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2012年9月

2012年9月27日 (木)

デザート・フラワー

本作は、ワリス・ディリーの自伝『砂漠の女ディリー』の映画化。
ソマリアの遊牧民に生まれ、貧しい小児期から少女期を送り、その後ロンドンでトップモデルとなるまでの波瀾万丈の半生を描いたもの。ワリスを演じたのはエチオピア出身のモデル、リヤ・ケベデである。
Image_20201205145701デザート・フラワー Desert Flower
監督:シェリー・ホーマン
脚本:シェリー・ホーマン
原作:ワリス・ディリー 『砂漠の女ディリー』
製作:ピーター・ヘルマン
音楽:マルティン・トードシャローヴ
製作国:ドイツ/ オーストリア/ フランス  2009年  127分

13歳のときにワリスは、60過ぎの男にラクダ5頭との交換で妻にさせられそうになったところを逃げ出し、砂漠を横切って生死の境をさまよいながら港に辿り着きロンドンに渡った。
ロンドンでは大使館で下働きをしていたものの、ソマリアが政情不安となり大使館は閉鎖され、不法滞在の身となった。

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ホームレスの生活をしていたところ、ダンサーを目指すマリリン(サリー・ホーキンス)にまとわりつき、彼女のアパートに潜り込んだ。
ワリスは、英語を上手く話すことができなかったが、それでもなんとかハンバーガーショップでの清掃の仕事につくことができた。
その店に、
客として現れた高名な写真家のドナルドソンに横顔を気に入られ、モデルとしてデビューすることになる。

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そんなある日、下腹部の激痛に襲われたワリスを、マリリンが救急病院に連れて行く。
そこでワリスの下腹部を診察した担当医は、腹痛は割礼が原因であり、割礼部の切開を勧めるのであった。
しかし、ソマリア出身の看護師が現れ、部族の掟を守るべきだと忠告され、ワリスは手術を諦めるのだった。悩んだ末に新しい人生を踏み出そうと決意した彼女は、手術を受けることにする。
その後、彼女はパスポートを獲得し、世界的なモデルとして活躍するようになる。

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トップモデルとなったワリスは、自分が3歳の時に受けた割礼について、WHOにおいて報告した。
このワリスの演説によって、アフリカの一部の地域で行なわれている女性虐待の事実が、世界の人々の知るところとなった。

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アフリカでの女性の割礼は、多くは生後数日から3歳くらいまでに行われ、陰唇と陰核を切除し小さな穴だけを残し縫い合わせる、いわば性器切除であるという。
麻酔をするわけでなく清潔な器具があるわけでもなく、感染により命を落とすこともしばしばであるという。
ワリスのように、排尿や生理にさいして激しい痛みを伴う後遺症に悩まされることもある。
女性は割礼を受けていなければ結婚が許されず、結婚すると夫が刃物で縫合部を切り裂くとのことだ。
WHOの啓蒙にもかかわらず、こうした割礼は今でも行われているという。

主人公ワリスのモデルとしての成功の物語ばかりでなく、彼女自身が受けた割礼の悲惨さが、強く印象に残る作品だ。→人気ブログランキング

2012年9月26日 (水)

愛を読む人

原作は世界的ベストセラー『朗読者』(新潮文庫)。
アカデミー賞作品賞をはじめ5部門にノミネートされ、ケイト・ウィンスレットが主演女優賞を獲得した。
Image_20210202161401愛を読む人
The Reader
監督:スティーヴン・ダルドリー
脚本:デヴィッド・ヘアー
原作:ベルンハルト・シュリンク  『朗読者』
製作:アンソニー・ミンゲラ/シドニー・ポラック/ドナ・ジグリオッティ/レッドモンド・モリス
音楽:ニコ・マーリー
製作国:米国  2008年 124分

1958年10月、雨に濡れ体調が悪くなった15歳のマイケル(ダフィット・クロス)は雨宿りしたアパートで、母親のような年回りのハンナ(ケイト・ウィンスレット)から介抱される。そのあと、猩紅熱となり3カ月たって回復したマイケルは、礼を言うためにハンナのアパートを訪ねる。マイケルの下心は、ハンナに見透かされてしまう。

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やがてふたりは親密な関係になり、21歳年上のハンナの求めに応じ、会うたびにマイケルは本を朗読して彼女に聞かせるのが習慣となった。ハンナはマイケルを「坊や」と呼んだ。

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ある日、私鉄電車の車掌としての勤勉な働きぶりを認められたハンナは、上司から事務職に昇進する旨を伝えられる。そのことを期にハンナはアパートから忽然と姿を消した。マイケルの必死の搜索にもかかわらず、ハンナの姿を見かけることはなかった。

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1966年、ハイデルベルグ大学の法律学科の学生となったマイケルは、ナチの戦犯の裁判を傍聴することになる。
そこで彼は被告席に座るハンナを見つける。

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争われていたのは、ユダヤ人を拘束していた教会が火事になった時に、監視していたハンナたちナチの女性隊員が、扉を開けなかったために教会の中にいたほとんどのユダヤ人が死んだ事件である。
裁判が進むうちに、マイケルはハンナが隠していることに気づく。罪が重くなることを承知で、ハンナは自分の秘密を隠し通したのだった。そして、ハンナには無期懲役がいい渡され、他の被告たちは軽い刑となった。
このあたりで、ハンナがマイケルに本を読んでもらった理由、事務職昇進を目の前にして姿を消した理由が、そういうことだったのか、とわかった。

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その20年後、マイケル(レイフ・ファインズ)はかつてハンナに読み聞かせた本をテープに録音し、テープとテープレコーダーを獄中のハンナに送り始めた。
マイケルは朗読以外のことは録音しなかった。
そして数年後、「テープをありがとう、坊や。ハンナ」という手紙が届いたのだった。マイケルの意図はハンナに通じた。

ハンナの出所間際に、マイケルは面会に訪れ、出所後の住居と仕事を用意していることを伝えるのだった。
しかし、ハンナの選択はマイケルの厚意に答えるものではなかった。

マイケルは、ハンナが他人に知られることを恐れ頑なに隠した秘密を、誰にも語らなかった。だからこそ、テープには朗読以外のことは吹き込まなかったのだ。→人気ブログランキング

スティーヴン・ダルドリー監督作品
愛を読む人』The Reader(08年)
ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』Extremely Loud and Incredibly Close (11年)
めぐりあう時間たち』The Hours (02年)
リトル・ダンサー』 Billy Elliot(00年)。

【ケイト・ウィンスレット出演作品】
おとなのけんか』Carnage/2011年
『コンテイジョン』Contagion/2011年
『ミルドレッド・ピアース 幸せの代償』Mildred Pierce /2011年
愛を読むひと』The Reader/2008年
リトル・チルドレン』Little Children/2006年
エターナル・サンシャイン』Eternal Sunshine of the Spotless Mind/2004年
ライフ・オブ・デビッド・ゲイル』The Life of David Gale/2003年 
アイリス』Iris/2001年
『エニグマ』Enigma/2001年
『タイタニック』Titanic/1997年
いつか晴れた日に』Sense and Sensibility/1995年
『乙女の祈り』Heavenly Creatures/1994年

2012年9月25日 (火)

