クイズ・ショウ
本作品は、1950年代後半、爆発的にテレビが普及したアメリカで、実際に起こったスキャンダルをもとに作られている。
![]() 原題:Quiz Show 監督:ロバート・レッドフォード 脚本:ポール・アタナシオ 原作:リチャード・N・グッドウィン 音楽:マーク・アイシャム 製作国:アメリカ合衆国 1994年 |
バービー・ステンペル(ジョン・タトゥーロ)は、圧倒的な正解率で毎週勝ち続ける、大人気クイズ番組「21(トウェンティワン)」のヒーローであった。
ところが、視聴率が横這いになり、スポンサーからクレームがつく。
冴えない風体のユダヤ人のステンペルが、高学歴の挑戦者を打ち負かすことで人気があったが、その構図は飽きられてきた。(ステンペルの右上の犬歯が黒味を帯びていて、ついそこに目がいってしまう。ジョン・タトォーロは、こういうどこか狂気の要素を含んだ人物役がぴったりだとくる→【2012.06.09】『シークレット・ウィンドー』DVD)
そこで、容姿端麗で申し分ない家柄の、ハーバード大学の若き教授チャールズ・ヴァン・ドーレン(レイフ・ファインズ)を、次のスターに仕立てようと、プロデューサーのダン(デヴィッド・ペイマー)とアルは目論む。
ふたりはクイズの問題と解答を教えるとドーレンに持ちかけるが、フェアに戦いたいと彼は断る。
チャンピョンの劇的な交代劇を演出しようと、ダンはステンペルにわざと誤答するように迫ると、答えを知らされて戦ってきたステンペルは、苦悩しながらダンの筋書きに従う。
ドーレンへの問題は面接のときに出題されたものだった。
ダンの演出通りにチャンピオンが交代した。
初めは控えめだったドーレンだが、段々と大胆になり正解をあらかじめ教えてもらうようになってしまう。
立法管理委員会の捜査官、「ハーバード大の法科で1番だった」が口癖のディック・グッドウィン(ロブ・モロー)は、テレビ局の不正を暴こうと調査に乗り出す。そして八百長を証明する証人と証拠が見つけ出す。
大陪審で、ステンペルは己れの欲望を丸出しにした証言をするが、ドーレンはいたってクール。
ダンは次のように答えた。
「スポンサーも局も満足、回答者の懐に思わぬ大金、大衆も喜んだ、誰か損を?
この分野で政府の規制は必要ない。クイズ番組は公益事業じゃない、娯楽です。我々は犯罪者はない、ショービジネスの人間です」
ヤラセは暴かれたものの、犯罪は成立しなかった。ステンペルは世間の笑い者になり、ドーレンは大学を去る。
テレビにヤラセはつきもの。品行方正なモラルを求めるのは、無理というもの。
作る側の出演者に対する意向が、初めはこうやったらどうだろうくらいに控えめなものが、こうやった方がいいになり、しまいには「台本の通りにいきましょう」と言い方は穏やかなものの、強制する。
バービー・ステンペルもチャールズ・ヴァン・ドーレンも実在の人物。
のちに、ドーレンは世界的名著の『本を読む本』(M.J.アドラー C.V.ドーレン/外山滋古 槇未知子訳 講談社学術文庫 1997年)の共同執筆者となる。
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