2009年

『ミレニアム2 火と戯れる女』

ミレニアム2 火と戯れる女 [DVD]
Flickan som lekte med elden
監督:ダニエル・アルフレッドソン
脚本:ヨナス・フリュクベリ
原作:スティーグ・ラーソン
スウェーデン デンマーク ドイツ 2009年 130分 ★★★★★

前作『ドラゴン・タトゥーの女』では、リスベット・サランデル(ノオミ・ラパス)よりもミカエル・ブルムクヴィスト(ミカエル・ニクヴィスト)が登場する場面が多かった。本作ではリスベットが大活躍する。
スケールの大きなストーリーに魅了される一本。

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海外放浪の旅からストックホルムに戻ってきたリスベットは、自らの保護観察記録書を確かめる目的で、かつてレイプされその仕返しに下腹部にタトゥーを刻んだ後見人のヴュルマンの部屋に忍び込みんだ。少女時代に起こした障害事件で精神病院に強制入院させられたリスベットは、退院後は後見人の監視下で生活せざるをいない立場にある。リスベットは机の引出しにあった拳銃でヴァンゲルを脅し、「問題ない」と書くよう脅した。これがリスベットにとって不覚であった。ヴァンゲルが復讐を企てたのだ。

一方、雑誌社ミレニアムでは、駆け出しジャーナリストのダンが調べた少女売春に関する記事が準備がされていた。
その記事は、売春規制の法案作成に携わった役人や警察官、弁護士、ジャーナリストなどの名前が連なったスキャンダラスなものだった。やがてダンと恋人が銃殺され、発見された凶器はリスベットの指紋のついたヴァンデルの拳銃であった。直ちに、警察はリスベットを容疑者として指名手配した。

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リスベットの無罪を信じるミカエルは彼女に接触し、ふたりで事件の調査を進めるが、少女買春の被害者達は報復を恐れて口を開こうとしない。彼女達が恐れているのは「ザラ」という人物であった。
何十年も前にスウェーデンに亡命したソ連のスパイが、冷戦時代にはもてはやされた。冷戦が終結したあと、スパイの存在の隠蔽をもくろむ公的機関の弱みに漬け込んで、その人物はモンスター化していった。それがザラだった。

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やがてリスベットはザラの居場所を突き止め単身乗り込んでいく。
そして、バイクに乗った悪党達や、巨漢の金髪男がリスベットを待ち受ける。

リスベットは華奢ながら、持ち前の感のよさと敏捷さで、仕掛けられた罠を回避し敵の攻撃をかいくぐっていく。リスベット自らが罠を仕掛けるという大胆さで巨悪と戦う痛快な終盤が待っている。→ブログランキングへ

→『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女

『ムースの隠遁』

ムースの隠遁 [DVD]
ムースの隠遁 [DVD]
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LE REFUGE
監督:フランソワ・オゾン
脚本:フランソワ・オゾン/マチュー・イッポー
音楽:ルイ=ロナン・ショワジー
フランス  2009年  88分  ★★★★☆

いい意味で妙な余韻が残る映画だ。
妊婦が主人公だからだろうか。

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ムース(イザベル・カレ)とルイはともに裕福。
ふたりは品質の悪いヘロインの過剰摂取で意識不明となり、ルイは命を落としムースはかろうじて助かる。ムースは妊娠2カ月であった。

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彼女はルイの母親からそれとなく堕胎を勧められるが、パリを離れて海辺の町で静かに暮らすことにした。

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ルイの弟ポールがスペインに行く途中に彼女の暮らす家に逗留する。
はじめは、ムースは迷惑そうにしているものの、優しいポールを受け入れるようになり、浜辺でふたりで肌を焼いて過ごしたりする。さらに、彼女はポールが複雑な過去を抱えていることを知る。

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ムースはタバコを吸ったり、ビールやワインを飲んだり、ディスコで踊ったりと胎児に悪影響を及ぼしそうなことを平気やるが、もとはドラッグ中毒だったから、気をつけてもしょうがないと思っているのかもしれない。さらに、妊婦フェチの男の誘いにのったりと危なっかしい。
やがて、ポールは子供が生まれたら必ず会いに行くとムースに約束してスペインに発っていく。

