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『メヌード』(レイモンド・カーヴァー短編集『象』に収録)

象 (村上春樹翻訳ライブラリー)
レイモンド カーヴァー
中央公論新社

『メヌード』は、レイモンド・カーヴァーの短編集『象』に収録されている。
離婚の危機に直面した中年の男が、眠れぬ一夜を過ごすストーリーだ。
男は自宅の前の家に住む中年夫婦の妻と不倫の関係にあり、その夫は数日前に離婚を決意し家を出て行った。
1週間ホテルで暮らすので、その間に荷物をまとめて出て行けと、その夫は妻に言い残していった。
主人公の妻も夫が浮気をしていることに気づいている。

以前、主人公の友人の家でパーテイが開かれ、そこで友人が夜中に突然メヌードを作り出したことがあった。
メヌードとはメキシコのモツ料理である。
メヌードは大雑把に作られていくが、なぜか旨そうなのだ。
ところが主人公はメヌードを食べそびれてしまう。
つまりどんな味か書かれていない。
主人公はこれから一生、メヌードを食べることができないだろうと嘆く。
メヌードの調理の話は唐突に割り込んでくるが、脈絡のなさを感じさせない。
2組の夫婦の苦悩よりもメヌードの調理と味のことが頭に残ってしまう。
メヌードについては次のように書かれている。

<メヌード、牛の胃(トライブ)。トライブと1ガロンの水で始まった。それから彼は玉葱を刻んで、それを沸騰しはじめていた湯の中に放り込んだ。チョリソ・ソーセージを鍋の中にいれた。そのあとで干した胡椒の実を沸騰した湯の中にいれ、チリ・パウダーをさっさっと振った。次はオリーブオイルだ。大きなトマトソースの缶を開け、それをどぼどぼと注ぎ入れた。にんにくのかたまりと、ホワイト・ブレッドのスライスと、塩と、レモンジュースを加えた。彼は別の缶を開けー皮むきとうもろこしだーそれも鍋の中にいれた。それを全部入れてしまうと彼は火を弱め、鍋に蓋をした。>

読み終われば、なんの話だっのか、そういえば、2組の夫婦の離婚の話だったくらいの印象である。
メヌードが割り込んでくることで、出口の見えない苦悩から主人公がいっとき開放され、読み手にひと息つかせる。←メヌードを作る

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