告発の行方
若い男が道路沿いの公衆電話から、「レイプしている。男が3~4人、いやもっといる!」と警察に通報する。そのあとにバーから走って出てきた半裸の若い女性サラ(ジョディ・フォスター)が、通りすがりの車を止めて乗り込む場面から、この映画は始まる。
本作品で体当たりの演技を見せたジョディ・フォスターは、第61回アカデミー賞主演女優賞を獲得した。
![]() The Accused 監督:ジョナサン・カプラン 脚本:トム・トーパー 音楽:ブラッド・フィーデル アメリカ 1988年 111分 |
サラの事件を担当するのは、地方検事補キャサリン・マーフィ(ケリー・マクギリス)。彼女は、サラと保安官のダンカン(テリー・デイヴィッド・ムリガン)を伴ってバー乗りこみ、そこでレイプ犯の3名のうち2名を確認する。もうひとりの大学生ボブは帰宅していた。
キャサリンの服装は、バブル期の象徴である肩パット入りのスーツ、上背もあるので、いかにもやり手で頼りになりそうだ。一方、家でくつろぐサラは、「阪神タイガーズのハッピ」を羽織っていた。
なんでサラがタイガースのハッピを着ているのだろう?吉田監督のもとで、阪神が巨人戦でバース・掛布・岡田のバックスクリーン3連発で勢いに乗り、ペナントレースを制し、西武を下して日本一に輝いたのは1985年。本作の公開が1988年、阪神のハッピの旬は過ぎているが、撮影中は優勝の余韻が残っていたのかもしれない。日本のプロ野球通でタイガーズファンのスタッフがいたのだろう。人気ブログランキング
レイプを告発する決意をしたサラだったが、酔っ払ってマリファナを吸っていたし、男たちを挑発するかのような行動をとっていた。サラにとって有利な証拠はない。キャサリンはレイプでの告訴を諦め、傷害罪で裁定取引きをし、3人には禁固刑が下された。しかし、あくまでレイプでの告訴を望んだサラは失望し、キャサリンを責めるのだった。
ある日、ショッピングセンターで、バーでレイプを煽った男クリフ(レオ・ロッシ)と出会い、あの夜のことを執拗にからかってきた。我慢ができなくなったサラは、その男のトラックめがけて何度も自分の車をぶつけ自らも入院するようなケガを負うのだった。
サラを見舞ったキャサリンは、レイプを煽った男たちを「暴行教唆」の罪で告発することを決意する。しかし上司は、前例がない「暴行教唆」での告訴は勝ち目がないとキャサリンを諭すが、検事補としてのキャリアに箔をつけるチャンスと踏んだ彼女は、一か八かの賭けに出る決意をする。
キャサリンは、警察に通報してきた大学生のケン・ジョイス(バーニー・カールソン)を探し出し証言を求めるが、彼は収監されている同僚のボブをかばい真実を話そうとしない。
立証が難しいと言われるレイプ事件、しかも麻薬所持の前歴があり、同夜、酒に酔いマリファナを吸っていたサラには、ケンの証言がなければ勝ち目はない。ケンが語った事件の全容は、陪審員に「有罪」の結論を出させるのだった。人気ブログランキング
ハッピーエンドで終わるが、サラに裁判長からの一言があるべきだろう。「今後、男を挑発するようなことは厳に慎むように!いいね、サラ」と。
『これからの「正義」の話をしよう』(マイケル・サランデル著)で扱われそうな問題がある。
警察に通報はしたものの、ケンはレイプを止めようとしたわけでなく傍観していた。その後ろめたさがケンに証言させたのだろう。しかし友人を売ったのは事実だ。
ケンの立場だったら、証言に応じるか拒否するか、どうする?という問いには、簡単には答えられない。
アメリカの司法省によれば、2010年に発生した強姦件数は18万8380件となっている。しかし実際に強姦被害に遭った女性は、その約10倍いるという。因みに日本では1402件(2009年)である。→人気ブログランキング
【ジョディー・フォスター出演作品】(サイト内リンク)
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