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2012年10月 3日 (水)

ライフ・オブ・デビット・ゲイル

新聞社のもとに、4日後に死刑が執行される死刑囚のインタビュー記事執筆の依頼が舞い込む。インタビュー記事に対して新聞社が100万ドルを支払うというもの。
Image_20210113112701ライフ・オブ・デビッド・ゲイル
The Life of David Gale
監督:アラン・パーカー脚本:チャールズ・ランドルフ
製作:ニコラス・ケイジ/アラン・パーカー
製作総指揮:モリッツ・ボーマン/ガイ・イースト/ナイジェル・シンクレア
音楽:アレックス・パーカー
製作国:アメリカ  2003年 131分

事件は、死刑廃止論者である元大学教授のデビッド・ゲイル(ケヴィン・スペイシー)が、元同僚のコンスタンス(ローラ・リニー)をレイプし殺害したというもの。全裸のコンスタンスは手錠を後ろ手にかけられ、手錠の鍵を飲み込まされたあと、口をガムテープで塞がれ、顔にビニール袋を被せられ窒息死させられたとなっていた。近くに3脚がおかれ、ビデオ撮影された形跡が残されていた。

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女性新聞記者のピッツィー(ケイト・ウィンスレット)は、テキサツ州の刑務所に向かう。ゲイルとの面会時間は1日2時間、3日間しかない。「僕の選んだ人生の結末を書いて欲しい」とゲイルはピッツィーに願い出る。

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人気哲学教授だったゲイルは、うかつにも生徒の誘いにのって肉体関係を結び、レイプと訴えられ教職を追われた。そこからゲイルの転落の人生がはじまる。妻は「試験別居」と称して幼い息子を連れてマドリッドに行ってしまう。生きる望みを失ったゲイルは、アルコールに溺れてしまう。
治療を受けてやっと立ち直ったゲイルには、まともな職はなかった。ゲイルは、大学の同僚だったコンスタンスが代表を務めるアムネスティーの運動に加わり活動をはじめる。そして、ある日コンスタンスを殺してしまう。

ピッツィーは検事への取材からゲイルの弁護士が裁判をうまく持っていけば「無期懲役」で済んだものが、「死刑」になってしまったことを知る。ゲイルの弁護士は過去に2回処罰されいて、弁護士を変えるようにとのまわりの説得に、耳を貸さなかった。
ピッツィーは、ゲイルをインタビューするうちに、冤罪ではないかと疑いはじめる。
ゲイルは無能な弁護士をあえて選んだのかもしれない。
ゲイルはそれほど熱心な死刑廃止論者とは見えない。根っからの死刑廃止論者だったコンスタンスの近くにいるための方便だったかもしれない。

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その夜ピッツィーが宿泊するモーテルに誰かが忍び込み、コンスタンスが死に至るまでの残虐なシーンが映っているビデオが置かれていた。そのビデオを繰り返し見るうちに、ピッツィーはこの事件のカラクリを読み解くのだった。
しかしすでに死刑執行の日、死刑を中止させようとするピッツィーの努力も虚しく、時間は刻々とすぎてゆく。

冤罪の死刑が執行されれば、死刑廃止について世間は真剣に考えるようになるだろうというのが、ゲイルの狙いであった。

本作は、死刑と冤罪という重いテーマにもかかわらず暗くなりすぎないのは、ケヴィン・スペイシーの巧みな演技によるところが大きい。
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【ケイト・ウィンスレット出演作品】
おとなのけんか』Carnage/2011年
『コンテイジョン』Contagion/2011年
『ミルドレッド・ピアース 幸せの代償』Mildred Pierce /2011年
愛を読むひと』The Reader/2008年
リトル・チルドレン』Little Children/2006年
エターナル・サンシャイン』Eternal Sunshine of the Spotless Mind/2004年
ライフ・オブ・デビッド・ゲイル』The Life of David Gale/2003年 
アイリス』Iris/2001年
『エニグマ』Enigma/2001年
『タイタニック』Titanic/1997年
いつか晴れた日に』Sense and Sensibility/1995年
『乙女の祈り』Heavenly Creatures/1994年

本作の冒頭で、ゲイルは学生で埋め尽くされた講義室で、次のようにラカンとパスカルの夢想論を説いた。

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ラカンは言う。
夢想は非現実的でなければならない、実現するとたちまち興味が失せてしまう、生きるためには夢は決して叶えられてはならない、我々が欲するのは「それ」ではなくて「それの幻想」、欲望が叶うはずもない狂おしい夢を育む。
パスカルは言う。
人々は将来の夢見るときだけ幸せである。夢を生きがいにすると決して幸せは得られない。知性と理想を持って生きるのが充実した人生だ。夢が叶うか叶わないかで人生の価値は決まらない。大切なのは一瞬の誠意、思いやり、知性の輝き。

 

ゲイルにとって夢とは、何だったのだろう。
それは、教鞭をとっている時には、すでに叶えられてしまったことだったのかもしれない。あるいは死をもって冤罪を証明することだったのかもしれない。
コンスタンスが亡くなり、息子と会うことができないことは、ゲイルにとって生きる意味を見いだせなかったのだ。

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