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2011年12月 8日 (木)

『二流小説家』 デイヴィット・ゴードン

二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
デイヴィッド・ゴードン
早川書房
2011年3月15日
ISBN 978-4-15-001845-0

「ぼく」こと小説家のハリー・ブロックは、ニューヨークの北50キロのシンシン刑務所に向かった。
12年前に4人の女性を殺し服役中のダリアン・グレイから、ハリーのもとに告白本の執筆を依頼する手紙が届いたからだ。
ダリアンは一切の供述を拒否しつづけ、3カ月後に死刑が執行されることになっている。

ハリーは、さえない中年作家。
ドラキュラ物、SF、ポルノ、ミステリなどをいくつかのペンネームを使って書いているものの、これといったヒット作はなく、家庭教師でなんとか食いつないでいる。
恋人に逃げられ、教え子の女子高校生のクレアには、足元を見られているというていたらくぶり。
告白本をものにすることは、ハリーにとって有名作家になる千載一遇のチャンスだと、クレアにけしかけられた。

ダリアンは真実を告白するかわりに、彼の熱烈な女性ファンと彼を主人公にした、彼のためだけのポルノを書けという条件を提示した。
ダリアンの女性弁護士キャロル・フロスキーの条件は、死刑が執行されるまでダリアンに関して知りえた秘密は一切公開してはならないというものだった。
刑の執行が遅れたり減刑されたりすれば、告白本を書いたとしても金を手にできない。

ハリーは、依頼どうりダリアンの女性ファンたちを取材し、ポルノを書き始めた。
ところが、ダリアンの手口そっくりの猟奇的な女性連続殺人が起きてしまう。
ひょっとして、ダリアンは12年前のシリアルキラーではないのか、真犯人は野放しのままなのか。
ここから話は急展開し、脱力気味のユーモアに満ちた書きっぷりは影を潜める。

ハリーのいくつかの作品が所々にレトリックとして差し込まれ、文学論や作家論、犯罪心理論が繰り広ろげらる。
おそらくかなりのミステリ通の著者が、ちょっとばかり手の混んだくらいのありがちな結末を用意するはずがない。
プロローグは『キャッチャー・インザ・ライ』風の心地のいい饒舌ぶりである。

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