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2012年7月

2012年7月31日 (火)

『オール・アバウト・マイ・マザー』

設定が大胆で、人物それぞれが複雑な状況下にありかつ強烈な個性の持ち主、屋内の装飾にしろ服装にしろ色使いはど派手、ラテンが息づいている傑作だ。
アカデミー賞外国語映画賞を受賞している。

オール・アバウト・マイ・マザー [DVD]
原題:Todo sobre mi madre
監督:ペドロ・アルモドバル
脚本:ペドロ・アルモドバル
製作:アグスティン・アルモドバル
音楽:アルベルト・イグレシアス
製作国:スペイン 1999年 101分

マドリードに暮らす臓器移植コーディネーターのマヌエラ(セシリア・ロス)は、息子を女手ひとつで育ててきた。

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その息子の誕生日に、『あるセールスマンの死』をふたりで観劇した帰りに、息子は主演のウマ・ロッホ(マリサ・パレデス)にサインをもらおうとして、車に轢かれ脳死となる。息子はドナーとなって死んだ。

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失意のマヌエラは音信不通の父親に、息子の死を伝えようとバルセロナに向かう。
マヌエラがウマの楽屋を訊ねると、付き人として雇われるのだった。
ウマのレスビアン相手で若い女優のニナ(カンデラ・ペニャ)は麻薬中毒。
ある日、ニナが舞台に穴を開けてしまい、かつてアマチュア劇団でステラ役の経験があるマヌエラはなんとか代役を務めるのだった。と、なんともうまい具合に話が運ぶ。

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ある夜、場末の公園で暴行を受ているゲイを助けると、それは友人のアグラード(アントニオ・サン・ファン)であった。やがてアグラードはマヌエラのかわりにウマの付き人になる。
一方、マヌエラはシスターのロサ(ペネロペ・クルス)から、妊娠していてHCVに感染していると相談を受ける。
ロサの相手が、音信が途絶えていた元夫と判明し、マヌエラは愕然とするが、出産を決意したロサの面倒を看るために自分のアパートに住まわせるのだった。さらに元夫は、あろうことか性転換手術を受けて女性になり、ロラ(トニ・カント)と名乗っていた。
マヌエラの過去は波乱万丈だったのだ。

ロサは無事出産するが、エイズで亡くなる。ロサの母親は孫の引き取りを拒否、仕方なくマヌエラは子供を連れてマドリッドに帰る。
やがて、子供がHVSに感染していないことがわかり、ふたたびバルセロナに向かい、子供をかつての夫ロラに会わせるのだった。
この子供は、マヌエラとロラの息子の生まれ変わりってことだ。
マヌエラは、様々な「女性たち」と出会い、献身的に関わることで、息子の死を乗り越えていく、と、まあまとめればそんなところ。

2012年7月30日 (月)

白いカラス

1998年、共産主義が衰退しテロが蔓延する以前、アメリカは大統領のセックススキャンダルで揺れていた。
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原題:The Human Stain
監督:ロバート・ベントン
脚本:ニコラス・メイヤー
原作:フィリップ・ロス『ヒューマン・ステイン』
製作国:アメリカ合衆国 ドイツ フランス 2003年 106分

名門大学の学部長コールマン・シルク(アンソニー・ホプキンス)は、講義中に差別用語を使ったことで、職を失う。
間もなく妻が急死し孤独の身となる。

コールマンは欠席した生徒を、「Spook」と呼んだ。Spookは幽霊という意味、俗語では黒人という意味もあるとのこと。学生はたまたま黒人だった。たったこれだけのことで退職に追い込まれてしまった。言葉刈りが横行した時代だったのか。

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コールマンは、郊外でひっそり暮らす小説家のネイサン・ザッカーマン(ゲイリー・シニーズ)を訪ね、自らのことを小説に書いたらどうかと持ちかけ、ふたりは親しく交流するようになる。このネイサンの目で物語が語られる。

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一方、母親の再婚相手から性的虐待を受けた過去をもつフォーニア・ファーリー(ニコール・キッドマン)は、イラク帰還兵の夫レスターエド・ハリス)の暴力の悩まされ、火事でふたりの子供を亡くしている。
いまは、牧場と清掃の仕事を掛け持っている。

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ある日、コールマンとフォーニアが出会い、あっさりと深い関係になってしまう。
それを妬むレスターがふたりの前に現れるようになる。

互いに自らの秘密を打ち明けるなか、コールマンは妻にも打ち明けたことのない自らの秘密をフォーニアに打ち明けるのだった。

原作の『ヒューマン・ステイン』では、コールマン71歳、フォーニア34歳という設定。
アンソニー・ホプキンス、ニコール・キッドマン、エド・ハリス、ゲイリー・シニーズのそれぞれが、味のある充実した演技を見せている。
タイトルは原題の『ヒューマン・ステイン』より『白いカラス』の方がストレートでいい。
邦題のタイトル通りのネタが隠されている。→人気ブログランキング

2012年7月29日 (日)

セント・オブ・ウーマン/女の香り

ボストンの名門高校で、トラスク校長(ジェイムス・レブホーン)が愛車のジャガーもろとも自らも頭からペンキをかぶせられた。
そんな悪戯されても当然の校長なのだが。。
前の夜に、この悪ふざけの準備をする生徒たちを目撃したチャーリー(クリス・オドネル)に、校長は犯人の名前を明かすように迫る。
この校長が教育者の風上におけないような悪者で、オレゴンの田舎から出てきた苦学生のチャーリーの弱みにつけ込んで、白状すればハーバード大学への推薦状を書くが、白状しなければ退学だと脅すのだ。
目撃したもうひとりの生徒は、父親が金持ちなのでこういう脅迫は受けない。
Photo_20201207085401セント・オブ・ウーマン/夢の香り
原題:Scent of a Woman
監督:マーティン・ブレスト
脚本:ボー・ゴールドマン
製作:マーティン・ブレスト
音楽:トーマス・ニューマン
製作国:アメリカ合衆国  1992年  157分

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苦悩するチャーリーは、そのことはさておき、週末に盲人の面倒を看る割のいいアルバイトをすることにした。その盲人というのが退役軍人の厄介者フランク・スレード中佐(アルパチーノ)。
過去の栄光にすがり、わがまま放題で厭世的で、酒浸りの生活を送っているフランクは、有無を言わせずチャーリーを連れてニューヨークの一流ホテルに逗留し豪遊するのだった。

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フランクは、この旅の最後に銃で頭を撃ち抜いて自殺するシナリオを描いていた。彼はチャーリーとともに過ごすなかで、次第に心を開いていく。そしてチャーリーの説得にフランクは自殺を断念するのだった。

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ボストンに戻ったチャーリーを待っていたのは、全教師および全生徒の前で行われる公開懲戒委員会であった。
そんな場で、友人を売るなんてことは、あり得ない。
再三、名前を言うように迫る校長に、チャーリーはあくまで「犯人の名前を言えない」と突っぱねる。校長がチャーリーに退学を言いわたそうとすと、フランクが現れる。
フランクは持ち前の強引さで、校長の誤ちを質しチャーリーの高潔さを訴える演説を行い、満場の拍手を受けるのだった。こうして懲戒委員会は、チャーリーにお咎めなしの裁定を下す。
フランクの演説に感激した女性教師(フランセス・コロイン)がフランクに声をかけ、女性大好きのフランクは相好を崩す。こうしてフランクの新しい生活が始まろうとする。

笑いと涙の感動作。
アル・パチーノの迫真の演技が見もの。彼はアカデミー賞主演男優賞を受賞した。→人気ブログランキング

2012年7月28日 (土)

ダブル・ジョパディー

ブルース・べレスフォード監督は、ダブルジョパディという言葉を知ったとき、「これはものになるぞ」と思ったに違いない。ダブル・ジョパディー(二重処罰の禁止)とは、同じ罪で人は2度罰せられないという法律の条項。
日本憲法にも、バブルジョパティーの項がある。
日本国憲法第39条:何人も、実行の時に適法であった行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問われない。また、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問われない。
なお、監督は名作『ドライビング Miss デイジー』(89年)を手がけている。
Image_20201122161101ダブル・ジョパディー
原題:Double Jeopardy
監督:ブルース・ベレスフォード
脚本:デヴィッド・ワイズバーグ/ダグラス・クック
音楽:ノーマンド・コルベイル
アメリカ 1999年 105分

リビー(アシュレイ・ジャッド)は、身に覚えのない夫殺人で有罪になる。
夫のニック(ブルース・グリーンウッド)に仕組まれて、リビーは殺人犯に仕立て上げられたのだ。

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刑務所の中で、ニックと息子マティとリビーの友人だったアンジー(アナベス・ギッシュ)が一緒に暮らしていることを知り愕然とする。
リビーは、元弁護士の女囚から「ダブル・ジョパディー」について教えてもらい、彼女はニックへの復讐に燃え、がぜん体を鍛え始める。仮に、リビーがニックの額を38口径で打ち抜いて殺しても、リビーは罰せられないのだ。
そして6年後、仮出所となる。