ムースはパリの産院で女の児を無事に出産した。
約束どおり見舞いに現れたポールに娘を預け、ムースはコートをはおり、ポールならあの娘の面倒をちゃんと見てくれるはず、今私にはやるべきことがある、必ず迎えにくるからとつぶやきながら、パリの街に消えていく。

ムースにとって不幸なことは、冒頭のルイが亡くなったことだけ。
妊娠中はいろいろあったが、取り立てて不幸なことは起こらなかった。愛する人の子供を無事に産んだことだし、ポールなら娘の面倒をちゃんとみてくれそうだ。彼女は、このあたりで過去のしがらみを断ち切ってもいいだろうと思った。
ムースのこの身勝手で乱暴な選択肢もありだと思わせる、それが本作の魅力だと思う。→映画(全般) ブログランキングへ

『時の重なる女』

時の重なる女 [DVD]
時の重なる女 [DVD]
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LA DOPPIA ORA
監督:ジュゼッペ・カポトンディ
脚本:ジュゼッペ・カポトンディ
音楽:パスクァーレ・カタラーノ
イタリア  2009年 92分
★★★★☆

現実と幻想が交差する中で、主人公のソニアの周りに謎が次々投げかけられて、ストーリーは展開していく。

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スロバキアからの移民のソニアは人目を引く美人。彼女はホテルの掃除婦として働き始めて間もない。彼女は、集団見合いパーティで、郊外の大邸宅の警備員として働く元刑事のグイドと出会う。
この見合いパーティが滑稽だ。狭いテーブルに女がいて、合図のベルで、その目の前の席の男がめまぐるしく入れ替わるシステム。ベルがなると、もう終わりかと男が不満げに席を立つ。

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出会ったその日に、ソニアとグイドは意気投合し深い関係になり、その後、愛し合うようになる。この恋の行方がどうなるかが、本作のテーマである。

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そんなある日、グイドはソニアを自らが警備員として働く大邸宅に連れていく。そこで突然強盗団に襲われ、邸宅内の絵画や貴金属や陶器など金目物が根こそぎ持ち出され、グイドは銃で撃たれソニアも重症を負う。

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あまりにも用意周到な強盗団の手口に、警察はソニアに疑いの目を向ける。
ソニアは、ケガの影響で記憶障害をきたし幻覚を見るようになっていた。警察に尾行されるソニアは、ますます精神的に不安定になり、この幻覚と現実が、ごちゃごちゃになったところがタイトルが表しているところである。

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ソニアは、母親を早くに亡くしていて、父との折り合いがうまくいかず、家を出て転々と居所を変える生活を送ってきた。警察はソニアの過去を調べることで、ますます疑惑を抱くようになる。

このあたりでソニアの病状が落ち着き、彼女はいくつかの出来事が幻想であったと気づき、ストーリーは完結の方向に向かう。

ベッドシーンで、ソニアが寝返りを打つと堂々と陰毛が映る。こうしたあっけらかんとしているところはイタリアらしいのかもしれない。ヨーロッパのテイストが漂う上質のサイコミステリである。→映画(全般) ブログランキングへ

『汚れなき情事』

汚れなき情事 [DVD]
汚れなき情事 [DVD]
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Cracks
監督:ジョーダン・スコット
脚本:ジョーダン・スコット/ベン・コート/キャロライン・エルピー
原作:シーラ・コーラー
音楽:ジャヴィエール・ナヴァレッテ
イギリス   アイルランド  2009年  104分  ★★★*

全寮制の女学校という閉ざされた空間のなかで、女生徒たちは若い女教師を崇拝していた。そこに、外国から裕福な転校生がやってきて、それまでの調和が破綻する。それが原題の「Cracks」。女性徒たちが起こした行動に対し、女教師が選択したのは、もとの秩序を取り戻すことだった。

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19934年、イングランドの田舎町、湖のほとりに全寮制女学校がある。
女生徒たちのあこがれの的は、若くて美しく都会的な女教師ミスG(エヴァ・グリーン)。ミスGは、派手な服装に身を包み、装飾品を身につけ、ケバいメークで、授業中にタバコを吸う特別の存在である。過去に不祥事を起こしている彼女を、上司は冷ややかな目で見ている。

