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『できそこないの男たち』 福岡伸一

できそこないの男たち (光文社新書)

できそこないの男たち

福岡 伸一
光文社新書
2008年10月20日
ISBN 978-4-334-03474-0

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顕微鏡の発明者アントニー・ファン・レーウエンフックは、1632年にオランダのデルフトで生まれた。
同じ日に同じ街で、ヨハネス・フェルメールも生まれている。
レーフェンフックは精子をはじめて観察した人物である。

染色体を発見したネッティー・マリア・ズは、ブリンマーカレッジ(ペンシルベニア州)の補助教員であった。
ネッティーは1905年に発表した論文のなかで、チャイロコメノゴミムシダマシのオスの染色体に「対」をなさない小ぶりの染色体が存在することを示した。
これがオスを決定する性染色体であることをネッティーはつきとめた。
ちなみに、ブリンマーカレッジは津田塾大学創始者の津田梅子の留学先である。

著者は、染色体が子孫に伝えられるメカニズムを叢書の乱丁や落丁で説明する。
全46巻の叢書を比喩に使い、Y染色体のなかの男性を決定するゲノム配列に話は及び、ゲノム配列発見の先陣争いのし烈さを伝える。

Y染色体といえば、万世一系の大君のおわしますわが国の世継ぎ問題を論じなければならない。
さらに、ジンギスハーンのY染色体を持つ男たちが、中央アジアを中心に1500万人も存在するという驚愕の事実にも触れざるを得ない。
ジンギスハーンのY染色体に関する論文は、2003年、『アメリカ人類遺伝学雑誌』に発表された。
これは、ジンギスハーンが征服した都市で女性たちを集め、夜な夜な精液をまき散らした結果なのである。
さらに、世界の男たちが10数万年前にアフリカで生まれたたったひとりのアダムからゲノムを引き継いでいることが解明された。
また、ミトコンドリアのDNAを解析することで、女たちは、これまた10数万年前のアフリカのひとりのイブからゲノムを受け継いできた事実が浮かび上がったのだ。

かつては崇めたてまつられたこともあったY染色体ではあるが、今や役立たずな染色体の汚名すら甘んじて受ける身にになった。
Y染色体は、どうもX染色体の運搬係くらいのお役目にしか預かっていないようなのだ。

どこの国のどの年代のデータを見ても、男の寿命は女よりはるかに短い。
その原因は縷々挙げられてきた。
たとえば、男はストレスが多いというのはよく聞く理由である。
しかし事実はもっと衝撃的だ。
男性ホルモンのテストステロンが、免疫力を低下せしめるらしいのだ。

本書は男たちが生物学的にできそこないであることを披露した。
本書を読んだあとは、男たちはこれからの生き様を見直さずにはいられないだろう。

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