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保護観察官レーマン(トミー・リー・ジョーンズ)の厳しい監視下に置かれたリビーは、ニックたちの居所を探し始めるが、マティの幼稚園に忍び込んで、あっさり警察に捕まってしまう。刑務所に護送される途中のフェリーから、リビーはレーマンを振り切って逃げる。

やがて、リビーはアンジーがガス爆発事故で亡くなっていることを知る。ニックの仕業だ。
彼女は、新聞記事のアンジーの顔写真に写っているリトグラフの売買記録を調べ、ニックの居場所を突き止める。

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ニックは名前を変え、ニューオリンズのホテルのオーナーに収まって羽振りのいい暮らしをしていた。
しつこく追いかけてきたレーマンにリビーは捕まってしまうが、ニックの悪事を知った彼は、リビーと共にホテルの事務所に乗り込むのだった。
リビーがニックに38口径を向けると、「殺人はルイジアナ州ではガス室送りだ」と彼が怒鳴るが、「同じ罪で二度は罰せられない」とリビーが切り返す。

死体の上がらない夫の殺人で有罪となった妻に、生命保険料200万ドルが下りるのはいくらなんでも乱暴な話だが、映画だからそこは目をつぶるしかない。
カンディンスキーのリトグラフが小道具として使われている。リトグラフは、リビーたちのコテージに飾られていて、リトグラフの売買記録からニックの居場所が割り出され、ホテルの事務所に飾られたリトグラフは、リビーの撃った弾で撃ち抜かれるのだ。→人気ブログランキング

初老のタフな男とそれにも増してタフな若い女性のコンビは、アシュレイ・ジャッドのお得意の役柄。『コレクター』(97年)、『ハイクライムズ』(02年)で、モーガン・フリーマンと組んでいる。アシュレイ・ジャッドの魅力があふれ出る一作。

2012年7月27日 (金)

アンフィニッシュ・ライフ

ふたりの男の友情を軸に、頑固な老カウボーイの過去への拘泥が徐々に消えていくという、筋の通った優良な作品だ。それなのに、日本では未公開。
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原題:An Unfinished Life
監督:ラッセ・ハルストレム
脚本:マーク・スプラッグ/バージニア・コラス・スプラッグ
音楽:クリストファー・ヤング/デボラ・ルーリー(サントラ盤)
製作国:アメリカ合衆国   2005年  104分

息子を亡くし牧場で暮らすアイナー(ロバート・レッドフォード)は、ミッチ(モーガン・フリーマン)の面倒をみている。毎日、彼はミッチに食事を運び、痛み止めのモルヒネを注射している。
アイナーは泥酔していて、熊に襲われたミッチを助けることができなかったことで、自分を許せないでいる。

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ある日、ミッチを襲った熊をアイナーが捕らえ、町の動物園に入れる。
ミッチは、瀕死の目に合わされ後遺症に悩まされているにもかかわらず、その熊を許す気持ちになっているのだ。

ジーン(ジェニファー・ロペス)は恋人のゲイリーの暴力に耐えきれず、11歳の娘グリフ(ベッカ・ガードナー)とともにアイオワからワイオミングの義父の牧場に向った。牧場に着いた母娘に対し、アイナーは冷ややかに接した。
10年前にジーンが運転する車の事故で息子が亡くなったことで、アイナーは彼女を許せないでいる。息子の墓碑には「unfinished life」と刻まれている。

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やがて、ジーンとグリフにつきまとうゲイリーを、アイナーがカウボーイのやり方で叩きのめす。彼は義理の娘と孫娘を守ったのだ。

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ミッチの熊に対する寛容な考えと、息子に似てるとアイナーが感じるグリフの屈託のなさが、彼の心を開かせていく。ある夜、アイナーとグリフは動物園に忍び込み、熊を逃がしてやるのだった。
そして、アイナーはジーンを許す気持ちになる。

レッドフォード、フリーマン、ロペスが、それぞれ味のある演技を見せている。
勇敢で聡明そうなグリフ役のベッカ・ガードナーもいい。
監督のラッセ・ハルストレムは、『ギルバート・グレイプ』(93年)も撮っている。→人気ブログランキング

2012年7月26日 (木)

ヘルタースケルター

原作は岡崎京子の同名のコミック。
全身に美容手術を施してトップアイドルに昇りつめたりりこ(沢尻エリカ)は、過去をひたすら隠している。
クリニックで行われた手術には、違法に入手された胎児の皮膚や筋肉が使われたため、りりこは免疫抑制剤を内服し続けなければならず、悪徳美容外科医(原田美恵子)から逃れられない運命にある。
Image_20201122100601ヘルタースケルター
監督:蜷川実花
脚本:金子ありさ
原作:岡崎京子
主題歌:浜崎あゆみ「evolution」
公開:2012年 127分

りりこはわがままで気まぐれ、マネージャーの羽田(寺島しのぶ)に当たり散らして憂さを晴らしているが、羽田は「私がいないとりりこさんは何もできない」と信じていて、りりこに盲目的に尽している。
プロダクションの社長(桃井かおり)は、りりこの全てを知る人物。いずれりりこの体が変調をきたすことも計算に入れている。

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美容クリニックの違法な医療行為を捜査している検事(大森南朋)は、りりこの秘密に感づいていて彼女を追い詰めていく。
やがて、ライバルの新人(水原希子)がデビューして、りりこの人気を脅かしはじめるのと期を同じくして、りりこの体にはシミが現れ、幻覚発作が起こるようになる。このあたりから、りりこの転落の運命が始まる。

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叫んで、笑って泣いて、きれて暴れて、セックスしてというという演技は、ゴシップがつきまとう沢尻エリカならではの迫力がある。映画のりりことマスコミに報道されてきた沢尻エリカがダブって見える。蜷川監督は、りりこ役は沢尻エリカしかいないと確信していたとのこと。
それにしても、複数の男と関係を持ち、レスビアンあり、3Pありで、いささか食傷気味になる。

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りりこの部屋の調度品の多くが、監督自身の家から運び込まれたものだという。監督らしいカラフルでポップなロココ調の画面が、りりこの生き様にマッチしている。

ヘルタースケルター(helter skelter)は、「狼狽」や「混乱」の意味。もともとも意味は「螺旋状の滑り台」。
ビートルズの楽曲に『Helter Skelter』(1968年)があり、日本盤では『しっちゃかめっちゃか』と訳されている。1969年にシャロン・テート事件を引き起こしたチャールズ・マンソンに多大な影響を与えた曲だという。→人気ブログランキング

スペース・カウボーイ

70歳前後の老人4人を宇宙に送るという発想が、なにしろ凄い。体力に自信のある衰えを知らない絶倫男のクリント・イーストウッドだからこそ思いつく。
1998年に、当時78歳のジョン・グレイン上院議員がスペースシャトルで飛んだ快挙が、この映画の作成を後押ししたというが、脚本はその前に出来上がっていたそうだから、それがまた凄い。
70歳ともなれば病気を抱えているのは当たり前で、ウィリアム(トミー・リー・ジョーンズ)は、がんを患っているという設定。
エンターテイメント性豊かな一本だ。
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原題:Space Cowboys
監督:クリント・イーストウッド
脚本:ケン・カウフマン/ハワード・クラウスナー
製作:クリント・イーストウッド/アンドリュー・ラザー
音楽:レニー・ニーハウス
主題歌:フランク・シナトラ『フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン』
製作:アメリカ  2000年

1958年、米国初の宇宙飛行士になるはずだったテストパイロットチーム「ダイダロス」の4人は、直前になってチンパンジーにとって代わられる屈辱を味わう。

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それから40余年後、「ダイダロス」のメンバーのフランク(クリント・イーストウッド)に、NASAから呼び出しがかかる。
旧ソ連の通信衛星「アイコン」が故障し地球に落下してくるが、巨大すぎて燃え尽きない可能性が高いという。誰かが、ダイナソー!と叫んだ。
「アイコン」にはKGBに盗まれたフランクの設計が使われていて、修理できるのは彼しかいない。
フランクは仕事を引き受ける条件として、煮え湯を飲まされたかつての上司ガーソン(ジェームズ・クロムウェル)に、ダイダロスのメンバーの宇宙行きを約束させる。

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かくして昔のメンバー、ウィリアム、ジェリー(ドナルド・サザーランド)、タンク(ジェームズ・ガーナー)が召集され、過酷な訓練に耐えた4人は宇宙へ旅立った。

がんを患っているウィリアムは、本船の危機を救うため、犠牲となって決死の作業を自らかって出る。
そして、ウィリアムを乗せた宇宙船は、フランクシナトラの『フライミー・トゥ・ザムーン』が流れるなか、月に向かうのだった。→人気ブログランキング

