世界一の便器 ウォシュレット開発物語/かつカレー@とんかつ太郎
ほぼ満席のトンカツ屋のカウター席に座り、さっき買った新書を袋から出して、ぱらぱらめくった。TOTOウォシュレットの開発物語だが、混み合ったカウンター席で遠慮気味に開いた。
ウォシュレットの開発のはじまりは、便座に座ったときに肛門の位置がどの辺りにくるのかということだった。
そこで、開発部の社員はほかの部署の社員に頼み込んで、便器に座ったときの肛門の位置を教えてもらおうとお願いして回ったのだが、なかなか協力を得られず、もちろん拒否する社員もいたとのこと。
そりゃそうだろう。
それでも、熱心さが通じて300名のデータが集まった。
噴き出すお湯の最適温度を調べ、湯量も実験に実験を重ね割り出し、便座の快適温度を調べて、寒冷地の場合や夏の暑いときは何度がいいかという具合に実験は続き、データが蓄積された。
そうだろ、そうだろう、とうなづきながら読み進む。
本の前のほうに戻って目次を見たら、後半に「アメリカでの壁」という章があって、その章を読もうと思ったときに、かつカレー(970円)がカウンターの向こうから手渡された。
壁とは、アメリカ人のでかい身体と尻を便座が支えきれないという問題だろうかと、思いながら新書を閉じた。
なんでまた、かつカレーを食べるときに便器の本なんだと思うが、たまたまだ。
カレーはあっさりで、とろみが弱くさらさらとしている。
具はタマネギのみと、かつカレーのためのカレーに徹している感があった。カレーに福神漬けではなくて、甘めのタクアンも合うと教えてくれたのはこの店だ。
以前、かつカレーはカロリーが高いので何となく頼むのに抵抗があったけれど、最近はそれがなくなった。
![]() 林 良祐 朝日新書 2011年 |
アメリカでの壁の正体は、肥満ではなかった。
アメリカはそもそもDIYの意識が強く、便器は自分で設置することがまれではない。
ところが繊細な機能を備えるウォシュレットは、取り付けに技術がいる。
さらにバスルームに電源を引き込むことに対する躊躇、肛門をお湯で洗うことの疑問あるいは抵抗感であった。
もうひとつは世界的な節水政策、つまり1回のトイレで流す水の量は6リットルまでと法令で決まりつつあったこと。
その当時、6リットルで排泄物を流しきることは困難であったという。
もちろん、こうしたことは著者たちのエネルギッシュな努力によって、徐々に解決していくのである。
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