ヤング≒アダルト

ヤングアダルト小説家のメイビス(シャーリーズ・セロン)に、大学卒業以来、連絡を取りあっていない昔の恋人バディ(パトリック・ウィルソン)からメールが届く。メイビスは「赤ん坊のお披露目パーティ」の招待メールに苛立ちながらも、故郷に帰ることにする。
愛犬のドルチェを連れてミニクーパーに乗って、かつてお気に入りだったロックバンド、ティーンエイジャーの『ザ・コンセプト』をカーステレオで流し、気に入ったフレーズを口ずさみながら、故郷のマーキュリー(架空の町)に向かう。
ここで、メイビスが着ているハローキティのTシャツは、彼女の精神状態そのもので痛々しい。
Bef3c096a76a4a32b6db313b6b785c4dヤング≒アダルト
Young Adult
監督:ジェイソン・ライトマン
脚本:ディアブロ・コーディ
音楽:ロルフ・ケント
製作国:米国  2011年  94分

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高校時代は才色兼備で注目の的だったメイビスだが、小説家といっても所詮はゴーストライター、書いているものはヤングアダルト小説という中途半端なもの、年齢は37歳でバツイチ、住んでいる所はニューヨークではなくてミネアポリス、何もかもがメイビスにとって満足できない。
高校時代は、男たちからはちやほやされていたが、女たちからは鼻持ちならない高慢な女として疎ましく思われていた。
彼女は自分の人生はこんなはずじゃないと思っている。

メイビスは故郷に立ち寄った理由を、素直に「赤ん坊のお披露目パーティ」への出席とは言えず、「不動産探し」と見栄を張ってしまう。

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ふらりと入ったバーのカウンターで、メイビスは「メーカーズマーク」のストレートを煽っていると、隣に座っていたマット(パットン・オズワルト)がメイビスに声をかける。彼は、高校時代に体育会の連中にゲイ扱いされ、差別暴力を受け下半身に障害を負った、人気者だったメイビスとは対極にいた男である。
酔いが回るうちにメイビスは、自分はバディと結ばれる運命にあり、よりを戻すためにやって来たと本音をぶちまけるのだった。
マットは、子供が生まれて幸せに暮らしているバディの生活に首を突っ込むな、精神科医にいくべきだと忠告する。

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両親からは、印税で不動産を買いあさりにきたのかと嫌味を言われ、昔の女友達たちからは都会風を吹かせる女王様気取りのクソ女と陰口を叩かれる。メイビスにとって故郷に落ち着ける場所などないのだ。
バディがメイビスとの間に一線を画そうとすると、本音を言い出だせないでいると、メイビスは勝手に思うのだった。

パーティの当日、メールを送ったのはバディの妻であることが分かり、当のバディに言い寄ると拒絶され、プライドをズタズタにされたメイビスは自分を抑えきれなくなってしまい、出席者の前で妻のベス(エリザベス・リーサー)に食ってかかるのだった。

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パーティを抜け出してメイビスが向かったのは、障害者としての人生を余儀なくされたマットのところ。
彼にケガを負わせたのは、かつてのメイビスの取り巻きの男たちだ。
マットの妹が故郷の町をこき下ろすのを肯きながら聞いていたメイビスだが、ミニアップル(ミネアポリス)に連れていって欲しいと願う妹を、故郷にとどまった方がいいと諭すのだった。

ジェイソン・ライトマン監督は、これまで主に「善と悪」や「功と罪」のはざまで悩む揺れる主人公を描いてきた。
サンキュー・スモーキング』(05年)では、タバコの害を十分に知っていながらタバコ業界のために詭弁を弄するロビイストを、『ジュノ/Juno』(07年)では、16歳で妊娠してしまった高校生を、『マイレージ・マイライフ』(09年)では、ほかの会社に出向いて解雇通告をする代行人を描いている。いずれの主人公も、困難な状況に立ち向う姿勢をみせている。

 本作は、大人になりきれない37歳の女性が、輝いていた高校生時代を思い返して故郷を訪れたものの、中途半端な生活を送っている現実を思い知らされるという、他の3作とは趣が異なる内容である。
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2012年9月23日 (日)

サンキュー・スモーキング

アーロン・エッカート演じるニックことニコラス・ネイラーは、タバコ研究アカデミーに所属するロビイスト。タバコを擁護するためならばどんな詭弁も弄する。彼は「情報操作の王」と呼ばれ、世間に嫌われている。自らは「1日1200人を殺す業界の代弁者」「ニコチンのカーネルサンダース」と呼ぶ。
そんなニックはタバコ業界にとっては得難い人材であり、業界の黒幕であるキャプテンに目をかけられている。

Photo_20211204084401サンキュー・スモーキング Thank You for Smoking
監督:ジェイソン・ライトマン
脚本:ジェイソン・ライトマン
原作:クリストファー・バックリー 『ニコチン・ウォーズ』
製作:デイヴィッド・O・サックス
音楽:ロルフ・ケント
製作国:米国 2005年 93分

タイトルの『サンキュース・モーキング』は、「Thank You for No Smoking」を皮肉ったもの。

よく訊かれる「何でそんな仕事をしているのか?」という質問に、「ローン返済のため」と答えるのがニックの口癖である。それは本音だ。実際はタバコの害について十分に認識していて、ロビイストとしての仕事にジレンマを感じている。業界のためなら己の心を欺かなくてはならない、ロビイストの辛いところだ。

私生活では、バツイチで一人暮らし、ひとり息子のジョーイは元妻夫婦と暮らしている。
ジョーイ役のキャメロン・ブライト(1993年生まれ)は、ニコール・キッドマンと共演した『記憶の棘』(04年)で、難しい役を見事にこなした。本作でも重要な役回りを演じている。

ニックは、嫌煙派のフィニスター上院議員が、タバコのパッケージにドクロマークの添付を義務付けることを画策しているとの情報をつかむ。これを阻止するために、彼はハリウッドに出向き、映画に喫煙シーンを盛り込むようプロデューサーに働きかける。

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さらに、初代マルボロ・マンとしてタバコ業界に貢献した男優が、今や肺がんを患い、タバコの健康被害を訴える急先鋒になっている。ニックはその男に、キャプテンから預かった大金を受け取らせ口封じの工作をするのだった。これらの仕事に同行したジョーイは、ニックの仕事ぶりを目の当たりにして、尊敬の念を抱くようになる。

そんなニックの息抜きといえば、銃産業を擁護する団体のスポークスマン(デヴィット・ケックナー)とアルコール業界のロビイスト(マリア・ベロ)との、「モッズ特捜隊(the Mods squad)」と呼ぶ飲み会である。この会では、言いたいことが言い合える。「モッズ特捜隊」のモッズとは、自虐的な意味を込めた「Marchant of Death(死の商人)」の略。

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ある日、『ワシントン・プローブ』紙にタバコ業界に関する暴露記事が載る。内容は、ニックが女友達の記者へザー(ケイティ・フォームズ)に、ベッドで語った裏話であった。なぜ記事にしたのかと詰め寄るニックに、ヘザーは「ローン返済のため」と、ニックの常套句で答えるのだった。
この大失態が致命傷となって、ニックはアカデミーを解雇され世間からのバッシングを受けてしまう。絶望感に打ちひしがれ家に引きこもった彼に、息子は励ましの言葉をかけるのだった。

