フォーン・ブース
電話ボックスという限られた空間で、ストーリーが小気味いいテンポで展開する。
スチュアート(コリン・ファレル)は、ミュージシャンや俳優を売り出す仲介屋、口先ひとつで業界を渡り歩くチンピラである。
今日もブロードウェイを肩で風を切って歩いていると、電話ボックスの電話が鳴り、つい受話器を取ってしまう。それが不幸の始まりだった。電話の相手(キーファー・サザーランド)は、「電話を切れば、お前を殺す」とスチュアートを脅す。
フォーン・ブース Phone Booth 監督:ジョエル・シュマッカー脚本:ラリー・コーエン 製作:ギル・ネッター/デヴィッド・ザッカー 製作総指揮:テッド・カーディラ 音楽:ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ 製作国:アメリカ 2003年 81分 |
相手は、スチュの私生活を熟知していて、そのいい加減ぶりを次々に暴いていく。遠方のビルから、スチュに狙撃銃の照準が合わされ、スチュは電話ボックスから出られなくなってしまう。狙撃手の目的は腐った人間に自らの不徳を認めさせ悔い改めさせることだ。
さっさと便話ボックスから飛び出して、どこかに隠れれば逃げられるんじゃないかと見ている方はやきもきするが、そこはしたたかな狙撃手だ、言葉を巧みに操り、スチュは雪隠詰めになってしまう。
やがて、電話ボックスから出ろ出ないでやりあった娼婦の用心棒が、スチュの目の前で射殺される。娼婦たちはスチュが殺したとわめくのだ。用心棒が射殺されたことで、逃げおおせないとスチュは観念する。
そうこうしているうちに、見物人は膨れ上がり、パトカーが駆けつけてテレビ中継も始まる。
レイミー警部(フォレスト・ウィティカー)はスチュに電話を切るよう説得するが、スチュが気が狂っているわけではないことを知り、部下に周囲のビルに潜む狙撃犯の捜索に当たらせる。
やがて、不倫相手の女優パメラ(ケイティ・ホームズ)や妻のケリー(ラダ・ミッチェル)も現場にやってくる。
そして、舞台が整い役者が揃ったところで、狙撃犯に命じられるまま、スチュは日頃の不徳の数々を公衆の面前で懺悔するのだった。
狙撃犯はスチュに、「君の誠実さが続くことを祈っているよ。もし続かなかったら、また電話するよ」と言い残して消えていく。まるで、秋田の「なまはげ」のようだ。突然現れて「わりご(悪い子)はいねがー」と、叫びながら出刃包丁を振り回してさんざん子供を怖がらせた挙句、「良い子にするんだぞ、そうじゃないとまた来るからな」と言って去っていく。同じパターンだ。
フォーンブースの中を覗いて立ち去るのは狙撃犯のキーファー・サザーランド。
この最後のシークエンスはコメディタッチだ。
チャラチャラと不誠実な生活を送っている現代人たちよ、悔い改めよ。お天道様はすべてお見透しだという身につまされる話である。→人気ブログランキング
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