『リトル・ダンサー』
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Billy Elliot
監督:・ダルドリー 脚本:リー・ホール 製作:グレッグ・ブレンマン/ジョン・フィン 製作総指揮:ナターシャ・ワートン/チャールズ・ブランド/テッサ・ロス 音楽:・ウォーベック 製作国:イギリス 2000年 111分 |
ダルドリー監督の『めぐりあう時間たち』(03年)、『愛を読むひと』(08年)、『ものすごくうるさくて ありえないほど近い 』(11年)は、いずれもレベルが高い作品だ。
本作はダルドリー監督のデビュー作、イギリスの賞を総なめにしたという。
監督は、2012年のロンドンオリンピック、パラリンピックで、開会式・閉会式の総合プロデューサーを務めた。
サッチャー政権下の1984年、イギリス北部の炭鉱町に住む11歳のビリーは、炭鉱夫の父と兄、それと認知症の祖母との4人ぐらし。母親はすでに亡くなっている。
ビリーは父親の勧めでボクシングを習っている。ビリーの家は、表向き男らしい家族ということになっている。
おりしも、炭鉱のストライキの影響で、バレーの練習場所がなくなり、バレーもボクシング場で練習をすることになった。
もともとボクシングに身が入らないビリーは、バレーがやりたくて仕方がない。彼は父と兄に内緒で女の子たちに混じってバレーを始める。ビリーの非凡な才能を見抜いたバレー教師のウィルキンス先生は、彼にに個人レッスンを受けるように勧めるのだった。
ある日、ウィルキンス先生がビリーの家にやってきて、ビリーをロイアルバレースクールに進学させるべきだと主張する。しかし、父親は、まだ多くの人が女性がするものと考えられているバレーを、息子にさせることを受け入れられない。それに、炭鉱の先行きは暗く経済的な余裕はない。
クリスマスの夜、ビリーと女装癖のある同級生のマイケルが踊っているところを父親が見てしまう。開き直ったビリーはアドリブで踊る。その踊りを見て、息子の非凡な才能に気がついた父親は、ロイアルバレースクールを受験をさせようと決意するのだった。
ここで父親は苦渋の選択をする。これまでスト破りを非難する立場の父親は、受験料を稼ぐためにスト破りに加わり採掘場に向かうバスに乗り込むのだった。
父親に長男は食ってかかるが、父親は「先細りの炭鉱夫の仕事を、将来がある11歳のビリーにさせるわけにはいかない。才能があるなら、チャンスを与えるのが親の役目だ」と長男を諭すのだった。
やがて、ロイアルバレースクールの受験日となり、父と子はロンドンに向かう。審査員たちは、ビリーの正統派でないアドリブの踊りに魅せられて才能を認め、ビリーは合格となる。
いよいよロンドンのバレースクールに入学する日、心細いビリーは父親に「嫌になったら帰ってきてもいいか」と訊く。父親は「部屋を他人に貸すから帰ってくるところはない」と、優しそうに告げるのだった。
武田鉄矢の『母に捧げるバラード』いある「花の都に出てゆくかぎりは、誰にも負けたらつまらない、日本の星になって帰ってこい」と、父は言いたかったのだ。
そして、月日が立ち、ビリーは『白鳥の湖』の主役を演ずるようになる。彼の晴れ姿を見ようと父と兄が駆けつけた劇場には、化粧をしたおかまのマイケルもいたのだった。
成人したビリーが踊るシーンは、特別出演した世界的なバレエダンサーのアダム・クーパーが演じている。
舞台の袖で出番を待つクーパーの姿は、まるで獲物に飛びかかろうとする豹のように精悍である。
本作もそうだが、ダルドリー監督は、『愛を読むひと』にしろ、『ものすごくうるさくて ありえないほど近い 』にしろ、少年が主人公の物語が得意のようだ。
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