ラム・ダイアリー ハンター・S・トンプソン
ゴンゾ(無頼派)ジャーナリスト、ハンター・トンプソンの自伝的小説。
1958年のプエルトリコ、サンファンが舞台。
ニューヨークから、30歳の新聞記者ポール・ケンプがサンファンの『デイリー・ニューズ』社にやってくる。
![]() ハンター・S・トンプソン/中江昌彦訳 朝日新聞出版社 2012年 |
『デイリー・ニューズ』社はいつ潰れてもおかしくないような経営状況にある。
外国人のポールたちは、所詮は住民に受け入れられないアウトサイダー。
その孤独感や疎外感を紛らわすため、昼間から酒を飲み、喧嘩をして、警察沙汰になる、というような無軌道な生活を送っている。
飲む酒はほとんどがラム。蒸留酒の中でもアルコール度数の高いラムを、登場人物たちがオンザロックでしょっちゅう飲む。
紙面からラムの匂いがプンプン漂うような感覚になる。
そんな年がら年中素面でない生活を送っていれば、当然良いからぬことが次々と起こる。
ポールたちの生活も新聞社の経営状況も、悪い方向に転がっていく。
カリブ海の眩しい太陽と青い海、南国の気だるさのなかで繰り広げられるスリリングな日々が、みずみずしい文体で描かれている。無
軌道な生活をみずみずしい文体で表現しているところは、ビート世代のケルアックの『オン・ザ・ロード』を彷彿させる。
→人気ブログランキング
→ にほんブログ村
« ラビット・ホール | トップページ | 『ゲーテの恋~君に捧ぐ「若きウェルテルの悩み」』 »
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- 室町無頼(映画)(2025.02.04)
- なぜメリル・ストリープはトランプに噛みつき、オリバー・ストーンは期待するのか ハリウッドからアメリカが見える. 藤えりか(2017.04.07)
- 映画365本 DVDで世界を読む 宮崎哲弥(2014.06.21)
- 語りあかそう ナンシー関(2014.05.11)
- レッドカーペットで繰り広げられていたこと(2014.04.03)
「小説」カテゴリの記事
- JR上野駅公園口 柳美里(2020.12.23)
- 文豪春秋 ドリヤス工場(2020.12.13)
- 緋の河 桜木紫乃(2019.09.25)
- 『落陽』朝井まかて(2019.04.21)
- 夫のちんぽが入らない こだま(2017.03.25)
「翻訳」カテゴリの記事
- “少女神”第9号 フランチェスカ・リア・ブロック(2022.10.20)
- 平凡すぎて殺される クイーム・マクドネル(2022.05.05)
- 葬儀を終えて アガサ・クリスティー(2022.04.19)
- 匿名作家は二人もいらない アレキサンドラ・アンドリュース(2022.03.29)
- TOKYO REDUX 下山迷宮 デイヴィッド・ピース(2022.03.14)