中二階 ニコルソン・ベイカー
入社2年目の男が、昼休みに靴ひもを購入しにドラッグストアに出かけ、公園で昼食を食べ終え、紙袋をぶら下げてエスカレーターでオフィスに戻ろうとするところから物語は始まる。
中二階 ニコルソン・ベイカー/岸本佐和子 訳 白水社 1994年 |
昇りのエスカレーターに乗ったときからオフィスのある中二階に着くまでのわずかな間に、思い浮かんだ日常の瑣末な物や事象について、電子顕微鏡の視点から、少しばかり宇宙的な視点から、あるいは哲学的な視点から、ニンマリとさせる考察をくり広げ、薀蓄を披露するスリリングな実験的小説である。
たてつづけに靴ひもが切れた原因を執拗に考察し、エスカレーターを氷河になぞらえその美しさをたたえ、オフィスのドアノブの変哲もない形状を憂い、コーラの缶に刺したプラスチックストローが浮き上がる現象をストローメーカーの怠慢と嘆く。
公衆トイレの便座の馬蹄形を、立って用を足す不届き者がいるからと推測し、ドラッグストアの棚に並ぶシャンプーたちの栄枯盛衰の歴史を考察する。
本文を脅かすほどのページ数の脚注が差し込まれていて、本文と同様に饒舌でありパラノイア的である。
ナノの視点で日常をユーモラスに考察している。→人気ブログランキング
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