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2012年5月30日 (水)

チョコレートの世界史 武田尚子

バレンタインデーを当て込んで発刊したチョコレートの本だろうと思って手にとったら、まるで違った。
あくまでチョコレートに関する歴史書である。
Photo_20201118084101チョコレートの世界史―近代ヨーロッパが磨き上げた褐色の宝石
武田 尚子
中央公論新社
2010年

チョコレートの歴史は、大きく3つに分けることができると思う。
「カカオ豆の時代」、「ココアの時代」、「チョコレートの時代」である。本書にこの時代区分が記載されているわけではないが、こうして3つに分類すると理解しやすい。
「カカオ豆の時代」は、中米でカカオ豆が貨幣の代わりや薬として用いられた時代のことである。カカオ豆は王侯貴族たち専有の貴重品だった。
「ココアの時代」は、大航海時代になって新大陸のカカオ豆がヨーロッパに持ち込まれたころから、庶民がココアを飲むことができるようになるまでである。
カカオについての宗教論争が巻き起こった、ややこしい時代である。
ココアが飲み物か食べ物かの論争がなんと100年も続いたというのだ。カソリック教徒には断食の戒律があったので、飲み物であれば断食のときに栄養源になりえて都合が良かった。他の宗派はそうはいくものかと、飲み物にしてしまうことに反対した。
また、カカオ豆をどうしたら飲みやすい物にできるかの、研究が重ねられた時代である。
カカオは、茶やコーヒーのように簡単に加工はできなかった。
「チョコレートの時代」は、特にイギリスおいて、ココアが固形のチョコレートに生まれ変わり、庶民の手が届く値段で普及していく時代である。

著者はバレンタインデーについて、まったく言及していない。
チョコレートの悠久な歴史からみれば、毎年バレンタインデーに繰り広げられる極東の国のチョコレート騒ぎは、さしたる歴史的な意味を持たないことのようだ。
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チョコレートの世界史』武田尚子

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