サラの鍵
夫と娘とパリで暮らすアメリカ人女性記者ジュリア(クリスティン・スコット・トーマス)は、45歳で妊娠する。知らせを受けた夫の反応は、思いもよらない反対だった。
![]() 原題:Elle s'appelait Sarah/Sarah's Key 監督:ジル・パケ=ブランネール 脚本:ジル・パケ=ブランネール/セルジュ・ジョンクール 原作:タチアナ・ド・ロネ 音楽:マックス・リヒター 製作国:フランス 2010年 |
そんななか、彼女は夫の祖父母から譲り受けて住んでいるアパートに、1942年のパリのユダヤ人迫害事件(ヴェルヴィヴ事件)で、ドイツの強制収容所に送られたユダヤ人家族が住んでいたことを知る。
その一家の長女で10歳の少女サラ(メリュジーヌ・マヤンス)が、収容所から逃亡していた。一斉検挙の朝、サラはすぐに戻れると信じて、弟を納戸に隠して鍵をかけた。
サラはパリ郊外の老夫婦に家にかくまわれ、とりあえずの身の危険から解放される。やがて弟を隠したパリのアパートに行き、鍵で納屋を開け弟の消息を知るのだった。
その後、サラは老夫婦の養女となり、成人すると家を出てアメリカに渡ったのだった。
一方、ジュリアの夫は娘とのスカイプを使ったテレビ電話でやり取りする。
娘が見つめる画面に父親の後ろで下着姿の女性がウロウロしている。
妻が込み入った深刻な事件にのめり込んでいるというのに、夫はいたって能天気なのだ。
一時は、堕胎手術を決意し入院したジュリアだったが、手術の寸前に知らされたサラの消息が、彼女を翻意させる。
ジュリアの調査は、サラの人生の結末を知るにいたるところまで進む。
「ヴェルヴィヴ事件」とは、1942年7月16日、ナチス占領下のパリで、フランス警察によりユダヤ人1万3000人が検挙されドイツの強制収容所に送られた事件。ヴェロドローム・ディヴェール(Velodrome d'Hiver)、略してヴェル・ディヴ (Vel d'Hiv) は、パリにあった冬季競輪場のこと。収容されたユダヤ人には、5日間食べ物も飲み水も与えられなかったという。この事件に対してフランス政府は1995年まで「ヴィシー政権はフランスではない」として責任を認めようとしていなかった。
しかし、ヴィシー時代の歴史を直視してこなかったことを反省する動きも出てきたという。→人気ブログランキング
(→『黄色い星の子供たち』 2010年)
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