デザート・フラワー
本作は、ワリス・ディリーの自伝『砂漠の女ディリー』の映画化。
ソマリアの遊牧民に生まれ、貧しい小児期から少女期を送り、その後ロンドンでトップモデルとなるまでの波瀾万丈の半生を描いたもの。ワリスを演じたのはエチオピア出身のモデル、リヤ・ケベデである。
![]() 監督:シェリー・ホーマン 脚本:シェリー・ホーマン 原作:ワリス・ディリー 『砂漠の女ディリー』 製作:ピーター・ヘルマン 音楽:マルティン・トードシャローヴ 製作国:ドイツ/ オーストリア/ フランス 2009年 127分 |
13歳のときにワリスは、60過ぎの男にラクダ5頭との交換で妻にさせられそうになったところを逃げ出し、砂漠を横切って生死の境をさまよいながら港に辿り着きロンドンに渡った。
ロンドンでは大使館で下働きをしていたものの、ソマリアが政情不安となり大使館は閉鎖され、不法滞在の身となった。
ホームレスの生活をしていたところ、ダンサーを目指すマリリン(サリー・ホーキンス)にまとわりつき、彼女のアパートに潜り込んだ。
ワリスは、英語を上手く話すことができなかったが、それでもなんとかハンバーガーショップでの清掃の仕事につくことができた。
その店に、
客として現れた高名な写真家のドナルドソンに横顔を気に入られ、モデルとしてデビューすることになる。
そんなある日、下腹部の激痛に襲われたワリスを、マリリンが救急病院に連れて行く。
そこでワリスの下腹部を診察した担当医は、腹痛は割礼が原因であり、割礼部の切開を勧めるのであった。
しかし、ソマリア出身の看護師が現れ、部族の掟を守るべきだと忠告され、ワリスは手術を諦めるのだった。悩んだ末に新しい人生を踏み出そうと決意した彼女は、手術を受けることにする。
その後、彼女はパスポートを獲得し、世界的なモデルとして活躍するようになる。
トップモデルとなったワリスは、自分が3歳の時に受けた割礼について、WHOにおいて報告した。
このワリスの演説によって、アフリカの一部の地域で行なわれている女性虐待の事実が、世界の人々の知るところとなった。
アフリカでの女性の割礼は、多くは生後数日から3歳くらいまでに行われ、陰唇と陰核を切除し小さな穴だけを残し縫い合わせる、いわば性器切除であるという。
麻酔をするわけでなく清潔な器具があるわけでもなく、感染により命を落とすこともしばしばであるという。
ワリスのように、排尿や生理にさいして激しい痛みを伴う後遺症に悩まされることもある。
女性は割礼を受けていなければ結婚が許されず、結婚すると夫が刃物で縫合部を切り裂くとのことだ。
WHOの啓蒙にもかかわらず、こうした割礼は今でも行われているという。
主人公ワリスのモデルとしての成功の物語ばかりでなく、彼女自身が受けた割礼の悲惨さが、強く印象に残る作品だ。→人気ブログランキング
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