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ミスGが顧問をしているダイビング・チームのリーダー・ダイ(ジュノー・テンプル)は彼女に心酔しきっている。
そこに、スペインから金持ちの美少女フィアマ(マリア・バルベルデ)が転校してきてチームに加わる。フィアマは喘息を患っていて、吸入器を肌身離さず持っているというのに、なぜかダイビングチームに入る。
メンバーは、ミスGの気まぐれで、夜中の2時に突然練習を強いられることもある。それでもメンバーはミスGに従うのだ。

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フィアマは、チームで一番上手いダイよりも、はるかにダイビングが上手かった。ミスGの視線が次第にフィアマに注がれるようになり、ダイは嫉妬するが、ダイ自身もフィアマにあこがれを持つ。
やがて、ミスGはファアマを特別扱いするようになる。

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そんなある夜、メンバーが秘密のパティーを開き、ファアマは飲みすぎてしまう。ミスGはファアマを自らの部屋に連れていき、介抱する振りをして性的に迫るのだった。
ミスGの正体を知ったファアマは彼女を罵り避けるようになる。
しかし、メンバーはフィアマに先生を奪われたと思うのだった。
そして、メンバーの嫉妬と怒りはファアマに向けられ、ストーリーは結末に向かう。

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エヴァ・グリーンが演じるミスGは、大きな目といい肉感的な唇といい、『マドモアゼル』(1966年)でジャンヌ・モローが演じた主人公を彷彿とさせる。役柄もどこか共通するものがある。ふたりともフランス人だ。

女だけの閉ざされた世界が描かれると、ストーリーは陰鬱になりがちであるが、ミスGの役柄にコメディ的な要素を加えることで、うまく回避している。
さらに、彼女に盲目的に従う多感な女生徒のダイ、反抗的であくまで自分を押し通すお嬢様のフィアマが、揺れ動くこの年代の女性を見事に演じて、本作を見応えのあるものにしている。 →映画(全般) ブログランキングへ

『シスタースマイル ドミニクの歌』

シスタースマイル ドミニクの歌 [DVD]
Sister Smile Soeur  Sourire
監督:ステイン・コニンクス
脚本:クリス・ヴァン・デル・スタッペン/ステイン・コニンクス/アリアン・フェート
音楽:ブリュノ・フォンテーヌ
製作国:仏・ベルギー   2009年 124分  ★★★★☆

本作品は実話をもとに作られた。
主人公のジャニーヌは、両親の束縛から逃れるために修道院に入り、『ドミニク』を歌い一世を風靡するシンガーソングライターになる。そのあと、修道院から自由になるために環俗し、一転してカソリック教会を批判する歌を歌うが、世間には振り向かれず行き詰まってしまう。そんな頑固で純粋な生き方をした女性をセシル・ド・フランスが、好演している。

1950年代末のベルギー。
ジャニーヌの家業はパン屋、両親と従姉妹の4人で暮らしていた。
両親はジャニーヌが平凡な結婚をして、パン屋を継いでくれることを望んでいた。しかし、ジャニーヌは折り合いの悪い母親から逃れ、大切なギターとエルヴィス・プレスリーのプロマイドをもって、ドミニコ会フィシェルモン修道院に入り修道女になる道を選んだ。

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修道院では、愛用のギターを取り上げられてしまう。修道女になるには6年間もの修行が必要であることがわかる。
彼女は、修道院の厳格な規律に縛られる生活に反発するが、修道会の聖人ドミニコを讃える『ドミニク』を作って歌ったところ、修道女たちに絶賛される。

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この歌がレコードになると、瞬く間に全米のヒットチャート入りし、ジャニーヌはシスター・スマイルと名乗り、一夜にして国際的な人気歌手となった。『ドミニク』はエルヴィス・プレスリーのレコードをも凌ぐ300万枚の大ヒットとなり、彼女は印税の大半を修道院に寄付していた。
世間は謎のシスターの素顔を知りたがり、教会にマスコミが押し寄せ、ファンも教会に大挙して訪れるようになる。さらに音信不通だった両親も、スターになった彼女のサインをもらいに、修道院に面会に来るのだった。