2012年7月25日 (水)

バベル

バベルは、『旧約聖書』の『創世記』第11章に出てくる町の名。
天まで届くバベルの塔を建てようとした人間を快く思わない神は、人間に別々の言葉を与え、その結果人々はばらばらになり、別々の所に散っていった。
Baberuバベル
原題:Babel
監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
脚本:ギレルモ・アリアガ
音楽:グスターボ・サンタオラヤ
製作:アメリカ合衆国 2006年 142分

モロッコ
夫婦の絆を取り戻そうとモロッコを旅行中のリチャード(ブラッド・ピット) とスーザン(ケイト・ブランシェット)を不幸が襲う。バスで移動中に、スーザンがライフルで撃たれたのだ。
病院に運ぼうとリチャードが大使館と掛け合うが、テロ組織の関与を疑う米国とモロッコ政府との協議が進まず埒があかない。
ライフルを撃ったのは、山羊をジャッカルから守ろうとする幼い兄弟であった。

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カリフォルニア・ティアナ
カリフォルニアでは、メキシコ人不法滞在者のアメリア(アドリアナ・バラッザ)が、リチャードとスーザンの子供たちの面倒をみている。
アメリアの息子の結婚式がメキシコのティアナであり、彼女は甥のサンジェゴの車で、子供たちとともに結婚式に行くことにした。
結婚式が終わり、サンジェゴの運転する車でカリフォルニアに戻ろうとするが、彼は酔った勢いで国境の検問を強行突破してしまう。
逃亡の途中で、アメリアと子供たちは車から下ろされる。
彼らは飲み物もなしに、灼熱の砂漠をさまようのだった。

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東京
チエコ(菊地凛子)は、父親ヤスジロウ(役所広司)と二人暮らし。母親の自殺で負った心の傷が癒えていない。
聴覚障害のチエコは疎外感を感じていて、不安定で危なっかしい生活を送っている。
警視庁の警部ふたりが父に面会したいとマンションを訪ねてくる。モロッコでアメリカ人が撃たれたライフルが、ヤスジロウ名義のものだという。
ライフルは、ヤスジロウがモロッコに狩りのツアーに出かけたとき、ガイドに謝礼としておいてきたものだった。
チエコは若い刑事をマンションに誘い迫るが、断られてしまう。

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この3つの話が、交互に入れ替わりシンクロして物語は進んで行く。
本作のテーマである、思い通りにならない、意志の疎通がとれないといったもどかしさが、ドキュメンタリー風の淡々とした映像によって巧みに表現されている。→人気ブログランキング

2012年7月24日 (火)

ギルバート・グレイプ

映画公開時、ジョニー・デップ29歳、レオナルド・ディカプリオ19歳、ジュリエット・ルイス20歳だった。みんなが若かった。
ジョニー・デップの演技が光ると思ったら、ディカプリオがアカデミー助演男優賞にノミネートされていた。
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原題:What's Eating Gilbert Grape (ギルバート・グレイプの悩みの種)
監督:ラッセ・ハルストレム
脚本:ピーター・ヘッジス
音楽:アラン・パーカー/ビョルン・イスファルト
製作国:アメリカ合衆国 1993年 118分

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ギルバート(ジョニー・デップ)は生まれてこの方、アイオワの田舎町エンドーラ(架空の町)を出たことがない。それには理由がある。
医者から10歳までしか生きられないと宣告され知的障害をもつ弟のアーニー(レオナルド・ディカプリオ)の面倒を見なければならない。さらに父親が7年前に地下室で首吊り自殺をして以来、母親のボニーは肥り続け、今は250キロの体で身動きもままならない。
ギルバートは、姉と妹とともに、彼らの面倒を見なければならなかった。

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ギルバートの勤める食料品店は、近くの大型店に客を奪われている。それは仕方ないとして、彼はちゃっかり配達先の主婦ベディ(メアリー・スティーンバーゲン) と不倫をしている。
そんな時、旅の途中でキャンピングトレーラーが故障して、町の沿道にしばらく留まることになった少女ベッキー(ジュリエット・ルイス)とギルバートは親密になる。

その後、アーニーの18歳の誕生日が済むと、安堵したせいか母親が急死する。
彼女を家の外に運び出すにはクレーン車が必要だ。「母を笑い者にさせたくない」と、子供たちは大胆にも家ごと母親を火葬してしまうのだった。
放火罪、死体損壊罪はどうなるんだ?

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一年後、再び町にやってきたベッキーのトレーラーに、ギルバートとアーニーは乗り込みどこかへ行こうとする。
姉や妹も自分たちの人生を歩きだす。

母親がなくなって、祖父が建てた家を燃やしたら、重しがなくなって残った家族の未来が開けたという話。捉えようによっては、残酷でもある。→人気ブログランキング

2012年7月21日 (土)

パフューム  ある人殺しの物語

舞台は18世紀のパリ。
「パリの悪臭は群を抜いていた」のナレーションで映し出されるパリは汚く不潔で、行き交う人々は薄汚れていて、画面から悪臭が漂ってきそうである。
魚市場の屋台で魚をさばいている女が、主人公のグルヌイユ(ベン・ウィーショー)を産み落とす。赤ん坊は放置され死ぬ運命にあったが、持って生まれた強靭な生命力で生き延びる。
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原題:Perfume: The Story of a Murderer
監督:トム・ティクヴァ
脚本:トム・ティクヴァ/アンドリュー・バーキン/ベルント・アイヒンガー
原作:パトリック・ジュースキント『香水 ある人殺しの物語』
製作 ベルント・アイヒンガー
音楽:トム・ティクヴァ/ジョニー・クリメック/ラインホルト・ハイル
製作国:ドイツ/フランス/スペイン  2006年  147分

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グルヌイユには、花の匂いからネズミの死骸の臭いまで、どんな臭いにも興味をもち嗅ぎ分ける能力が備わっていた。
ある日、彼は町で見かけた若い娘から放たれる匂いに心を奪われ、ふとしたきっかけでその娘を殺してしまう。

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一方、パリのジャンジュ橋で香水店を営む香水調合師(ダスティ・ホフマン)は嗅覚が鈍り落ち目になっている。そんな折、天才的な嗅覚をもつグルヌイユにであい助手として雇うことにする。
この店で、グルヌイユは香水調合師としてのずば抜けた才能を開花させていくのだった。
しかし若い女性から溢れる香りに魅せられたグルヌイユは、香気を抽出する目的だけで猟奇殺人を繰り返すようになっていく。

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彼は富豪の娘ローラ(レイチェル・ハード=ウッド)に憧れ、つけ狙うようになり、ついに彼は目的を果たす。

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彼が若い女性から抽出し調合した甘美な香水に人々は陶酔するが、やがて連続猟奇殺人犯として捕らえられてしまう。公開の場で処刑が行われるとき、一転して群衆は残忍になるのだった。

この類まれな嗅覚の持ち主には体臭がないという奇妙な設定は、彼には究極の香水を作ること以外に、何ら欲望がなかったということだろう。
本作は匂いという映像や音声で伝わらない感覚を表現することに腐心している。悪臭は見事に表現されているが、芳香は伝わってこない。悪臭の記憶は数々あるが、何が芳香かと問い質してみると大して思いつかないからかもしれない。
原作は、パトリック・ジュースキントの『香水 ある人殺しの物語』(文春文庫)、世界で1500万部売れた大ベストセラーとのこと。→人気ブログランキング

2012年7月20日 (金)

誘う女

1990年にニューハンプシャー州で、実際に起きた事件を題材にしたジョイス・メイナードの小説『誘惑』の映画化。事件は当時22歳のパメラ・スマートが、15歳の少年を誘惑して彼女の夫を殺させたというもの。裁判の結果、パメラは終身刑となり、現在も服役中だという。

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原題:To Die For
監督:ガス・ヴァン・サント
脚本:バック・ヘンリー
製作国:アメリカ合衆国   1995年  106分

テレビに出て有名になることが生き甲斐のスーザン(ニコール・キッドマン)は、父親の経営するイタリア料理店で働くアホ息子のラリー(マット・ディロン)と結婚する。ラリーの姉ジャネット( イリーナ・ダグラス)は、上昇志向が強いスーザンとの結婚に大反対だった。

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やがてスーザンは、ケーブルテレビの天気キャスターの仕事に就く。
天気キャスターで飽き足らない彼女は、高校生のドキュメンタリー番組の作成を提案し、学校に出かけ取材にするようになる。
ここで、落ちこぼれ高校生のジミー(ホアキン・フェニックス)、ラッセル、リディアと親しくなる。

