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2012年1月17日 (火)

『卵をめぐる祖父の戦争』 デイヴィッド・ベニオフ

卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1838)
デイヴィッド・ベニオフ
田口俊樹 訳
早川書房
2010年8月15日
ISBN 978-4-15-001838-2
★★★★☆

作家のデイヴィッド・ベニオフ(著者)は、祖父のレフから戦時下の体験を取材して小説を書くことにした。

1941年6月、ナチスドイツ軍がレニングラード(愛称ピーテル)に侵攻した。ドイツ軍はピーテルを包囲し兵糧攻めにした。10月になると食べるものがなくなって、飼い犬を丸焼きにして食べたという噂が広がった。11月になると燃やす物がなくなった。猫を食い尽くしネズミを食い尽くし、何しろ食べ物がない。ピーテルのそこら中に死体が転がっていた。人食いまで現れる始末だった。

それは、レフが17歳のときだ。夕方に、パラシュートにぶら下がったドイツ兵の死体が空から降ってきた。レフは死体からナイフを手に入れた。夜間外出禁止の時間になっていることを忘れ、死体を取り囲んでワイワイやっているうちに、警邏のロシア兵にレフは捕まって連行された。法を犯した者は拷問を受け処刑される。

監房では、口から生まれてきたように饒舌なロシア兵のコーリャと同室となった。翌朝になると、どういう訳か拷問も銃殺もまぬがれて、ふたりは秘密警察の根城となっている貴族の邸宅に連れていかれた。そこで、朝食を振舞われ、大佐から娘の結婚式のケーキを作るのために、1ダースの卵を木曜日の夜明けまでに調達しろという命令が下されたのだった。今日は土曜日だ。

ピーテル内を探し回っても、飢餓状態の町には卵などあるはずもない。ピーテル周囲を包囲しているドイツ軍は、郊外の農家から家財道具から農産物に至るまで略奪したのだ。ついに、ふたりはドイツ軍の包囲網をかいくぐりピーテルの外に出ることにした。

寒くて空腹で不潔でやりきれない逆境にもかかわらず、ユーモアがあり悲壮感を感じない。
友情と愛と冒険の青春小説である。

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