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『日の名残り』カズオ イシグロ

日の名残り (ハヤカワepi文庫)
カズオ イシグロ
早川書房
2001年5月31日
ISBN978-4-15-120003-8
★★★★★

館の新しい主人のアメリカ人が、スにイギリス旅行をすすめた。
旅の細々が語られ、スの過去が織り込まれる。
大戦の間に館では、国際会議や政府要人の会合が瀕回に行われ、スはそれらをとり仕切ってきた。
誇らしい充実した日々を送ってきたと思い返す。
かつて仕えた主人は品格のある貴族であるとスは敬服している、あるいは思い込もうとしている。
その主人はナチの協力者とマスコミや周囲から叩かれ、汚名を挽回することなく生涯を終えた。

感情を表に出そうとしないスは、女中頭のミス・ケントンに「どうしてあなたはいつも嘘をついていなければならないの」と言われる唐変木なのだ。
再三、語られる品格とは、自己抑制することで執事として役目を全うしてきたことだった。
元女中頭からの手紙で、彼女が不幸な状況にあるのではないかと思い込み、あわよくば仕事に戻ってもらえるかもしれないなどと、都合のいいことを考えるのである。
その女性と巡り会い打ち明け話を聞き、自分の生き方を嘆く。
執事としての人生が、欺瞞に満ちていたことを気づいくのだった。
イギリスの古き良き貴族文化が衰退していくなか、主人公が従ったのは古い因習でありやがて社会から消えていくものであった。そこに主人公の人生も重ね合わされている。

この旅行の目的は元女中頭に会うことにほかならず、とすれば本書のテーマのひとつは恋愛である。
著者の端正な筆さばきにより上等な作品になっている。

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【2012.04.14】『日の名残り』 カズオイシグロ
【2012.04.12】『浮世の画家』 カズオイシグロ

【2012.04.21】『日の名残り』 (DVD)

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