子供の頃、「♪ドミニク、ニク、ニク♪」と、意味も考えずにピクニックの歌だろうと思って口ずさんだ歌に、こんなドラマがあったとは驚きである。

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やがて、修道院を出たジャニーヌは、カトリック教会の保守的な体質に批判的な行動をとるようになる。1967年には、産児制限を指示する歌『黄金のピルのために神の栄光あれ』を発売したものの、まったく売れなかった。環俗したシスターに、世間は振り向かなかったのだ。
ドミニクはいわばカソリックを賛辞する歌、一方『黄金のピルのために神の栄光あれ』はカソリックの保守性を批判する歌である。このギャップをファンが受け入れるのは難しい。

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失意のジャニーヌは、かつての親友アニー(サンドリーヌ・ブランク)を訪ね、2人は新しい家を借りて共同生活を始める。このことがスキャンダルとして新聞に載り、母親からは恥知らずと罵られるのだった。

悪いことは続くものだ。
その後、ベルギー政府から彼女に対して5万米ドルの追徴税が課せられる。これに対してジャニーヌは、金は修道院に寄付したと主張したが、寄付であったことを示す領収書が存在しなかった。まともなマネージメントが行われなかったのだ。彼女の言い分は認められず、惨憺たる経済状態に陥ってしまう。
やがて、生きる希望を失った、ジャニーヌはアニーとともに自ら命を絶った。セシル・ド・フランスは存在感のある、訳ありの女性を演じたらぴか一です。→映画(全般) ブログランキングへ

【セシル・ド・フランス出演作品】
少年と自転車』(12年)
ヒアアフター』(10年)
シスタースマイル ドミニクの歌』(09年)
ある秘密 ~愛に焦がれて~』(07年)
モンテーニュー通りのカフェ』(06年)
スパニッシュアパートメント』(02年)

『17歳の肖像』

17歳の肖像 コレクターズ・エディション [DVD]
17歳の肖像[DVD]
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An Education
監督:ロネ・シェルフィグ
脚本:ニック・ホーンビィ
製作:フィノラ・ドワイヤー/アマンダ・ポージー
製作総指揮:デヴィッド・M・トンプソン/ジェイミー・ローレンソン/ニック・ホーンビィ/ジェイムズ・D・スターン/ダグラス・E・ハンセン/ウェンディ・ジャフェット
音楽:ポール・イングリッシュビィ
製作国:イギリス 2009年  95分

16歳の娘が中年男に引っかかり処女を捧げたものの、男の正体を知って娘は自らの愚かさに気づき、男と決別する。それにしても妊娠しなくてよかった、なにしろあの人にはいくつもの前例がありますから、というストーリー。

1961年、ロンドン郊外で両親と暮らす16歳のジェニー(キャリー・マリガン)は、オックスフォード大学を目指して勉強に励んでいた。ラテン語以外の成績は合格ライン以上だ。同級生も担任も校長も一目おく優等生。

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音楽クラブの練習のあと、チェロを持って帰宅の途についていたジェニーは、土砂降りの雨にずぶ濡れになり途方に暮れていると、車で通りかかった中年男(ピーター・サースガード)が執拗に車で送ると言い、車に乗り込む。
これが間違いのもとだった。

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その数日後、ジェニーその男と街角で会い、音楽会と食事に誘われる。
ジェニーは、到底父親が許可しないと断るのだが、予定の時間になると男はジェニーの家までやって来た。

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ジェニーの父親(アルフレッド・モリーナ)は、彼女の大学進学に有利なことは許可するが、そうないことは許さないような狭小な男。
例えば、音楽クラブでチェロの練習をするのは内申書に反映するから良いが、音楽会に行くことは無駄というような潤いのない考えをしている。

しかし、デイヴィットはジェニーの両親をうまく説得し、彼女を連れ出した。ジェニーを友人のダニー( ドミニク・クーパー )とその恋人ヘレン(ロザムンド・パイク)と引き合わせ、ジェニーに大人の世界を教える。
音楽会のあとに訪れたレストランでは、ブレンダ・リーの曲がBGMに流れていた。

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デイヴィッドは、オックスフォードにジェニーを連れていっていいかと、父親に許しをこう。
デイヴィッドが童話作家のオックスフォード大教授に会うと言うものだから、父親は教授にコネができ受験が有利になる踏んで、泊りがけのオックスフォード行きを許可する。
ところが、デイヴィットたちはオックスフォードへは行かず、偽造サインを裏表紙に書いた童話の本をジェニーに渡すのだった。
この時点でデイヴィットたちが詐欺師であることがわかるが、ジェニーはすでに心をデイヴィットに奪われていた。

