『罪悪』フェルディナント・フォン・シーラッハ
著者が弁護士として弁護を引受けた事件について描いた連作短篇のかたちをとっているところは、前作の『犯罪』と同様である。
15の短篇には、罪を犯した人間が必ずしも相応の罰を受けるわけではない不条理な事件がある一方、証拠を斟酌しない大岡裁きのような判決や、ほっと胸を撫で下ろす事件の結末もある。
比較的長いものも数ページのものもあり、バリエーションに富んでいて読み易い。
たとえば、最後の『秘密』はまるで落語のようなオチのある短い話。
無駄が省かれたストレートな文体で、登場人物の心理や事件の核心が淡々と語られ、ぐいぐいと引き込まれていく。
二匹目のどじょうを狙った本書は、またもや絶品の短篇集に仕上がっている。
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