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『リガの犬たち』 ヘニング・マンケル

リガの犬たち (創元推理文庫)
ヘニング マンケル
柳沢由実子 訳
東京創元社
2003年月11日

1991年2月、ふたりの若い男の死体を乗せた救命ゴムボートが、スウェーデンの南海岸に打ち上げられ、イースタ署のクルト・ヴァランダーたちが捜査を開始した。
やがて、遺体の身元がラトヴィアの犯罪組織にかかわる人物と判明した。
ラトヴィアの首都リガから、調査のためにカルリス・リエパ中佐が派遣される。
ところが、リガに帰ったその日に、リエパ中佐は何者かに殺されてしまう。
そしてヴァランダー警部は、リガの警察署からリエパ中佐殺害捜査の協力のために招聘される。
スウェーデンの田舎町イースタとは勝手が違う警察の捜査体制に戸惑うヴァランダーに、地下組織から接触が図られる。

一度は帰国したヴァランダーであったが、中佐の未亡人から懇願されて、身分を偽ってラトヴィアに再び潜入する。
ヴァランダーは、いつの間にか命の危険にさらされる謀略の渦中に身を置くことになってしまった。
そうしたなかであっても、ヴァランダーは未亡人バイバに恋心をいだくという、バツイチ中年男ぶりを発揮するのだ。

旧ソ連から分離独立した直後であるラトビアの政治状況は、いまだにソ連に通じる人脈によって掌握されているというものだった。
そうした状況下で、地下に潜り命がけで自由を求め独立運動に身を投じる人々に、ヴァランダーは頼りとされる。
そこでヴァランダーが垣間見たのは、かつての社会主義大国ソヴィエト連邦が崩壊する瀬戸際で起きた、ソ連支配下の国における独立運動とそれを阻もうとする旧勢力の壮絶な戦いだった。
途中からは、もはや警察小説を離れてしまい国際政治サスペンスものの趣になる。

スケールの大きい展開のなかにも、イースタ署の警察官たちの苦悩が語られる。
スウェーデンは、手のほどこしようがないほど犯罪が先に行ってしまい、かつて経験したことのない種類の犯罪を生み出す社会になってしまった。
これは、先進国の多くが抱える共通の社会問題であり、ヴァランダーシリーズで繰り返し指摘されることである。

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