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フェニスター上院議員が議長を務める公聴会で追求されたニックは、作戦を変えてタバコの健康被害との関連性を認めた。そこに追い打ちをかけるように、議員が「健康被害のあるタバコを吸いたいと息子が言ったらどうするか」との問いに、「あくまで、本人の意志を尊重する」と答え、公聴会を乗り切るのだった。

父子の関係を丁寧に描くことにより、ニックの人間らしい面が垣間見えて、ヒステリックな禁煙ファッショへのアイロニーだけに終わらない物語になっている。→人気ブログランキング
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2012年9月22日 (土)

おとなのけんか

子ども同士の喧嘩でケガを負わせてしまった少年の両親が、被害者少年の両親を訪ねる。ケガは上唇が切れて前歯2本が折れたというもの。

加害者夫婦は弁護士のアラン(クリストフ・ヴァルツ)と投資ブローカーのナンシー(ケイト・ウィンスレット)。被害者少年の両親は金物店を営むマイケル(ジョン・C・ライリー)とライターのペネロペ(ジョディー・フォスター)。この4人のやり取りで終始物語は進む。場所は高級住宅地のブルックリンのアパート。

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Carnage
監督:ロマン・ポランスキー
脚本:ヤスミナ・レザ/ロマン・ポランスキー/マイケル・ケイティムズ
原作:ヤスミナ・レザ 『大人は、かく戦えり』
製作国:フランス  ドイツ ポーランド スペイン  2011年  80分

初めは、控えめな物腰でお互いの出方をうかがっていて、ことが大きくならないように「和解」の方向に持っていこうとした彼らだった。

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しかしそうはいかない。ペネロペ役のジョディ・フォスターが、書いている「けんかの報告書」をパソコンの画面で見たアランは、「武装した少年が木の枝で顔を叩いた」との記載に、「武装?」とクレームをつける。そこは、大袈裟に書いてしまったとペネロペはあっさり引き下がる。
ここから「4人の攻防戦」が始まる。

ひっきりなしにかかってくる電話に答え、携帯電話にむかって傍若無人に仕事の話をするアランに、3人は次第に苛立っていく。

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「息子さんは反省しているのでしょうね」とペネロペが訊ねると、アランは「息子は問題児で、自主的な反省は無理」と答えるのだった。
やがて娘の話になって、マイケルは娘の飼っているハムスターが気に入らず、外に捨てたと言い出した。そこに温厚そうにしていたナンシーがマイケルの動物虐待を非難する。

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作り笑いで顔の引きつるペネロペは、機会があれば攻撃を仕掛けようと狙っている。
アランは心ここにあらずで、もっぱら関心は携帯電話の向こう側。
マイケルは一見物分りが良くて太っ腹。
ナンシーは体調がすぐれず、精神的に不安定になっていく。

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そんな4人の主張は次々とあらぬ方向に飛び、息子のことでは共同戦線を張る夫婦も、それ以外の話題になるとバラバラとなり、男同士、女同士の意見が一致したりする。ついには夫婦喧嘩が勃発して、思わぬ本音も飛び出して、修羅場と化し収拾がつかなくなる。
そんなとき、ナンシーは大胆な行動に出る。
場の雰囲気を険悪にいてきたアランの携帯電話を奪い取って花瓶の水の中に沈めると、ペネロペが「やったー」と大声を上げる。さらにペネロベがこの日のために20ドルで買ったオランダ産の黄色いチューリップを、花瓶から引き抜いて床にばらまくのだった。

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翌日になってみれば、親たちの思惑なぞどこ吹く風、子ども達は一緒に遊んでいるし、ハムスターは元気に生きているというオチがつく。

日常生活で、いかにもありそうな状況なので、ついニンマリしてしまう。
故あって、アメリカに入国が困難なポランスキーは、本作をパリで撮影したという。→人気ブログランキング

2012年9月19日 (水)

告発の行方

若い男が道路沿いの公衆電話から、「レイプしている。男が3~4人、いやもっといる!」と警察に通報する。そのあとにバーから走って出てきた半裸の若い女性サラ(ジョディ・フォスター)が、通りすがりの車を止めて乗り込む場面から、この映画は始まる。
本作品で体当たりの演技を見せたジョディ・フォスターは、第61回アカデミー賞主演女優賞を獲得した。
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The Accused
監督:ジョナサン・カプラン
脚本:トム・トーパー
音楽:ブラッド・フィーデル
アメリカ 1988年 111分

サラの事件を担当するのは、地方検事補キャサリン・マーフィ(ケリー・マクギリス)。彼女は、サラと保安官のダンカン(テリー・デイヴィッド・ムリガン)を伴ってバー乗りこみ、そこでレイプ犯の3名のうち2名を確認する。もうひとりの大学生ボブは帰宅していた。

キャサリンの服装は、バブル期の象徴である肩パット入りのスーツ、上背もあるので、いかにもやり手で頼りになりそうだ。一方、家でくつろぐサラは、「阪神タイガーズのハッピ」を羽織っていた。
なんでサラがタイガースのハッピを着ているのだろう?吉田監督のもとで、阪神が巨人戦でバース・掛布・岡田のバックスクリーン3連発で勢いに乗り、ペナントレースを制し、西武を下して日本一に輝いたのは1985年。本作の公開が1988年、阪神のハッピの旬は過ぎているが、撮影中は優勝の余韻が残っていたのかもしれない。日本のプロ野球通でタイガーズファンのスタッフがいたのだろう。人気ブログランキング

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レイプを告発する決意をしたサラだったが、酔っ払ってマリファナを吸っていたし、男たちを挑発するかのような行動をとっていた。サラにとって有利な証拠はない。キャサリンはレイプでの告訴を諦め、傷害罪で裁定取引きをし、3人には禁固刑が下された。しかし、あくまでレイプでの告訴を望んだサラは失望し、キャサリンを責めるのだった。

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ある日、ショッピングセンターで、バーでレイプを煽った男クリフ(レオ・ロッシ)と出会い、あの夜のことを執拗にからかってきた。我慢ができなくなったサラは、その男のトラックめがけて何度も自分の車をぶつけ自らも入院するようなケガを負うのだった。

サラを見舞ったキャサリンは、レイプを煽った男たちを「暴行教唆」の罪で告発することを決意する。しかし上司は、前例がない「暴行教唆」での告訴は勝ち目がないとキャサリンを諭すが、検事補としてのキャリアに箔をつけるチャンスと踏んだ彼女は、一か八かの賭けに出る決意をする。

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キャサリンは、警察に通報してきた大学生のケン・ジョイス(バーニー・カールソン)を探し出し証言を求めるが、彼は収監されている同僚のボブをかばい真実を話そうとしない。
立証が難しいと言われるレイプ事件、しかも麻薬所持の前歴があり、同夜、酒に酔いマリファナを吸っていたサラには、ケンの証言がなければ勝ち目はない。ケンが語った事件の全容は、陪審員に「有罪」の結論を出させるのだった。人気ブログランキング

ハッピーエンドで終わるが、サラに裁判長からの一言があるべきだろう。「今後、男を挑発するようなことは厳に慎むように!いいね、サラ」と。

『これからの「正義」の話をしよう』(マイケル・サランデル著)で扱われそうな問題がある。
警察に通報はしたものの、ケンはレイプを止めようとしたわけでなく傍観していた。その後ろめたさがケンに証言させたのだろう。しかし友人を売ったのは事実だ。
ケンの立場だったら、証言に応じるか拒否するか、どうする?という問いには、簡単には答えられない。