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夫から、子供を作りレストランを一緒に経営しようと将来の生活設計を提案されたスーザンは、ケーブルテレビでの活躍をバネに、ニューヨークに進出しようと目論んでいる矢先、そんな陳腐な生活にまったく興味がない。彼女は夫の存在が疎ましくなってくる。彼女はジミーを文字通りの色仕掛けで翻弄し、夫の殺害を目論む。
彼女は、ジミーとラッセルを言葉巧みに騙して、強盗と見せかけて夫の殺害を実行させたのだ。

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嘆き悲しむ悲劇のヒロインを演じる彼女は、報道陣のカメラの砲列の前で笑みが浮かべるのだった。
裁判が始まり事件の真相が明らかになって行くなか、スーザンは無罪を主張し釈放されるが、イタリア系の義父は裏社会にも通じていて、殺し屋が動き出す。

ニコール・キッドマンは、本作でセクシーで浅はかな悪女を演じ、ゴールデングローブ主演女優賞を獲得した。彼女が、演技派と認められるようになるのはこの作品あたりからだという。
そのあとの、『ある貴婦人の肖像』(96年)『めぐりあう時間たち』(02年)『記憶の棘』(04年)『ラビットホール』(10年)などでは訳ありの演技がなかなかのものだ。『インベージョン』(07年)でのタフなインテリ役も捨てがたいし、『スペップフォード・ワイフ』(04年)ではコミカルな役も難なくこなしている。しかし、なんと言っても『バースデイガール』(02年)や本作のような愛すべき悪女役が大いに魅力的だ。→人気ブログランキング

【ニーコール・キッドマン出演作品】(サイト内リンク)
ペーパーボーイ 真夏の引力』The Paperboy  2012
『ウソツキは結婚のはじまり』Just Go with It  2011
『ブレイクアウト』Trespass  2011
ラビット・ホール』Rabbit Hole 2010
『NINE』Nine  2009
『オーストラリア』Australia 2008
『ライラの冒険/黄金の羅針盤』The Golden Compass  2007
マーゴット・ウェディング』Margot at the Wedding  2007
インベージョン』The Invasion 2007
『毛皮のエロス/ダイアン・アーバス 幻想のポートレイト』Fur: An Imaginary Portrait of Diane Arbus 2006
奥さまは魔女』Bewitched 2005
ザ・インタープリター』The Interpreter 2005
ステップフォード・ワイフ』The Stepford Wives 2004
記憶の棘』Birth 2004
ドッグヴィル』Dogville 2003
コールド・マウンテン』Cold Mountain 2003
白いカラス』The Human Stain 2003
バースデイ・ガール』Birthday Girl 2002
めぐりあう時間たち』The Hours 2002
アザーズ』 Los Otros 2001
『ムーラン・ルージュ』Moulin Rouge!  2001
アイズ・ワイド・シャット』Eyes Wide Shut 1999
『プラクティカル・マジック』Practical Magic 1998
『ピースメーカー』The Peacemaker 1997
『妻の恋人、夫の愛人』The Leading Man 1996
ある貴婦人の肖像』The Portrait of a Lady 1996
誘う女』To Die For 1995
『バットマン・フォーエヴァー』Batman Forever 1995
『冷たい月を抱く女』Malice 1993
『マイ・ライフ』My Life 1993
遥かなる大地へ』Far and Away 1992
『ビリー・バスゲイト』Billy Bathgate 1991

2012年7月18日 (水)

セブン

『羊たちの沈黙』(1991年)のハンニバル・レクター博士以来、猟奇シリアル殺人犯は、サイキックで超人的肉体と頭脳を持ち合わせていることがルチーンとなっている。なにしろ、90年代はサイコスリラーが全盛の時代だった。本作でシリアルキラーを演じたケヴィン・スペイシーも、ご多分に漏れず強靭でねちっこい。
キリスト教の七つの大罪に基づく連続殺人事件描いたサイコスリラー。
Image_20210120082601セブン
原題:Se7en
監督:デヴィッド・フィンチャー
脚本:アンドリュー・ケヴィン・ウォーカー
音楽:ハワード・ショア
主題歌:「ハーツ・フィルシー・レッスン」 デヴィッド・ボウイ
製作国:アメリカ合衆国  1995年 127分

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殺人事件が発生し、サマセット(モーガン・フリーマン)と新人刑事ミルズ(ブラッド・ピット)が、雨が降りしきるなか現場に急行した。
被害者は肥満の大男で、現場には犯人が書いた「Gluttony=大食」という文字が残されていた。次に凄腕の弁護士が殺され、「Greed=強欲」の血文字が残されていて、その指紋からベッドに縛りつけられ廃人同然となった前科者が発見される。そこには、「Sloth=怠惰」と書かれた紙が残されていた。

サマセットは、犯人がキリスト教の七つの大罪に基づいて殺人を続けていることに気づき、七つの大罪に関する図書館の貸出記録から、容疑者を割り出そうとする。
やがて、第4の殺人「Lust=肉欲」として娼婦が殺され、第5の殺人「Pride=高慢」として顔を切り裂かれた美人モデルが自ら命を絶った。

Seven2

そんな時、意外にも犯人と名乗るジョン・ドゥが警察に自首して来た。
ジョンは自分は選ばれた人間で、誰もなし遂げなかった偉大なことを行ったと言う。レクター博士も、確かそんなことを言っていた。

Seven3

あとのふたつ、嫉妬=Evnyと憤怒=Wrathはどうなるのか。
緻密に構成された一級品のサイコスリラーだ。

モーガン・フリーマンに負けず劣らずのケヴィン・スペイシーのアクの強い演技がいい。
新人刑事ミルズを演じたブラッド・ピットは、本作でスターの地位を確立したという。→人気ブログランキング

2012年7月16日 (月)

ハイ・クライムズ

辣腕女性弁護士のクレア(アシュレイ・ジャッド)の家に、泥棒が入る。
事件で採取された指紋から、夫トム(ジム・カヴィーゼル)の本名がロナルド・チャップマンであることがばれる。
海兵隊の特殊工作員だったトムは、1988年にエル・サルバドルで一般市民9人と仲間2人をを殺害し12年間逃亡をした容疑で、FBIに逮捕されてしまう。
Photo_20210225084001ハイ・クライムズ
原題:High Crimes
監督:カール・フランクリン
脚本:ユーリー・ゼルツァー/グレイス・ケイリー・ビックレイ
原作:ジョセフ・ファインダー
音楽:グレーム・レヴェル
製作国:アメリカ合衆国  2002年  115分

クレアは、夫の無実を信じ軍事法廷で夫を弁護することを決意するが、姓名を変える人物はまともじゃないと思わなかったのだろうか。
軍事法廷は一般の裁判とやり方が違う。
そこで彼女は、かつて上司の妻に手を出して軍を追われた、いわくつきのアル中弁護士チャーリー(モーガン・フリーマン)に援助を依頼する。ぴったりの役柄だ。

事の真相は、1988年エル・サルバドルでの作戦中、アメリカ人旅行者をアメリカ軍が射殺してしまった。軍はその責任をゲリラになすりつけようと、小さな村をおそって犯人をでっち上げたのだった。

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裁判が始まると、クレアとチャーリーは何度も危険な目に遭う。
軍から禁固5年の司法取引を持ちかけられ、旗色の悪いクレアとチャーリーはトムに妥協するように説得するが、トムは拒否する。
ところが、事件の真相が明らかになりかけたところで、裁判は突然に中止となり、トムは釈放される。
軍のやらせが明るみに出てスキャンダルとなることを、軍の上層部が恐れたのだった。
そして、やっぱりそうかという、どんでん返しが待っていた。

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タフで可憐なアシュレイ・ジャッドと、落ち着き払ったモーガン・フリーマンの演技がいい。ふたりの息の合ったコンビは、『コレクター(Kiss the Girls)』(1997年)でも見ることができる。→人気ブログランキング

2012年7月15日 (日)

ステップフォード・ワイフ

諷刺の利いた作品。過激なテレビ番組を作ったことで、辣腕女性プロデューサーのジョアンナ(ニコール・キッドマン)はテレビ局を解雇される。失意の妻を転地療養させようと、夫ウォルター(マシュー・ブロデリック)はコネティカット州のステップフォード(架空の地)に引っ越すことを決める。
Photo_20201124084901ステップフォード・ワイフ
The Stepford Wivwes

監督:フランク・オズ
脚本:ポール・ラドニック
音楽:デヴィット・アーノルド
製作:アメリカ合衆国 2004年 93分

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ステップフォードは町が清潔で静か、まるでゲートタウンのように安全そうである。ステップフォードの妻たちは、そろいもそろって美人で見事なプロポーションをフェミニンなカラーのワンピースに包み、夫に従順である。あまりにも妻たちが画一的であることに、ジョアンナは違和感を抱く。
男たちは「ステップフォード男性協会」に集まり、なにかを企んでいるらしい。

