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2012年10月 6日 (土)

真実の行方

大司教の助手をしていたアーロン(エドワード・ノートン)は大司教殺しで逮捕される。血まみれで現場にいたのがアーロンだった。
弁護を買って出たのは、上昇志向の強い目だちたがり屋の弁護士マーティン(リチャード・ギア)。対抗する検事は、かつてマーティンの部下であり親密な間柄だったジェーン(ローラ・リニー)。
裁判の結審まで続く、遣り手弁護士と辣腕弁護士の丁々発止のやり取りは、本作品の見所である。

Image_20201230093401真実の行方
Primal Fear
監督:グレゴリー・ホブリット
脚本:スティーヴ・シェイガン/アン・ビダーマン
製作:ゲイリー・ルチェッシ
音楽:ジェームズ・ニュートン・ハワード
製作国:アメリカ合衆国 1996年 130分

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アーロンにとって大司教は父親同然の存在である。身寄りがなく物乞いをしていたアーロンに、住む所とミサの手伝いの仕事を与えてくれたのだ。アーロンの受け答えは、残虐な殺人を犯したとは思えないような温厚なもの。マーティンは直感で、アーロンが無罪であると思った。
これがとんだ的外れ、アローンの悪知恵に見事にしてやられたのだ。

マーティンは、貧民窟の再開発に投資しようとしていた州検事をはじめとする市の上層部が、大司教によって再開発が中止に追い込まれたことを恨んで殺害したと立証しようとする。しかし、悪の権化のような州検事はマーティンに露骨な妨害をする。

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マーティンは、アーロンたちが大司教から性的な虐待をうけていて、その現場を撮影したビデオテープがあることを知り、そのテープを大司教の部屋から盗み出す。
マーティンが性的虐待についてアーロンに質すと、人が変わったように乱暴な言葉でまくし立て、自らをロイと名乗り大司教を殺害したことを認めるのだった。精神科医モリー(フランシス・マクドーマント)の診察によりアーロンは多重人格障害者であることがわかり、アーロンはロイのやったことをまったく自覚していない。

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しかし、マーティンは策を弄して、法廷でアーロンが発作を起こすように仕組むのだった。この作戦が見事にあたり、アーロンから豹変したロイは、大司教殺害を認め、ジェーンに飛びかかり首の骨を折ろうとする。間一髪で発作は収まり、マーティンの思惑通り、アーロンは死刑をまぬがれ精神病院送りとなる。

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判決が下されたあと、面会に訪れたマーティンにアーロンは、「ひどいことをするつもりはなかった。お大事にとジェーンに伝えてほしい」と不適な笑みを浮かべて言うのだった。
そもそもロイはいない、と言うより、気の荒い蓮っ葉なロイが温厚そうなアーロンを演じていたのだ。このことを知っているのはマーティンとアーロンだけ。マーティンの大失策により、凶悪な殺人犯が無罪となったわけだ。

ところで、黒人の女性裁判官は、ジェーンの喫煙に対して口やかましく注意するものの、自らは昼間っからウイスキーをストレートであおっている。見た目は酔っていないけれど、法廷にグラス片手に入ってくる。最初は薄茶色の液体はまさかウィスキーではあるまいと思ったものの、いやあれはウィスキーだ。どうなってるんだ。

二重人格物には、古くは『サイコ』(60年)がある。→映画ブログランキング

1977年にビリー・ミリガンが起こした連続殺人事件を扱ったダニエル・キースのノンフィクション『24人のビリー・ミリガン』がベストセラーとなったことで、多重人格が広く知られるようになった。1980年代には、多重人格障害者は犯罪の責任を犯人自身に問えないという理屈で、裁判官が減刑を認める傾向があったという。しかし、1990年代に入り、精神医学会、法曹界から、多重人格に対し疑問の声が上がり、その傾向は変わった。
ビリー・ミリガンに下された多重人格の診断そのものに疑問が持たれたのだ。

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