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『三つの秘文字 上下』 シャロン・J・ボルトン 

三つの秘文字 上 (創元推理文庫)
三つの秘文字
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S・J・ボルトン
法村里絵 訳
創元社推理文庫 
2011年9月23日 

夫の故郷のシェトランド島に引っ越してきたばかりのトーラ・ガスリーは新米の産科専門医、自らも不妊で悩んでいる。
医師としての腕は申し分ないが、気が強く、妥協しない、人と気軽に会話を交わすことが苦手である。
シェトランド島の病院に勤務しはじめて半年になるが、病院に馴染めずに悩みを抱えている。

5月の雨の日に愛馬を埋葬するために、トーラはショベルカーで自宅の庭に穴を掘っていて、若い女性の遺体を発見した。遺体には多数の刺し傷があり、心臓は切り取られ、背中には3つの秘文字が刻まれ、手首と足首には拘束されたと思われる傷があった。子宮の大きさから出産後2週と経たずに殺されているとトーラは指摘した。
トーラは進展しない警察の捜査に業を煮やし周囲の忠告を無視して、事件に首を突っ込んでいく。医師としてのモラルに反しても真相を究明しようとする。やがて、病院の名簿から遺体の身元が判明するが、検死官が示した死亡推定時期との間に1年ものずれがあった。心臓がえぐり取られた理由、秘文字の意味するところ、出産後に殺されたのはなぜか、赤ん坊の行方は、こうした謎を解明しようとトーラは深みにはまっていく。
トーラには、人間関係が濃密て保守的なシェトランド人たちは、誰もが通じているように思える。関わっているのは誰なのかではなくて、関わっていないのは誰なのかというくらいまで、疑心暗鬼になった。男性避妊薬を服用していた夫にも疑惑を抱かざるを得なくなる。本土から来たデーナ・タクラ巡査部長は警察署内で阻害感を感じていた。デーナは同じような立場のトーラに親近感を抱き、上司の妨害にめげず、トーラと連絡を取りながら事件に挑んだ。
何者かがトーラの家に忍び込み動物の心臓を置いていった。こうして知りすぎたトーラ自身にも危険が及びはじめる。

後半は、予想だにしない方向にストーリーは進み、息もつかせない展開から怒涛のクライマックスへと向かう。
産科医という設定であるからこそ成り立つストーリーである。
トーラがあまりにもタフで勇敢すぎるきらいがあるが、そのスーパーウーマンぶりは痛快である。

【シェトランドに関するミステリ】
大鴉の啼く冬』(07年7月)、『野兎を悼む春』(11年7月)、『白夜に惑う夏』(09年7月)、『青雷の光る秋』(13年3月) アン・クリーブス著〈シェトランド四重奏〉
三つの秘文字』 (11年9月) シャロン・J・ボルトン著 

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