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ある日の会合で体調が悪くなった女性が、同じことを口走りくるくる回転しながら倒れる。
この女性は故障したロボットだった。
ジョアンナが、ネットで妻たちの過去を調べると、バリバリのキャリアウーマンとしての過去を持つ女性ばかりであった。
ステップフォードの男たちにとっての理想の妻は、会社で有能な仕事をする女性ではなく、いつもきれいに着飾り、オナラはしない、従順で家庭を守る良妻賢母である。
男たちの目的は、フェミニズムが大手を振っている風潮に抗い、ステップフォードに古き良き男たちの時代を蘇らせることである。

そしてついにジョアンナにも魔の手が伸び、金髪にさせられてしまう。

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ステップフォードの実力者と思われたマイク(クリストファー・ウォーケン)は実はロボットで、その妻クレア(グレン・クローズ)こそがステップフォードの創始者だった。クレアは脳外科医にして遺伝子工学の世界的な権威、やがては男たちも改造するつもりだった。
という、教訓に満ちた含蓄のあるSFコメディー。
原作は、『ステップフォードの妻たち』アイラ・レヴィン(ハヤカワ文庫)。→人気ブログランキング

2012年7月14日 (土)

シモーヌ

女優(ウィノナ・ライダー)たちのわがままに嫌気がさしていた落ち目の映画監督タランスキー(アル・パチーノ)は、バーチャル女優作成ソフトを手に入れ、このソフトで作った美貌のシモーヌ(レイチェル・ロバーツ)を主人公にした映画を撮影する。
Image_20210103124401シモーヌ
原題:S1m0ne
監督:アンドリュー・ニコル
脚本:アンドリュー・ニコル
音楽:カーター・バーウェル
製作国:アメリカ合衆国 2002年 117分

1

これが大当たりして、映画はアカデミー賞を総なめし、シモーヌは世界的な女優になる。
さらにタランスキーはホログラム使ったコンサートを成功させ、シモーヌは世界的な歌手にもなってしまう。よくぞばれなかったもんだ。

2

あまりの人気沸騰ぶりに、このままでは収集がつかなくなると怖気づいたタランスキーは、シモーヌに失態を演じさせ人気を落とそうとするが、世間は失態すらも賛辞するようになっていた。

直接、人前に現れないシモーヌに疑惑を抱き、追跡する雑誌記者に秘密がばれそうになり、タランスキーはシモーヌをウイルスソフトで消してしまう。
しかし、彼は遺体なき殺人事件の犯人として逮捕されてしまうのだ。
ここで、タランスキーの娘(エヴァン・レイチェル・ウッド)が、機転をきかせてシモーヌを蘇らせ、彼は罪をまぬがれる。
離婚した妻(キャサリン・キーナー)がタランスキーのもとに戻ってきて、親娘3人でシモーヌに女優を続けさせることにするというハッピーエンド。

シモーヌがそのまま消滅せずに、復帰して人気女優を続ける結末がいい。
これはひとえに利発な娘のお手柄というより、監督で脚本を書いたアンドリュー・ニコルの思惑だ。
A・ニコル監督は、妻であるスーパーモデルのR・ロバーツをシモーヌ役に抜擢した。シモーヌはヴァーチャル女優だから、大根でも問題なし。

「シモーヌ」は、バーチャル女優作成ソフトの「Simulation One」から名付けられた。タイトルは「S1m0ne」と書かれていて、「1」と「0」が使われている。コンピューターの2進法を表している。
大傑作だ。→人気ブログランキング

2012年7月13日 (金)

コレクター

ノースカロライラの学園都市ダーラムで、姪のナオミ(ジーナ・ラヴェラ)が誘拐されたことを知らされ、クロス刑事(モーガン・フリーマン)はワシントンDCに向かう。

これまでに才色兼備の女子大生8人が誘拐され、すでに2名は惨殺死体で発見された。
クロスは地元警察のラスキン刑事(ケーリー・エルウィス)らと共に捜査に当たる。
被害者たちの資料につぶさに目を通したクロスは、犯人が女性を収集し監禁する猟奇的なコレクターであると断言する。なにしろクロスは犯罪心理学の博士でもあるのだ。

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やがて、犯人に捕らわれていた女性医師のケイト(アシュレイ・ジャッド)が、犯人の隠れ家から奇跡的に脱出する。
ケイトは勇敢にも傷だらけの姿で記者会見を開いた。
これは、犯人に対する挑発であり、絶対犯人を許さないという意思表示でもあるわけだ。
クロスはケイトの回復を待って、彼女とともに犯人を追う。

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猟奇誘拐殺人犯はカサノバを語り、警察に脅迫状を送り付けてきた。
カサノバを気取りオダリスク(ハーレム)を作ろうと血迷う犯人に捜査陣は憤りを感じ、ケイトは「歴史とはずい分違うカサノバね。カサノバは女性を殺したりはしない」と皮肉を言い放つ。
カリフォルニアでも、若い女性の連続誘拐事件が発生した。ふたつの事件の犯人たちはメールで連絡を取り、競い合っていたのだ。
やがて、ケイトの記憶を頼りにクロスは犯人の隠れ家を探し出し、ついに女性たちを助け出す。

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原題:Kiss the Girls
監督:ゲイリー・フレダー
脚本:デヴィッド・クラス
原作:ジェイムズ・パタースン
音楽:マーク・アイシャム
製作国:アメリカ合衆国  1997年 116分 

一方、ケイトの自宅にはラスキン刑事が押しかけていく。
その頃、クロスは脅迫状に書かれたカサノバのサインから、真犯人がラスキン刑事であることを突き止め、急遽ケイトの家に向かうのだった。

本作の原題は『Kiss the Girls』、1965年の『コレクター(The Collector)』とは全く関係がない。
犯罪心理学によって局面を次々と打開するモーガン・フリーマンと、可憐で知的しかも意志の強いアシュレイ・ジャレットとのコンビが小気味いい。
このコンビは、『ハイ・クライムズ(High Crimes)』(2002年)でもお目にかかれる。→人気ブログランキング

2012年7月12日 (木)

J・エドガー

初代FBI長官、ジョン・エドガー・フーヴァーの半生を描いたもの。
JJ・エドガー
原題:J. Edgar
監督:リント・イーストウッド
脚本:ダスティン・ランス・ブラック
音楽:クリント・イーストウッド
製作国:アメリカ合衆国 2011年 137分

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1919年のソビエト建国以来、アメリカ国内ではや共産主義者の運動や労働運動の過激なテロが活発化していた。
そうした過激な運動を鎮静させる目的で、1924年、フーヴァー(レオナルド・ディカプリオ)はFBIの前身である捜査局の長官に任命され、見事にその任務を果たした。
その後、フーヴァーは共産主義からアメリカを救ったという過剰なまでの自負を持ち、共産主義者に対しては厳しく対処した。
フーヴァーは犯罪者の指紋を皮切りに、犯罪者の細かな情報をファイリングした。
さらに、今日では当たり前とされる科学捜査の基礎を確立した。

しかし、多くの功績を残した一方で、強引な手腕が批判を浴び、常に疑惑やスキャンダラスな噂がつきまとった。
歴代の大統領のスキャンダルを手中にし、それをちらつかせることで大統領たちに恐れを抱かせ、自らの権力を拡大していったという。
キング牧師がノーベル賞を受賞する直前に、不倫の情報を流しノーベル賞受賞を辞退させようとしている。
さらに、本作中にクライド・トルソン(アーミー・ハーマー)がフーヴァーに「ケネディが消えてくれればいいのに」と語りかける場面があるが、ケネディ大統領の暗殺の黒幕のひとりにフーヴァーが挙げられていることは、事実である。

本作で、イーストウッドはフーヴァーの性的指向をいくつかのシーンで描いている。
FBI創設の頃に、フーヴァーは司法省に入所したばかりのヘレン・ギャンディー(ナオミ・ワッツ)にプロポーズするが断られる。
しかし、フーヴァーは大して落胆しない。
むしろ、ギャンディーから秘書として仕えることの承諾を得たことが、大収穫であったかのように描いている。

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一方、家庭では母親(ジュディ・デンチ)のフーヴァーに対する過剰なまでの愛情が描かれている。フーヴァーの誕生日に母親が贈った指輪は、デコラティブなゲイが好みそうなものだった。
母親とダンスを踊るシーンや母親が亡くなったときに、母親のドレスを着てネックレスをつけて死を悼むシーンは、マザコンで服装倒錯者であったと言われるフーヴァーがうまく表現されている。 ジュディ・デンチは、『ずっとあなたが好きだった』の野際陽子のように見えた。

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最後まで、FBI長官としての地位を守り通せたのは、フーヴァーの性的指向、つまりトルソンとゲイの関係があったからだろう。
もしトルソンとの間が破綻すれば、ゲイであることが明るみに出かねない、それはふたりの失脚につながる。ふたりが秘密を共有し協力し合うことで、自らの地位を守り続けたのだろう。→人気ブログランキング

