『オール・アバウト・マイ・マザー』
設定が大胆で、人物それぞれが複雑な状況下にありかつ強烈な個性の持ち主、屋内の装飾にしろ服装にしろ色使いはど派手、ラテンが息づいている傑作だ。
アカデミー賞外国語映画賞を受賞している。
マドリードに暮らす臓器移植コーディネーターのマヌエラ(セシリア・ロス)は、息子を女手ひとつで育ててきた。
その息子の誕生日に、『あるセールスマンの死』をふたりで観劇した帰りに、息子は主演のウマ・ロッホ(マリサ・パレデス)にサインをもらおうとして、車に轢かれ脳死となる。息子はドナーとなって死んだ。
失意のマヌエラは音信不通の父親に、息子の死を伝えようとバルセロナに向かう。
マヌエラがウマの楽屋を訊ねると、付き人として雇われるのだった。
ウマのレスビアン相手で若い女優のニナ(カンデラ・ペニャ)は麻薬中毒。
ある日、ニナが舞台に穴を開けてしまい、かつてアマチュア劇団でステラ役の経験があるマヌエラはなんとか代役を務めるのだった。と、なんともうまい具合に話が運ぶ。
ある夜、場末の公園で暴行を受ているゲイを助けると、それは友人のアグラード(アントニオ・サン・ファン)であった。やがてアグラードはマヌエラのかわりにウマの付き人になる。
一方、マヌエラはシスターのロサ(ペネロペ・クルス)から、妊娠していてHCVに感染していると相談を受ける。
ロサの相手が、音信が途絶えていた元夫と判明し、マヌエラは愕然とするが、出産を決意したロサの面倒を看るために自分のアパートに住まわせるのだった。さらに元夫は、あろうことか性転換手術を受けて女性になり、ロラ(トニ・カント)と名乗っていた。
マヌエラの過去は波乱万丈だったのだ。
ロサは無事出産するが、エイズで亡くなる。ロサの母親は孫の引き取りを拒否、仕方なくマヌエラは子供を連れてマドリッドに帰る。
やがて、子供がHVSに感染していないことがわかり、ふたたびバルセロナに向かい、子供をかつての夫ロラに会わせるのだった。
この子供は、マヌエラとロラの息子の生まれ変わりってことだ。
マヌエラは、様々な「女性たち」と出会い、献身的に関わることで、息子の死を乗り越えていく、と、まあまとめればそんなところ。
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