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『ルポ 貧困大陸アメリカⅡ』

かつてのアメリカでは、公教育は「社会的資産」であり、教育を受ける者だけでなく社会全体の利益になるというまっとうな考え方があった。
ところが、レーガン大統領の教育に対する姿勢は、「国益をもたらす、未来の人材への投資」ではなく、個人に利益をもたらす個人投資だというもの。したがって教育は、住宅や車のローンと同じように、「自己責任」にすべきだという発想だった。
国のトップがこのような考えをしているとなれば、公教育の行く末は火を見るより明らかである。
いつの間にか、奨学金が縮んで学資ローンが拡大した。
運営資金も監督責任も100%財務省の管轄であった学生マーケティング機構(通称サリーメイ)が、1972年ニクソン大統領によって導入された。
だが、完全に国営のはずのサリーメイは株式が公開され、取締役の三分の二は株主で占められる体制になった。
この株式公開が、のちにサリーメイを学生たちを飲みこむ巨大な怪物に成長させることになる。
学資ローンを固定金利3.4%で契約したものの、いつの間にか8.5%に引き上げられたという信じられない事例が紹介されている。返済を怠る債務者には、ヤクザ顔負けの借金取り立てが行われている。

1990年代に盛り上がった自由市場至上主義と連邦および州政府の財政難のふたつが、民間刑務所が増えてきた理由である。
刑務所内で囚人たちの借金が増えていくという。たとえば、ペンシルベニア州のバークにある郡の刑務所では、囚人に1日10ドルを請求している。こうした請求を法的に認める法案はいくつもの州で出されている。トイレットペーパー、図書館利用料、部屋代、食費、医療サービスなどが請求されている。
そもそも借金があるから犯罪を犯した囚人が刑務所のなかで、さらに借金が増えていく。その劣悪な環境の刑務所に、低賃金と福利厚生不要を理由に、企業はアウトソーシングしている。コストは第三国に発注するよりはるかに安い。

<「リーマンショックをきっかけに、長年この国を蝕んできた病巣が吹き出したにすぎません。目先の利益を追って支払いを先送りするという「クレジットカード体質」から抜け出せるかどうか。身の丈以上に消費してきた国民が、「ファイナンシャル・リテラシー」を身につけられるかどうか。政府が本気で国の将来を考え、方向転換を導けるかどうか。それが今、アメリカという国が直面している課題なのです」P101>
これが、アメリカが抱える病魔のひとつを言い当てた言葉であると思う。

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