わたしを宇宙に連れてって 無重力生活への挑戦 メアリー・ローチ
著者は、体験できるものはなんでもやってみようという好奇心の塊のようなサイエンス・ライターである。
口の硬い宇宙飛行士たちを追いかけ回して取材を続けた2年間は、著者にとって、スラップステイックコメディ的にシュールな"なんちゃって"宇宙旅行を体験するようなものであったとのこと。
![]() メアリー・ローチ NHK出版 2011年 |
原題は、Packing for Mars 、あくまで最終目標は火星なのだ。
著者が伝えるのは、私たちがテレビで見てきた宇宙飛行の成功や悲劇ではなく、とても人間らしくて、ひどく滑稽な、数知れぬ努力についてである。
そうしたことを面白おかしく書くことにかけては、著者は天才である。
取り上げているテーマを列挙すると。
★宇宙飛行士として最適な人間は?
★狭い空間で何日も暮らすには?
★無重力を作り出すには?
★宇宙酔いは悲惨?
★宇宙から帰還するための衝突実験
★人類に先立って宇宙へ行かされた動物たちのこと
★風呂に入らず身体を拭きもせず狭い座席で、どれくらい耐えられるか?
★3カ月間寝たきりで、からだはどうなるか?
★無重力でセックスは可能か?
★気が遠くなる排泄の問題
★宇宙食は排泄の問題でもある
★火星にいくには?
有人火星飛行プロジェクト「Mars500」は、火星に行って帰ってくる過程と、滞在期間を合わせると500日かかるということである。
場合によっては2年あるいはそれ以上かかるかもしれない。
火星有人飛行にはイラク戦争の戦費に匹敵する5千億ドルの資金が必要だそうだ。
著者は、参加する国のエンターテイメントコングリマリットに話を持ちかければ、資金はあっさり手に入るという。
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