肘張らずに蒼井優が好演している。
強烈なキャラクターの人物は登場せず、しつこくなりすぎない程度にストーリーが抑えられていて、あとに清涼感が残る作品である。


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『人のセックスを笑うな』

人のセックスを笑うな [DVD]
Don't Laugh at My Romance.
監督:井口奈己
脚本:本調有香
製作:西ヶ谷寿一/永田芳弘/河合洋/松下晴彦/廣瀬敏雄
出演者:松山ケンイチ/永作博美/蒼井優/忍成修吾/温水洋一/あがた森魚/桂春團治
音楽:HAKASE-SUN
製作国:2008年 日本 137分 ★★★☆☆

タイトルほどの刺激的なシーンはない。
原作は山崎ナオコーラのデヴュー作。
挑戦的なタイトルは、著者が、本屋の同性愛のコーナーで本棚を眺めながらクスクス笑っている人を見て思いついたという。

19歳の男子学生が39歳の美術教師にのぼせ上がり、そこに男子学生を想う同級生が絡む、三角関係の物語。
見た目はやる気がなさそうだが正直に生きている大学生役の松山ケンイチと、常識にとらわれない飛んでる女性役の矢作博美、松山を密かに恋慕する女子学生役の蒼井優、それぞれの役柄がぴったりとはまっている。

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舞台は桐生市の冬。
美術学校に通うみるめ(松山ケンイチ)は、リトグラフの講師・ユリ(永作博美)からモデルを頼まれアトリエを訪れる。みるめは予想していたのか考えもなく引き受けてしまったのか、ユリに裸になることを要求され、そのまま関係を持ってしまう。それ以来みるめは有頂天になる。

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みるめに想いを抱くえんちゃん(蒼井優)は心穏やかでない。といって、みるめに告白したところでどうなるものでもないと、彼女は思っている。えんちゃんの乙女心は切ない。
ある日、リトグラフ教室にユリの姿が見当たらないので、みるめが家を訪ねてみると、そこには「猪熊カメラ工房」と看板が出ていた。中からユリの父親くらいの年恰好の男性(あがた森魚)が出てきて、ユリからその男性は夫であることを知らされる。「あれ、言ってなかったけ」とユリはしれっと言う。

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あまりのショックに、みるめはユリとの関係を断つ決心をして携帯電話を針金でぐるぐる巻きに縛りハンダ付けして開かないようにした。別に人妻だっていいじゃないとは、19歳のみるめは思わなかったのだ。
原作でははじめから、ユリが結婚していることをみるめは噂で知っていた。そのことで思い詰めたりしない。映画の設定の方が、みるめの繊細さが強調されていい。
えんちゃんは電話に出なくなったみるめが心配になり家を訪ね、みるめのユリへの想いを聞き出すのだった。えんちゃんは、自分の気持ちを抑えて、ユリに会うようみるめを促す。

4

ある日突然、ユリは姿を消す。夫婦でインドのサイババに会いに行ったという噂もある。
そして途方に暮れるみるめは、家に引きこもるようになる。そんなみるめを励まそうと、えんちゃんは「ユリを見た」と告げる。そして、ふたりはバイクに乗ってユリを探しにでかけるのだった。えんちゃんは恐らく、みるめを励まそうと嘘をついたのだろう。
なにもそこまで落ち込まなくとも思うのだが、それが19歳の純真な男が経験した失恋なのだ。

原作では、ユリは見た目も39歳で、目尻には小じわがあって、髪は長く、ボサボサ、肉付きがいい 、口紅はしているものの、汚れたスモックを着ている油絵の講師。
ユリは原作よりも映画のほうが魅力的な女性の設定になっている。そうじゃないと、この映画は成り立たない。→ 『人のセックスを笑うな』(小説)


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『愛を読む人』

原作は世界的ベストセラー『朗読者』。
アカデミー賞作品賞をはじめ5部門にノミネートされ、ケイト・ウィンスレットが主演女優賞を獲得した。

愛を読むひと (完全無修正版) 〔初回限定:美麗スリーブケース付〕 [DVD]
愛を読むひと[DVD]
posted with amazlet at 12.09.26
The Reader
監督:・ダルドリー
脚本:デヴィッド・ヘアー
原作:ベルンハルト・シュリンク  『朗読者』
製作:アンソニー・ミンゲラ/シドニー・ポラック/ドナ・ジグリオッティ/レッドモンド・モリス
音楽:ニコ・マーリー
製作国:米国  2008年 124分 ★★★★★