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ジェニーは、勉強して大学に進んでも、所詮は学校の先生か公務員になるくらいで、結局つまらない人生を送ることになると思うようになる。
それより、レストランで食事をし、音楽会へ行ったり、旅行に出かけたりの今の生活の方が、16歳のジェニーにとってはるかに魅力的である。

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やがて、ジェニーの変わりようが学校で問題となり、校長(エマ・トンプソン)に呼び出される。
ジェニーは、担任(オリヴィア・ウィリアムズ)や校長の生活が陳腐で価値のないものに思える。恋は盲目、周りが見えないジェニーは不遜にもそれをふたりの前で口にするのだった。化粧が派手になり、服装は少しだらしなくなり、ジェニーはグレてしまったのだ。

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そんなある日、デイヴィッドに求婚されたジェニーは、両親に相談する。父親は、ジェニーがオックスフォード大学に進学するよりは、金持そうなデイヴィットと結婚した方が幸せになるし、余計な金がかからないと考え結婚を許可する。

そう話がうまくいくはずもなく、デイヴィットは詐欺師、おまけに悪質な女たらしなのだ。そういうことがあって、ジェニーは足踏みしたものの、大人の世界を垣間見たことで成長した。

第82回アカデミー賞で作品賞、主演女優賞、脚色賞にノミネートされた。

【ピーター・サーズガード出演作品】
17歳の肖像(2009年)
エレジー(2008年)
フライトプラン(2005年)
ニュースの天才(2003年)


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『ダブルフェイス 秘めた女』

ダブルフェイス 秘めた女 [DVD]
Ne te retourne pas/Woman image with hidden double face
監督:マリナ・ドゥ・ヴァン
脚本:マリナ・ドゥ・ヴァン/ジャック・アコティ
製作:パトリック・ソベルマン
製作国:フランス  2009年  110分 ★★☆☆☆

パリに、夫とふたりの子どもと暮らすジャンヌ(ソフィー・マルソー)は小説家をめざすライター。
自らについて書いた小説を出版社に持ち込むが、出版を断られてしまう。
その頃から、ジャンヌに異変が起こる。

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家の中の家具の配置が前と違って見えたり、家族がジャンヌを阻害しているように思えたり、街角に少女が現れ追いかけると消えてしまったりというようなことが起こる。
そうこうするうちに、夫も子供も見たことのない人物に変わってしまう。
そして、ジャンヌの顔半分が別人になる。身体には傷が現れたり腫れたりして、異変が起こっている。 下の写真は顔の右半分がモニカ・ベルッチ、左はソフィー・マルソー。

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ジャンヌは子供の頃の記憶が喪失しているので、そこを掘り下げていくと、ジャンヌ自身が封じ込めていたいまわしい過去が蘇ってきて、体に変調をきたしているらしい。

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ジャンヌは、自分の過去を探るために子どもの頃の写真を持ってイタリアに向かうのだった。
イタリアのあるカフェで、母親らしき人物ヴァレリーを見かける。ヴァレリーはジャンヌとの接触を避けようとするが、ジャンヌはヴァレリーの親族が集まったパーティーに忍び込み、そこで、ヴァレリーと息子の会話を耳にする。
【このあとネタバレです。】

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『わたし出すわ』

わたし出すわ [DVD]
わたし出すわ [DVD]
posted with amazlet at 12.10.26
It's on Me
監督:森田芳光
脚本:森田芳光
製作総指揮:豊島雅郎
音楽:大島ミチル
主題歌:辻詩音「ほしいもの」
公開:2009年  日本  110分  ★★☆☆☆

故郷に帰ってきた摩耶(小雪)は高校時代の友人と会い、「わたし出すわ」と言って金をばらまく。その額が途方もないのだ。金をもらったことで友人のそれぞれの人生は大なり小なりの波風が立つというストーリー。

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東京から函館のマンションに引っ越してきた山吹摩耶は、ふたりの運送業者に10万円ずつチップを渡す。面食らった運送屋に、摩耶は「いい思い出を作ってください」と言う。

