あなたの知らないヒットブランド本当の話―なーんだ!47話 ジャック・ミンゴ
世界を席巻した商品、あるいはアメリカで売れ筋の商品の開発秘話集。
例えば、ジェロー。
レイモンド・カーヴァーの短篇『羽根』(『夜になると鮭は・・・』中央公論社刊に収録)に、パーティでデザートにジェローが出てきたら最悪だという夫婦の会話が出てくる。
アメリカの3/4の家庭の食品貯蔵庫に、少なくとも1箱のジェローが入っているというくらいポピュラーで、ウンザリする定番デザートのようだ。
![]() ジャック・ミンゴ 大川修二 訳 東急エージェンシー出版部 1998年 |
コーンフレークの開発秘話は苦笑ものだ。ケロッグ博士が目指したのは、性欲抑制食品の開発であったという。開発された味のないコーンフレークは売れ行きがよくなかった。
コーンフレークに砂糖を加えるよう提案した弟に、兄のケロッグ博士は砂糖は性欲促進剤であるとして猛反対した。弟が反対を押し切って砂糖を加え発売したところ、爆発的に売れた。このことで兄弟は仲違いしたという。
この逸話を思い浮かべなから、朝食のシリアルをカリカリやると、味わいもことさらだ。
スリーM社のポストイットは、中途半端にしかくっつかない接着剤の使い道を模索し続けた男の執念が実ったものだ。
「怪しげな肉」スパムは、豚肉の売れない肩肉をどうにかしようと開発された。
キャデラックにどでかい羽根がついたのは、社長がかっこいいと思ったからだという馬鹿げた話。
マールボロは女性向けタバコとして売り出されたものだった。
アメリカンフットボール選手用にゲータレードがフロリダ大学で開発される前までは、毎年50名の学生が熱射病で命を失っていた。
スティーブ・ジョブスは、同僚を出し抜くようなことを平気でやる、煮ても焼いても食えない男だった。
フォルクスワーゲンはヒトラーの後ろ盾で生まれた。
というような秘話が載っている。
「はじめに」で、<われわれに大変なじみの深い製品の多くは、実のところ風変わりなーというよりも、むしろひどく気狂いじみたー人物の、直感、当て推量、狂言から生み出されたのである。なぜかといえば、本当に新しいものを生み出すには普通と異なったものの見方が必要となるからだ。と著者は書いている。
だからその逸話は面白い。→人気ブログランキング
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