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2011年10月26日 (水)

ルート66をゆく アメリカの「保守」を訪ねて 松尾理也

ジャズのスタンダード『ルート66』という曲。はじまりは抑揚の少ないどうということない感じだが、途中から盛り上がり、町の名前の響きがとても魅力的に聞こえてくるノリのいい曲だ。
それにしても、なんでまた、あんなに多くのシンガーたちが歌うのだろう。→【2012.06.18】『ジャズボーカルに首ったけ』
実際はビートルズの『イエスタデイ』だそうだ。
Image_20201116120301ルート66をゆく―アメリカの「保守」を訪ねて
松尾理也 
新潮新書
2006年

著者は、シカゴからロサンゼルスまで、イリノイ州シカゴ、ミズーリ州セントルイス、カンザス州ガレーナ、オクラホマ州オクラホマシテイー、テキサス州アマリロ、ニューメキシコ、アリゾナ州ダグラス、カリフォルニアと、取材をしている。

2000年、世界世論がどうであっても、"アホでマヌケな" ジョージ・W・ブッシュを当選させてしまったアメリカという国、いったいどういう国なんだろうという疑問があった。
マイケル・ムーアがさんざんぱらやっつけた感があったブッシュ.Jrが、すれすれながらも大統領に当選してしまった理由はなんなのだろう。
『華氏911』は、蜂の一刺しにならなかった。

著者はアメリカを知るには、4年に一度の大統領選ほど恰好の材料はない、アメリカの現状を表す最高の調査報告書であるという。
本書は、メガチャーチ、エヴァンジェリカル(福音派)、反進化論者、不法滞在者、移民問題、州兵のイラク派兵、ゲートタウンなどのアメリカ中西部の特有のテーマについて、フィールドスタデイで得た情報を分析し、 アメリカの保守の正体を明らかにしている。

アメリカのリベラルと保守を対比する場合、次のような表現をよく目にする。
<ブルース・ステート(民主党支持)は、よくいえば知的、寛容、柔軟、国際的。悪くいえば、スノッブ(気取り屋)、鼻持ちならないエリート、傲慢というイメージ。
レッド・ステートはこの反対で、よくいえば質素、堅実、敬虔。悪くいえば無知、頑固、粗野。
ブルース・テートのクルマはBMWやボルボ。
レッドテートは、フォードやシボレーのフルサイズ・ピックアップ。
ブルーステートの食事は、イタリアンでワインを楽しむのに対して、レッドステートでは、ばかでかいステーキやハンバーガー。p28>
こうした対比は、リベラルが流動的であるのに対し、保守はリベラルがどう騒ぎ立てようとびくともしないという固定した構図で受け止められる。
そういう保守な人たちが、ルート66沿いに生活しているという。

2005年のギャラップ社の世論調査によると、「宗教が非常に重要」と考える米国人は57%、「まあまあ重要」が28%、両者を足すと、85%に達する。
アメリカの保守が揺るがない理由は、アメリカが宗教国家であることにも起因する。

ルート66は、スタインベックの『怒りのぶどう』のなかで、故郷を追われたオクラホマの小作人たちが西へ西へと向かった「母なる道」なのだ。→人気ブログランキング

ルート66を聴く アメリカン・ロードソングはなにを歌っているのか/朝日順子/青土社/2021年
ルート66をゆく―アメリカの「保守」を訪ねて/松尾理也/新潮新書/2006年
現代アメリカ宗教地図/藤原聖子

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