人のセックスを笑うな(映画)
原作は山崎ナオコーラのデヴュー作。
挑戦的なタイトルは、著者が、本屋の同性愛のコーナーで本棚を眺めながらクスクス笑っている人を見て思いついたという。
19歳の男子学生が39歳の美術教師にのぼせ上がり、そこに男子学生を想う同級生が絡む、三角関係の物語。
見た目はやる気がなさそうだが正直に生きている大学生役の松山ケンイチと、常識にとらわれない飛んでる女性役の矢作博美、松山を密かに恋慕する女子学生役の蒼井優、それぞれの役柄がぴったりとはまっている。
![]() Don't Laugh at My Romance. 監督:井口奈己 脚本:本調有香 製作:西ヶ谷寿一/永田芳弘/河合洋/松下晴彦/廣瀬敏雄 出演者:松山ケンイチ/永作博美/蒼井優/忍成修吾/温水洋一/あがた森魚/桂春團治 音楽:HAKASE-SUN 製作国:2008年 日本 137分 |
舞台は桐生市の冬。
美術学校に通うみるめ(松山ケンイチ)は、リトグラフの講師・ユリ(永作博美)からモデルを頼まれアトリエを訪れる。みるめは予想していたのか考えもなく引き受けてしまったのか、ユリに裸になることを要求され、そのまま関係を持ってしまう。それ以来みるめは有頂天になる。
みるめに想いを抱くえんちゃん(蒼井優)は心穏やかでない。といって、みるめに告白したところでどうなるものでもないと、彼女は思っている。えんちゃんの乙女心は切ない。
ある日、リトグラフ教室にユリの姿が見当たらないので、みるめが家を訪ねてみると、そこには「猪熊カメラ工房」と看板が出ていた。中からユリの父親くらいの年恰好の男性(あがた森魚)が出てきて、ユリからその男性は夫であることを知らされる。「あれ、言ってなかったけ」とユリはしれっと言う。
あまりのショックに、みるめはユリとの関係を断つ決心をして携帯電話を針金でぐるぐる巻きに縛りハンダ付けして開かないようにした。別に人妻だっていいじゃないとは、19歳のみるめは思わなかったのだ。
原作でははじめから、ユリが結婚していることをみるめは噂で知っていた。そのことで思い詰めたりしない。映画の設定の方が、みるめの繊細さが強調されていい。
えんちゃんは電話に出なくなったみるめが心配になり家を訪ね、みるめのユリへの想いを聞き出すのだった。えんちゃんは、自分の気持ちを抑えて、ユリに会うようみるめを促す。
ある日突然、ユリは姿を消す。夫婦でインドのサイババに会いに行ったという噂もある。
そして途方に暮れるみるめは、家に引きこもるようになる。そんなみるめを励まそうと、えんちゃんは「ユリを見た」と告げる。そして、ふたりはバイクに乗ってユリを探しにでかけるのだった。えんちゃんは恐らく、みるめを励まそうと嘘をついたのだろう。
なにもそこまで落ち込まなくとも思うのだが、それが19歳の純真な男が経験した失恋なのだ。
原作では、ユリは見た目も39歳で、目尻には小じわがあって、髪は長く、ボサボサ、肉付きがいい 、口紅はしているものの、汚れたスモックを着ている油絵の講師。
ユリは原作よりも映画のほうが魅力的な女性の設定になっている。そうじゃないと、この映画は成り立たない。→人気ブログランキング
→ 『人のセックスを笑うな』(小説)
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