バード
ジャズにただならぬ造詣をもつクリント・イーストウッド監督の天才サックス奏者チャーリー・パーカー(愛称バード)に対するオマージュである。その意図は十分に達成されている。
若いときに、故郷カンザスシティで受けたオーディションで、バードのあまりの独創的な演奏ゆえにバンドがついていけず、彼に向かってシンバルンが投げつけられたことがあった。この屈辱のシーンは何回か繰り返される。
独創性が受け入れないことが、バードに生涯ついて回った孤独であり苦悩であった。
作中バードは15歳から麻薬をやっていると語っている。
彼はドラッグから脱却しようと何度も試みるが果たせなかった。
バード Bird 監督:クリント・イーストウッド 脚本:ジョエル・オリアンスキー 製作総指揮:デヴィッド・ヴァルデス 音楽:レニー・ニーハウス 製作国:アメリカ 1988年 |
その後、ニューヨークのクラブで自ら創始したアドリブ主体のビ・バップが、少しずつ観客に受け入れられるようになる。
その頃、彼はダンサーのチャン(ダイアン・ヴェノーラ)と出会い、やっとの思いで彼女のハートを射止めた。
やがてバードのよき理解者ディジー・ガレスピー(サミュエル・E・ライト)とともに西部に進出するが、受け入れられなかった。
失意のうちに、彼は酒浸りとなり入院する。
そんな彼が再びニューヨークで仕事に就けたのは、チャンが仕事探しに奔走したおかげだった。
1949年は、バードにとって飛躍の年となった。
パリでのコンサートは成功し、ニューヨークでもバードの演奏に観客は熱狂した。
さらに、白人トランペッター、レッド・ロドニー(マイケル・ゼルニカー)をバンドに入れ、南部の演奏旅行で成功を収めた。
しかしレッドが麻薬所持で逮捕され、ニューヨークでは仕事がほとんどできなくなってしまう。
このころからバードに不運がつきまとうようになる。
娘が亡くなり、その半年後に失意のあまり自殺を図るが、病院に運ばれ事なきをうる。
彼は仕事を見つけようといつも奮闘しなければならなかった。
ところが、いやがらせをし金を巻き上げようとする悪徳警察官にしょっちゅう追い回されていた。
その頃ニューヨークではやり始めたロックンロールのあまりの幼稚な音楽性に、深い失望を感じる。
ドラッグとアルコールでボロボロになったバードは、ジャズ男爵夫人と呼ばれるパノニカ(ダイアン・ヴェノーラ)が暮らすニューヨークのホテルで息をひきとった。 34歳だった。パノニカもバードのよき理解者であった。→人気ブログランキング
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