1958年10月、雨に濡れ体調が悪くなった15歳のマイケル(ダフィット・クロス)は雨宿りしたアパートで、母親のような年回りのハンナ(ケイト・ウィンスレット)から介抱される。そのあと、猩紅熱となり3カ月たって回復したマイケルは、礼を言うためにハンナのアパートを訪ねる。マイケルの下心は、ハンナに見透かされてしまう。

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やがてふたりは親密な関係になり、21歳年上のハンナの求めに応じ、会うたびにマイケルは本を朗読して彼女に聞かせるのが習慣となった。ハンナはマイケルを「坊や」と呼んだ。

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ある日、私鉄電車の車掌としての勤勉な働きぶりを認められたハンナは、上司から事務職に昇進する旨を伝えられる。そのことを期にハンナはアパートから忽然と姿を消した。マイケルの必死の搜索にもかかわらず、ハンナの姿を見かけることはなかった。

3

1966年、ハイデルベルグ大学の法律学科の学生となったマイケルは、ナチの戦犯の裁判を傍聴することになる。
そこで彼は被告席に座るハンナを見つける。

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争われていたのは、ユダヤ人を拘束していた教会が火事になった時に、監視していたハンナたちナチの女性隊員が、扉を開けなかったために教会の中にいたほとんどのユダヤ人が死んだ事件である。
裁判が進むうちに、マイケルはハンナが隠していることに気づく。罪が重くなることを承知で、ハンナは自分の秘密を隠し通したのだった。そして、ハンナには無期懲役がいい渡され、他の被告たちは軽い刑となった。
このあたりで、ハンナがマイケルに本を読んでもらった理由、事務職昇進を目の前にして姿を消した理由が、そういうことだったのか、とわかった。

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その20年後、マイケル(レイフ・ファインズ)はかつてハンナに読み聞かせた本をテープに録音し、テープとテープレコーダーを獄中のハンナに送り始めた。
マイケルは朗読以外のことは録音しなかった。
そして数年後、「テープをありがとう、坊や。ハンナ」という手紙が届いたのだった。マイケルの意図はハンナに通じた。

ハンナの出所間際に、マイケルは面会に訪れ、出所後の住居と仕事を用意していることを伝えるのだった。
しかし、ハンナの選択はマイケルの厚意に答えるものではなかった。

マイケルは、ハンナが他人に知られることを恐れ頑なに隠した秘密を、誰にも語らなかった。だからこそ、テープには朗読以外のことは吹き込まなかったのだ。

朗読者 (新潮文庫)
朗読者 (新潮文庫)
posted with amazlet at 12.09.26
ベルンハルト シュリンク
新潮社

・ダルドリー監督作品
愛を読む人』The Reader(08年)
ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』Extremely Loud and Incredibly Close (11年)
めぐりあう時間たち』The Hours (02年)
リトル・ダンサー』 Billy Elliot(00年)。


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【ケイト・ウィンスレット出演作品】
おとなのけんか』Carnage/2011年
『コンテイジョン』Contagion/2011年
『ミルドレッド・ピアース 幸せの代償』Mildred Pierce /2011年
愛を読むひと』The Reader/2008年
リトル・チルドレン』Little Children/2006年
エターナル・サンシャイン』Eternal Sunshine of the Spotless Mind/2004年
ライフ・オブ・デビッド・ゲイル』The Life of David Gale/2003年 
アイリス』Iris/2001年
『エニグマ』Enigma/2001年
『タイタニック』Titanic/1997年
いつか晴れた日に』Sense and Sensibility/1995年
『乙女の祈り』Heavenly Creatures/1994年

『レイチェルの結婚』

姉レイチェル(ローズマリー・デウィット)の結婚式の2日前に、麻薬常習者の更正施設を出たキム(アン・ハサウェイ)は、結婚式の準備でごった返す自宅に帰ってくる。ひっきりなしにタバコを吸い、家の中を歩き回るキムの存在は、周囲にピリピリとした緊張感を生んでいる。

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レイチェルの結婚 [Blu-ray]
原題:Rachel Getting Married
監督:ジョナサン・デミ
脚本:ジェニー・ルメット
製作:ジョナサン・デミ/ネダ・アーミアン/マーク・プラット
製作総指揮:イロナ・ハーツバーグ/キャロル・カディ
作曲:ゼファー・タウィル/ドナルド・ハリソンJr. 
製作国:アメリカ合衆国  2008年  114分

