おとなのけんか
子ども同士の喧嘩でケガを負わせてしまった少年の両親が、被害者少年の両親を訪ねる。ケガは上唇が切れて前歯2本が折れたというもの。
加害者夫婦は弁護士のアラン(クリストフ・ヴァルツ)と投資ブローカーのナンシー(ケイト・ウィンスレット)。被害者少年の両親は金物店を営むマイケル(ジョン・C・ライリー)とライターのペネロペ(ジョディー・フォスター)。この4人のやり取りで終始物語は進む。場所は高級住宅地のブルックリンのアパート。
おとなのけんか Carnage 監督:ロマン・ポランスキー 脚本:ヤスミナ・レザ/ロマン・ポランスキー/マイケル・ケイティムズ 原作:ヤスミナ・レザ 『大人は、かく戦えり』 製作国:フランス ドイツ ポーランド スペイン 2011年 80分 |
初めは、控えめな物腰でお互いの出方をうかがっていて、ことが大きくならないように「和解」の方向に持っていこうとした彼らだった。
しかしそうはいかない。ペネロペ役のジョディ・フォスターが、書いている「けんかの報告書」をパソコンの画面で見たアランは、「武装した少年が木の枝で顔を叩いた」との記載に、「武装?」とクレームをつける。そこは、大袈裟に書いてしまったとペネロペはあっさり引き下がる。
ここから「4人の攻防戦」が始まる。
ひっきりなしにかかってくる電話に答え、携帯電話にむかって傍若無人に仕事の話をするアランに、3人は次第に苛立っていく。
「息子さんは反省しているのでしょうね」とペネロペが訊ねると、アランは「息子は問題児で、自主的な反省は無理」と答えるのだった。
やがて娘の話になって、マイケルは娘の飼っているハムスターが気に入らず、外に捨てたと言い出した。そこに温厚そうにしていたナンシーがマイケルの動物虐待を非難する。
作り笑いで顔の引きつるペネロペは、機会があれば攻撃を仕掛けようと狙っている。
アランは心ここにあらずで、もっぱら関心は携帯電話の向こう側。
マイケルは一見物分りが良くて太っ腹。
ナンシーは体調がすぐれず、精神的に不安定になっていく。
そんな4人の主張は次々とあらぬ方向に飛び、息子のことでは共同戦線を張る夫婦も、それ以外の話題になるとバラバラとなり、男同士、女同士の意見が一致したりする。ついには夫婦喧嘩が勃発して、思わぬ本音も飛び出して、修羅場と化し収拾がつかなくなる。
そんなとき、ナンシーは大胆な行動に出る。
場の雰囲気を険悪にいてきたアランの携帯電話を奪い取って花瓶の水の中に沈めると、ペネロペが「やったー」と大声を上げる。さらにペネロベがこの日のために20ドルで買ったオランダ産の黄色いチューリップを、花瓶から引き抜いて床にばらまくのだった。
翌日になってみれば、親たちの思惑なぞどこ吹く風、子ども達は一緒に遊んでいるし、ハムスターは元気に生きているというオチがつく。
日常生活で、いかにもありそうな状況なので、ついニンマリしてしまう。
故あって、アメリカに入国が困難なポランスキーは、本作をパリで撮影したという。→人気ブログランキング
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