アメリカの司法省によれば、2010年に発生した強姦件数は18万8380件となっている。しかし実際に強姦被害に遭った女性は、その約10倍いるという。因みに日本では1402件(2009年)である。→人気ブログランキング

【ジョディー・フォスター出演作品】(サイト内リンク)
おとなのけんか(11年)
フライトプラン(05年)
告発の行方(88年)
タクシー・ドライバー(76年)

2012年9月16日 (日)

ものすごくうるさくて ありえないほど近い

同名のベストセラー小説の映画化。
9.11で父親を奪われた9歳のオスカー(トーマス・ホーン)は、父親(トム・ハンクス)が大好きだった。ふたりでテコンドーをしたり、言葉遊びをしたり、NYの幻の第6区を調べたり、お互いが信頼し合い、すごく近しい関係だった。立ち直れないオスカーは、父親の葬式で棺の中が空だったことで、母親(サンドラ・ブロック)にやりどころのない怒りをぶつける。

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454f74bcef3f4ebca73d75d17104e22fものすごくうるさくて、ありえないほど近い
Extremely Loud & Incredibly Close
監督:スティーヴン・ダルドリー
脚本:エリック・ロス
原作:ジョナサン・サフラン・フォア
音楽:ニコ・マーリー
製作国:アメリカ合衆国   2011年  129分 

最悪の日から1年後、未だに立ち直れないでいるオスカーだが、父の部屋に入ることができるまでになった。
そこで、紙袋に入った鍵を見つける。
鍵屋は、20年くらい前に作られた貸金庫の鍵だという。袋には「BLACK」と書かれていた。

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オスカーはその鍵で開けることのできる金庫に、父が彼に残した重要ななにかが保管されていると信じ、鍵穴を探すことを決意する。
電話帳から「BLACK」姓の家をピックアップして、片っ端から訪ね、合う鍵穴を探すのだった。オスカーは公共交通機関は危険と思い込んでいて、バックパックを背負い手にはタンバリンを持って徒歩で各家を回る。
世間はオスカーに対して好意的であった。

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オスカーの住むマンションの前には祖母が住んでいて、そこに間借り人(マックス・フォン・シドー)が住むようになる。間借り人は老人の男だった。
老人は言葉を発することができない。筆談と身振り手振りでやり取りするうちに、ふたりで鍵穴探しをすることになるのだった。オスカーは、老人の後ろ姿や仕草から、自分の祖父ではないかと思い始める。

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あるとき、父親が切り抜いた新聞記事から鍵穴の持ち主の目星がつく。そこは、オスカーが以前に訪ねた黒人夫婦(ヴィオラ・デイヴィス)の家であった。
そして、鍵が父親の部屋にあった理由が明らかになる。それはオスカーが期待していたようなものではなかった。しかし、鍵穴探しを通じて出会った人びとから、彼は様々なことを学び成長した。
鍵穴を見つけ出したことでオスカーは立ち直り、彼を見守っていた母との関係も修復される。

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オスカーにとって、貿易センタービルにいた父親からかかってきた電話に出なかったことは、悔やんでも悔やみきれないことだ。彼はその自責の念を、誰にも話せずに苦しんでいたのだった。

彼は鍵の持ち主(ジェフリー・ライト)にそのことを打ち明け、9.11の呪縛から解放されるのである。

主人公のオスカー役トーマス・ホーンの演技が素晴らしい。何しろ膨大なセリフをこなしている。クイズ番組優勝の経験を持ち、話す人間が世界で一番多いという理由で北京語を習得しているという才気走った少年だ。
作中では、アスペルガー症候群を疑われ診察を受けた結果、「不確実」と診断されたことになっている。
彼なしでは、本作は成り立たない。

アカデミー賞の作品賞、助演男優賞(マックス・フォン・シドー)にノミネートされた。→人気ブログランキング

2012年9月14日 (金)

JUNO/ジュノ

16歳の高校生ジュノ(エレン・ペイジ)は1回のセックスで妊娠してしまう。相手は深く付き合ったわけではない同級生でバンド仲間のポーリー(マイケル・セラ)。
早速、親友のリサ(オリヴィア・サルビー)に打ち明け、とりあえず中絶することにしてクリニックを訪れる。
ところが、ジュノは受付の女性の対応が気に入らないとか、クリニックが消毒薬臭いだのを理由に中絶を諦め、ジュノの言葉によれば「赤ちゃんを搾り出す」ことにする。
そしてリサと里親探しを始め、フリーペーパーで養子を探している裕福な夫婦に目星をつける。
JunoJUNO/ジュノ
監督:ジェイソン・ライトマン
脚本:ディアブロ・コーディ
製作:ジョン・マルコヴィッチ/メイソン・ノヴィック/リアンヌ・ハルフォン/ラッセル・スミス
製作総指揮:ジョー・ドレイク/ネイサン・カヘイン/ダニエル・ダビッキ
音楽:マテオ・メシナ
製作国:アメリカ合衆国 カナダ 2007年 92分

妊娠という厄介な事態になったにもかかわらず、軽いノリのジュノだから、トレードマークのパイプ片手に淡々としている。ジュノの行くさきざきには、中絶反対のプラカード持った中国系の同級生が現れて、「赤ちゃん、もう爪だって生えているわよ」と、あたかも胎児が子宮の内側を引っ掻くような気味の悪いことをいって脅すのだった。

ジュノが両親に妊娠を打ち明けると、ひと騒動あると思いきや、両親もジュノと同様にあっけらかんと妊娠の事実を受け入れてしまう。継母(アリソン・ジャニー)はいたってジュノのことを気遣うのだ。
そして、週末には父親(J・K・シモンズ)が付き添って、里親候補の夫婦に会いに行くことに話はまとまってしまう。なんという寛大で愛情深い親なのだろう。

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郊外の高級住宅街に住むヴァネッサ(ジェニファー・ガーナー)とマーク(ジェイソン・ベイトマン)の夫婦は、弁護士と共にジュノたちを待っていた。はじめのうちは会話がぎこちなかったものの、肝心の養子縁組の話はとんとん拍子にまとまり、円満に契約が成立する。
オタクでヤッピーの芸術家風夫とジュノとは、パンクロックだのホラー映画だのと話があう。
一方、アメリカの良妻賢母タイプの妻が子どもを望む気持ちは本物らしい。

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妊娠は順調に経過するものの、夫婦仲がうまくいかなくなり離婚の危機が訪れる。夫は妻が自分の趣味を理解してくれないなどと、この期に及んで子供じみたことを離婚の理由にするのだった。
そんなことはお構いなしに、ジュノの腹はせり出してくる。

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そんななか、ときどきジュノのの前に姿を現すポーリーだが、産むというジュノの意志を尊重し体を気遣うのだった。
そして出産をむかえる。→人気ブログランキング

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2012年9月13日 (木)

『家の鍵』

15年の空白を経て、父親が障害を持つ息子と、これから生活をともにする決意に至るまでの過程を描いた作品。

家の鍵 [DVD]
家の鍵 [DVD]
posted with amazlet at 12.09.12
原題:le chiavidi casa(The Keys to The House)
監督:ジャンニ・アメリオ
脚本:ジャンニ・アメリオ/サンドロ・ペトラリア/ステファーノ・ルッリ
製作:エンツォ・ポルチェッリ/カール・バウムゲルトナー/ブリュノ・ペズリー/ジャンフランコ・バルバガッロ/マイケル・シュワルツ
音楽 :フランコ・ピエルサンティ
製作国:イタリア フランス ドイツ  2004年  111分