キムは14歳のときに麻薬を服用して、弟を乗せた車で事故を起こし弟を死なせた。それ以来、麻薬に溺れ施設に入ったり出たりを繰り返しているバックマン家の厄介者である。彼女の存在は一家に辛く悲しい過去の記憶を否応なく甦らせる。

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親戚や友人が集まった結婚式前夜のディナーは、それぞれが自己紹介し和気あいあいと進んだ。レイチェルから妊娠してるとの発表もあった。
いざ、キムが語り始めると、場違いなことを言い出すのではかと、一同はハラハラしているのが画面から伝わってくる。画面が細かく揺れドキュメンタリー風に映し出され、見ている者はまるでディナーにいるかのような臨場感を感じる。

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ディナーが終わって客が帰ったあとに、姉はキムに対し鬱積していた怒りを爆発させる。キムは自分が歓迎されていないことを強く感じるのだった。
そして、キムは車で家を飛び出して運転を誤り自損事故を起こしてしまう。

結婚式当日、交通事故で顔にあざのできたキムは、殊勝にレイチェルを祝福している。
ミュージシャンである花婿の友人たちは、得意の楽器を奏でて式を盛り上げている。

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温厚そうな父親の表情はどこか作ったようで引きつって見える。離婚し今は実業家として成功している母親(デブラ・ウィンガー)はよそよそしい。会が終わればさっさと引き上げてしまう。式を控え興奮気味の姉は神経質になっている。キムは疎外感を感じながらもなんとか平常心を保とうとしている。花婿は終始笑顔を絶やさず、穏やかである。ひとりひとりの心模様を丁寧に映し出すことで、作品み深みを与えようとすると監督の意図が、成功している。

主演のアン・ハサウェイは、第81回アカデミー賞主演女優賞にノミネートされた。


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『フローズン・リバー』

主人公のメリッサ・レオ扮するレイのタトォーの入った母趾が映し出され、着替えると腕、背中、太腿にもタトォーが見える。トレーラーハウスに住み、1ドルショップで非正規雇用人として働くレイには15歳と4歳の息子がいて、その日の食事にもこと欠く状況になっている。ギャンブル依存症の夫が、新居を購入するための金を持って行方をくらましたのだ。一家は社会の最下層で生きている。

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フローズン・リバー [DVD]
原題:Frozen River
監督:コートニー・ハント
脚本:コートニー・ハント
製作:ヘザー・レイ/チップ・ホーリハン
製作総指揮:チャールズ・S・コーエン/ドナルド・ハーウッド
音楽:ピーター・ゴラブ/シャザード・イズマイリー
製作国:アメリカ合衆国   2008年  97分  ★★★★

レオが夫を探しにビンゴ会場に行くと、モホーク族(モヒカン刈りはモホーク族からきている)のライラ(ミスティ・アパーム)が夫の車に乗っているところを目撃する。ライラは車は鍵がついたまま放置されていたと言う。
車を高く売れるところを紹介するとライラに誘われ、ふたりは車で凍った川を渡って対岸のカナダに行くのだった。
しかし、車を売る話は嘘で、レオはその車で密入国者を運ぶ仕事に手を出すことになる。

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夫を交通事故で亡くしたライラには1歳の息子がいる。生活能力のないライラから、生まれるとすぐに息子を義母につれていかれ、トレーラーハウスでひとりで暮らしている。

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密入国者を運んでいるうちに、レイは警察にマークされるようになる。レイの息子は急に金回りが良くなった母親を、犯罪に手を出しているのではないか疑っている。
こんな悪事が長く続けられるはずもなく、レイがこれで最後と臨んだ仕事で、ブローカーとの間にトラブルが起こり銃で撃たれてしまう。幸いレイのケガは軽傷であったが、川を渡る途中で薄い氷が割れタイヤが取られ、密入国者ともども車を乗り捨ててモホーク族の家に逃げ込むのだった。

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警察がモホーク族の保留地を取り囲み、レイたちの出頭を待っている。レイは苦渋の選択をせざるを得なくなる。

必死に子どもを守って生きて行こうとするふたりの母親の生き様を描いた作品。
息が詰まるような閉塞感、寒々とした背景は、『ウィンターズ ボーン』(11年)に似たテイストがする。
アカデミー賞主演女優賞にノミネートされたメリッサ・レオの渋い演技が光る。
本作は脚本賞にもノミネートされた。

『スラムドッグ$ミリオネア』

2006年、ムンバイ。
スラムで育ったジャマールは、警察で拷問を受ける。
テレビ番組「クイズ$ミリオネア」で、学のないジャマールが難問を次々と正解したのは不正が行われたと疑われたからだ。
身に覚えのないジャマールは、自らの生い立ちを語り始める。

