寝ずの番
原作は中島らもの短編集『寝ずの番』、落語家笑福亭松鶴夫妻がモデル。
寝ずの番 監督 : マキノ雅彦 脚本 : 大森寿美男 原作 : 中島らも プロデューサー : 坂本忠久・林 由恵 音楽 : 大谷幸 製作:日本 2006年 110分 |
余命いくばくもない橋鶴(長門裕之)の末期の願いは「そとが見たい」。これを1番弟子の橋次が女性器の京都弁「そそ」と勘違いしたものだから騒動になった。そこで、白羽の矢が当たったのが、3番弟子の橋太(中井貴一)の妻茂子(木村佳乃)。
はじめは「どうして私が?」と納得がいかず、ホルターガイスト現象ばりにそこらにある物を橋太目がけて投げつけたものの、師匠のためならと一肌脱ぐことになる。その3日後(原作では3分後)に橋鶴は亡くなった。
通夜のあとは酒を酌み交わしながらの寝ずの番になる。
破天荒だった橋鶴師匠の様々なエピソードで大いに盛り上がる。「そそ騒動」は、「師匠は、臨終にまでオチつけなはった」と評価が高い。
橋鶴の息子、序列でいえば2番弟子の橋弥(岸部一徳)は、父親から落語を教えてもえなかったと嘆く。師匠は教えてもどうせ下手だろうから、教えたと人に知れたら師匠が下手ということになるので教えなかったと、一番弟子の橋次に言ったとか。
最後には、亡骸を立たせて『らくだ』のカンカン踊りまでが飛び出した。
寝ずの番は、故人が寂しがらないように、ろうそくと線香の火を絶やさないようにと、遺体の前で番をする。大概は、親族のなかの若手が受けもつことになる。寝ずの番が多ければ、故人の話で盛り上がって時間が早く経つ。
ときどき、ふと遺体の顔を拝みたくなって、棺桶の蓋を開けて、しみじみと眺めたりする。ふと、踊ってみようと誰かが言い出したら、皆が酔っ払っているものだから無茶が通ってしまった。
下ネタがどんどん飛び出して、息をつかせない爆笑に次ぐ爆笑である。
マキノ雅彦監督の人脈だろうか、弔問客には桂三枝、笑福亭鶴瓶、浅丘ルリ子、米倉涼子、中村勘三郎と豪華な面々が訪れる。
それから暫くして、「そそ騒動」の張本人、そそっかしい橋次が突然亡くなった。
再び、通夜のあとは想い出話に花が咲く。
橋次はついていない男だった。寺を借りての独演会では、本堂が火事になったり、住職が亡くなったり、と不運ばかり。だが、色っぽい女性(高岡早紀)との一夜もあったとか。
ここでも下ネタは盛りだくさん。
葬式になると仏事にやたら詳しい奴がいて、それは例えば遠縁のオジさんだったりする。それは違うとかこうやれとか、仕切りたがる。はじめは素直に従がおうとしない周りは、やがてその仏事通に従うことになる。ところが「この地区では違う」と、地元のやり方を主張する別の人物が出てきたりする。周りはどっちでもいいと思っているが、ふたりにとっては面子をかけた勝負なのだ。大体は地元のやり方を主張した方が通る。今回その仏事通の役は、4番弟子の橋枝(木下ほうか)であった。 |
その一年後、今度は師匠の奥さん、色っぽい志津子(冨司純子)姐さんが、突然亡くなった。
通夜に初老の男(堺正章)がやって来て、その昔新地の一番人気の芸妓だった志津子姐さん会いたさに夜な夜な通い詰め、中国の故事の「傾城」よろしく鉄工所を潰してしまったとのこと。今はタクシーの運転手だという。
なんでも、その男は師匠と姐さんを取り合った恋敵で、姐さんから教わった座敷歌をぜひ唄いたいと言い出した。唄は下ネタがテーマ。それに橋太が唄い返す。
男は「おれの心はトタンの屋根よ 変わらないのを見ておくれ」と師匠が姐さんに送った都々逸を、姐さんが教えてくれたと披露する。
そして、例によって下ネタの大歌合戦となるのだった。
「文部科学省認定でありながら、卑猥な言葉が70数回も出てくることでR-15指定を受けた」というネタがまかり通っているのも、大いに笑える。→人気ブログランキング
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