15年前に難産で恋人をなくしたジャンニ(キム・ロッシ・スチュアート)は、生まれたわが子を恋人の家族に預けたままになっていた。
障害のある息子のパオロとは、これまで会ったことがなかった。
恋人の兄がジャンニを呼び出して、パラオをミュンヘンからベルリンのリハビリ施設まで連れていくようにと言う。
まさか嫌とは言えないジャンニにとって、これからの生活を占うふたりだけの旅になる。

障害を負った理由は、出産が長引き帝王切開には時間の余裕がなく踏み切れず、鉗子分娩が行われた。新生児は酸素欠乏と分娩時のなんらかの損傷により脳性麻痺となった。

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ジャンニとパラオはイタリア語で話し、ドイツ語が理解できないという設定なので、ジャンニはより一層孤独で不安な状況にある。
リハビリ施設でのやりとりは言葉の壁もあって、ぎこちない。

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そんななか、リハビリ施設でイタリア語を話すニコール(シャーロット・ランプリング)と出会う。
ニコールは重い障害をもつ娘の介護を20年も続けてきた。
ジャンニはパラオの父親であることを素直に彼女に語ることができないでいる。慣れていない父親であることに、戸惑いを感じているのだ。
彼女は障害を持つ子どもの親の苦悩をジャンニに語るのだった。現実を受け止めて向き合うしかないと。。
チャリティ会場で、ジャンニが目を離した隙に、パラオはひとりで会場の外に出かけ、ベルリンの町で迷子になってしまう。
このことをきっかけに、ジャンニの戸惑いは少しずつ薄まっていく。
この辺のジャンニの気持ちの変化が、本作の見どころである。

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リハビリ施設を出たジャンニとパラオは、パオロが文通している少女の住むノルウェーに船で向う。
やがて、ジャンニは吹っ切れてパオロを家族に迎えることを妻に電話をして、パラオにも話すのだった。しかし、パオロは車のなかで運転させろとハンドルを握り、離すように言っても聞き入れない。そんなパオロのわがままに苛立ち覚え、ジャンニは車を止め外に出て、思わず涙を流すのだった。そこに近寄ってきたパラオがジャンニを慰める。

父親としてパラオを受け入れようとするものの、受け入れきれないでいるジャンニの葛藤が、見事に描かれている。


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2012年9月12日 (水)

シャッターアイランド

マーティン・スコセッシ監督の仕掛けだらけのサイコミステリ。
本作のテーマ「帰還兵の狂気」は、スコセッシがアメリカンニューシネマの後期の作品として撮った、傑作『タクシードライバー』(76年)においても扱ったテーマだ。
戦争で負ったテディ(レオナルド・ディカプリオ)の心の傷は深い。彼はユダヤ人収容所で、ナチの親衛隊が殺した夥しい数の遺体を目のあたりにし、彼自身もナチの兵士を殺した。そして、負傷し瀕死のナチの隊長が苦しさのあまり自害をしようとするのを、テディはわざと邪魔をし断末魔の苦痛を味わわせるのだった。テディは残忍な男だ。その記憶は何回もフラッシュバックされる。
主人公が残忍であるかどうかは、あとになって重要なポイントになる。
Photo_20201222143701シャッター アイランド
Shutter Island
監督:マーティン・スコセッシ
脚本:レータ・カログリディス
原作:デニス・ルヘイン
音楽:ロビー・ロバートソン
製作国:アメリカ合衆国   2010年  138分

-ボストンのはるか沖に浮かぶ孤島シャッターアイランドには、精神病の犯罪者を収容するアシュクリフ病院がある。
1954年9月、連邦保安官のテディと相棒のチャック(マーク・ラファロ)は、病院から女性患者が姿を消した事件を捜査するために、シャッターアイランドを訪れる。
テディの左の頬には、わんぱく小僧の目印、絆創膏が貼られている。
ついでに、本作の役回りもそうだけれど、マーク・ラファローって『イン・ザ・カット』(04年)の刑事役のように、どこか得体のしれない怪しげな役がはまる。

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アシュクリフ病院に着くと、さっそくテディは病院の職員を集め、行方不明の患者レイチェル(エミリー・モーティマー)の情報を聞き出そうととする。さらに患者に面接を行い、医師でもある所長(ベン・キングスレー)、専属医師(マックス・フォン・シドー)からも話を聞こうとするが、さっぱり埓が開かない。ところが行方不明だったレイチェルが、ひょっこり現れる。
どうなってるんだ?

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この辺りからテディには、辻褄が合わない幻覚が頻繁に現れるようになる。
アシュクリフ病院に携わる人すべてがテディを陥れようとしているのか、それともテディの思い過ごしなのか?

テディは凶悪犯が収容されているC棟に忍び込んで、妻を殺した放火犯のレディスを探す。そこで出くわした患者と殴り合いになり相手にケガを負わせてしまう。
さらに、はぐれたチャックを探しに断崖の洞窟に入ると、そこには精神科医のレイチェルが隠れていた。この島では必要のないロボトミー手術が盛んに行われていて、捕まれば無理やり手術を受けさせられるという。
テディは一刻も早くチャックとともに島から脱出して、悪事を暴露しようと病院の近くまで戻ったところで、捕まってしまう。

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テディは、自分自身は現役の連邦保安官であり、放火により妻のドロレス(ミシェル・ウィリアムズ)が殺されたと思っている。
レイチェルを探し出す任務を片付け、放火犯のレディスを探し出し、さらに島で行われている陰謀を世間に明らかにする使命があると信じている。しかし、これはあくまでもテディの妄想だが、見ている方はテディの妄想が現実だと思ってしまう。実はレイチェルもレディスも存在しない。

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真実は放火したのは精神を病んでいた妻であり、そのあと一家は子供たち3人と湖畔の家に引っ越す。
そこで、妻が3人の子どもを湖に沈めて溺死させてしまう。テディは子どもたちの死を知り、妻を銃殺するのだった。
逮捕されたテディは孤島のアシュクリフ病院に収容される。これが2年前の出来事だった。テディがチャックと思っている男は、実はテディの主治医であった。

かくして、凶暴な精神病患者のテディにはロボトミー手術が必要であると、医者たちは目配せし合う。→人気ブログランキング

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2012年9月11日 (火)

アレクサンドリア

エジプト、アレクサンドリア、紀元391年。
エジプトはローマ帝国の属国であった。
台頭してきたキリスト教徒とユダヤ教徒その他の異教徒が共存して暮らしている。
図書館館長の娘、哲学者であり天文学者のヒュパティア(レイチェル・ワイズ)は天動説に疑問を抱き、地動説を裏づける証拠を見つけようと学問に打ち込んでいた。

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Image_20201230211201 アレクサンドリア
原題:Ágora
監督:アレハンドロ・アメナーバル
脚本:アレハンドロ・アメナーバル/マテオ・ヒル
製作:フェルナンド・ボバイラ/アルバロ・アウグスティン
製作総指揮:シモン・デ・サンティアゴ/ハイメ・オルティス・デ・アルティニャーノ
音楽:ダリオ・マリアネッリ
製作国:スペイン  2009年  127分