2012年7月11日 (水)

8月の鯨

アメリカの北の方、メイン州の大西洋に浮かぶ小島の別荘で暮らす老姉妹(どちらもよぼよぼのお婆ちゃんだ)の2日間を描いた作品。
ふたりは、娘ころから夏の間はこの別荘で過ごし、入江に現れるクジラを見ることを楽しみにしていた。
ふたりとも夫に先立たれた未亡人。

Photo_20201210075401八月の鯨
原題:The Whales of August
監督:リンゼイ・アンダースン
脚本:デイヴィッド・ベリー
音楽:アラン・プライス
製作国:アメリカ 1987年

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姉のリビー(ベティ・デイビス)は頑固で気難しく、妹のセーラ(リリアン・ギッシュ)は親切で優しくて働き者。
リビーは、物事に対し否定的でときどき死を口にする。

幼馴染の陽気なティーシャ(アン・サザーン)のすすめで、この別荘を売るかどうかでひと騒動あり。
自称ロシアの貴族の末裔マラノフ(ヴィンセント・プライス)が、ビーチで釣った魚を届けてくれて、セーラは魚をおろしてもらう代わりに、マラノフをディナーに招待する。
海を見渡せる大きな窓を取り付けることで、ひと揉めする。
取り付けを渋っていたリビーの気が変わり、労働祭までに取り付けるようジョシア(ハリー・ケリー・Jr)に委託する。
楽しみができた。

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穏やかな夏の海が何回も映し出され、のんびりした気分になる。

1987年の公開当時、リリアン・ギッシュが93歳、ベティ・デイビスが79歳で、実際の年齢と役の姉妹の関係が逆になっている。
アン・サザーンは78歳、ヴィンセント・プライスは76歳、ハリー・ケリー・Jrは66歳というベテランぞろい。
よく知らないけれど、かつて活躍した役者ばかりとのこと。それで作品に深みが出ている。
夏の終わりの頃に観るといい作品。→人気ブログランキング

2012年7月10日 (火)

アイズ・ワイド・シャット

妻に浮気心を見透かされた夫が、「私だって浮気願望はあるわよ」との妻の言葉に嫉妬し、開き直って秘密のパーティに忍び込むと、身の危険を感じる思いをして、やっぱり仲良くしようという、夫婦のたわいのない浮気をめぐる攻防戦の顛末。159分は長過ぎる。
本作撮影時、トム・クルーズとニコール・キッドマンは夫婦だった。
原作は、シュニッツラーの『夢奇譚』。
スタンリー・キューブリック監督の遺作となった、何かと話題の多い作品である。
Photo_20201205084301アイズ ワイド シャット
原題:Eyes Wide Shut
監督:スタンリー・キューブリック
脚本:スタンリー・キューブリック/フレデリック・ラファエル
原作:アルトゥル・シュニッツラー 『夢奇譚』
音楽:ジョスリン・プーク
製作国:アメリカ合衆国  イギリス 1999年

物語はニューヨークに住む開業医ビルとアリスの夫婦が、クリスマス・パーティーに出かけようと外出の支度をするところから始まる。

のっけから、ニコール・キッドマンが裸の後ろ姿を披露する。
まるで走り高跳びの選手のようだ。
そこにトム・クルーズが現れて、「あれ、画面が縦に潰れているのかな」と思った。

1

そのあとのストーリーを、かいつまんで書くと、
ビルは、アリスが告白する不倫願望に嫉妬し妄想を抱く。
パーティから帰ってきてふたりが不倫について延々と言い合いをするシーンは見どころだ。
下着姿のキッドマンの演技に見入ってしまう。長すぎてしつこいけれど。。

2

そんなことなら俺は不倫を実行するぞとばかり、ビルは仮面大乱交パーティーに潜入する。
しかし、あえなく素性がばれ仮面を剥がされてしまう。富豪たちの極秘のパーティーなのだ。ビルのくるようなところではない。
そのパーティーにアリスが紛れ込んでいるのではないかと、それらしい裸を探したが、予想は外れた。
娼婦のひとりがビルの身代わりになり、彼はなんとか無罪放免になる。翌朝、その娼婦が死体で発見されたことを新聞で知ったビルは真相を探り出すが、仮面パーティーのことを忘れろと脅される。

帰宅したビルは、ベッドで眠るアリスの横にパーティーでなくした仮面がおいてあることに、命が危ないと思ったのか妻にバレたのと思ったのか、泣きながら彼はすべてをアリスに話す。

キッドマンが放つあまりのオーラに、トム・クルーズがコバンザメのように見えた。→人気ブログランキング

2012年7月 8日 (日)

クイズ・ショウ

本作品は、1950年代後半、爆発的にテレビが普及したアメリカで、実際に起こったスキャンダルをもとに作られている。

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原題:Quiz Show
監督:ロバート・レッドフォード
脚本:ポール・アタナシオ
原作:リチャード・N・グッドウィン
音楽:マーク・アイシャム
製作国:アメリカ合衆国 1994年

バービー・ステンペル(ジョン・タトゥーロ)は、圧倒的な正解率で毎週勝ち続ける、大人気クイズ番組「21(トウェンティワン)」のヒーローであった。
ところが、視聴率が横這いになり、スポンサーからクレームがつく。
冴えない風体のユダヤ人のステンペルが、高学歴の挑戦者を打ち負かすことで人気があったが、その構図は飽きられてきた。(ステンペルの右上の犬歯が黒味を帯びていて、ついそこに目がいってしまう。ジョン・タトォーロは、こういうどこか狂気の要素を含んだ人物役がぴったりだとくる→【2012.06.09】『シークレット・ウィンドー』DVD
そこで、容姿端麗で申し分ない家柄の、ハーバード大学の若き教授チャールズ・ヴァン・ドーレン(レイフ・ファインズ)を、次のスターに仕立てようと、プロデューサーのダン(デヴィッド・ペイマー)とアルは目論む。
ふたりはクイズの問題と解答を教えるとドーレンに持ちかけるが、フェアに戦いたいと彼は断る。

1

チャンピョンの劇的な交代劇を演出しようと、ダンはステンペルにわざと誤答するように迫ると、答えを知らされて戦ってきたステンペルは、苦悩しながらダンの筋書きに従う。
ドーレンへの問題は面接のときに出題されたものだった。
ダンの演出通りにチャンピオンが交代した。
初めは控えめだったドーレンだが、段々と大胆になり正解をあらかじめ教えてもらうようになってしまう。

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立法管理委員会の捜査官、「ハーバード大の法科で1番だった」が口癖のディック・グッドウィン(ロブ・モロー)は、テレビ局の不正を暴こうと調査に乗り出す。そして八百長を証明する証人と証拠が見つけ出す。

大陪審で、ステンペルは己れの欲望を丸出しにした証言をするが、ドーレンはいたってクール。
ダンは次のように答えた。
「スポンサーも局も満足、回答者の懐に思わぬ大金、大衆も喜んだ、誰か損を?
この分野で政府の規制は必要ない。クイズ番組は公益事業じゃない、娯楽です。我々は犯罪者はない、ショービジネスの人間です」
ヤラセは暴かれたものの、犯罪は成立しなかった。ステンペルは世間の笑い者になり、ドーレンは大学を去る。

テレビにヤラセはつきもの。品行方正なモラルを求めるのは、無理というもの。
作る側の出演者に対する意向が、初めはこうやったらどうだろうくらいに控えめなものが、こうやった方がいいになり、しまいには「台本の通りにいきましょう」と言い方は穏やかなものの、強制する。

バービー・ステンペルもチャールズ・ヴァン・ドーレンも実在の人物。
のちに、ドーレンは世界的名著の『本を読む本』(M.J.アドラー C.V.ドーレン/外山滋古 槇未知子訳 講談社学術文庫 1997年)の共同執筆者となる。

ボビー・ダーリンが歌うジャズのスタンダードナンバー『マック・ザ・ナイフ』で、この映画は始まる。クレジットが流れるエンディングでも、変調された『マック・ザ・ナイフ』が流れる、ノリのいい曲から時代の香りが漂ってくる。→人気ブログランキング
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沈黙の時代に書くということ ポスト9・11を生きる作家の選択 サラ・パレツキー

本書は、女性私立探偵Ⅴ・Ⅰ・ウォーショスキー・シリーズ(ヴィック・シリーズ)の著者であるサラ・パレツキーの自伝的エッセイ集である。本書のテーマは三つ、著者の生い立ち、Ⅴ・Ⅰ・ウォーショスキーが誕生するまでの過程、著者の政治との関わりである。