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スラムドッグ$ミリオネア [DVD]
原題:Slumdog Millionaire
監督 ダニー・ボイル
脚本 サイモン・ビューフォイ
原作 ヴィカス・スワラップ/『ぼくと1ルピーの神様』
製作 クリスチャン・コルソン
製作総指揮:テッサ・ロス/ポール・スミス
音楽:A.R.ラフマーン
製作国:イギリス  2008年  120分 ★★★☆☆

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サリームとジャマールの幼い兄弟は母を殺され、世界最大のスラム街に孤児として暮らしていた。
兄弟が雨宿りしている所に、外で濡れているラティカを招き入れ、『三銃士』に見たてて生きて行こうとジャマールは言う。しばらくは3人で行動を共にしていたが、ふたりとラティカは離れ離れになってしまう。

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兄弟は盗みを働いたり観光客を騙したりして、たくましく生きていく。
やがて兄のサリームは裏社会に居場所を見つけ、ジャマールはコールセンターのアシスタントとして地道に生きていこうとする。
そして、ジャマールはラティカに会いたい一心で「クイズ$ミリオネア」に応募したのだった。
スラムドッグとしての波乱万丈の生活の中に、難問を正解する経験が積み重ねられていた。
尋問する警察官はジャマールに不正はないと認め、拘留を解く。

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そして国中が注目する中、最後の2000万ルピーがかかった問題は、『三銃士』に登場する銃士の名前。

スラムから必死に抜け出そうとする兄弟の物語に、ラブロマンスが絡み、社会問題の要素もあって、スケールの大きいエンターテイメントになっている。ところで2000万ルピーは円に換算するとどれくらいか。最近の為替レートでは、1.4166円×2000万=約2840万円。

アカデミー賞の作品賞、監督賞、歌曲賞、作曲賞、編集賞、録音賞、撮影賞、脚色賞の8部門を受賞した。

『レスラー』

レスラー スペシャル・エディション [DVD]
レスラー [DVD]
posted with amazlet at 12.08.17
原題:The Wrestler
監督:ダーレン・アロノフスキー
脚本:ロバート・シーゲル
製作:ダーレン・アロノフスキー/スコット・フランクリン
音楽:クリント・マンセル
主題歌:ブルース・スプリングスティーン
製作国:米国  2008年  115分

80年代後半、人気プロレスラーだったランディ(ミッキー・ローク)は、20年たった今は、満身創痍。引退を考えているが、貯えがない。そもそもレスラー以外の仕事は思いもつかない。
ランディの生き様は、頑な生き方を貫き波乱の人生を送るミッキー・ローク自身にダブって見える。

仕込んでおいたカミソリで自ら額を切り、血を流す壮絶な試合を演出する。あるいは、有刺鉄線に絡まれ、巨大なホッチキスで何箇所も皮膚を留められ、ビンで頭を殴られ、ブリキ缶で背中をしたたか殴られる、という身も心も痛みを伴う試合をしている。

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そんな試合をしても、痛みを和らげる薬や筋肉増強剤を購入するとファイトマネーは消えてしまい、家賃の支払いもままならない。
そうしたツケがたたり、左耳は難聴となり補聴器の世話になっている。腰も肘もガタガタ、心臓病も抱えている。

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ストリップバーで仕事をする2人の子供を抱えるシングルマザーのキャシディ(マリサ・トメイ)も、ランディと同じように身を削ってぎりぎりにところで生きている。そうしたふたりは心を通わせている。
疎遠になっていた娘(ステファニー・ラムジンスキー)との関係を取り戻そうとするのだが、娼婦と一夜を過ごし約束の時間をすっぽかしてしまい、娘から絶縁される。

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そんななか、心臓発作を起こし、心臓のバイパス手術を受けるのだった。
激しい運動はドクターストップがかかり、肉屋の店員として働くが、そんな仕事が続くはずもない。

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やがて昔人気を博したライバルとの再選を企画する。
ランディは会場に駆けつけたキャシディの制止をきかず、リングに上がる。胸痛を感じながら、コーナーポストに上がりダウンしている相手目掛けて必殺技のダイビングを試みようとするのだった。ランディーは、まるでミッキーロークそのものだ。

シモーヌ』(03年)では、まだあどけなかったステファニー・ラムジンスキーが、すっかり大人になった演技を披露している。
アカデミー賞主演男優賞(ミッキー・ローク)、助演女優賞(マリサトメイ)にノミネートされた。