そんなヒュパティアは、否が応でも目立つ存在である。弟子のオレステスに求愛されるが、弟子たちの前で経血のついたハンカチを投げつけ拒絶するのだった(なんという大胆な拒絶の仕方)。当然この話は町中に広まる。奴隷のダオスからの屈折した愛慕も拒み続ける。

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やがて、数の上で劣勢を強いられ追い詰められたユダヤ教徒が、キリスト教徒を襲撃したことで、両者は激しく対立しはじめる。
キリストってユダヤ人だろう。仲間じゃないか、なぜいがみ合わなければならないのだ」とユダヤ人たちは言う。
キリスト教徒は新しい信徒を獲得して勢力を拡大しようと、集会を繰り返すのだった。
キリスト教徒であるローマ皇帝が下した裁定は、当然キリスト教徒に有利なものだった。

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勢いづいたキリスト教徒はたちは、ヒュパティアたちユダヤ教徒を追い出す。彼らは図書館を破壊し、ヒュパティアが守ってきた貴重な蔵書を持ち出し焚書する。ここがこの映画の見所のひとつ。ヒュパティアにとっては命にも変え難い貴重な書籍であるが、キリスト教徒にとっては、それこそ悪魔の書である。図書館は破壊し尽くされるのだった。
ユダヤ教徒たちには改宗か出国しか道は残されていない。そうした逆境のなか、地動説を研究し弟子たちに学問を教え続けるヒュパティアは、キリスト教徒から魔女と烙印を押されてしまう。

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前半のストーリーが散漫でダレてしまう。後半に盛り上がると思いきや、さっぱり。 キリスト教徒の傲慢で排他的な面が容赦なく描かれている点は、史実に忠実そうで評価できる。
スケールが大きくセットが豪華で荘厳、金がかかっていそうだが、訴えかけるものが希薄だ。→人気ブログランキング

2012年9月10日 (月)

約束の葡萄畑~あるワイン醸造家の物語

19世紀はじめ、フランスのブルゴーニュ地方。
村娘(ケイシャ・キャッスル・ヒューズ)と結婚したワイン農夫のソブラン(ジェレミーレニエ)は、一流のワイン醸造家になる野心に燃えていた。
ある夜、ソブランの前に天使(ギャスパー・ウリエル)が現れ、ワイン造りのヒントを教える。天使に馴染みがないのでこの展開には戸惑う。重そうな羽根につい目がいってしまう。
Image_20201214105901約束の葡萄畑~あるワイン醸造家の物語
原題:The Vintner's Luck
監督:ニキ・カーロ
脚本:ニキ・カーロ /ジョーン・シェッケル
原作:エリザベス・ノックス
製作総指揮:チカ・ベナダヴァ /ジェレミー・バーデック /稲葉正治/ナディア・カムリチ /アドリアン・ポリトフスキー
製作:ローリー・パーカー /ニキ・カーロ /ロビン・ライン /ルディ・ボーケン /パスカル・ユデレウィッツ
音楽:アントニオ・ピント
製作国:ニュージーランド  フランス  2009年  126分

ソブランはワイン造りの資金を稼ぐために、ナポレオン軍のロシア遠征に志願する。
しかし、ナポレオン軍は敗れソブランは極寒のロシアで散々な目に遭う。おまけに、留守の間に父親は死に、末娘も亡くなってしまう。そうした不運に見舞われたことを、ソブランは天使になぜ導いてくれないのかと詰め寄るのだった。天使はそんな力は堕天使の私にはないという。

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ソブランが造るワインは質の高いものだった。
この一帯を支配するシャトーの城主はソブランの技術を高く評価し、姪の男爵夫人オーロラ(ヴェラ・ファーミガ)にソブランの手を借りてワイン造りに専念するように遺言を残して亡くなるのだった。
領地を譲り受けたオーロラは、ソブランとともにワイン造りに精を出し、シャトーは人気のワイナリーに成長していく。

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しかし、良質なワインが毎年できるとは限らない。
葡萄の木に蔓延した病気のせいで、出来の悪いワインになってしまった。ワイナリーの葡萄の木はほぼ全滅(*フェロキセラ禍)。
ワイン作りに熱意を失いかけたソブランに、オーロラは新しい葡萄の苗木を植えて、一から出直そうと励ますのだった。

フェロキセラ禍とは、19世紀中頃フィロキセラ(ブドウネアブラムシ)に耐性をもつ北アメリカ原産の葡萄の木がヨーロッパにもたらされ、その根に寄生していたフェロキセラによってヨーロッパ固有種が壊滅的に打撃を受けた事件。北アメリカの台木にヨーロッパ原産の葡萄の木を接木して、ヨーロッパの葡萄は蘇った。その接木の作業が本作でも描かれている。

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ソブランのワイン造りに対するひたむきな姿勢と情熱、オーロラの高潔さと不屈の精神には感動する。
それに根気と忍耐が必要なワイン造りの困難さが十分に伝ってくる。
天使が登場することに違和感があるが、それには目をつぶって、天使の身に起こる仰天なことに爆笑するのもこの映画の楽しみ方だ。→人気ブログランキング

2012年9月 9日 (日)

ロビン・フッド(91年)

12世紀後半、リチャード王(ショーン・コネリー)率いる第3次十字軍に加わったロビン(ケビン・コスナー)は、エルサレムの地で捕らえの身となる。
ロビンはムーア人のアジーム(モーガン・フリーマン)を伴って脱走する。

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原題:Robin Hood: Prince of Thieves
監督:ケヴィン・レイノルズ
脚本:ジョン・ワトソン/ペン・デンシャム
主題歌:ブライアン・アダムス「(Everything I Do) I Do It for You」
製作国:アメリカ 1991年 143分

必ず恩を返すと言ってきかないアジームを伴って、ロビンは故国に戻ってきた。
父親のロックスリー城は焼き打ちにあい廃墟と化し、父親は無残に殺されていた。
執事から、国王不在の隙を狙って政権奪還を目論む代官のジョージ(アラン・ディックマン)が、ロビンの父親に悪魔崇拝者の汚名をきせて殺害し領土を没収し、領民を苦しめる悪政を行っていると聞かされる。

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ジョージから追われる身のロビンは、悪政から逃れた領民たちが密かに暮らしているシャーウッドの森に逃げ込む。
ロビンとアジームは、戦闘経験のない彼らに訓練を指導し、武器を作るのだった。
反乱軍は、ジョージに協力する貴族から奪った食料や金品を人々に分け与えることで、ロビンフッドたちは領民の信頼を得るようになる。

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王の座につこうと画策するジョージは、リチャード王と従兄妹のマリアン(メアリー・エリザベス・マストラントニオ)と結婚して世継ぎが生まれれば大義ができると企み、マリアンを誘拐する。
そして、ジョージは蛮人の援軍を得て、シャーウッドの森に、総攻撃をかけるのだった。
素人の集団である反乱軍は壊滅的な被害をこうむり、多数が捕虜として連れ去られる。

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ジョージとマリアンの結婚披露の前座として、捕虜となった反乱軍の公開処刑が行われる日に、ロビンたちは決死のゲリラ作戦を仕掛けるのだった。
そして、ロビンはジョージとの一騎打ちでなんとか勝利し油断したその時、ロビンに襲いかかったジョージの母の魔女の一撃を、間一髪のところでアジームが助ける。アジームが最後の最後で、ロビンに恩返しする。
そしてリチャード王が帰国し、国は平穏を取り戻す。
めでたしめでたしという娯楽作品。→人気ブログランキング