ユダヤ系アメリカ人であることが、著者の主張や行動に大きな影響を及ぼしていることは明らかである。
ヴァージニア・ウルフ以来、<手に負えない女たち>は不当な性差別に抵抗してきた。著者もその流れの中にいる。いまだに、米国における女流ミステリ作家の地位は低いという。
Photo_20211112085301沈黙の時代に書くということ―ポスト9・11を生きる作家の選択
サラ・パレツキー 山本やよい訳
早川書房
2010年

著者の次の文章に、米国の変容に対しもはや黙っていられないという強い意志が込められている。
<秘密主義の侵略好きな政府になにをされるかわからないという恐怖から国民がささやき声で話すような国へと、わが愛する祖国が変貌しつつあるときに、何もせずに傍観などしていられない。p212>

9・11のあとの熱に浮かされたような数週間に、大した議論も交わされず、米国愛国者法が可決された。議会は浮き足立っていた。
愛国者法は、テロを未然に防ぐという大義名分のもとに、次のような強権的な内容をもつ法律である。
<愛国者法のもとでは、警察は令状を申請する理由を説明する必要はない。州検事にたいして、テロと関連があるかもしれない犯罪の捜査線上にわたしの名前が浮かんできた、と主張するだけでよく、それ以上はひと言の説明もいらない。令状をとるために、“相当な理由”を述べる必要もない。どのような証拠であれ、提示する必要もない。わたしを連行し、弁護士に連絡する許可も与えず、私自身に弁明を強要することができる。送検しないまま無制限拘留することもできる。家族に居場所を連絡するのを妨げることもできる。p190>
この米国愛国者法に基づく不当な逮捕者があとを絶たないという。

自由の国であったアメリカは、まるで全体主義国家になってしまったようだ。
本書は、常に敗者の側に立って行動しようとする著者の力強い意志が貫かれている。行間からは著者の怒りがひしひしと伝わってくる。→人気ブログランキング
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2012年7月 7日 (土)

『記憶の棘』

ジョセフ(ダニー・ヒューストン)との結婚を控えたアナ(ニコール・キッドマン)は、10年前に最愛の夫ショーンを心筋梗塞で亡くした。

アナの母親(ローレン・バコール)の誕生日に、ショーンと名乗る10歳の少年(キャメロン・ブラント)が現れて、アナに「君は僕の妻だ、結婚をしないでほしい」と唐突に言う。
「なんだこのガキ」という態度は大人たちだから誰も出さず、アナは少年を部屋から追い出す。

Ef9e6e87a26145afb2b393fd6ff4189b記憶の棘
原題:Birth
監督:ジョナサン・グレイザー
脚本:ジョナサン・グレイザー/ジャン=クロード・カリエール/ミロ・アディカ
製作:アメリカ合衆国  2004年

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少年はアナしか知り得ないショーンとのエピソードを語り、やがて少年が言うようにショーンの生まれ変わりかもしれないとアナの胸中は揺れ動く。
そして、少年と1日一緒に暮らしたりデートをしたりすることで、アナの思いは確信に変わっていく。
アナは少年が21歳になったら結婚しようとまで言い出すのだった。
それはいいとして、風呂に一緒に入るのはまずいんじゃないの?

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アナの母親は少年に「出て行きなさい」と言うし、出産を控えている姉も迷惑だと言う。もちろん婚約者のジョセフは面白くないことこの上ない。
少年を信じようとするのはアナだけである。

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そんなアナの変わりように、小肥りでいかにも世俗的なジョセフは、ある日アナの家族の前で少年に大人げのない暴力をふるってしまい、彼女との間に溝ができてしまう。

ショーンの親友だったクリフォード(ピーター・ストーメア)は、少年はショーンではないとアナに断言する。
さらに、アナの友人のクララ(アン・ヘッシュ)は少年に、「あなたはショーンでない」と確信をもって言う。
クララから突きつけられたショーンについての事実を知らなかったことで、少年はあっけなくアナから去っていく。
少年はショーンとアナとの間で起こったことについては知っているが、ショーン付き合ったアナ以外の人間とのエピソードについては全く知らない。これで少年の言う生まれ変わりは眉唾だとわかる。

DVDの冒頭に戻ると、ショーンの講演からこの物語は始まっている。
「それでは率直に答えます。もし妻が亡くなり、その翌日窓辺に小鳥が飛んできて、僕を見つめてこう言ったら?〈ショーン、アナよ、戻ってきたの。〉僕はどうするか?きっとその鳥を信じ、一緒に暮らすでしょう。でも科学者ですから、生まれ変わりは信じません。以上です。帰る前にジョギングしないと」
そして、ショーンは冬の道を走り始める。

クラシック演奏会の客席に座るアナが、少年がショーンの生まれ変わりだと確信するに至る心の変化を、長々と映る顔だけで表現している。キッドマンに並外れた演技能力があるからこそのシーンだと思う。→人気ブログランキング
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2012年7月 6日 (金)

バースデイ・ガール

銀行員のジョン(ベン・チャップリン)は、ネットの出会い系サイト「ロシアより愛を込めて」でロシア人の花嫁ナディア(ニコール・キッドマン)を選んだ。
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原題:Birthday Girl
監督:ジェズ・バターワース
脚本:トム・バターワース
音楽:スティーヴン・ウォーベック
製作国:アメリカ 2002年

彼の前に現れたナディアは美人だが、嫌煙派と登録されていたのにタバコを吸い、英語が堪能なはずなのにまったく通じない。
空港から自宅に向かう車の中で、吐き気を催し路肩で吐いてしまう。

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ところが、ナディアは性的にはいたって熟達していて、ジョンは彼女にすっかり参ってしまう。
こうして、新婚生活にも似た幸福を味わうのも束の間、彼女の誕生日に、従兄と称するユーリ(マチュー・カソヴィッツ)と、その友人アレクセイ(ヴァンサン・カッセル 『ブラックスワン』のバレエ監督トマス役だった)がやってきて、そのまま住み着いてしまう。
野卑で乱暴な彼らはナディアを縛り上げ人質にしてジョンを脅し、勤め先の銀行からギターケース2つ分の大金を持ち出させるのだった。
実はナディアは2人とぐるで英語ペラペラ、アレクセイの女だった。
3人はヨーロッパ各地で同じ手口の悪事を働いてきた。

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しかし、ナディアはアレクセイの非情さに愛想をつかしていて、彼の子供を宿しているにもかかわらず、別れることを選択するのだった。

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警察から追われているジョンは、アレクセイのパスポートを使って、ナディアとモスクワ行きの飛行機に乗ろうとする。その時ナディアは、初めてソフィアという本名を名乗るのだった。
ジョンは緊縛が趣味、ナディアは彼の意に沿うように縛られる、そして4人それぞれが縛られてしまう。テーマは「縛る」?
いかにも金をかけずに作った感じがするが、そのチープさがかえって軽いストーリーにあっている。はすっ葉な役柄のキッドマンがいい。→人気ブログランキング

2012年7月 5日 (木)

『アメリカを売った男』

アメリカを売った男 [DVD]

アメリカを売った男 [DVD]

posted with amazlet at 12.07.05
原題:Breach
監督:ビリー・レイ
脚本:ビリー・レイ/アダム・メイザー/ウィリアム・ロッコ
原案:アダム・メイザー/ウィリアム・ロッコ
音楽:マイケル・ダナ
製作国:アメリカ合衆国  2007年

事件は、FBIのハンセン特別捜査官が2001年2月に逮捕されるまでの20年以上にわたり、FBIやCIAなどの重要な機密をロシア圏に漏らし続けていたのも。

FBIの訓練捜査官エリック・オニール(ライアン・フィリップ)は、上司のケイト・バロウズ(ローラ・リニー)に、新設される情報管理部でハンセン(クリス・クーパー)と共に仕事をするよう命じられる。

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オニールは、ハンセンがロシア圏にアメリカの国家機密を漏らしている証拠をつかめという司令を受ける。ハンセンの行動を逐一報告するよう言われたものの、怪しいところが見当たらない。
オニールは人を騙すことに後ろめたさを感じ苦悩する。

たった2ヵ月で、ハンセンの尻尾をつかむのは並大抵のことではない。
ハンセンの信仰心につけ込んで、なんとか親密になろうとする。そこでオニールは、カソリック教徒である妻を説き伏せて、ハンセン一家が通うプロテスタント教会の礼拝に行き、信頼を勝ち得ていく。
ついには、家族同士でディナーを共にするくらいまでに、ハンセンの家庭に入り込むことに成功するが、妻はそうした異常な日常に不満を漏らすようになる。

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ハンセンはオニールを認めるようになるが、長年に渡りスパイ行為をしてきたハンセンが、そう易易と馬脚を表すはずがない。
しかし、ハンセンがちょっと気を許したことで、オニールのしかけた罠に嵌るのだった。

