『記憶の棘』
ジョセフ(ダニー・ヒューストン)との結婚を控えたアナ(ニコール・キッドマン)は、10年前に最愛の夫ショーンを心筋梗塞で亡くした。
アナの母親(ローレン・バコール)の誕生日に、ショーンと名乗る10歳の少年(キャメロン・ブラント)が現れて、アナに「君は僕の妻だ、結婚をしないでほしい」と唐突に言う。
「なんだこのガキ」という態度は大人たちだから誰も出さず、アナは少年を部屋から追い出す。
記憶の棘 原題:Birth 監督:ジョナサン・グレイザー 脚本:ジョナサン・グレイザー/ジャン=クロード・カリエール/ミロ・アディカ 製作:アメリカ合衆国 2004年 |
少年はアナしか知り得ないショーンとのエピソードを語り、やがて少年が言うようにショーンの生まれ変わりかもしれないとアナの胸中は揺れ動く。
そして、少年と1日一緒に暮らしたりデートをしたりすることで、アナの思いは確信に変わっていく。
アナは少年が21歳になったら結婚しようとまで言い出すのだった。
それはいいとして、風呂に一緒に入るのはまずいんじゃないの?
アナの母親は少年に「出て行きなさい」と言うし、出産を控えている姉も迷惑だと言う。もちろん婚約者のジョセフは面白くないことこの上ない。
少年を信じようとするのはアナだけである。
そんなアナの変わりように、小肥りでいかにも世俗的なジョセフは、ある日アナの家族の前で少年に大人げのない暴力をふるってしまい、彼女との間に溝ができてしまう。
ショーンの親友だったクリフォード(ピーター・ストーメア)は、少年はショーンではないとアナに断言する。
さらに、アナの友人のクララ(アン・ヘッシュ)は少年に、「あなたはショーンでない」と確信をもって言う。
クララから突きつけられたショーンについての事実を知らなかったことで、少年はあっけなくアナから去っていく。
少年はショーンとアナとの間で起こったことについては知っているが、ショーン付き合ったアナ以外の人間とのエピソードについては全く知らない。これで少年の言う生まれ変わりは眉唾だとわかる。
DVDの冒頭に戻ると、ショーンの講演からこの物語は始まっている。
「それでは率直に答えます。もし妻が亡くなり、その翌日窓辺に小鳥が飛んできて、僕を見つめてこう言ったら?〈ショーン、アナよ、戻ってきたの。〉僕はどうするか?きっとその鳥を信じ、一緒に暮らすでしょう。でも科学者ですから、生まれ変わりは信じません。以上です。帰る前にジョギングしないと」
そして、ショーンは冬の道を走り始める。
クラシック演奏会の客席に座るアナが、少年がショーンの生まれ変わりだと確信するに至る心の変化を、長々と映る顔だけで表現している。キッドマンに並外れた演技能力があるからこそのシーンだと思う。→人気ブログランキング
→ にほんブログ村
« バースデイ・ガール | トップページ | 沈黙の時代に書くということ ポスト9・11を生きる作家の選択 サラ・パレツキー »
「サイコスリラー」カテゴリの記事
- ウーマン・イン・ザ・ウィンドウ A・J・フィン(2018.12.20)
- ゴーン・ガール(2015.05.23)
- フォーガットン(2014.06.30)
- ロスト・ハイウェイ(2013.10.10)
- シンプル・プラン(2013.07.07)
« バースデイ・ガール | トップページ | 沈黙の時代に書くということ ポスト9・11を生きる作家の選択 サラ・パレツキー »