2012年9月 8日 (土)

『プレシャス』

1980年代後半、ニューヨーク、ハーレム。
16歳の黒人少女プレシャス(ボレイ・シディベ )は周囲を圧倒する肥満体で、お世辞にも美しいと言えない。学校では誰からも相手にされず孤独な生活を送っている。

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プレシャス [DVD]

プレシャス [DVD]

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原題:Precious: Based on the Novel Push by Sapphire
監督:リー・ダニエルズ
脚本:ジェフリー・フレッチャー
原作:サファイア 『プッシュ』
製作:リー・ダニエルズ
製作総指揮:オプラ・ウィンフリー/タイラー・ペリー/リサ・コルテス/トム・ヘラー
音楽:マリオ・グリゴロフ
製作国:アメリカ合衆国   2009年  104分

 

プレシャスは妊娠していることが学校にばれて退学させられ、フリースクールに通うようになる。彼女にはすでに子どもがひとりいて、どちらも父親にレイプされて妊娠した。
母親メアリー(モニーク)は、プレシャスに家事を押し付け罵声を浴びせ虐待してきた。夫をプレシャスに寝とられたと勝手に思い込んでいるのかもしれない。いずれにせよ、何をし出すかわからない鬼のような母親だ。
プレシャスには、嫌なことがあると妄想することで現実を逃避できる特技がある。そうでもしないと、とてもとやっていけない。

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やがて、フリースクールで出会った教師(ポーラ・パットン)の指導で読み書きができるようになり、自分の気持ちを書いて表せるようになる。学習能力が開花したのだ。またクラスの女生徒たちとも仲良くなっていく。

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母親はプレシャスが退学したことで、生活保護が打ち切られるとソーシャルワーカーのワイス夫人(マライア・キャリー )に、不満たらたらで訴える。
ワイス夫人の質問を、はじめははぐらかしていた母親であったが、やがてプレシャスの壮絶な過去が語るのだった。そして夫がエイズでなくなったと母親が告げる。

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そんなおり、プレシャスは出産する。
生まれた子供はHIVの感染をまぬがれていたが、プレシャスは感染していた。
しかし、自分を表現できるという希望の光をつかんだプレシャスは、ふたりの子どもとともに生きていこうとする。

悲惨なストーリーにもかかわらず爽やかに感じるのは、プレシャスが前向きに生きようとする姿勢に共感できるからだ。

第82回アカデミー賞には、作品賞、監督賞、主演女優賞、助演女優賞(モニーク)、脚色賞、編集賞にノミネートされ、脚色賞、助演女優賞を受賞した。

2012年9月 7日 (金)

フィクサー

ニューヨークの法律事務所の揉み消し屋(フィクサー)マイケル・クレイトン(ジョージ・クルーニー)は、出資したレストランが失敗してしまい多額の負債を抱えている。
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Michael Clayton
監督・脚本:トニー・ギルロイ
製作国:アメリカ合衆国   2007年  120分

マイケルが所属する弁護士事務所は、集団訴訟の被告である大企業U・ノース社の弁護を引き受けている。
農薬による健康被害の訴訟は6年にも及び大詰めを迎えている矢先、主任弁護士であるアーサー・イーデンス(トム・ウィルキンソン)が人前で全裸になる奇行に及んだ。
直ちに友人であるマイケルはアーサーの対応に向かう。
躁鬱病のアーサーは薬を服用していなかった。マイケルはひとまずホテルにアーサーを閉じ込めるが、彼はホテルから逃げ出してしまう。マイケルはアーサーの問題と金の問題で頭を悩ませることになる。

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アーサーは、機密文書を公にして依頼主のU・ノース社を裏切ろうとしていたのだった。アーサーに疑いを持ったU・ノース社の法務担当本部長カレン・クラウダー(ティルダ・スウィントン)は、アーサーを監視させる。
その後、一向にアーサーの問題が進展しないことで、カレンは弁護士事務所を信用できなくなり、アーサーの口を封じようとする。
一方、アーサーの考えに同調するマイケルは、上司(シドニー・ポーラック)にその旨を伝えるのだが、弁護士が依頼主を裏切ることなどあり得ないと一笑に付されるのだった。

裁判は、U・ノース社が予想よりもはるかに安い和解金で、決着を迎えようとしていた。しかし、機密文書を手に入れたマイケルを放置しておけないと、カレンは魔の手を伸ばす。

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緻密に計算された構成でストーリーは運び、終盤に大きな山場を迎える。終盤でのジョージ・クルニーとティルダ・スウィントンの、やり取りは見ものだ。

第80回アカデミー賞で作品賞、脚本賞、監督賞、主演男優賞、助演男優賞、助演女優賞、作曲賞の7部門にノミネートされ、ティルダ・スウィントンが助演女優賞を受賞した。→人気ブログランキング
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2012年9月 6日 (木)

レイチェルの結婚

姉レイチェル(ローズマリー・デウィット)の結婚式の2日前に、麻薬常習者の更正施設を出たキム(アン・ハサウェイ)は、結婚式の準備でごった返す自宅に帰ってくる。ひっきりなしにタバコを吸い、家の中を歩き回るキムの存在は、周囲にピリピリとした緊張感を生んでいる。
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原題:Rachel Getting Married
監督:ジョナサン・デミ
脚本:ジェニー・ルメット
作曲:ゼファー・タウィル/ドナルド・ハリソンJr. 
製作国:アメリカ合衆国  2008年  114分

キムは14歳のときに麻薬を服用して、弟を乗せた車で事故を起こし弟を死なせた。それ以来、麻薬に溺れ施設に入ったり出たりを繰り返しているバックマン家の厄介者である。彼女の存在は一家に辛く悲しい過去の記憶を否応なく甦らせる。

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親戚や友人が集まった結婚式前夜のディナーは、それぞれが自己紹介し和気あいあいと進んだ。レイチェルから妊娠してるとの発表もあった。
いざ、キムが語り始めると、場違いなことを言い出すのではかと、一同はハラハラしているのが画面から伝わってくる。画面が細かく揺れドキュメンタリー風に映し出され、見ている者はまるでディナーにいるかのような臨場感を感じる。

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ディナーが終わって客が帰ったあとに、姉はキムに対し鬱積していた怒りを爆発させる。キムは自分が歓迎されていないことを強く感じるのだった。
そして、キムは車で家を飛び出して運転を誤り自損事故を起こしてしまう。

結婚式当日、交通事故で顔にあざのできたキムは、殊勝にレイチェルを祝福している。
ミュージシャンである花婿の友人たちは、得意の楽器を奏でて式を盛り上げている。

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温厚そうな父親の表情はどこか作ったようで引きつって見える。離婚し今は実業家として成功している母親(デブラ・ウィンガー)はよそよそしい。会が終わればさっさと引き上げてしまう。式を控え興奮気味の姉は神経質になっている。キムは疎外感を感じながらもなんとか平常心を保とうとしている。花婿は終始笑顔を絶やさず、穏やかである。ひとりひとりの心模様を丁寧に映し出すことで、作品み深みを与えようとすると監督の意図が、成功している。

主演のアン・ハサウェイは、第81回アカデミー賞主演女優賞にノミネートされた。→人気ブログランキング

2012年9月 5日 (水)

