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2011年11月 5日 (土)

象 レイモンド・カーヴァー

物語のはじまりは弟からの主人公への金の無心だった。
母親には毎月仕送りをしていた。
娘の亭主は稼ぎがない。
娘は妊娠して結婚せざるを得なくなった。娘の夫は、主人公にとって気に入らない男だ。
娘夫婦は今やふたりの子どもをかかえている。
娘からも金の無心がきた。
息子は親戚のなかで唯一、大学に進んだ。
この馬鹿息子が金がないだのドイツに留学するだので、金をせびる。

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レイモンド・カーヴァー
中央公論新社 2008年

金の無心は、一回では収まらないと相場は決まっている。
主人公が仕送りで四苦八苦してることなどお構いなしに、弟も母親も娘も息子も、再び電話や手紙で主人公に金の無心をする。
主人公は仕送りに追われ貯蓄は底をつき、自分の人生が坂を転がりはじめているということに気がついていても、人がいいのだろうか仕送りのことだけを考えて日々を送っている。
いったいどうなることやら。

弟や母や子供たちのクレジットカード体質、この表現が適切かどうかはわからないが、借金に依存する生活はアメリカではあまり抵抗がないらしい。
アメリカ経済が好調な時代は、多量消費生活がアメリカの経済発展を支えてきた。
しかし、今ここへ来て、この多量消費の生活スタイルこそがアメリカの病根のひとつであると指摘されている。
フィナンシャル・リテラシーの欠如を著者が言おうとしてるはずはないが、すでに半世紀以上前に、意図せず書いたことが、いまのアメリカ社会の病根を言い当てていたというのは、外れてはいないと思う。→人気ブログランキング

/レイモンド・カーヴァー/中央公論新社/2008年
大聖堂/レイモンド・カーヴァー/中央公論新社 2007年
頼むから静かにしてくれ〈1〉/レイモンド カーヴァー/中央公論新社/2006年
短編小説のアメリカ 52講 こんなにおもしろいアメリカン・ショート・ストーリーズ秘史/青山 南/平凡社ライブラリー/2006年

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