ヤング≒アダルト
ヤングアダルト小説家のメイビス(シャーリーズ・セロン)に、大学卒業以来、連絡を取りあっていない昔の恋人バディ(パトリック・ウィルソン)からメールが届く。メイビスは「赤ん坊のお披露目パーティ」の招待メールに苛立ちながらも、故郷に帰ることにする。
愛犬のドルチェを連れてミニクーパーに乗って、かつてお気に入りだったロックバンド、ティーンエイジャーの『ザ・コンセプト』をカーステレオで流し、気に入ったフレーズを口ずさみながら、故郷のマーキュリー(架空の町)に向かう。
ここで、メイビスが着ているハローキティのTシャツは、彼女の精神状態そのもので痛々しい。
![]() Young Adult 監督:ジェイソン・ライトマン 脚本:ディアブロ・コーディ 音楽:ロルフ・ケント 製作国:米国 2011年 94分 |
高校時代は才色兼備で注目の的だったメイビスだが、小説家といっても所詮はゴーストライター、書いているものはヤングアダルト小説という中途半端なもの、年齢は37歳でバツイチ、住んでいる所はニューヨークではなくてミネアポリス、何もかもがメイビスにとって満足できない。
高校時代は、男たちからはちやほやされていたが、女たちからは鼻持ちならない高慢な女として疎ましく思われていた。
彼女は自分の人生はこんなはずじゃないと思っている。
メイビスは故郷に立ち寄った理由を、素直に「赤ん坊のお披露目パーティ」への出席とは言えず、「不動産探し」と見栄を張ってしまう。
ふらりと入ったバーのカウンターで、メイビスは「メーカーズマーク」のストレートを煽っていると、隣に座っていたマット(パットン・オズワルト)がメイビスに声をかける。彼は、高校時代に体育会の連中にゲイ扱いされ、差別暴力を受け下半身に障害を負った、人気者だったメイビスとは対極にいた男である。
酔いが回るうちにメイビスは、自分はバディと結ばれる運命にあり、よりを戻すためにやって来たと本音をぶちまけるのだった。
マットは、子供が生まれて幸せに暮らしているバディの生活に首を突っ込むな、精神科医にいくべきだと忠告する。
両親からは、印税で不動産を買いあさりにきたのかと嫌味を言われ、昔の女友達たちからは都会風を吹かせる女王様気取りのクソ女と陰口を叩かれる。メイビスにとって故郷に落ち着ける場所などないのだ。
バディがメイビスとの間に一線を画そうとすると、本音を言い出だせないでいると、メイビスは勝手に思うのだった。
パーティの当日、メールを送ったのはバディの妻であることが分かり、当のバディに言い寄ると拒絶され、プライドをズタズタにされたメイビスは自分を抑えきれなくなってしまい、出席者の前で妻のベス(エリザベス・リーサー)に食ってかかるのだった。
パーティを抜け出してメイビスが向かったのは、障害者としての人生を余儀なくされたマットのところ。
彼にケガを負わせたのは、かつてのメイビスの取り巻きの男たちだ。
マットの妹が故郷の町をこき下ろすのを肯きながら聞いていたメイビスだが、ミニアップル(ミネアポリス)に連れていって欲しいと願う妹を、故郷にとどまった方がいいと諭すのだった。
ジェイソン・ライトマン監督は、これまで主に「善と悪」や「功と罪」のはざまで悩む揺れる主人公を描いてきた。
『サンキュー・スモーキング』(05年)では、タバコの害を十分に知っていながらタバコ業界のために詭弁を弄するロビイストを、『ジュノ/Juno』(07年)では、16歳で妊娠してしまった高校生を、『マイレージ・マイライフ』(09年)では、ほかの会社に出向いて解雇通告をする代行人を描いている。いずれの主人公も、困難な状況に立ち向う姿勢をみせている。
本作は、大人になりきれない37歳の女性が、輝いていた高校生時代を思い返して故郷を訪れたものの、中途半端な生活を送っている現実を思い知らされるという、他の3作とは趣が異なる内容である。
→人気ブログランキング
« サンキュー・スモーキング | トップページ | 愛を読む人 »
「ヒューマン」カテゴリの記事
- 幸せをつかむ歌(2017.04.20)
- ダラス・バイヤーズクラブ(2015.01.21)
- ザ・チャンプ 伝説のファイター(2014.02.12)
コメント