大鴉の啼く冬 アン・クリーヴス
アン・クリーヴスのミステリ・シリーズ<シェトランド四重奏>の第1弾。
本書のテーマの一つは、生粋のシェトランド人とイギリス本土からのよそ者とのせめぎ合いである。
大鴉の啼く冬 アン クリーヴ/玉木 享訳 創元推理文庫 2007年 |
主人公のペレス警部はシェトランド人ではあるが、彼の祖先は16世紀に遭難した無敵艦隊の船から浜に打ち上げられたスペイン人である。
生粋のシェトランド人とは言えない。
シェトランド諸島には彼と同じ黒い髪とオリーブ色の肌をした人がいくらかいたが、地元の人は、かれらを黒いシェトランド人と呼んでいた。
ペレスは、シェトランド人であると自ら言いきかせつつも、よそ者のような居心地の悪さも感じている。
子どもの頃から手のつけられれないいわがまま娘、自由奔放さを求める、枠にはまらない、そうした才気走った女性たちの生き方が、この物語のもう一つのテーマである。
女性たちの行動が嫉妬心を煽り、殺人事件を引き起こす。
この二つのテーマは、根っこの部分でつながっている。
【シェトランドを舞台にするミステリ】
アン・クリーブス著〈シェトランド四重奏〉
『大鴉の啼く冬』(07年7月)
『白夜に惑う夏』(09年7月)
『野兎を悼む春』(11年7月)
『青雷の光る秋』(13年3月)
シャロン・J・ボルトン著
『三つの秘文字』 (11年9月)
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