ハート・ロッカー

2004年、灼熱のバグダット。
爆破装置の処理中に亡くなった前任者の後釜に、ジェームス2等軍曹(ジェレミー・レナー)が任務につく。
待ち遠しい任務終了までの日数が画面にテロップで現れる。

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原題:The Hurt Locker
監督:キャスリン・ビグロー
脚本:マーク・ボール
音楽:マルコ・ベルトラミ/バック・サンダース
製作国:アメリカ合衆国  2009年  131分

爆弾処理班はジェームスのほか、サンボーン軍曹(アンソニー・マッキー)とエルドリッジ特技兵(ブライアン・ジェラティ)、ふたりはジェームスをサポートする役目だ。

ジェームスの爆弾処理のやり方は大胆、時には防護服を脱いでしまう。彼はスイッチが入ったら怖いもの知らずになる。彼は爆弾処理の能力がずば抜けて優れていることは確かだ。そうした型破りなやり方は、ほかのふたりを危険に巻き込むこともあり、サンボーンは殺意を抱くほどだ。

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三人は任務中に砂漠でイギリス人傭兵と出会ったあとに、はるか彼方から狙撃され傭兵が殺される。銃撃戦は長時間に及び、それを乗り切ったことで三人は信頼を築き上げるのだった。

やかて基地内でビデオを売っていた少年が、腹部に爆弾を埋め込まれる手術を受けて死んでいるところをジェームスは発見する。ジェームスたちは憤りを感じるが、人違いであることが判明する。
爆弾を仕掛ける見えない敵は、なんでもありの卑劣な手段でジェームスたちに挑んでくるのだ。

爆弾処理の情報が漏れていると感じたジェームスは、ふたりとともに路地を捜索する。ところが、ジェームスがエルドリッジを誤って撃ち負傷をさせてしまう。これでエルドリッジは、太腿は砕けたがアメリカに帰ることができる。

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最後は、広場で時限爆弾を体に巻きつけられた男が助けを求めている。しかし、いくつもの鋼鉄製の鍵がついていて、ジェームスは外すことができない。「済まない」と謝りながら男から遠ざかるのだった。

任務を終えて妻と息子の元に帰ったジェームスは、料理の手伝いをしながら戦場の話をするが、妻の反応はない。戦地では任務終了を望んんでいたはずなのに、アメリカでの平凡な家庭生活はジェームスにとって生きている実感が希薄だ。
そして、ジェームスは再び招集され、意気揚々と戦場に降り立つのだった。

「Hurt Locker」は、アメリカ軍の隠語で「苦痛の極限地帯」「棺桶」を意味する。
本作は、アカデミー賞で9部門にノミネートされ、作品賞、監督賞、オリジナル脚本賞、編集賞、音響効果賞、録音賞の6部門を受賞した。 元夫のジェームス・キャメロンの『アバター』との間でアカデミー賞を激しく争った。→人気ブログランキング

2012年9月 4日 (火)

『ビューティフル』

バベル』(06年)、『21グラム』(03年)で生と死という重いテーマを扱ったアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督が、本作では余命いくばくもない男の生き様を濃厚に描いている。タイトルの「Biutiful」は、主人公のウスバル(ハビエル・バルデム)が、娘に訊れて教えた「beautiful」の綴り。

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BIUTIFUL ビューティフル [DVD]

BIUTIFUL ビューティフル [DVD]

posted with amazlet at 12.09.04
原題:Biutiful
監督:レハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
脚本:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ /アルマンド・ボー /ニコラス・ヒアコボーネ
原案 :アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
製作 :アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ /フェルナンド・ボヴァイラ /ジョン・キリク
音楽 :グスターヴォ・サンタオラヤ
製作国:スペイン メキシコ   2010年  148分 ★★★★★

Amazon.co.jp で詳細を見る

 

ウスバルは、離婚した薬物中毒の妻マランブラ(マリセル・アルバレス)を見捨てることなく支えながら、男手一つで幼いふたりの子どもを育てている。
生活が苦しい彼は、どんな仕事も厭わない。
中国人移民の不法労働の手配、黒人たちの路上店舗の見回り、、麻薬取引など、そうしたことを警官から見逃してもらうために賄賂を掴ませたりもする。

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ウスバルが、親切心から中国人たちのために買った暖房機が不完全燃焼を起こして、大勢が亡くなってしまう。
遺体は彼の知らないうちに海に投棄されるのだった。

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ある日、ウスバルは末期がんであり、余命2カ月と医師から宣告される。彼は誰にも打ち明けることができず、死の恐怖と闘いながら、子どもたちのために懸命に生きようとする。
その父親としての姿は見る者に強烈な印象を植えつける。

アカデミー賞主演男優賞および外国語映画賞にノミネートされた。

2012年9月 2日 (日)

フローズン・リバー

主人公のメリッサ・レオ扮するレイのタトォーの入った母趾が映し出され、着替えると腕、背中、太腿にもタトォーが見える。トレーラーハウスに住み、1ドルショップで非正規雇用人として働くレイには15歳と4歳の息子がいて、その日の食事にもこと欠く状況になっている。ギャンブル依存症の夫が、新居を購入するための金を持って行方をくらましたのだ。一家は社会の最下層で生きている。
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原題:Frozen River
監督:コートニー・ハント
脚本:コートニー・ハント
製作:ヘザー・レイ/チップ・ホーリハン
製作総指揮:チャールズ・S・コーエン/ドナルド・ハーウッド
音楽:ピーター・ゴラブ/シャザード・イズマイリー
製作国:アメリカ合衆国   2008年  97分 

レオが夫を探しにビンゴ会場に行くと、モホーク族(モヒカン刈りはモホーク族からきている)のライラ(ミスティ・アパーム)が夫の車に乗っているところを目撃する。ライラは車は鍵がついたまま放置されていたと言う。

車を高く売れるところを紹介するとライラに誘われ、ふたりは車で凍った川を渡って対岸のカナダに行くのだった。
しかし、車を売る話は嘘で、レオはその車で密入国者を運ぶ仕事に手を出すことになる。

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夫を交通事故で亡くしたライラには1歳の息子がいる。生活能力のないライラから、生まれるとすぐに息子を義母につれていかれ、トレーラーハウスでひとりで暮らしている。

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密入国者を運んでいるうちに、レイは警察にマークされるようになる。レイの息子は急に金回りが良くなった母親を、犯罪に手を出しているのではないか疑っている。
こんな悪事が長く続けられるはずもなく、レイがこれで最後と臨んだ仕事で、ブローカーとの間にトラブルが起こり銃で撃たれてしまう。幸いレイのケガは軽傷であったが、川を渡る途中で薄い氷が割れタイヤが取られ、密入国者ともども車を乗り捨ててモホーク族の家に逃げ込むのだった。

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警察がモホーク族の保留地を取り囲み、レイたちの出頭を待っている。レイは苦渋の選択をせざるを得なくなる。

必死に子どもを守って生きて行こうとするふたりの母親の生き様を描いた作品。
息が詰まるような閉塞感、寒々とした背景は、『ウィンターズ ボーン』(11年)に似たテイストがする。
アカデミー賞主演女優賞にノミネートされたメリッサ・レオの渋い演技が光る。
本作は脚本賞にもノミネートされた。→人気ブログランキング
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