摩耶がかかわる友人は5人。

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路面電車の運転手の道上保(井坂俊哉)は、世界中の路面電車に乗りたいという夢を持っている。その夢を実現させるための費用が、ダンボールに入って保の家に送りつけられる。
かつて華々しい活躍をした長距離ランナーの 川上淳(山中宗)は、故障に苦しめられている。ケガの治療にはアメリカでの手術とリハビリが必要だという。その費用を摩耶がぽんと出す。

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特に欲しいものはないという平場さくら(小池栄子)には、寝室に置く小型冷蔵庫をプレゼントする。箱庭作りが趣味の夫(ピエール瀧)の望みは箱庭協会の会長になること。それには多少の金が必要で、それを摩耶にお願いできないかと夫はさくらに言う。もちろん摩耶は出す。
保利満(小澤征悦)は、特殊な電波を流し魚を誘導する実験を行っている。その研究費を出してやる。

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高校時代ライバルだった魚住サキ(黒谷友香)は、社長夫人におさまっていた。ところが夫が急死してしまう。クラブのホステスとなり再起をはかろうとするサキには、金の延べ棒5本を渡すのだった。しかし、サキは何者かに殺されてしまう。その殺人事件の捜査で、摩耶のマンションに刑事が現れ、摩耶がサキに渡した金塊について追求するが、金の出どころは不明のまま。

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いまひとつ盛り上がらないストーリーのなかで、期待が持てたのは、道上の妻かえで(小山田サユリ)が送られてきた大金を、ホストつぎ込み使い果たしてしまうところ。起こりそうなことが起こったわけで、いよいよここから面白くなるぞと期待したものの、切羽詰まったかえでが摩耶のマンションに怒鳴り込み、摩耶をナイフで刺そうとする。たまたま居合わせた警官ふたりにかえでは取り押さえられてしまい、そんなコントのような展開に期待はしぼむ。
【このあとネタバレです。】

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『南極料理人』

南極料理人 [DVD]
南極料理人 [DVD]
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監督:沖田修一
脚本:沖田修一
製作:太田和宏/川城和実/春藤忠温/町田智子/近藤良英
音楽:阿部義晴
主題歌:ユニコーン「サラウンド」
公開:2009年  日本  125分  ★★★*☆

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海上保安官の料理人西村(堺雅人)は、妻(西田尚美)と幼い子どもの4人暮し。
ある日、赴任予定者が交通事故に遭い、ピンチヒッターで南極勤務を命じられる。
西村にとっては青天の霹靂、できれば行きたくないのだが、妻と小学生の娘は、西村の南極行きをむしろ歓迎しているように思えて、彼はショックだ。

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南極とはいっても、標高3810mと富士山より高い「ドームふじ基地」という空気が薄い極寒の地。ペンギンやアザラシはおろか、ウイルスさえもいない地の果てのようなところだ。
西村の任務は、8人分の食事を作ること。
ただし、標高が高いので気圧が低く85度で沸騰するため、圧力鍋を駆使しなくてはならない。

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こういうところでは食べることが唯一の楽しみ、西村が作る料理は、なかなかのもの。
和風の納豆付き朝食、焼き魚、魚の煮付け、かきあげ、おにぎりなどの身近なものから、フォアグラやスズキのポアレのフランス料理、隊員のリクエストで作った失敗作の伊勢海老のエビフライ、大量のタラバガニ、そして肉の塊に油を塗って火をつけ雪原を走り回って作った分厚いローストビーフと、ヴァリエーションに富んだ西村の料理は隊員を喜ばせる。

晴れ渡った空のもと、雪原に真っ赤なジュースで線を引き、息抜きの野球を始めるのだが、その前にジュースでマークしたベースをスプーンですくい取り、シャーベットとして食べてしまう。隊員たちは何でも食べることに結びつけてしまう、このシーンが面白い。

ところで、隊員は家族に電話をしたり家族からのFAXでホームシックを癒している。その隊員たちに比べると日本にいる家族や恋人の反応は醒めたもの。そのギャップは皮肉だ。まるで見えないものは存在しないかのように、電話の向こうはつれない。

そんななか、隊員たちがインスタントラーメンを毎日のように隠れて食べたため、早々と備蓄のラーメンがなくなってしまう。気象学者のタイチョー(きたろう)は「これから何を楽しみにすればいいんだ」と寂しそうに言うのだった。
タイチョーは小麦粉で自家製のラーメンを作れるだろうと西村に迫るが、カンスイがないとラーメンのコシと風味は出ない。雪氷学者の元さん(生瀬勝久)が、「ベーキングパウダーには炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)が含まれているはずだから、元素記号上はカンスイになる」とアドバイスする。

