J・エドガー
初代FBI長官、ジョン・エドガー・フーヴァーの半生を描いたもの。
J・エドガー 原題:J. Edgar 監督:リント・イーストウッド 脚本:ダスティン・ランス・ブラック 音楽:クリント・イーストウッド 製作国:アメリカ合衆国 2011年 137分 |
1919年のソビエト建国以来、アメリカ国内ではや共産主義者の運動や労働運動の過激なテロが活発化していた。
そうした過激な運動を鎮静させる目的で、1924年、フーヴァー(レオナルド・ディカプリオ)はFBIの前身である捜査局の長官に任命され、見事にその任務を果たした。
その後、フーヴァーは共産主義からアメリカを救ったという過剰なまでの自負を持ち、共産主義者に対しては厳しく対処した。
フーヴァーは犯罪者の指紋を皮切りに、犯罪者の細かな情報をファイリングした。
さらに、今日では当たり前とされる科学捜査の基礎を確立した。
しかし、多くの功績を残した一方で、強引な手腕が批判を浴び、常に疑惑やスキャンダラスな噂がつきまとった。
歴代の大統領のスキャンダルを手中にし、それをちらつかせることで大統領たちに恐れを抱かせ、自らの権力を拡大していったという。
キング牧師がノーベル賞を受賞する直前に、不倫の情報を流しノーベル賞受賞を辞退させようとしている。
さらに、本作中にクライド・トルソン(アーミー・ハーマー)がフーヴァーに「ケネディが消えてくれればいいのに」と語りかける場面があるが、ケネディ大統領の暗殺の黒幕のひとりにフーヴァーが挙げられていることは、事実である。
本作で、イーストウッドはフーヴァーの性的指向をいくつかのシーンで描いている。
FBI創設の頃に、フーヴァーは司法省に入所したばかりのヘレン・ギャンディー(ナオミ・ワッツ)にプロポーズするが断られる。
しかし、フーヴァーは大して落胆しない。
むしろ、ギャンディーから秘書として仕えることの承諾を得たことが、大収穫であったかのように描いている。
一方、家庭では母親(ジュディ・デンチ)のフーヴァーに対する過剰なまでの愛情が描かれている。フーヴァーの誕生日に母親が贈った指輪は、デコラティブなゲイが好みそうなものだった。
母親とダンスを踊るシーンや母親が亡くなったときに、母親のドレスを着てネックレスをつけて死を悼むシーンは、マザコンで服装倒錯者であったと言われるフーヴァーがうまく表現されている。 ジュディ・デンチは、『ずっとあなたが好きだった』の野際陽子のように見えた。
最後まで、FBI長官としての地位を守り通せたのは、フーヴァーの性的指向、つまりトルソンとゲイの関係があったからだろう。
もしトルソンとの間が破綻すれば、ゲイであることが明るみに出かねない、それはふたりの失脚につながる。ふたりが秘密を共有し協力し合うことで、自らの地位を守り続けたのだろう。→人気ブログランキング
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