渋い演技が光るクリス・クーパーは『アメリカン・ビューティ』(サム・メンデス監督、1999年度アカデミー賞作品賞)で、ゲイの元海兵隊大佐を演じていた。
それと、厳格な上司役がぴったりのローラ・リニーは、『ミスティック・リバー』(クリント・イーストウッド監督、2003年)で、ジミーの妻役だった。
原題の『Breach』は、違反、不履行、侵害という意味。邦題のほうがいい。

2012年7月 4日 (水)

サラの鍵

夫と娘とパリで暮らすアメリカ人女性記者ジュリア(クリスティン・スコット・トーマス)は、45歳で妊娠する。知らせを受けた夫の反応は、思いもよらない反対だった。
Photo_20201205082201サラの鍵
原題:Elle s'appelait Sarah/Sarah's Key
監督:ジル・パケ=ブランネール
脚本:ジル・パケ=ブランネール/セルジュ・ジョンクール
原作:タチアナ・ド・ロネ
音楽:マックス・リヒター
製作国:フランス 2010年

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そんななか、彼女は夫の祖父母から譲り受けて住んでいるアパートに、1942年のパリのユダヤ人迫害事件(ヴェルヴィヴ事件)で、ドイツの強制収容所に送られたユダヤ人家族が住んでいたことを知る。

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その一家の長女で10歳の少女サラ(メリュジーヌ・マヤンス)が、収容所から逃亡していた。一斉検挙の朝、サラはすぐに戻れると信じて、弟を納戸に隠して鍵をかけた。
サラはパリ郊外の老夫婦に家にかくまわれ、とりあえずの身の危険から解放される。やがて弟を隠したパリのアパートに行き、鍵で納屋を開け弟の消息を知るのだった。
その後、サラは老夫婦の養女となり、成人すると家を出てアメリカに渡ったのだった。

一方、ジュリアの夫は娘とのスカイプを使ったテレビ電話でやり取りする。
娘が見つめる画面に父親の後ろで下着姿の女性がウロウロしている。
妻が込み入った深刻な事件にのめり込んでいるというのに、夫はいたって能天気なのだ。

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一時は、堕胎手術を決意し入院したジュリアだったが、手術の寸前に知らされたサラの消息が、彼女を翻意させる。
ジュリアの調査は、サラの人生の結末を知るにいたるところまで進む。

「ヴェルヴィヴ事件」とは、1942年7月16日、ナチス占領下のパリで、フランス警察によりユダヤ人1万3000人が検挙されドイツの強制収容所に送られた事件。ヴェロドローム・ディヴェール(Velodrome d'Hiver)、略してヴェル・ディヴ (Vel d'Hiv) は、パリにあった冬季競輪場のこと。収容されたユダヤ人には、5日間食べ物も飲み水も与えられなかったという。この事件に対してフランス政府は1995年まで「ヴィシー政権はフランスではない」として責任を認めようとしていなかった。
しかし、ヴィシー時代の歴史を直視してこなかったことを反省する動きも出てきたという。→人気ブログランキング
(→『黄色い星の子供たち』 2010年)

2012年7月 3日 (火)

扉をたたく人

コネチカット州に住む初老の大学教授ウォルター(リチャード・ジェンキンス)は妻を亡くし、すべてにやる気をなくしていた。
Photo_20210303142501扉をたたく人
原題:The Visitor
監督:トム・マッカーシー
脚本:トム・マッカーシー
製作:メアリー・ジェーン・スカルスキー/マイケル・ロンドン
音楽:ヤン・A・P・カチュマレク
製作国:アメリカ合衆国 2008年

学会で出かけたニューヨークのアパートには、どういうわけか、シリアからきたジャンベ奏者のタルクと、セネガルからきたアクセサリー売りをしているゼイナブのカップルが住んでいて、仰天する。
悪徳不動産屋が、ふたりを騙してウォルターの別宅を貸したのだ。
行くあてのないふたりを見かねたウォルターは、仕方なく、3人の共同生活を提案する。

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タルクはウォルターにジャンベの叩き方を教え、ウォルターはジャンベの演奏に生きがいを見い出していく。いつも笑顔で屈託のない性格のタレクを、ウォルターは気に入ってしまう。
ある日、演奏を終えて地下鉄に乗ろうとしたウォルターのジャンベが改札口で引っかかってしまい、助けようと手を貸したタルクが無賃乗車を疑われて警察に捕まってしまう。

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タルクは不法滞在がばれてしまい拘留が長引くことになる。ウォルターはタルクのために弁護士を雇い、足繁く面接に通う。

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そこに、連絡がないことを心配したタルクの母親モーナ(ヒアム・アッバス)がミシガンからやってきて、ウォルターのアパートに滞在することになる。
行動を共にするようになったウォルターとモーナは、『オペラ座の怪人』をふたりで観劇するまで親密になっていくのだが。。
しかし、現実は甘くない、タルクに国外追放の判決が下される。

「9.11」後、まもなくの2001年10月26日、大した論議もされずに米国愛国者法が成立した。
警察がテロに関係していると疑えば、その理由を司法に説明することなく逮捕状を請求できるという強権的な内容の法律である。
本法施行後、行き過ぎた逮捕が続いているという。
当然のことながら、ことさら中東出身者の男性に対して厳しい状況になった。→人気ブログランキング

万年、脇役だったリチャード・ジェンキンスが初めて主役を演じ、アカデミー賞主演男優賞にノミネートされた。『シリアの花嫁』(04年)で、毅然とした生き方の女性を演じたヒアム・アッバスの演技も光る。

2012年7月 2日 (月)

虚栄のかがり火

飲んだくれ新聞記者のピーター・ファロ(ブルース・ウィリス)が、語る形でストーリーが進む。
世の中が浮かれていたバブル絶頂期、マッコイ(トム・ハンクス)は、1日に100万ドルを稼ぎ出すウォール街のエリートトレーダー。彼は自分がこの世の支配者であると思い上がっている。
Photo_20210125080201虚栄のかがり火
The Bonfire of the Vanities
原作:トム・ウルフ『虚栄の篝火』
監督:ブライアン・デ・パルマ
脚本:マイケル・クリストファー
音楽:デイヴ・グルーシン
アメリカ  1990年

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ある夜、不倫相手のマリア(メラニー・グリフィス)と車でブロンクスに迷い込み、黒人の少年を轢いてしまう。少年は病院に収容され昏睡状態になる。運転していたのはマリアだった。マッコイは警察に報告しようと促すが、マリアは意に介さない。
マリアの高齢の夫は彼女の浮気を公認しているから、マリアは不倫が生き甲斐のようなユルユルの女である。

黒人のべーコン牧師は、白人が黒人を轢いても警察は何もしないと批判し黒人たちの不満を煽ることに躍起となっている。
一方、NY市長選に立候補しようと目論む検事エイブ・ワイス(F・マーリー・エイブラハム)は、白人エリートが黒人少年の轢き逃げ事件で有罪になれば、黒人票を獲得できると踏んで強引に捜査を進める。
やがて車の持ち主であるマッコイが逮捕される。
マッコイは保釈されるものの、妻のジュディ(キム・キャトラル)から離婚を突きつけられ、会社からは解雇され、高級マンションから追い出される。天国から地獄に突き落とされたようなものだ。

ブロンクスの法廷は黒人の傍聴人で埋めつくされている。
傍聴人たちはマッコイが不利になれば歓喜の声を挙げ、有利に傾くとブーイングする。
問題は、黒人少年を轢いたとき誰が車を運転していたかだ。
マリアは猫なで声で、運転していたのはマッコイで、警察に連絡するように進言したのに無視されたと、嘘の証言するのだった。
そのとき、マッコイはニンマリと笑って、本来は証拠として認められない事故についてのふたりの会話の盗聴テープを法廷内に流した。
裁判官レオナルド・ホワイト(モーガン・フリーマン)は、盗聴テープを証拠と認め無罪判決を下す。

裁判の結果に騒然とする法廷を、レオナルドは木槌をガンガン叩いて「シャラップ」を連呼して鎮め、「やいやい、てめーら、いい加減にしろ」とは言わなかったが、大見得を切る。この映画の見所は、モーガン・フリーマンがしゃがれ声で傍聴人たちに語るこの場面だろう。すっかり、主役を食っちゃている。

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「君たちに正義とは何か教えよう。正義とは法である。法とは、人間の品格 "decency" の原則を定めようとするささやかな努力だ。それは取引でも、金儲けでも、人を騙すペテンでもない。品格、それはおばあちゃんから教わるものだ。君たちの心の一部だ。さあ、家に帰りたまえ。帰って品格ある人間になりなさい。節度ある生き方に立ち戻りなさい」とモーガンは言う。
そう言われると、遠い昔にばあさんから品格のようなものを教わったような気がする。

ピーターは本事件を書き上げピューリツアー賞を受賞する。
欲にまみれたバブル期に、強欲な気持ちになったことを反省しなさいという教訓に満ちた映画だ。そんなわけないか。→人気ブログランキング

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