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そして、西村が作ったラーメンは、縮れ麺にチャーシュウ、メンマ、ホウレンソウがのる正統派醤油ラーメン、よだれが出そうなくらい旨そうだ。皆が貪るようにラーメンを食べている最中にオーロラが現れて、観測を促す大気学者の平さんに、タイチョウーは「どうでもいいっ」と言い放ちラーメンに没頭するのだった。

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文字通りの極限状態の中での長期共同生活は、隊員たちの人間性が出てくる。
小競り合いあり、不貞腐れて氷原に飛び出す狂言自殺行為あり、失恋による引きこもりあり、笑いあり、涙あり、の男8人の1年半に渡る生活を、食を通して見たなんとも不思議な魅力が漂う映画だ。

かくして、南極での生活を終え無事帰国した西村は、家族と訪れた遊園地で、ファーストフードのハンバーガーを家族をとともに頬張り、「旨い」とつくづく思うのだった。


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『デザート・フラワー』

本作は、ワリス・ディリーの自伝『砂漠の女ディリー』の映画化。
ソマリアの遊牧民に生まれ、貧しい小児期から少女期を送り、その後ロンドンでトップモデルとなるまでの波瀾万丈の半生を描いたもの。ワリスを演じたのはエチオピア出身のモデル、リヤ・ケベデである。

デザート・フラワー [DVD]
Desert Flower
監督:シェリー・ホーマン
脚本:シェリー・ホーマン
原作:ワリス・ディリー 『砂漠の女ディリー』
製作:ピーター・ヘルマン
音楽:マルティン・トードシャローヴ
製作国:ドイツ/ オーストリア/ フランス  2009年  127分 ★★★*

13歳のときにワリスは、60過ぎの男にラクダ5頭との交換で妻にさせられそうになったところを逃げ出し、砂漠を横切って生死の境をさまよいながら港に辿り着きロンドンに渡った。
ロンドンでは大使館で下働きをしていたものの、ソマリアが政情不安となり大使館は閉鎖され、不法滞在の身となった。

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ホームレスの生活をしていたところ、ダンサーを目指すマリリン(サリー・ホーキンス)にまとわりつき、彼女のアパートに潜り込んだ。
ワリスは、英語を上手く話すことができなかったが、それでもなんとかハンバーガーショップでの清掃の仕事につくことができた。
その店に、 客として現れた高名な写真家のドナルドソンに横顔を気に入られ、モデルとしてデビューすることになる。

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そんなある日、下腹部の激痛に襲われたワリスを、マリリンが救急病院に連れて行く。
そこでワリスの下腹部を診察した担当医は、腹痛は割礼が原因であり、割礼部の切開を勧めるのであった。
しかし、ソマリア出身の看護師が現れ、部族の掟を守るべきだと忠告され、ワリスは手術を諦めるのだった。悩んだ末に新しい人生を踏み出そうと決意した彼女は、手術を受けることにする。
その後、彼女はパスポートを獲得し、世界的なモデルとして活躍するようになる。

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トップモデルとなったワリスは、自分が3歳の時に受けた割礼について、WHOにおいて報告した。
このワリスの演説によって、アフリカの一部の地域で行なわれている女性虐待の事実が、世界の人々の知るところとなった。

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アフリカでの女性の割礼は、多くは生後数日から3歳くらいまでに行われ、陰唇と陰核を切除し小さな穴だけを残し縫い合わせる、いわば性器切除であるという。
麻酔をするわけでなく清潔な器具があるわけでもなく、感染により命を落とすこともしばしばであるという。
ワリスのように、排尿や生理にさいして激しい痛みを伴う後遺症に悩まされることもある。
女性は割礼を受けていなければ結婚が許されず、結婚すると夫が刃物で縫合部を切り裂くとのことだ。
WHOの啓蒙にもかかわらず、こうした割礼は今でも行われているという。

主人公ワリスのモデルとしての成功の物語ばかりでなく、彼女自身が受けた割礼の悲惨さが、強く印象に残る作品だ。

文庫 砂漠の女ディリー (草思社文庫)
ワリス・ディリー
草思社

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